2021年01月01日

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188記事

【日常系税務リーガルマインド】
税理士だって日常系税務でリーガルマインドを実践したい!
親族概念の、いてもいなくてもどっちでもいい奴感
森田宏樹『契約責任の帰責構造』(有斐閣2002) 〜印紙税法における「結果債務・手段債務論」の活用 
内面重視 〜ブログタイトル変更しましたのお知らせ
「リーガルマインドとは何か?」
税法・民法における行為規範と裁判規範(その1)
税法・民法における行為規範と裁判規範(その2)
税法・民法における行為規範と裁判規範(その3)
税法・民法における行為規範と裁判規範(その4)
税法・民法における行為規範と裁判規範(その5)
税法・民法における行為規範と裁判規範(その6)
税法・民法における行為規範と裁判規範(その7)

【判例イジり】
解釈の解釈を解釈する(free rider) 〜東京高裁平成30年7月19日判決
加算税をめぐる国送法と国税通則法の交錯(平成29年9月1日裁決)
解釈の解釈の終わり? 〜さらば東京高裁平成30年7月19日判決
横流しする趣旨解釈(TPR事件・東京高裁令和元年12月11日判決)
解釈の解釈は終わりました。〜最高裁令和2年3月24日判決【判例速報】
解釈の解釈の介錯 〜最高裁令和2年3月24日判決

【法律書マニアクス】
石田穣『民法総則』(悠々社1992・信山社2014)
人類は、差異を産み育むことでマニアとなる。 〜法律書マニアクス全開
潮見佳男『民法(全) 第2版』(有斐閣 2019)
法学研究書考 〜部門別損益分析論
積読ループ
「法律学大系」(有斐閣) 〜或るstalk。
白石忠志「技術と競争の法的構造」(有斐閣1994)
最近の気になる本

【法学入門書探訪】
横田明美「カフェパウゼで法学を―対話で見つける〈学び方〉」(弘文堂2018)
大屋雄裕「裁判の原点:社会を動かす法学入門」(河出書房新社2018)
道垣内正人「自分で考えるちょっと違った法学入門 第4版」(有斐閣2019)
大橋 洋一「社会とつながる行政法入門」(有斐閣2017)
団藤重光『法学の基礎』(有斐閣2007)
伊藤正己「近代法の常識」(有信堂1992)
南野森「ブリッジブック法学入門(第2版)」(信山社2013)

【租税法の教科書】
税法思考が身につく、理想の教科書を求めて 〜終わりなき旅
金子宏・中里実『租税法と民法』(有斐閣2018)
中里実ほか『租税法概説 第3版』(有斐閣2018)
金子宏『租税法 第23版』(弘文堂2019)
岡村忠生ほか「租税法 (有斐閣アルマ) 」(有斐閣2017)
三木義一「よくわかる税法入門 第14版」(有斐閣2020)
渡辺徹也「スタンダード法人税法 第2版」(弘文堂2019)
田中二郎「租税法(第3版)」(有斐閣1990)
浅妻章如「ホームラン・ボールを拾って売ったら二回課税されるのか」(中央経済社2020)
酒井克彦「プログレッシブ税務会計論」(中央経済社2018)
「新 実務家のための税務相談(民法編) 」(有斐閣2017)

【アクティブ・ラーニング】
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民1)

【税務】
あるべき税理士
肩たたき券取引と税務
税金(国税)の納付の仕方(いろいろ)
税金(地方税)の納付の仕方(いまいち)
あえて言おう!カスであると!(被用者・応募者側からみたみなし残業代)
税金(地方税)の納付の仕方(前進)

【法人税法】
税務における事前判断と事後判断 〜所得拡大促進税制の適否判定(また改正するので)
ふたりはプリキュア(後日テコ入れで増員) 〜グループ法人税制のおさらい〜
武器としての所得拡大促進税制 〜労働者にとっての。
ここがヘンだよ所得拡大促進税制 〜委任命令におけるゆらぎとひずみ
さらば所得拡大促進税制(Arrivederci) 〜評判良ければ続くやつ
みんな大好き!倒産防。 〜措置法解釈手習い
「定期同額給与」のパンドラ(やめときゃよかった)

【所得税法】
色々な壁の話し(配偶者控除・配偶者特別控除)2018ver.
年末調整H29
社員割引
出張手当は節税になるのか?
支払調書における「支払金額」(支払の確定した金額)について
利子・配当・譲渡所得の課税方式の選択について(2020.2.24現在)

【消費税法】
消費税、免税とるって大変よ、という話(2018.1.11現在のルール)。
特定新規設立法人のインフィニティ感

【相続税法】
パラドキシカル同居 〜或いは税務シュレディンガーの○○
イタチ、巻き込み。 〜家なき子特例の平成30年改正
ヤバイ同居 〜続・家なき子特例の平成30年改正

【印紙税法】
私法の一般法とかいってふんぞり返っているわりに、隙だらけ。〜契約の成立と印紙税法
Janusの委任 〜成果報酬型委任と印紙税法
続・契約の成立と印紙税法(法適用通則法がこちらをみている)
続々・契約の成立と印紙税法(代理法がこちらをみている)
さよなら契約の成立と印紙税法 (結局いつもひとり)
魔界の王子と契約の成立と印紙税法
二段の推定と契約の成立と印紙税法 〜印紙税法における実体法と手続法の交錯
おかわり契約の成立と印紙税法(法人法がこちらをみている)

【地方税法】
無償減資で均等割下げ(節税系の記事ではなく)

【国際租税法】
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その1)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その2)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その3)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その4)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その5)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その6)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その7)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その8)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その9)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その10)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その11)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その12)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(まとめ)
井上康一・仲谷栄一郎「租税条約と国内税法の交錯 第2版」(商事法務2011)

【会計】
財務分析総論 〜稼ぐ、彼女の如く。
金子智朗「経営分析の超入門講座」(秀和システム2012)

【基礎法学】
「ポケット六法」は総合事項索引を倒さないと本体に攻撃が通らない 〜事項索引 de 勉強法
「法律学小辞典」の『小』は「小スキピオ」の『小』
ホッブズ『リヴァイアサン』 〜彼の設定厨。
田中成明ほか『法思想史』(有斐閣1997)
判例の機能的考察(タイトル倒れ)

【民法】
潮見佳男『新債権総論1(法律学の森)』『新債権総論2(法律学の森)』(信山社 2017)
潮見佳男「基本講義 債権各論1 契約法・事務管理・不当利得」(新世社2017)
ユーのネームは。 〜「新注釈民法」と私
前田達明「続・民法学の展開 (民法研究 第三巻)」(成文堂2017)
潮見佳男『詳解 相続法』(弘文堂2018)
平井宜雄「債権各論I上 契約総論」(弘文堂2008)
内田勝一「借地借家法案内」(勁草書房2017)
米倉明「プレップ民法(第5版)」(弘文堂2018)
池田真朗『スタートライン債権法(第7版)』(日本評論社2020)
窪田充見「家族法 第4版」(有斐閣2019)
時効の中断・停止から時効の完成猶予・更新へ
ドキッ!?ドグマだらけの民法改正
どんな子にも親に内緒のコトがある。 〜民法98条の2の謎に迫る(迫れていない)
後藤巻則「契約法講義」(弘文堂2017)
加賀山茂「求められる改正民法の教え方」(信山社2019)
内田貴「民法3(第4版)債権総論・担保物権」(東京大学出版会2020)

【会社法・商法】
前田庸『手形法・小切手法入門』(有斐閣 1983)
川口恭弘『金融商品取引法への誘い』(有斐閣2018)
近藤光男「商法総則・商行為法 第8版」(有斐閣2019)
関俊彦「商法総論総則」(有斐閣2006)
小塚荘一郎,森田果『支払決済法 第3版』(商事法務2018)
高橋美加ほか「会社法(第2版)」 (弘文堂2018) 〜付・税理士と会社法の教科書
大垣尚司「金融から学ぶ会社法入門」(勁草書房2017)

【労働法】
下井隆史「労働基準法 第5版」(有斐閣2019)

【民事訴訟法】
新堂幸司『民事訴訟制度の役割』(有斐閣1993)
新堂幸司「新民事訴訟法 第6版」(弘文堂2019) 〜付・民事訴訟法と税理士

【知的財産法】
システム開発における先行者利益について
田村善之「知財の理論」(有斐閣2019)

【破産法】
小林秀之「破産から新民法がみえる」(日本評論社 2018)
美人若女将連続バラバラ租税債権 〜犯人は破産法

【憲法】
大島 義則「憲法ガール Remake Edition」(法律文化社 2018) 〜あわよくばSuccubus。
戸松秀典『憲法』(弘文堂 2015)
ミシェル・トロペール(南野森訳)「リアリズムの法解釈理論」(勁草書房2013)

【刑法】
井田良『入門刑法学・総論』(有斐閣2018)ほか
井田良「講義刑法学・総論 第2版」(有斐閣2018)
井田良「講義刑法学・各論」(有斐閣2016)
辰井聡子『因果関係論』(有斐閣2006)
裁判所職員総合研修所「刑法総論講義案 (四訂版)」(司法協会2016)
松澤伸「機能主義刑法学の理論―デンマーク刑法学の思想」(信山社2001)
安田拓人ほか「ひとりで学ぶ刑法」(有斐閣2015)
小林憲太郎「ライブ講義 刑法入門」(新世社2016)
藤木英雄「公害犯罪」(東京大学出版会1975)
井田良「犯罪論の現在と目的的行為論」(成文堂1996)

【国際私法】
視野を広げるための、国際私法
多層的請求権競合論と、メロンの美味しいところだけいただく感じの。
野村美明『新・ケースで学ぶ国際私法』(法律文化社2020)

【弁護士と税理士】
弁護士事務所と税理士事務所(似ていない)

【酒撮り】
東洋美人(一番纏 純米大吟醸)【山口】
雄町(天吹・純米吟醸)+ 愛山(天吹・大吟醸)【佐賀】
夢+叶(東薫大吟醸)【千葉】
寿 満寿泉(大吟醸)【富山】
夢穂波(大吟醸)【岩手】
獺祭(純米大吟醸 磨き二割三分)【山口】
浜千鳥(純米大吟醸)【岩手】

【ガジェット】
Logicool G105(ゲーミングキーボード)
Logicool G300s(ゲーミングマウス)
刷り込み−会計ソフトの選び方
開放感−そして携帯端末の思ひ出
架空の思い出 −私とテレビゲームの。
ジオンはあと10年は戦える
モニ旅。 〜ぼくのPCモニター遍歴
Logicool G910R(ゲーミングキーボード)

【メンタル】
メンタル・ロック(mental lock)
『俺がガンダムだ!』
あなたの動機はどこから?
あなたは仕事に何を求めているのか。

【音楽と私】
チェリビダッケ&ミュンヘン・フィル/ブルックナー:交響曲第8番 ハ短調
シューリヒト&ウィーン・フィル/ブルックナー: 交響曲第9番
カイルベルト&ベルリン・フィル/ブルックナー:交響曲第9番
三上ちさこ「I AM Ready!」 〜付・音楽と私

【日記】
神宮詣
定規か電卓か、いや定規と電卓だ。
俺のいちごミルクフォルダが火を噴くぜ 2017
カテゴリラ 〜固めるテンプル
なぜ吸血鬼は自分の血を吸わないのか。 〜AI時代の吸血士のための生存戦略セミナー
ブログURL変更しましたのお知らせ
俺のいちごミルクフォルダが火を噴くぜ 2018
ネット古書店 購入お作法(含、小トラブルご報告)
俺のいちごミルクフォルダが火を噴くぜ 2019

【事務所案内】
はじめに
事務所名について
税理士事務所(個人)と株式会社の関係について
はじめます!!!
?会社名の由来
なんでブログを書いているの?
サービスと対価(税理士報酬の場合)
圧倒的インプット
押収品
私たちのファームに新しいクルーがジョインしてくれました!!!!!!
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2020年08月03日

アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民1)

 先日書いた記事。

「新 実務家のための税務相談(民法編) 」(有斐閣2017)

 予告通り、突っ込みながらのアクティブ・ラーニングを実践していきます。
 なお、格好つけてタイトルに【実践編】とか謳っていますけども、さしあたり【理論編】は構想にありません。ひたすら実践。

 また「実税民」は本書の略語。他著でもやるかもしれませんので、念のため。


1 人(胎児・外国人)

 胎児の記述が相続法のところの記述とダダカブり。
 そして、外国人の税務については一切触れられていないという。

 他所でもそうなんですが、項目を、機械的に民法の編別どおりに細分化したことの弊害のひとつ。
 構成に、特になんの工夫もなく。

 「人と税務」というくくりであれば、能力とか代理とか法人とかをまとめて扱ったほうがいいと思うんですけど、とにかくバラバラかつ中途半端な記述が散開されている。


2 権利能力・意思能力・行為能力

 「〜納税申告書も作成したという事件がありました。そしてその確定申告書にかかる〜」

 用語を統一せえ。


 「契約の成立について不完全であっても、その契約にもとづいた経済的効果について、有効な納税申告書の提出などにより、租税債務は有効に成立します。」

 成立要件と効力要件とは別物、というのが一般的な理解であって、ここでいう「契約の成立について不完全」というのが何を指しているのか不明。

 また「経済的効果について」というのも意味不明。
 「経済的効果が生じていれば」の意か。


3 住所・居所

Question「どのような点に注意すべきでしょうか」

と書いてあるのに、何が注意すべき点なのかが明示されていない。
 海外移住で注意すべき課税関係を聞かれて「住所」の意義だけ答えたら、「で?」と反応されるでしょうよ。
 広がりのある質問であるにもかかわらず、項目が極端に狭いせいでそうなる。

 法学部の1年生が、家族から法律の質問をされて「民法総則」のことしか答えられない、みたいな状況が想起される。
 
 この、問いに正面から答えない系のやつ、あまりにも多数にのぼるので以降はいちいち突っ込みません(が、あまりにヒドイのは触れざるをえないかも)。


4 不在者・失踪宣告

 なぜか「死亡退職金」の相続税ルールの記述がねじ込まれている。
 失踪宣告特有の問題でもなんでもないはずなのに。

 ていうか、失踪宣告されるような状態にある人が退職金もらえるって、どんな状況よ。
 こんな状況からでももらえる退職金があるんですか。


「失踪宣告を受けるとその時点から死亡したものとみなされるため」

「時点」というと、宣告時が死亡日とみなされるように読めてしまう。


6 権利能力なき社団

「(3)Questionに対する回答」

 珍しく、正面から問に答えている。
 このように、ちゃんとあてはめまでやっているの、本書では少数派。


8 通謀虚偽表示

「実際に、当事者によって作成された取引関係が真実のものか、虚偽表示かを判断することは困難ですので、形式どおりに扱っています(相基通9-9参照)。」

 無償取引の場合の相続税実務ルールが、あたかも所得課税にも適用されるかのような書き方。

 で、設問の「売買」を仮装した場合はどうなるのさ。
 無償で移転登記がされている、ということで贈与税が課税されるんですか。

 実質課税との相剋でみんな悩んでいるというのに、とある場面の相続税の通達ルールを出したところでなんの解決になるっていうんですか。


9 錯誤
10 無効・取消し

 財産分与の錯誤の裁判例、どっちかにしときなよ。

 また、錯誤、無効、取消、条件・期限、解除あたりは、当初の契約関係に変動があった場合としてまとめて税務上のルールを整理すべきところですが、例によって項目ごとにバラバラに取り扱われているだけ。


10 無効・取消し

 「租税訴訟は課税処分の取消しを求めるものが一般的ですが(取消訴訟中心主義)、」

 「取消訴訟中心主義」て、そういうことを意味するんですか。

 実体法レベルにおいて、私人と課税庁(国)との関係が「租税債務関係」にあって、処分されてはじめて紛争対象ができあがるから、ほとんどの争い方が取消訴訟になるってだけじゃないんですか。
 承認をもとめるといった「義務付け訴訟」とかも想定できますが、数としてはやはり課税処分の取消しが多数でしょう。

 別に、他の訴訟類型でやるべきものを、無理やり取消訴訟に翻訳させられているわけではない。

 この「取消訴訟中心主義」といわれるの、私人と行政の関係が多様化しているにもかかわらず、何でもかんでも取消訴訟に押し込めるのおかしいだろ、という文脈ででてくるものです。
 が、「租税関係」については、まだそんな議論煮詰まってないですよね。

 可能性があるとしたら、たとえば「源泉徴収」にまつわる三面関係(国×徴収者×被徴収者)とかですかね。
 現状のルールだと、「国×徴収者」(公法)と「徴収者×被徴収者」(私法)との関係が分断されているわけです。
 これを三面関係として捉えて一体として解決すべきだ、とか。

 にしても、これはあくまで実体法レベルの問題をまず解決すべきであって、その上で、じゃあどのような訴訟類型がとれるのか、という問題になるはずです。


11 代理

「一般に、申告書を代理人が提出することが認められています(税理士法2条1項1号)。」

 税務代理は税理士の独占業務なわけだが、これを「一般に」と表現するのか。
 そのことを条文で示そうと思いきや、そのものずばりの条文が参照されているのだが。

 どういうこと?

12 条件・期限

 Question「死亡したら土地をAに譲渡する」
 「被相続人が契約締結したときは相続開始前ですが、実際に土地を引き渡したのは、相続開始後になりますので、土地の譲渡所得は被相続人ではなく相続人の所得として申告することになります。」

 ここ、なんの悩みもなくサラッと結論書いてありますが、そういうことでいいんですか。

 ありうる考えとして、被相続人の準確定申告とも考えられるわけですが、そうではなく、土地を相続した上で相続人が自分の譲渡所得として申告するんですって。

 これは「相続財産」と絡む問題であって、「条件・期限」という括りで限定して扱うべきものではないです。


「所得税法では、〜となりました(所基通36-12)。」

 主語が法で、参照しているのが通達。
 筋が悪い。


「停止条件付契約の場合、課税権の除斥期間によって課税できない場合があるため、税法では遡及できません。」

 どういう場合を想定しているのかが謎。
 とりあえず贈与契約だけして寝かしとく、みたいなやつですか。でもあれは停止条件つけるわけじゃないし。

 「税法では」とか言ってますけど、民法上だって特約がないかぎり遡及はしませんよね。

 というか、「除斥期間で課税できないから遡及できない」というのは理由付けになるんですか。
 「遡及されると困る」のはわかりますが、それはそう解すべき必要性のはなし。


13 期日

 本書の中では珍しく、しっかり実務寄りな解説。


 以上、「T 総則」まで。
 まだまだ軽めですね。

(実税民2へ続く)
posted by ウロ at 12:22| Comment(0) | アクティブ・ラーニング

2020年07月27日

「新 実務家のための税務相談(民法編) 」(有斐閣2017)

 改訂版が正統進化とならない、とあるひとつの実例。



 「新 実務家のための税務相談(民法編) 」(有斐閣2017)

 前著(いわゆる無印)は、民法と税法が絡む問題につき深く論じられていて、示唆を得るところ大でした。



 「実務家のための税務相談 民法編」(有斐閣2006)

 「新」がでてしまったせいで同書の改訂はもはや望めないわけですが、同書で展開されている「考え方」は非常に参考になるので、今からでも購入していいと思います。
(リメイク版があまりにも不評だったため、あらためてオリジナルスタッフで製作しなおす、みたいなドラマ・アニメもあったりしますが)


 さて問題は、この「新」がついている本書。
 前著の後継かと思ってノールックで購入してしまったのですが、中身が全くの別物にすり替わっていました。

 ・むやみに多数の項目が取り上げられていて、
 ・やたらと多数の執筆者が参加していて、
 ・一項目がどれもこれも3,4頁程度と短く、
 ・当該項目にかかわる法規定と通達・裁決・判決をパラパラと並べた、

感じの記述が延々と続く。
 特に新しい何かを学べる、というものでもなく。

 執筆者多数なので、決してすべてがそうだということではないのですが、

 × 設例(Question)があるのに、その設例にまともに答えていない。
 × 設例がふんわりしすぎ。
 × ★で項目を重要度をランクづけしているのに、どれもこれも同じ分量。
 × 特に税法上の問題がない項目を無理やりねじ込んでいる。
 × 項目を細分化しすぎて記述がダブついている。
 × 当該項目に関する税法上の制度・論点をランダムに並べているだけ。
 × 事案もかかずに判例の規範部分だけ書かれても射程が不明。
 × 個人(所得税)と法人(法人税)がごちゃごちゃ。
 × (売買でいうと)売主側の問題なのか買主側の問題なのかがごちゃごちゃ。
 × 印紙税や消費税の問題を、論じたり論じなかったり。
 × 実務で使う、という視点が希薄。
 × 法律用語の使い方が不正確。

などといった問題が散見される。

 きつきつの分量で中途半端な解説をするくらいなら、当該項目に関連する制度を完全網羅した「インデックス」に徹しておけばいいのに。
 個々の内容は、信頼のおける他書の該当箇所だけ指示しておいてもらえればいいですよ、と。


 これはアレです、アクティブ・ラーニング系。

【アクティブ・ラーニング系】
後藤巻則「契約法講義 第4版」(弘文堂2017)
三木義一「よくわかる税法入門 第14版」(有斐閣2020)
(そろそろ独立のカテゴリをつくってもいいかもしれない。)

 信頼のおける書籍を座右に置きながら、本書の記述が正しいかどうかを点検しながら読む感じの。
 本書の記述を鵜呑みにできないおかげで、自分の知識があやふやな部分を再確認できるので、そういう意味ではいい素材ではある(皮肉)。

 金子宏先生の体系書なんて、ありがたく拝読するという感じになってしまって、批判的に読むのはなかなか難しいですからね。



 金子宏「租税法 第23版」(弘文堂2019)

 例によって、このことに途中から気づくという致命的なミス。
 や、どうも怪しいな、とは思っていたんですよ(言い訳)。

 ツッコミどころ、かなりの数になりそうなので、今回の記事は「これから検討していくよ。」という所信表明です。


 一応、軽く頭出しだけしておきます。

61 クレジットカード契約

「信販会社は立替払をしています。そうすると、この支払いをしたときに、経費の支出があるため、損金が計上されることになります。それにあわせて、利用者に対する貸付金債権が発生するため、それを益金計上することになると思います。」

 信販会社側の税務処理なんて、私にはおよそ縁のない話だと思います(私どころか大多数がそうだと思うので、それをわざわざ本書で記述する必要ある?というのはさておき)。

 が、これ、何言っているんでしょうか。

 ここでいう「経費」とはなんなのか。まさか立替払のことか。
 「それを益金計上」というのは、貸付金債権のことなのか、そうなのか。
 ていうか、立替払をすると売掛金が貸付金になるのか。

 仕訳にするとこうですね、マジかよ信販会社(見慣れぬ科目名はオリジナル)。

  立替金費(損金)/現金
  貸付金/貸付金収入(益金)

 てっきり手数料だけが売上になるのかと思っていましたよ。
 利用者の利用額が、加盟店の売上になるだけでなく、信販会社の売上にもなるってことですね。

 これ、会計素人の人が「銀行から借入すると収入、返済すると(元本返済も)費用になる」みたいなことを言っているのと似ているような気が。

 全力で善解して、「ファイナンスリース」のことを言っていると読めばどうにかなりますか。
 や、無理だわ。別途「ファイナンスリース契約」の項目もあるし。

 あるいは、これはあくまでも税務処理であって会計処理ではないのだ、と考えてみましょうか。
 そうすると、会計で計上されていない貸付金収入と立替金費を、申告書上で加減算すればいいんですかね。

 意味ねえな。
 そもそも会計とズラすには法的根拠が必要なはずですけど、そういう規定があるわけでもないですし。

 また、ここでは「立替払方式」のことしか書かれていません。
 「債権譲渡方式」についてや、あるいは「三当事者型」以外のタイプについては一切触れられていません。

小塚荘一郎,森田果『支払決済法 第3版』(商事法務2018)


 という具合で、不可解な記述がちらほら散見されるので、うまくまとめられたら記事にします。
 たぶん、一回ではとても終わらない。

 「会社法編」もあるけども、この調子で突っ込みながら読んでいって、そこまで到達できるだろうか。



「新 実務家のための税務相談(会社法編)」(有斐閣2017)
posted by ウロ at 08:27| Comment(0) | 租税法の教科書

2020年07月20日

下井隆史「労働基準法 第5版」(有斐閣2019)

 労働法の教科書・体系書、近年は特に肥大化が進んでいます。



下井隆史「労働基準法 第5版」(有斐閣2019)

 基準としての菅野和夫先生の体系書だと、1227頁。



菅野和夫「労働法 第12版」(弘文堂2019)

 それと比べれば本書は588頁と、一見薄い(?)ように思えます。
 が、いわゆる「雇用関係法」に記述を絞っているからそうなっているだけです。

 内容は非常に濃い目。
 重要論点はフォントを落としているので、かなりぎっしり。


 今どきの教科書のようにガチャつかず、極めてオーソドックスな構成。
 図表の類は一切ありません。

 もう少しわかり易さを求めるならば、水町勇一郎先生の教科書がいいと思います。
 事例に基づいた具体的な記述が多めですので。



水町勇一郎「労働法 第8版」(有斐閣2020)


 本書は労働法の知識が一通りある人が、最近の法改正・判例を体系的におさらいし直す、という使い方がいいと思います。

 中には就業規則の法的性質論とか、かなり突っ込んで記述されているものもあって、読み応えはしっかり。

 いわゆる「働き方改革」関連の法制にも触れられています。
 が、おそらく改訂作業終盤でねじ込んだと思われ、いまいち体系に溶け込んでいないような。

 次回の改訂に期待(さていつになるでしょう)。


 本書にかぎらず、労働法の教科書を読んでいて思うところ。

 たとえば、労働時間の法規制とか、言葉だけで理解しようと思っても無理がありますよね。
 図表や具体例をあれこれあげてもらわないと、初見で理解するのは大変。

 ので、図表が豊富な「わかりやすい」系の実務書を併用するのが望ましい。

 いっそのこと、誰が書いても同じになる制度の説明は、文字通りの「基本書」として出版しといてほしい。
 「日常系労務」ということで。

 これと同じようなことは、民事訴訟法の教科書についての記事でも書きました。

新堂幸司「新民事訴訟法 第6版」(弘文堂2019) 〜付・民事訴訟法と税理士

 もちろん、図表だけでの理解にとどめず、きちんと条文でどのように表現されているかを確認することは必要です。

 大垣尚司先生の会社法の教科書では、制度の解説を大胆に削って図表で代替されています。
 が、これもちゃんと条文と照らし合わせてね、という前提があってのことでしょう。

大垣尚司「金融から学ぶ会社法入門」(勁草書房2017)


 しかし、この「有斐閣法学叢書」とかいうシリーズ、現役で出版されているのはもはや本書しかないんじゃないですか。

 私が知っているかぎりでいうと、下記の「名著」はしれっとシリーズから外れていますし。



龍田節・前田雅弘「会社法大要 第2版」 (有斐閣2017)
中森喜彦「刑法各論 第4版」(有斐閣2015)

 名前の紛らわしい「有斐閣法律学叢書」というシリーズなんて、2冊出たっきり。



大村敦志「家族法 第3版」(有斐閣2010)
近藤光男「商法総則・商行為法 第8版」(有斐閣2019)

 邪推するに、デビュー前のサイレント脱退があったんじゃないかと。
 グループでデビューするはずだったのにいきなりソロデビューしている、みたいな。

 この、過去のシリーズを有耶無耶で終わらせる所業、どうにか悔い改めてほしい。

「法律学大系」(有斐閣) 〜或るstalk。
posted by ウロ at 11:57| Comment(0) | 労働法

2020年07月13日

井上康一・仲谷栄一郎「租税条約と国内税法の交錯 第2版」(商事法務2011)

 商事法務の税務ものって、意外と少ない気がします。
 まあ社名に法務ってあるんだから、税務がそれほどでも、意外でも何でもないのかもしれませんが。



 井上康一・仲谷栄一郎「租税条約と国内税法の交錯 第2版」(商事法務2011)

 本書は「国際租税法」の中でも、国内税法と租税条約の絡み具合に絞って徹底的な分析をしたもの。


 ちなみに、私の中では書籍のジャンルとしての「国際課税、国際税務」と「国際租税法」とは便宜的に使い分けています。
 一般的な使い分けではありませんが、次のとおり大きく二方向に分かれること自体はイメージいただけるかと。

 ・国際課税、国際税務(実務書)
  とにかくそういう制度になっている、ということばかりが書いてあるもの。
  法令・通達・国税庁のサイトに書かれていること以外には踏み出さない。
  書かれていること以外にはさっぱり応用が効かない。

 ・国際租税法(理論書)
  法解釈論が展開されているもの。
  なぜなに、といった理由づけがしっかり書かれている。
  なので書かれていない論点にも応用が効く。

 あくまでも、書籍のタイトルではなく中身を読んでの判断です。

 後者(理論書)の代表が本書であり、あるいは増井先生・宮崎先生の下記教科書。
 制度の説明に終止しがちなところ、きっちり理論を展開しています。



 増井良啓・宮崎裕子「国際租税法 第4版」(東京大学出版会2019)

 両書とも、実務でも応用可能な理論書、という評価ができるかと思います。

 前者(実務書)については名指しはしませんが、読んでいて「無味乾燥でつまんねー」と感じたら前者だと思っていいのではないでしょうか。


 本書は残念ながら、改訂が2011年の第2版で止まってしまっています。
 総合主義⇒帰属主義への改正が反映されていないなど、ちょっとつらい。

 が、上記の通り応用が効く理論書なので、「国際課税」な実務書とは違っておよそ使い物にならねえ、ということにはなりません。

 そもそもこの領域、あれやこれやの租税条約に応用して当てはめていく必要があります。
 書籍で全ての租税条約を網羅しているはずもなく。だいたいネタになる租税条約の規定は、お馴染みのメンツばかりです。
 
   国内税法 ←租税条約(いろいろ)

 それが今度は国内税法のほうがかわりました、ということなので、応用の延長線上の話です(共時的な応用が通時的な応用へ)。

   国内税法(旧法⇒新法) ←租税条約(いろいろ)

 しかも、本書の場合、国内税法⇔租税条約の関係をメインに論じたものなので、個別の規定に改正が入ったとしても、そこまで露骨に影響を受けたりしない。
 これが「実務書」だと、制度が変わった時点でその記述はまるごと参考にならなくなる、という事態に陥ります。

 まあ、さすがにちょっと古いかなあ、とは思いますが。
 そうはいっても、このレベルの類書がないので代替がきかない。


 以前の記事における私の問題関心の中心は、税法における著作権の「準拠法」はどのように決まるかという点にありました。

 非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(まとめ)

 本書には、「準拠法選択」という観点が意識された分析はありませんでしたが、その手前までは書かれていたので敷衍してみます。
 なお、本書では「日本法人が韓国法人に韓国での特許権の譲渡対価を支払った」という事例で検討されていますが、下記事例に引きつけて論じます(という応用ができるのが、本書の優れたる所以)。

《事例》
 日本法人A社が甲国法人B社(日本にPEなし)に対し、B社の著作権を甲国内で利用するための利用料を支払った(日本・甲国租税条約の使用料条項は債務者主義)。

所得税法 第百六十一条(国内源泉所得)
 この編において「国内源泉所得」とは、次に掲げるものをいう。
十一 国内において業務を行う者から受ける次に掲げる使用料又は対価で当該業務に係るもの
 ロ 著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含む。)の使用料又はその譲渡による対価

161−35(使用料の意義)
 法第161条第1項第11号ロの著作権の使用料とは、著作物(著作権法第2条第1項第1号((定義))に規定する著作物をいう。以下この項において同じ。)の複製、上演、演奏、放送、展示、上映、翻訳、編曲、脚色、映画化その他著作物の利用又は出版権の設定につき支払を受ける対価の一切をいうのであるから、これらの使用料には、契約を締結するに当たって支払を受けるいわゆる頭金、権利金等のほか、これらのものを提供し、又は伝授するために要する費用に充てるものとして支払を受けるものも含まれることに留意する。


 まずは一般的な実務書の記述。

【普通の実務書】
・国内税法 税率20.42%
      しかし使用地主義なので課税なし
・租税条約 税率10%
      債務者主義なので課税あり
・国内税法 租税条約で源泉地が置き換わるので課税あり

 とにかくこうなる、という結論だけが書かれていると。

 対して本書では、この結論に至る根拠が詳細に分析されています。

【本書による目地埋め】
 ・国内税法における所得の定義自体は、租税条約による変更は受けない。
 ・源泉地の置き換えは租税条約の「使用料条項」の働きによる。
  このことは下記の第一文で確認されている(確認的規定)。
 ・租税条約上の使用料が国内源泉所得となっても、自動的に11号所得になるわけではない。
  下記第二文により、使用料条項に対応する11号所得に決定される(創設的規定)。

所得税法 第百六十二条
(第一文)
 租税条約(第二条第一項第八号の四ただし書(定義)に規定する条約をいう。以下この条において同じ。)において国内源泉所得につき前条の規定と異なる定めがある場合には、その租税条約の適用を受ける者については、同条の規定にかかわらず、国内源泉所得は、その異なる定めがある限りにおいて、その租税条約に定めるところによる。
(第二文)
 この場合において、その租税条約が同条第一項第六号から第十六号までの規定に代わつて国内源泉所得を定めているときは、この法律中これらの号に規定する事項に関する部分の適用については、その租税条約により国内源泉所得とされたものをもつてこれに対応するこれらの号に掲げる国内源泉所得とみなす。


(以下、それぞれ「第一文」「第二文」といいます。)

 所得税法162条の、特に第二文に重要な役割をもたせる、というのが特徴的ですね。

 なお、第一文について、本書では租税条約の置き換えを確認しただけ(確認的規定)という理解を示されています。
 が、租税条約段階では「課税できる」とされるだけで「課税すべき」とはなっていません。
 私としては、この第一文が「租税条約にしたがって課税しますね」と宣言しているように読めるのですが(創設的規定)、まあ大した話ではないですかね。

 租税条約: 債務者所在地で課税してもいいよ。
 第一文:  債務者所在地で課税するよ。

 ここまではなるほどそうなんですね、というところですが、私の最大の関心事である著作権の準拠法がどう決まるかがはっきりしません。

 本書の記述によると、国内税法上は日本の著作権法を前提としている、租税条約で源泉地が置き換えられることで甲国の著作権法が取り込まれる、と考えているように読めます。
 が、租税条約には源泉地の置き換えのことしか書かれていないのであって、著作権の準拠法については特に何も書かれていません(もちろん全租税条約をチェックしたわけではないですが)。
 使用地が日本か甲国のいずれかならまだしも、第三国の場合にはどうなるのか。

 この点、私見では、国内税法上の著作権も租税条約上の著作権も、日本の通則法上の「条理」にしたがって使用地の著作権法が準拠法となる、と考えることは以前の記事通り(法適用通則法説。以下、条理なので明文はないものの、便宜的に「通則法によれば」などと表現します)。

 同説によれば、11号ロにいう著作権には、通則法により外国の著作権が含まれることになります。
 日本の著作権が外国の著作権に「置き換わる」わけではありません。

・外国法置換説
 11号ロの著作権 ⇒ 日本の著作権 ⇒(置換)外国の著作権

・法適用通則法説
 11号ロの著作権 ⇒ 使用地国の著作権

 結局取り込まれるんだから同じじゃねえか、と思うかもしれませんが、この後に述べる「取込み方」に違いがでてくる可能性があります。

 なお、租税条約に関しては、次のような条項があるのが通常です。

 「一方の国においてこの条約を適用する場合には、この条約において特に定義されていない用語は、文脈により別に解釈すべき場合を除くほか、この条約が適用される租税に関するその国の法令上有する意義を有するものとする。」

 準拠法選択について租税条約が何も述べていない以上、租税条約上の著作権は国内税法の著作権と同義に解することになると。

 本書の分析に、「準拠法選択」という視点を加えた場合の《事例》のあてはめは次のとおり(制限税率は考慮外)。

・国内税法
 「著作権」は使用地である甲国の著作権(条理)。
 「国内において」とあるので国外源泉所得となる。
・租税条約
 「著作権」は使用地である甲国の著作権(条理)。
 A社の所在地でも課税できるとあるので国内源泉所得となる。
・国内税法 第一文(確認的規定?)
 租税条約による源泉地の置き換えを容認。
・国内税法 第二文(創設的規定)
 租税条約の「著作権」は11号の「著作権」に対応するので11号所得となる。


 さて、使用地国の著作権法により判断するとして、具体的に外国著作権法の何がどのように国内税法に取り込まれるのでしょうか。
 第二文でいうところの「対応」というのをどう考えるかです。

 たとえば、日本の著作権が支分権aとbからなるとして、使用地国の著作権法が次のような場合はどう判断されるか。

A 支分権がa、cの場合
B 支分権がc、dの場合
C 著作権があらゆる使用行為に及ぶとされている場合
D 著作権が「著作者が利用できる権利」として構成されている場合
E 出版権にも著作隣接権にも該当しない権利が規定されている場合
F 著作者人格権が著作権に含まれて規定されている場合
G 独自の権利制限規定が設けられている場合

 外国著作権法を11号ロにどのように代入するか、ということです。

 11号ロ 「著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含む。)」


 「法適用通則法説」によれば、それぞれの権利を使用地国の著作権法で判断することになります。

  ・著作権 ⇒使用地国の著作権
  ・出版権 ⇒使用地国の出版権
  ・著作隣接権 ⇒使用地国の著作隣接権
  ・その他これに準ずるもの ⇒使用地国のその他これに準ずるもの

 A〜Dは、外国著作権法上「著作権」として扱われているのであれば、すべて著作権に含まれることになるのでしょう。

 Eも外国著作権法上「出版権」「著作隣接権」として扱われているのであれば、やはり該当するとの判断になるのでしょう。
 ただし、厄介なのが「その他これに準ずるもの」です。
 日本の著作権法上もこれが何なのかよく分からないのに、外国の著作権法でこれが何にあたるのかを特定するの難しそう。が、これは国内税法の定め方の問題。

 Fも、外国著作権法で著作権として扱われている以上、該当することになるのでしょう。

 Gは、準拠法が日本の著作権法でも問題となることであって、外国著作権法特有の問題ではありません。
 権利制限規定が適用されるにもかかわらず使用料を支払った場合に、「著作権の使用料」となるか。
 私は該当しないと思うのですが、どうでしょうか。

 このように、それぞれの権利の内容はあくまでも外国の著作権法によって判断すべきことであって、日本の著作権法にあわせて改変すべきでないと。
 で、もしもこれら結論がおかしい場合は通則法上の「公序」で排除することになるのでしょう。そして、排除後にどうするかは国際私法学で論じられているところに倣うと。

法適用通則法 第四十二条(公序)
 外国法によるべき場合において、その規定の適用が公の秩序又は善良の風俗に反するときは、これを適用しない。



 これに対して「外国法置換説」によれば、何らかの形で日本の著作権法も考慮に入れることが考えられます。

 外国の著作権を日本の著作権で絞りをかける場合のあてはめは、次のようになると思われます。

A すべて一致を要する or 当該事案で一致(a)していればよい?
B 完全不一致なので非該当?
C 日本の著作権法に対応する利用があれば該当?
D 日本の著作権法に対応する利用があれば該当?
E 国内法に列挙されていないので非該当?
F 国内法に列挙されていないので非該当?
G 日本の著作権法に規定されていないので考慮外?

 このように判断がややこしくなるのはさておき、日本の著作権法によって外国法の取込みを制限するの、租税条約どおりに課税すると定めた第一文に反していると思います。
 第二文にしても、課税される前提で何号所得に該当するかの帰属を決定しているだけで、課税されないという結論は導けないはずです。

 そうすると、外国法置換説によったとしても、日本の著作権法による絞りはかけずに、外国の著作権法がそのまま適用されると解すべきなんでしょう。

 そうだとして、11号ロの「著作権+出版権+著作隣接権+その他これに準ずるもの」という枠組みを維持した上でそれぞれの権利に上書きをするのか、それとも、完全に外国の著作権法に取って代わるのか、そのあたりはどう判断することになるのか。

 また、法適用通則法説における「公序則」のようなセーフガード条項無しに無条件で取り込むの、大丈夫なんだろうかとやや心配になる。
 排除するにしても、何らの道具立てもないわけで。

 ということで、外国法の取込みに関しては信頼と実績のある「法適用通則法」さんを頼りにする、というのが当ブログの推し取込み。
posted by ウロ at 10:56| Comment(0) | 国際租税法