2022年01月01日

記事一覧

219記事

【日常系税務リーガルマインド】
税理士だって日常系税務でリーガルマインドを実践したい!
親族概念の、いてもいなくてもどっちでもいい奴感
森田宏樹「契約責任の帰責構造」(有斐閣2002) 〜印紙税法における「結果債務・手段債務論」の活用 
内面重視 〜ブログタイトル変更しましたのお知らせ
「リーガルマインドとは何か?」
税法・民法における行為規範と裁判規範(その1)
税法・民法における行為規範と裁判規範(その2)
税法・民法における行為規範と裁判規範(その3)
税法・民法における行為規範と裁判規範(その4)
税法・民法における行為規範と裁判規範(その5)
税法・民法における行為規範と裁判規範(その6)
税法・民法における行為規範と裁判規範(その7)
からくりサーカス租税法 〜文言解釈VS趣旨解釈、そして借用概念論へ
アレオレ租税法 〜立案者意思は立法者意思か?

【判例イジり】
解釈の解釈を解釈する(free rider) 〜東京高裁平成30年7月19日判決
加算税をめぐる国送法と国税通則法の交錯(平成29年9月1日裁決)
解釈の解釈の終わり? 〜さらば東京高裁平成30年7月19日判決
横流しする趣旨解釈(TPR事件・東京高裁令和元年12月11日判決)
解釈の解釈は終わりました。〜最高裁令和2年3月24日判決【判例速報】
解釈の解釈の介錯 〜最高裁令和2年3月24日判決
税務訴訟におけるゴリ押しVS誉めごろし 〜税務トロイの木馬(Tax Trojan Horse)

【法律書マニアクス】
供え本(法学体系書編)
石田穣「民法総則」(悠々社1992・信山社2014)
人類は、差異を産み育むことでマニアとなる。 〜法律書マニアクス全開
潮見佳男「民法(全) 第2版」(有斐閣 2019)
法学研究書考 〜部門別損益分析論
積読ループ
「法律学大系」(有斐閣) 〜或るstalk。
白石忠志「技術と競争の法的構造」(有斐閣1994)
最近の気になる本

【法学入門書探訪】
横田明美「カフェパウゼで法学を―対話で見つける〈学び方〉」(弘文堂2018)
大屋雄裕「裁判の原点:社会を動かす法学入門」(河出書房新社2018)
道垣内正人「自分で考えるちょっと違った法学入門 第4版」(有斐閣2019)
団藤重光「法学の基礎」(有斐閣2007)
伊藤正己「近代法の常識」(有信堂1992)
南野森「ブリッジブック法学入門(第2版)」(信山社2013)
太田勝造「AI時代の法学入門 学際的アプローチ」(弘文堂2020)
南野森「法学の世界」(日本評論社2019)
森田果「法学を学ぶのはなぜ?」(有斐閣2020)

【租税法の教科書】
税法思考が身につく、理想の教科書を求めて 〜終わりなき旅
金子宏・中里実「租税法と民法」(有斐閣2018)
中里実ほか「租税法概説 第3版」(有斐閣2018)
金子宏「租税法 第23版」(弘文堂2019)
岡村忠生ほか「租税法 (有斐閣アルマ) 」(有斐閣2017)
三木義一「よくわかる税法入門 第15版」(有斐閣2021)
渡辺徹也「スタンダード法人税法 第2版」(弘文堂2019)
田中二郎「租税法(第3版)」(有斐閣1990)
浅妻章如「ホームラン・ボールを拾って売ったら二回課税されるのか」(中央経済社2020)
酒井克彦「プログレッシブ税務会計論」(中央経済社2018)
「新 実務家のための税務相談(民法編) 第2版」(有斐閣2020)
伊藤滋夫編「租税訴訟における要件事実論の展開」(青林書院2016)
佐藤英明「スタンダード所得税法 第2版補正2版」(弘文堂2020)

【アクティブ・ラーニング】
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民1)
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民2)
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民3)
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民4)
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民5)
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民6)
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民まとめ)

【税務】
あるべき税理士
肩たたき券取引と税務
税金(国税)の納付の仕方(いろいろ)
税金(地方税)の納付の仕方(いまいち)
あえて言おう!カスであると!(被用者・応募者側からみたみなし残業代)
税金(地方税)の納付の仕方(前進)

【法人税法】
税務における事前判断と事後判断 〜所得拡大促進税制の適否判定(また改正するので)
ふたりはプリキュア(後日テコ入れで増員) 〜グループ法人税制のおさらい〜
武器としての所得拡大促進税制 〜労働者にとっての。
ここがヘンだよ所得拡大促進税制 〜委任命令におけるゆらぎとひずみ
さらば所得拡大促進税制(Arrivederci) 〜評判良ければ続くやつ
みんな大好き!倒産防。 〜措置法解釈手習い
「定期同額給与」のパンドラ(やめときゃよかった)
西村美智子 中島礼子「組織再編税制で誤りやすいケース35」(中央経済社2020)

【所得税法】
色々な壁の話し(配偶者控除・配偶者特別控除)2018ver.
年末調整H29
社員割引
出張手当は節税になるのか?
支払調書における「支払金額」(支払の確定した金額)について
利子・配当・譲渡所得の課税方式の選択について(2020.2.24現在)
支払調書における「支払金額」(支払の確定した金額)について【追補】
さよなら「権利確定主義」(その1) 〜事業所得と給与所得

【消費税法】
消費税、免税とるって大変よ、という話(2018.1.11現在のルール)。
特定新規設立法人のインフィニティ感

【相続税法】
パラドキシカル同居 〜或いは税務シュレディンガーの○○
イタチ、巻き込み。 〜家なき子特例の平成30年改正
ヤバイ同居 〜続・家なき子特例の平成30年改正
関場修 山口暁弘「小規模宅地等の評価減の実務 第4版」(中央経済社2018)
タックスアンサーの中の譲歩と抵抗 〜小規模宅地等の特例を素材に
「要件書き込み」は趣旨解釈を駆逐する。〜小規模宅地等の特例を素材に
オーバーホール租税法・序論 〜小規模宅地等の特例を素材に
白井一馬「小規模宅地等の特例」(中央経済社2020)
僕たちは!出戻り保護要件です!! 〜家なき子特例の趣旨探訪1
ぼくたちは出戻り保護ができない。 〜家なき子特例の趣旨探訪2
あの日見た特例の趣旨を僕達はまだ知らない。 〜家なき子特例の趣旨探訪3(完)
タックスアンサー学習帳 〜やっててよかったTA式

【印紙税法】
私法の一般法とかいってふんぞり返っているわりに、隙だらけ。〜契約の成立と印紙税法
Janusの委任 〜成果報酬型委任と印紙税法
続・契約の成立と印紙税法(法適用通則法がこちらをみている)
続々・契約の成立と印紙税法(代理法がこちらをみている)
さよなら契約の成立と印紙税法 (結局いつもひとり)
魔界の王子と契約の成立と印紙税法
二段の推定と契約の成立と印紙税法 〜印紙税法における実体法と手続法の交錯
おかわり契約の成立と印紙税法(法人法がこちらをみている)

【地方税法】
無償減資で均等割下げ(節税系の記事ではなく)

【国際租税法】
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その1)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その2)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その3)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その4)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その5)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その6)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その7)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その8)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その9)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その10)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その11)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その12)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(まとめ)
井上康一・仲谷栄一郎「租税条約と国内税法の交錯 第2版」(商事法務2011)

【会計】
財務分析総論 〜稼ぐ、彼女の如く。
金子智朗「経営分析の超入門講座」(秀和システム2012)

【基礎法学】
「ポケット六法」は総合事項索引を倒さないと本体に攻撃が通らない 〜事項索引 de 勉強法
「法律学小辞典」の「小」は「小スキピオ」の「小」
ホッブズ「リヴァイアサン」 〜彼の設定厨。
田中成明ほか「法思想史」(有斐閣1997)
判例の機能的考察(タイトル倒れ)

【民法】
潮見佳男「新債権総論1・2(法律学の森)」(信山社 2017)
潮見佳男「基本講義 債権各論1 契約法・事務管理・不当利得」(新世社2017)
ユーのネームは。 〜「新注釈民法」と私
前田達明「続・民法学の展開 (民法研究 第三巻)」(成文堂2017)
潮見佳男「詳解 相続法」(弘文堂2018)
平井宜雄「債権各論I上 契約総論」(弘文堂2008)
内田勝一「借地借家法案内」(勁草書房2017)
米倉明「プレップ民法(第5版)」(弘文堂2018)
池田真朗「スタートライン債権法(第7版)」(日本評論社2020)
窪田充見「家族法 第4版」(有斐閣2019)
時効の中断・停止から時効の完成猶予・更新へ
ドキッ!?ドグマだらけの民法改正
どんな子にも親に内緒のコトがある。 〜民法98条の2の謎に迫る(迫れていない)
後藤巻則「契約法講義」(弘文堂2017)
加賀山茂「求められる改正民法の教え方」(信山社2019)
内田貴「民法3(第4版)債権総論・担保物権」(東京大学出版会2020)

【会社法・商法】
前田庸「手形法・小切手法入門」(有斐閣 1983)
川口恭弘「金融商品取引法への誘い」(有斐閣2018)
近藤光男「商法総則・商行為法 第8版」(有斐閣2019)
関俊彦「商法総論総則」(有斐閣2006)
小塚荘一郎,森田果「支払決済法 第3版」(商事法務2018)
高橋美加ほか「会社法(第2版)」 (弘文堂2018) 〜付・税理士と会社法の教科書
大垣尚司「金融から学ぶ会社法入門」(勁草書房2017)
大塚英明ほか「商法総則・商行為法 第3版」(有斐閣2019)

【労働法】
下井隆史「労働基準法 第5版」(有斐閣2019)

【民事訴訟法】
新堂幸司「民事訴訟制度の役割」(有斐閣1993)
新堂幸司「新民事訴訟法 第6版」(弘文堂2019) 〜付・民事訴訟法と税理士

【知的財産法】
システム開発における先行者利益について
田村善之「知財の理論」(有斐閣2019)

【破産法】
小林秀之「破産から新民法がみえる」(日本評論社 2018)
美人若女将連続バラバラ租税債権 〜犯人は破産法

【憲法】
大島 義則「憲法ガール Remake Edition」(法律文化社 2018) 〜あわよくばSuccubus。
戸松秀典「憲法」(弘文堂 2015)
ミシェル・トロペール(南野森訳)「リアリズムの法解釈理論」(勁草書房2013)

【行政法】
大橋 洋一「社会とつながる行政法入門」(有斐閣2017)
高木光「行政法」(有斐閣2015)
原田尚彦「行政法要論(全訂第七版補訂二版)」(学陽書房2012)

【刑法】
井田良「入門刑法学・総論」(有斐閣2018)ほか
井田良「講義刑法学・総論 第2版」(有斐閣2018)
井田良「講義刑法学・各論 第2版」(有斐閣2020)
辰井聡子「因果関係論」(有斐閣2006)
裁判所職員総合研修所「刑法総論講義案 (四訂版)」(司法協会2016)
松澤伸「機能主義刑法学の理論―デンマーク刑法学の思想」(信山社2001)
安田拓人ほか「ひとりで学ぶ刑法」(有斐閣2015)
小林憲太郎「ライブ講義 刑法入門」(新世社2016)
藤木英雄「公害犯罪」(東京大学出版会1975)
井田良「犯罪論の現在と目的的行為論」(成文堂1996)
橋爪隆「刑法総論の悩みどころ」(有斐閣2020)

【国際私法】
視野を広げるための、国際私法
多層的請求権競合論と、メロンの美味しいところだけいただく感じの。
野村美明「新・ケースで学ぶ国際私法」(法律文化社2020)

【弁護士と税理士】
弁護士事務所と税理士事務所(似ていない)

【酒撮り】
東洋美人(一番纏 純米大吟醸)【山口】
雄町(天吹・純米吟醸)+ 愛山(天吹・大吟醸)【佐賀】
夢+叶(東薫大吟醸)【千葉】
寿 満寿泉(大吟醸)【富山】
夢穂波(大吟醸)【岩手】
獺祭(純米大吟醸 磨き二割三分)【山口】
浜千鳥(純米大吟醸)【岩手】

【ガジェット】
Logicool G105(ゲーミングキーボード)
Logicool G300s(ゲーミングマウス)
刷り込み−会計ソフトの選び方
開放感−そして携帯端末の思ひ出
架空の思い出 −私とテレビゲームの。
ジオンはあと10年は戦える
モニ旅。 〜ぼくのPCモニター遍歴
Logicool G910R(ゲーミングキーボード)

【メンタル】
メンタル・ロック(mental lock)
「俺がガンダムだ!」
あなたの動機はどこから?
あなたは仕事に何を求めているのか。

【音楽と私】
チェリビダッケ&ミュンヘン・フィル/ブルックナー:交響曲第8番 ハ短調
シューリヒト&ウィーン・フィル/ブルックナー: 交響曲第9番
カイルベルト&ベルリン・フィル/ブルックナー:交響曲第9番
三上ちさこ「I AM Ready!」 〜付・音楽と私

【日記】
神宮詣
定規か電卓か、いや定規と電卓だ。
俺のいちごミルクフォルダが火を噴くぜ 2017
カテゴリラ 〜固めるテンプル
なぜ吸血鬼は自分の血を吸わないのか。 〜AI時代の吸血士のための生存戦略セミナー
ブログURL変更しましたのお知らせ
俺のいちごミルクフォルダが火を噴くぜ 2018
ネット古書店 購入お作法(含、小トラブルご報告)
俺のいちごミルクフォルダが火を噴くぜ 2019

【事務所案内】
はじめに
事務所名について
税理士事務所(個人)と株式会社の関係について
はじめます!!!
会社名の由来
なんでブログを書いているの?
サービスと対価(税理士報酬の場合)
圧倒的インプット
押収品
私たちのファームに新しいクルーがジョインしてくれました!!!!!!
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2021年12月31日

供え本(法学体系書編)

 「供え本」(そなえぼん)とは、読まなくてもよいからさしあたり書棚にお供え(備え)しておきなさい、という本です。

 一度も開かないまま、改訂版が出ても逐一悲しまない(繰り返し経験済み)。
 むしろ改訂版を出してくれたことを喜びましょう。
 持っててよかった、と思うときがくるかもしれないし。 

 ラインナップ、万人向けと個人的嗜好との葛藤が垣間見えるかもしれません。

【憲法】
戸松秀典「憲法 」(弘文堂2015)

【行政法】
宇賀克也「行政法概説1 第7版」(有斐閣2020)
宇賀克也「行政法概説2 第7版」(有斐閣2021)
宇賀克也「行政法概説3 第5版」(有斐閣2019)
宇賀克也「地方自治法概説 第9版」(有斐閣2021)
藤田宙靖「新版 行政法総論 上巻 」(青林書院2020)
藤田宙靖「新版 行政法総論 下巻 」(青林書院2020)

【民法】
中田裕康「債権総論 第4版」(岩波書店2020)
中田裕康「契約法 」(有斐閣2017)
奥田昌道,佐々木茂美「新版 債権総論 上巻 」(判例タイムズ社2020)
奥田昌道,佐々木茂美「新版 債権総論 中巻 」(判例タイムズ社2021)

【会社法・商法】
江頭憲治郎「商取引法 第8版」(弘文堂2018)
黒沼悦郎「金融商品取引法 第2版」(有斐閣2020)

【民事手続法】
伊藤眞「民事訴訟法 第7版」(有斐閣2020)
新堂幸司「新民事訴訟法 第6版」(弘文堂2019)
中野 貞一郎,下村 正明 「民事執行法 」(青林書院2016)

【倒産法】
伊藤眞「破産法・民事再生法 第4版」(有斐閣2018)
伊藤眞「会社更生法・特別清算法 」(有斐閣2020)

【刑法】
裁判所職員総合研修所「刑法総論講義案 四訂版」(司法協会2018)
西田典之,橋爪隆「刑法各論 第7版」(弘文堂2018)

【刑事手続法】
酒巻匡「刑事訴訟法 第2版」(有斐閣2020)
三井誠,酒巻匡「入門刑事手続法 第8版」(有斐閣2020)

【租税法】
金子宏「租税法 第23版」(弘文堂2019)

【労働法】
菅野和夫「労働法 第12版」(弘文堂2019)

【知的財産法】
中山信弘「著作権法 第3版」(有斐閣2020)
中山信弘「特許法 第4版」(弘文堂2019)

【独占禁止法】
白石忠志「独占禁止法 第3版」(有斐閣2016)

【信託法】
新井誠「信託法 第4版」(有斐閣2014)
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2021年03月01日

さよなら「権利確定主義」(その1) 〜事業所得と給与所得

 当ブログでは、税法学上の通念に対して、眉唾概念呼ばわりすることがあります。

・借用概念
・納税者の予測可能性
・包括的所得概念


などが、これまでイジりの対象とされてきました。


 下記記事を書く中で、支払調書における「支払の確定した」が、収入側の「その年において収入すべき」と同義なのかどうか、という疑問に突き当たりました。

支払調書における「支払金額」(支払の確定した金額)について
支払調書における「支払金額」(支払の確定した金額)について【追補】


 が、そもそもの話として、後者の解釈として通用している権利確定主義という「お主義」にも、どうも眉唾の気がありそげな気がしてきました。

 ということで、以下検証してみます。


 所得税法36条の「その年において収入すべき」時期について、税法本では通例次のような構成で記述がなされます。

《収入の年度帰属》
・ 総論
  原則は「権利確定主義」だが例外として「支配管理基準」により判断される。
  そして、いくつかの判決・裁決のご紹介。
・ 各論
  所得税基本通達36-2以下の羅列。

 学術書だと総論が厚めで各論は場合によっては記載されない、他方、実務書だと各論の通達のご紹介が多め、という傾向があります。

 なんで一方を「主義」と呼び、他方を「基準」と呼ぶのか、言葉遣いの不統一感も気になります。
 が、それはさておき、総論で論じられていることは、本当に法36条の解釈として妥当なのかどうか。

所得税法第三十六条(収入金額)
 その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。


所得税基本通達
第2款 所得金額の計算の通則 法第36条《収入金額》関係〔収入金額の収入すべき時期〕


 「権利が確定した」という言い方ができるタイミングとして、理論上は次の4つのものがありえます。

例:請負契約(月末締・翌月10日払)
 1 契約締結
 2 引渡完了
 3 支払期日到来
 4 支払

 事業所得の場合、権利確定というのは134のどれでもなく2だとされています。

 この「権利確定」という言い回し、あたかも「私法準拠」しているつもりっぽいので、民法の規定がどうなっているか見てみましょう。

民法第六百三十三条(報酬の支払時期) 請負
 報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。ただし、物の引渡しを要しないときは、第六百二十四条第一項の規定を準用する。

民法第六百二十四条(報酬の支払時期) 雇用
1 労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。
2 期間によって定めた報酬は、その期間を経過した後に、請求することができる。


 民法633条をみると、(規定上は同時履行とされていますが)引渡をすれば報酬請求できることになります。

 お、ちゃんと私法準拠しているじゃん、と思うかもしれません。
 が、但書の準用条文として引用した624条第1項をみてご覧なさい。

 雇用のほうも、労務が完了すれば報酬請求できるとあります(こちらは先履行)。
 ところが税の側では、「支給日」または「支給を受けた日」が給与の収入すべき時期だとされています。

所基通36−9(給与所得の収入金額の収入すべき時期)
 給与所得の収入金額の収入すべき時期は、それぞれ次に掲げる日によるものとする。
(1) 契約又は慣習その他株主総会の決議等により支給日が定められている給与等(次の(2)に掲げるものを除く。)についてはその支給日、その日が定められていないものについてはその支給を受けた日
(以下略)


※「支給日」というと、実際に支給された日と区別しにくいので、以下では「支給期日」といいかえます。また、実際に支給された日のことは「支給受領日」といいます。
 また、あくまで通達ルールではありますが、特に異論も見られないので、税法解釈として妥当なものだという前提で記述します。

 なお、下記通達からすると、通達の立場はもはや権利確定主義を放棄している、とみることができるかもしれません。私法上の適法・違法にかかわらず収入になるとされているので。

所基通36−1(収入金額)
 法第36条第1項に規定する「収入金額とすべき金額」又は「総収入金額に算入すべき金額」は、その収入の基因となった行為が適法であるかどうかを問わない。


 が、違法所得の場合は実際の「受領」を要求する判決・裁決もあるとおり、無条件に収入実現が肯定されているわけではありません。
 ので、ここでは「違法であっても当然には排除されない」という狭い意味で理解しておきます。


 この、民法と税法の対応関係の整理すると次のようになります(雇用に言葉を合わせるため、引渡ではなく役務提供と書きます)。

《支払期限の定めなし》
    支払請求  収入計上
    (民法)  (税法)
 請負 役務提供日 役務提供日 ←私法準拠
 雇用 労務提供後 支給受領日 ←税法独自

 雇用のほうは、民法では労務提供後には報酬請求できるとあるのに、税法では受領するまで収入計上しなくてよいことになります。

 民法のデフォルトは支払期限の定めがない場合で書いてありますが、今どきは支払期限を定めるのが普通でしょう(○日締翌月△日払など)。
 この場合は次のようになります。

《支払期限の定めあり》
    支払請求  収入計上
    (民法)  (税法)
 請負 支払期日  役務提供日 ←税法独自
 雇用 支給期日  支給期日  ←私法準拠

 支払期限の有る無しで私法準拠/税法独自がひっくり返るという、謎の現象。
 こんな状態では、何のポリシーも見いだせません。

 税法が民法に連動しないのであれば、それはもはや私法準拠していない、ということです。
 「や、あくまでも私法準拠が原則で税法独自は例外だ」などと言い訳するのかもしれません。

 が、この手の「原則例外モデル」の欺瞞性は、すでに批判ずみのところ。

からくりサーカス租税法 〜文言解釈VS趣旨解釈、そして借用概念論へ

 融通無碍な例外則を許容した時点で、原則はもはや原則たりえない。
 実務能力のない、名ばかりお飾り税理士事務所所長みたいなものよ。


 この原則と例外が、期限の有無により入れ替わるなどという怪奇現象、どうやって説明するというのか。

 もしかするとですが、これは支払期日を役務・労務提供時と定めた場合を想定しているのでしょうか。

《支払期日=役務・労務完了時》
    支払請求  収入計上
    (民法)  (税法)
 請負 役務提供時 役務提供時 ←私法準拠
 雇用 労務提供時 労務提供時 ←私法準拠

 こういう場合であれば、私法と税法が一致し、請負と雇用も一致することになります。

 確かに、請負であれば、請負人が役務提供をしても注文者による「検収」がされるまでは完了とならない、そしてその検収が完了すれば直ちに支払う、場合であれば支払期日=役務提供(完了)日となるのでしょう。
 が、雇用では「検収」といった概念はないので、締日が過ぎれば労務提供が完了したことになります。で、そこから給与計算をスタートさせることになるので、どうしても支払期日まで数日は必要です。
 締日と同時に給与計算が完了するものがあるとしたら、毎月定額で一切の手当も減給もないような場合に限られるでしょう。

 給与の通達ルール、給与計算が単純計算で済んでいた時代の遺物ルールだとでもいうのでしょうか。

 あるいは、給与計算を検収と同等のものと位置づけて、給与計算完了をもって労務提供完了と扱うか。

    支払請求  収入計上
    (民法)  (税法)
 請負 検収完了  検収完了 ←私法準拠
 雇用 計算完了  計算完了 ←税法準拠

 だとしても、「検収・給与計算完了と同時に支払う」(2=3)としないかぎり、請負・雇用のズレは解消されない。

           請負 雇用
 2 検収・計算完了  ○
 3 支払・支給期日     ○ 


 と、私法準拠では「権利確定」の意味を確定することが難しいということが分かりました。

  『半端な私法準拠はむしろ法的安定性を害する。』

 なので、私法に丸投げせずに税法の側から「権利確定」の意味を解明しなければなりません。

《どれが権利確定?》
 1 契約締結
   契約締結した時点で、役務・労務提供を条件とする報酬請求権が成立する。
 2 役務・労務提供完了
   役務・労務の提供が終わった時点で、支払期限付きの報酬請求権が発生する。
 3 支払期日到来
   支払期日が到来した時点で、いつでも報酬の支払いを請求できるようになる。
 4 支払受領日
   実際に報酬を受領した。

 1と4はないとして、2か3のいずれが「権利確定」なのか。
 どちらも決め手はないものの、請負(事業所得)と雇用(給与所得)とでタイミングをズラす理由はないでしょう。いずれも報酬請求権であることにかわりはない。

 『労働者は「資本家に掛売している」のである。』(来栖三郎「契約法」436頁)



来栖三郎「契約法」(有斐閣1974)

 のに、通達では請負が2、給与が3とズレている。

 民法以外の労働法規まで見渡せば、労働報酬債権のほうが請負報酬債権よりも保護に手厚い。
 そうすると、労働報酬債権のほうが実現の確実性は高いともいえるので、給与所得の実現を早める理由にはなっても遅らせる理由にはなりえない。


 2の時点で実現してしまうのは給与所得者とって「かわいそうだから」という主張がありうるかもしれません。

 が、給与所得者といっても、高給の役員と学生アルバイトとを、一律に「かわいそう」で括るには無理がある。
 仮に「かわいそう」理論を認めるにしても、そもそも実際の支給を受けるより前の時点で所得実現とされてしまうのならば、労務提供後だろうが支給期日だろうが、大した違いはない。
 せいぜい、12月分が1月にズレてくれたら次回の年末調整・確定申告まで問題を先送りにできる、という限度でしょう。

 この手の事情に対応するには、たとえば次のような規定によるべきであって、所得区分全体で帰属時期をズラすべきものではない。

所得税法第六十七条(小規模事業者の収入及び費用の帰属時期)
 青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者で不動産所得又は事業所得を生ずべき業務を行なうもののうち小規模事業者として政令で定める要件に該当するもののその年分の不動産所得の金額又は事業所得の金額(山林の伐採又は譲渡に係るものを除く。)の計算上総収入金額及び必要経費に算入すべき金額は、政令で定めるところにより、その業務につきその年において収入した金額及び支出した費用の額とすることができる。



 このように、なぜか事業所得と給与所得とで収入計上時期が異なっているわけです。

 にもかかわらず、総論箇所ではそのような違いを無視して「権利確定主義」で説明されます。
 このことは、どちらかは「権利確定主義」が通用しないということなのか、それとも所得区分ごとに「権利確定」の中身が異なるということなのか。
 このあたりをちゃんと説明したものを見かけたことがない。
 少なくとも、後者の説明は民法の規定からは出てこない。そこでいう権利とか確定という概念を、税法独自の観点から所得区分ごとにトランスフォームさせなければならないわけで。

 いずれにしても、すべての所得区分の帰属時期のヴァリエーションを説明する概念として、権利確定主義が「統一理論」として機能していないといえるでしょう。
 総論で高らかに掲げた「お主義」が、各論ではまともに使えないものになっている。


 この点、刑法学でも「総論各論問題」というのがあります(私が勝手に問題視しているだけですが)。

井田良「講義刑法学・総論 第2版」(有斐閣2018)
井田良「講義刑法学・各論 第2版」(有斐閣2020)

 「刑法総論」というのは、本来は刑法典にとどまらずすべての刑罰法規に共通する要素を論ずべき学問領域のはずです。
 ところが、実際に刑法総論で議論されていることは、刑法典の中でもごく一部の犯罪類型が念頭に置かれたものにすぎません。

 刑法典すらすべてカバーできていない。
 ので、各論を学ぶ際に総論の議論をそのまま参照できるのは、一部の犯罪類型にとどまります。

 ちなみに、因果関係に関する「危険の現実化説」なんかだと、内実がないおかげで、現状議論されていない犯罪類型が出てきたとしても、軽く対応ができてしまう。問題化した時点でそれ用の下位基準を付け足しすればいいだけなので。

【危険の現実化説】
橋爪隆「刑法総論の悩みどころ」(有斐閣2020)

 これ、決して褒めているのではなく。
 後付けでどうとでも説明できてしまうということであって、行為者に事前に規範を提示するという「行為規範性」は皆無。
 のに、行為無価値論者の皆さんまでもが、こぞって同説の下位基準の開発競争に勤しんでいるのはどうしたことか。

 話を戻して。

 収入の帰属時期に関する総論と各論の関係にも同じことがいえます。
 総論で「権利確定主義」が妥当だとしながら、各論レベルで検証がされていない。

 理念型としての権利確定主義が通用しないとなると、そこでいう権利確定の内実を薄ぼんやりしたものに希釈するか、思い切って権利確定による説明を放棄するか。
 なんにしても、偉そうに「主義」などといえるような概念は、もはやそこには存在しない。


 「まだだ、まだ俺たちには管理支配基準が残されている。」などと、給与所得の帰属時期が3にズレる理由を「管理支配基準」で説明できると思う人がいるかもしれません。

 が、管理支配基準というのは、「権利確定していなくても管理支配していれば所得の実現を肯定する」ための理屈です。違法所得とか返金不可の前受金とかの所得実現を肯定するために使うと。
 こういう基準を併用している時点で、権利確定主義が「なんちゃって私法準拠」であることが分かるわけですが、それはともかく、この基準を「権利確定していても管理支配していなければ所得の実現を否定する」ための理屈として主張している人って、たぶんですけど誰もいないですよね。

 どうしても管理支配基準で給与所得の帰属時期を説明したいというならば、ぜひ「フローチャート」を書いてみてください。

  役務・労務提供完了しているか? はい →権利確定(収入計上)

で終わっちゃうはずです。管理支配基準にたどり着けない。
 もしこの先に管理支配基準を出すのだとしたら、権利確定主義を真っ向から否定した上で、かつ事業所得も同じく3の時点にまで実現をズラさなければならないことになります。

 あちらを立てればこちらが立たない。

 やだあ、「主義」とまで崇められている権利確定主義を、単なる「基準」ごときに覆せるわけないじゃないですか。
 権利確定主義ではカバーできていない領域を「拡張」する役割を担っているのが管理支配基準であって、権利確定主義を「制限」するための基準ではありません。
 主義様の食べこぼしした残りをいただけるだけの立場のやつが、なぜに主義様がこれから食べようとしているものを横取りできると思っているのか。

 拡張にも制限にも使えるのだとしたら、もはや管理支配基準だけで判断すればいいのであって、権利確定主義をかますは必要ありません(下剋上としての管理支配主義)。
 私法準拠してるっぽく見せかける看板としてだけ使う、という俗悪な利用方法はあるかもしれませんが(もしかして、現状がすでにそうなのかどうか)。

 そもそもの話として、支払期日が到来しただけで実際に支給を受けていなくても「管理支配」しているといえるのか、疑問です。
 ので、やはり「権利確定」の側でどうにか説明しなければならない。が、それが難しいことはここまで記述してきたとおりです。


 私法準拠とか権利確定などのしがらみを一切排除して、税法独自に判断してもよいならば、給与所得と事業所得の収益計上時期の違いにつき、次のような説明が可能かもしれません。

 すなわち、前述したとおり、請負の場合、請負人が役務を提供しただけでは提供完了とならず、注文者による検収が必要となります。
 他方で、雇用の場合、締日後に給与計算のため一定の日数が必要となります。
 それゆえ、請求金額が最終確定する時点は、請負の場合は検収完了=役務提供完了時、雇用の場合は給与計算完了≒支給期日となると(後者が「≒」なのは支給期日より前には給与計算終わっているはずなので)。
 一見、時点としてはズレているようにみえても、「請求金額が最終確定する時点」という意味では同じことになります。

《金額確定するのは》
           請負  雇用
 1 契約締結
 2 検収・計算完了  ○   ○ 
 3 支払期日
 4 支払受領

 が、これはそれぞれそういう場合にあてはまるというにすぎません。

 たとえば、毎月一定の役務提供をする請負契約で、12月作業分を1月5日までに作業報告、報告確認後1月10日に支払、というものがあったとします。この場合、収益計上時期は1月ではなく12月とされるでしょうが、12月末日をもって「金額が最終確定した」というのは無理ではないかと。

 他方、給与でも、前述のとおり締日に金額確定できる場合もありうるわけです。
 また、「≒」としたとおり、給与計算完了日と支給期日は「=」ではありません。ので、あくまで近似値であって直接的な理由付けとはなりえない。

 そうすると、税法独自に考えても、やはり統一的な理由付けは難しそうです。

 とはいえ、権利確定などというなんちゃって私法準拠よりは筋がよさそう。
 「権利」などという私法準拠風の用語を使っておきながら、「確定」のほうに税法独自の考慮を混ぜ込む、といったズルい仕草は「金額確定」のほうにはありませんので。

 私には、「権利が確定する」という物言い、「権利がかゆい」くらい意味不明な言葉つなぎだと感じるのですが。ましてやそれを「主義」で締めるからなおさら。

 権利・確定・主義

 なんか言葉に、キマイラあるいはフランケンシュタイン氏の怪物的な継ぎ接ぎ感があるんですよね。


 以上、さしあたり事業所得と給与所得だけを対象として検討してみました。
 これだけみても「権利確定主義」なるものが「お主義」として成り立っていないことが分かるはずです。

 私の見立てでは、税法側のデフォルトは「支払期日」ベースで、事業所得が「発生」ベースなのは企業会計あるいは法人税法に引っ張られているだけ、とみています。
 いつでも払ってもらえる状態になってはじめて収入が実現するのであって、売掛金が発生しただけで実現したとするのは、事業所得固有の事情にすぎないと。
どうしても主義って言って崇めたければ、「事業所得は企業会計準拠主義」とでも言っておけばいいしょや。

 発生主義: 事業所得、不動産所得(許容)
  ↑
 支払期日: 給与所得、不動産所得
  ↓
 現金主義: 小規模事業者、違法所得

 支払期日がデフォルトで、発生段階まで早まったり受領段階まで遅れたりする、という見方のほうがうまく説明できそうな気がします。

 もちろん、私法をガン無視して純経済的に決定できる、などとまでいうものではありません。「いつでも払ってもらえる状態」といっても、一定の法律関係を前提とすることになりますので。
 ただ、そこでいう法律関係の判断については、完全に私法に委ねることはできず、税法独自の考慮が入り込みます。この私法と税法の交錯をどのように切り分けるか、を「権利確定」などという曖昧な物言いで融通無礙に判断するのではなく、正面から論ずるべきということです。

 ちなみに、印紙税法と私法の交錯については、以前試みたことがあります。

【印紙税法と私法の交錯】
私法の一般法とかいってふんぞり返っているわりに、隙だらけ。〜契約の成立と印紙税法
Janusの委任 〜成果報酬型委任と印紙税法
続・契約の成立と印紙税法(法適用通則法がこちらをみている)
続々・契約の成立と印紙税法(代理法がこちらをみている)
さよなら契約の成立と印紙税法 (結局いつもひとり)
魔界の王子と契約の成立と印紙税法
二段の推定と契約の成立と印紙税法 〜印紙税法における実体法と手続法の交錯
おかわり契約の成立と印紙税法(法人法がこちらをみている)

 中身さえ気をつければ、そのまま「権利確定主義」という言葉を使い続けても問題はないのでしょう。が、それだと「私法準拠」の象徴的・嚮導的立場であった同主義に引き摺られてしまうおそれがあります。ので、やはり別の言葉に置き換えたほうがよいと思います。


 このような見立てを検証するには、その他の所得についても検討すべきところ。
 不動産所得はこの枠組みでうまく説明できそうだが、譲渡所得は固有の事情がありそう、とか。

 が、どうにも筆が進む感じがしないので、またいつかこの話題でお会いしましょう。


 なお、以上は収入の「計上時期」という切り口から論じていますが、「そもそも所得とはなんぞや」という問題でもあります。その時点で実現したものが所得だということになりますので。

 事業所得では「支払期限未到来の報酬債権の取得」が所得に該当するのに対して、給与所得では「支払期限が到来した報酬債権の取得」が所得に該当するんだと。

 こう表現してみても、やはりなぜこのような違いがあるのか、理解に苦しみます。
posted by ウロ at 10:51| Comment(0) | 所得税法

2021年02月22日

税務訴訟におけるゴリ押しVS誉めごろし 〜税務トロイの木馬(Tax Trojan horse)

 税法分野における裁決・判決を眺めていると、

  ・あえてギリギリを攻めて租税回避チャレンジ狙っているんだろうな

とか、

  ・うっかりミスを後付けの理由でどうにか正当化しようとしているんだろうな

と感じる事案を見かけることがあります。

 もちろん、判決文に正面からそんなことが書かれていることはありません。
 が、15%未満までOKなところを14.99%に調整していたりすると、「チャレンジングだなあ」と思ってしまいます。

 巷に流布している判例学習法によれば、「判例は事案との関係で理解すべし」という教義が唱えられています。
 もちろんそれ自体は大事なことではあります。が、それを額面通りに理解して、必死になって判決文記載の認定事実だけを読み込んでも、その判決を十分に理解できるとは限りません。

 というのも、判決文記載の事実は、当事者が主張した中で理由付けに必要だと裁判官が思った事実が並んでいるにとどまります。
 実際に裁判所の判断に影響を与えた要素が網羅されているわけではない。もしかしたら、結論を左右した決定的な要素が、認定外のどこかにあるかもしれない。

 とはいえ、外野にはこれら事情は分かり得ない。あたかも認定事実だけから結論を導き出したみたいな書き方するし。
としても、なぜそのような紛争が起こったのか、その背景事情を推測できるだけの知識・経験があれば、理解はしやすくなるでしょう。

 税法以外でも、たとえば会社法における決議無効・取消・不存在の訴えなんて、表向きの無効事由等と本来争いたい事項が盛大にズレていることがありうるわけです。
 ここでも、そのような争いが起こる背景事情を理解できるだけの知識・経験があれば、当該判決を理解するのに、役に立つはずです。
 
 「判例学習本」にもこういう裏読みの技法を書いておいてほしいんですが、まあさすがにゲスの勘ぐりみたいなことを、公刊物に記載するわけにはいきませんかね。


 紛争系の納税者の皆様が、日常系税理士からすると「そんな後付けさすがに通用しないしょや」と思ってしまうような訴訟を提起してくれるおかげで、税務判決が充実していきます。
 当事者的には、漁夫の利感を強く感じてしまうかもしれませんが。

 法学学習において、判決中心の勉強をしてしまうと、頭の中が異常事例ばかりとなって日常的な処理の理解がおろそかになりがちになります。
 そんな中、「そりゃそうだろ」レベルの地に足のついた判決があってくれると、日常系税務にも非常に参考にすることができます。

【通常事例思考】
米倉明「プレップ民法(第5版)」(弘文堂2018)
内田勝一「借地借家法案内」(勁草書房2017)
「定期同額給与」のパンドラ(やめときゃよかった)

 ただし、変な争い方をされて変な判決がでてしまっても、それはそれで迷惑。
 そんな判決があるせいで、税務調査時に納税者不利に援用されても困りますし。


 さて、ここまでは、本ブログでもたびたび言及される『判決(学習)論』の一側面。
 ここからは、今回参照する判決について。

平成25年判決分(税務訴訟資料第263号「順号12125〜12365、12379〜12381」)
 12315 東京地方 所得税更正処分取消等請求事件 平成25年10月22日
 12314 東京地方 贈与税決定処分取消等請求事件、贈与税更正処分取消等請求事件 平成25年10月22日
平成26年判決分(税務訴訟資料第264号「順号12382〜12583」)
 12461 東京高等 各所得税更正処分取消等請求控訴事件 平成26年4月23日
 12434 東京高等 贈与税決定処分取消等請求控訴事件 平成26年3月18日
平成27年判決分(税務訴訟資料第265号「順号12584〜12778」)
 12661 最高二小 所得税更正処分等取消請求上告及び上告受理事件 平成27年5月13日
 12662 最高二小 贈与税決定処分取消等請求上告及び上告受理事件 平成27年5月13日

 納税者の主張を見ているとどうにも後付感が強い。
 ではありますが、うっかりミスということではなく、一方当事者の意向で低額譲渡せざるをえなかったことの尻拭い、といった印象を受けました。
 あくまでも認定事実からの邪推にすぎませんが。

 なんとなくですが、納税者的には「だから否認されるって言ったじゃん」て感じで、頑張って理屈をひねり出したように感じます。
 でまあ、裁判所には通用しなかったと。

 外野からすると、込み入った所得税法9条、59条、60条、相続税法7条あたりの関係を理解するのに、いい参考例になっています。

・所得税法

第九条(非課税所得)
1 次に掲げる所得については、所得税を課さない。
十六 相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの(相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)の規定により相続、遺贈又は個人からの贈与により取得したものとみなされるものを含む。)

第三十八条(譲渡所得の金額の計算上控除する取得費)
1 譲渡所得の金額の計算上控除する資産の取得費は、別段の定めがあるものを除き、その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額とする。

第五十九条(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)
1 次に掲げる事由により居住者の有する譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その者の譲渡所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす。
一 贈与(法人に対するものに限る。)又は
  相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは
  遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)
二 著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)
2 居住者が前項に規定する資産を個人に対し同項第二号に規定する対価の額により譲渡した場合において、当該対価の額が当該資産の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上控除する必要経費又は取得費及び譲渡に要した費用の額の合計額に満たないときは、その不足額は、その譲渡所得の金額の金額の計算上、なかつたものとみなす。

第六十条(贈与等により取得した資産の取得費等)
1 居住者が次に掲げる事由により取得した前条第一項に規定する資産を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算については、その者が引き続きこれを所有していたものとみなす。
一 贈与、
  相続(限定承認に係るものを除く。)又は
  遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除く。)
二 前条第二項の規定に該当する譲渡
4 居住者が前条第一項第一号に掲げる相続又は遺贈により取得した資産を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算については、その者が当該資産をその取得の時における価額に相当する金額により取得したものとみなす。

・相続税法

第七条(贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合)
 著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合においては、当該財産の譲渡があつた時において、当該財産の譲渡を受けた者が、当該対価と当該譲渡があつた時における当該財産の時価(当該財産の評価について第三章に特別の定めがある場合には、その規定により評価した価額)との差額に相当する金額を当該財産を譲渡した者から贈与(当該財産の譲渡が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。



 論点を単純化していうと、みなし贈与課税された資産を売却した場合の取得費は、実際の取引価額かみなされた評価額か、というものです。
 事件としては贈与税(みなし贈与)と所得税(みなし譲渡)の2ルートあって論点も複数ありますが、今回は所得税ルートの取得費のところのみ扱います。

 なお、本事件では「通達による時価評価の合理性」も論点になっているところ、同族会社の判定時期については「譲渡前」とされています。
 まあ、そうですよね。

 ほんと、何だったんでしょうか、あの高裁判決。

【あの高裁判決】
解釈の解釈を解釈する(free rider) 〜東京高裁平成30年7月19日判決


 以下、本論。
 本事件の事案そのものではなく、モデル化したものを使います。

《前提事実》
・A→B→Cと転々譲渡。
・ABCはいずれも個人(みなし譲渡の出番は無しです)。
・取引対象は譲渡所得の課税対象となるものであれば何でも。
・相続税法上の時価と所得税法上の時価は同額と仮定します。
・時価はA→B譲渡時に50、B→C譲渡時に150。
・Aの取得費は10。
・B→Cの売買価格は150。
・消費税は考慮外。

 これら事実を固定し、これ以外のパラメータをいじることで、ABの課税関係がどう動くかを検討します。
 まずは基本事例から。

みなし贈与.png

《事例1》
 A→B 売買 50
 B→C 売買 150

 時価通りに取引(この数字は取引価額)。
 この場合の課税標準は次のとおり。

 A 所得 40(50-10)
 B 所得 100(150-50)

 通算140の資産増加益に譲渡所得課税されると。
 まあ、普通ですよね。

 次に、A→Bを「贈与」に変えたらどうなるか。

《事例2》
 A→B 贈与
 B→C 売買 150

 A 所得 なし
 B 贈与 50(時価50)
 B 所得 140(150-10) 所得税法60条1項1号

 Aの取得費10がBに引き継がれます。
 課税繰延の典型例としてよく出てくるやつで、一般的に問題視されることはないはずです。

 では、《事例2》で現物そのものを贈与するかわりに現金50を贈与して時価売買したらどうなるか(お金をぐるっと回す)。

《事例3》
 A→B 贈与 現金50
 A→B 売買 50
 B→C 売買 150

 A 所得 40(50-10)
 B 贈与 50(現金50)
 B 所得 100(150-50)

 《事例2》とは、所得通算140で変わらないのですが、内訳がAB間で変動しています。

 譲渡所得が総合課税の場合とか、あるいは分離課税でも特例が使える/使えないによって、AB間の内訳をイジりたい、という誘因が働くことはあるでしょう。
 では納税者は、有利不利に応じて2と3を使い分けることが可能でしょうか。
 いわゆる『私法上の法律構成による否認』の一場面です。

 そもそも所得税法60条が課税繰延しているの、「贈与時に譲渡所得課税するのは贈与者に可哀相だから」という趣旨のはずです。
 であれば繰延を受けるかどうかは納税者の選択に委ねるのが筋です。

 ところが、同条では「みなす」などとして、選択ができない規定っぷりになっています。
 そうとすると、《事例3》は《事例2》の回避事例だとして、贈与に引き直されてしまうことになるでしょうか。

 この問題は完全に余談なので、この程度にしておきます。


 ここまでが露払いの前座で、次からが本題。

《事例4》
 A→B 売買 20 (低額譲渡)
 B→C 売買 150

 A 所得 10(20-10)
 B 贈与 30(50-20) みなし贈与 相続税法7条
 B 所得 130(150-20※) 

 時価50のものを20で売ったので、30は贈与とみなされます。
 問題が※のところで、実際の取引価額である20なのか、みなし贈与の評価額50なのか、ということです。

《評価額説だと》
  B 所得 100(150-50)

 資産増加益140(150-10)のうち、10はAに所得課税、30はみなし贈与課税されているんだから、Bが所得課税される残りは100じゃないのかと。

 《事例2》と《事例3》の関係同様、《事例4》のぐるっと現金バージョンも書いておきます。

《事例5》
 A→B 贈与 現金30
 A→B 売買 50
 B→C 売買 150

 A 所得 40(50-10)
 B 贈与 30(現金30)
 B 所得 100(150-50)

 AがBに現金30を贈与して残り20をBが自己負担した、ということです。
 こちらも、《事例2》《事例3》の関係と同じように、所得の内訳が変動しているので、やはり同じ問題が生じます。


 判決では、地裁から最高裁まで「実際の取引価額」でいくとされています。
(この論点につき実質的な判断をしているのは地裁判決(12315)なので、以下、同判決を念頭に置いて記述します。)

 みなし贈与課税された資産の取得の「経済的価値」と、譲渡所得課税される資産増加益という「経済的価値」は同一ではないというのが理由になっています。

 確かに、取得費引継ぎの典型例である《事例2》では、資産の取得50に(通常の)贈与課税ずみであるにもかかわらず、140に譲渡所得課税とされていることについて、特に異論が出されることはありません。
 このことからすれば、結論は「実際の取引価額」でよいのでしょう。
(このように、典型例を念頭に置けば無理がある主張をしているあたりが、納税者の主張に対する「後付感」を抱かせる所以です。)

 ただ、その理由付けが「経済的価値が同一でない」というの、どうにも腑に落ちない。

 事例2と4を図で書くとこうなります。
 「A'」は、Aの取得費をBが引き継ぐという意味合いです。

二重課税.png

 かぶってますよね。

 もちろん、二重課税それ自体が悪いわけではありません。

浅妻章如「ホームラン・ボールを拾って売ったら二回課税されるのか」(中央経済社2020)

 たとえば、不動産売買という一つの取引に起因して、所得税・法人税・消費税・不動産取得税・固定資産税・都市計画税・印紙税・登録免許税などなど、いろんな税金が発生します。
 「あの手この手で税金とりやがってふざけんな」という人はいるでしょうが、これを「理論的にみて二重(以上)課税だから違法だ」と主張している人は見かけません。

 この結論をそれらしく正当化したいならば、「経済的価値は別」などと苦し紛れの説明をするよりも、「経済的価値は一部かぶっているかもしれないが、贈与税は資産そのものののストック面、譲渡所得税は資産増加益というフロー面に課税しているからセーフ」という物言いのほうがまだましな気がします。

 確かに、「二重課税でも問題ない」と正面から言ってしまうと、あらゆる方面から批判されることは目に見えている。二重課税(らしきもの)に対する拒否反応には根強いものがあります。どれだけ数理によって不合理性が実証されようとも、そう簡単に納得してもらえるものではない。

 ですし、所得税法9条1項16号の解釈論を深堀りしなければならなくなります。
 ので、裁判所の表向きの理由としては、意地でも別のものに課税しているというしかないのでしょう。
 が、すんなり理解するのが難渋な、苦し紛れの物言いとなってしまっている。

 ちなみに、「みんな」に理解してもらうためには数学よりも自然言語、というのは森田果先生の法学入門書にも書かれているところです。

森田果「法学を学ぶのはなぜ?」(有斐閣2020)


 ちなみに、「生命保険年金受給権」の相続税・所得税を二重課税とした最高裁判決も、この「ストック/フロー」の枠組みで説明することは可能です。
 すなわち、将来年金をもらえる権利というストック面に相続税を課税しておきながら、さらに実際にもらった年金というストックに一時所得課税するのは二重課税だ、という感じ。

 本事件の判決と年金の最高裁判決との結論の分かれ目がどこにあるのかといえば、譲渡所得と一時所得の所得の捉え方の違いにあるのだと思います。
 差額に課税するのか、得たものそれ自体に課税するのかという。
 何が所得であるかがそれぞれ異なるから、どのような場合に二重課税となるのかも自ずから違ってきます。
 ので、「所得税と相続税」という括りで年金判決をそのまま横流しするのは無理があります。

 さらなる余談ですが、このように譲渡所得と一時所得とで異なる内実を有しているにもかかわらず、これら違いを無視して統一的な所得概念をもって現行法の所得を定義づけようとする所作、私にはおよそ理解できません。
 そのような定義は、現行法上のすべての所得に当てはまる説明となっていないか、あるいはすべてに当てはめようとして漠然とした定義になるか、いずれにしても現行法に適合的な定義付けにはならないと思います。


 さて、どうやって正当化するかはともかく、本当に両方課税することに問題はないでしょうか。
 比較用に次の事例を追加します。

 《事例2》でAの取得費が40だったとしましょう。

《事例6》
 Aの取得費40
 A→B 贈与
 B→C 売買 150

 A 所得 なし
 B 贈与 50(時価50)
 B 所得 110(150-40) 所得税法60条1項1号

 《事例2》と比べてみて、Bにとっては、時価50のモノをもらっていることとそれを150で売ったという点で全く同じです。
 にもかかわらず、《事例6》ではBの所得が110に減っています。

 なぜそうなるかといえば、Bとは無関係の「Aがいくらで取得したか」という事情にBの譲渡益が左右されてしまうからです。

 これのどこが変なのかといえば、贈与税の時価評価がいずれも同じ50であるところにあるのでしょう。
 取得費引継ぎは60条に明記されているし、資産増加益がトータル110であることは間違いないし、ということで、残る贈与税の時価評価のところがおかしいんじゃないかと。

 では、贈与時において《事例2》と《事例6》とで何が違うか。
 資産の抱えている含み益が違うせいで将来譲渡したときに課税される額が違うという点です。

 《事例2》 将来譲渡したら譲渡益40上乗せされる資産の譲り受け
 《事例6》 将来譲渡したら譲渡益10上乗せされる資産の譲り受け

 将来の税負担が明らかに違うのに、このことが贈与税の時価評価に反映されていないのが問題です(今後はこれを『含み税問題』ということにしましょう)。

 ここで皆さんの頭をよぎったと思われるのが、純資産価額方式における「法人税等相当額」の控除。
 評価会社が保有資産を売ったとしたら生じる利益に課せられる法人税を引いて評価してよいと。

 「含み益に対する税金を考慮して評価すべき」という点ではここでの問題と同じですよね。
 この考えをこちらの場面に応用することができないかどうか。


 本事件の納税者は、「通達は不合理!」「二重課税だ!」と正面からのガチンコ勝負に徹しています。
 もちろん第一次的にはそのような争い方が正道でしょうが、ゴリ押し一辺倒では通用しないことがしばしば(実際、本事件では第一審から上告審まで一蹴され続けている)。

 上述のとおり、評価通達には「法人税等相当額控除」という素晴らしい制度が内在されているわけです。
 そこで、いかに評価通達が優れているかを褒めちぎった上で、「法人税等相当額控除」のお考えがまさに本件でも当てはまります、ぜひこちらにも援用してみましょう、といった主張もできたんじゃないかと(これは所得税ルートではなく贈与税ルートのほうで主張することです)。

 若干厄介なのが、取引目的物が「非上場株式」だったらどう評価するのか、という問題(本事件がまさにそう)。
 というのも、評価会社の保有資産の含み益に対する法人税等相当額を控除しておきながら、さらにその株式の譲渡益に対する譲渡所得税相当額を控除するのは「二重控除」ではないのかと。
 「法人税等相当額」自体、局面によっては控除できないことになっているのは、そのあたりの考慮が働いているからでしょう。

 が、本件では大丈夫。
 本判決の立場からすれば同一の経済的価値ではないことになるので。

 というのも、実際に評価会社が保有資産を売却した後、株主が当該株式を売却した場合を想定すると、
 ・保有資産の含み益(だったもの)に「法人税」が課税される。
 ・その実現した含み益から法人税を引いた残りに「所得税」が課税される。
ことになりますよね(あくまで理念としての記述です)。

 もしこれを二重課税でないといいたいなら、本判決の立場からは「別の経済的価値に課税しているからセーフ」と説明するしかありません。
 とすると、その裏返しである控除を重ねて行っても、同じくセーフと言わざるを得ないはずです(対偶チックな発想)。


 このように、通達を褒めちぎって通達内部の制度をご利用させていただく、経済的価値が同一という理由を逆手に取って控除場面でご利用させていただく、といった「トロイの木馬」戦法が、本件では主張できたのではないかと思うのです。

 が、実際にはゴリ押し戦法一辺倒で終わってしまっています(もしかしたら争点整理で落とされたのかもしれませんが)。
 
 確かに、代理人弁護士一人の頭の中で、ゴリ押し志向と誉め殺し志向を両立させるのは難しいのかもしれません(ホコタテ)。であれば、複数弁護士に受任してもらって、それぞれ別側面から争ってもらうのも一考に値するでしょう(二頭体制)。

 トロイの木馬戦法が効くのは、正面突破してくれる本隊の働きのおかげですよね。
 こちらが通達が不合理だと強く言えば言うほど、課税庁側は通達の合理性を根拠付けなければならなくなります。そこで、課税庁にがっちり合理性を根拠付けていただいた後に、その合理性にフリーライドして自分の主張をのっけていくと。

 同じく、別の経済的価値なら課税OKという論拠をしっかり固めてもらってから、その延長線上に、控除も重ねてOKという主張をのっけると(もちろん、実際の訴訟では自由に後出し主張できるわけではありませんが)。

 訴訟戦略として、相手方の主張に正面からぶつかるだけでなく、相手方の主張の中に自分の主張を混入させる、という作戦が効いてくる場面もあると思うんです。


 と、理念上は上述の通り控除すべきだとは思います。

 が、実際には、贈与税評価と所得税評価とは必ずしも一致しないとか、贈与税評価は市場価格よりも低めにでがちといったノイズが入ります。
 ので、「含み税があっても個別に評価することはせず、ざっくり低めに出しているからセーフ」といった判断がでてもおかしくない。
 というか、今まで問題視されていなかったのは、暗にそういうふうに考えられていたからかもしれませんし。

 また、控除をやることになったとしても、すべての資産が対象になるのか、とか、実際にどうやって計算するのか、単純に譲渡所得税等相当額を控除すればいいのか、年金受給権的なややこい算出が必要なのか、といった検討も必要なはずです。
 そのあたりは頭のよろしい人たちにぜひお考えいただければ。
posted by ウロ at 10:59| Comment(0) | 判例イジり

2021年02月15日

タックスアンサー学習帳 〜やっててよかったTA式

 以前のタックスアンサーイジり記事について、追加燃料があったので追補します。

オーバーホール租税法・序論 〜小規模宅地等の特例を素材に
タックスアンサーの中の譲歩と抵抗 〜小規模宅地等の特例を素材に

 下記別添のP.10。

資産課税課情報第1号
「租税特別措置法(相続税法の特例関係)の取扱いについて」の一部改正について(法令解釈通達)のあらまし(情報)(平成26年1月15日)

資産課税課情報(国税庁サイト)

【参考】
 本事例において、相続人である子乙が被相続人甲と生計を一にする親族である場合にも、丙が取得した乙の居住の用に供されていたB部分は、措置法令第40条の2第4項の規定により被相続人等の居住の用に供されていた部分に含まれることから、被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当するものとして取り扱うことができる。
 したがって、乙が甲と生計を一にする親族である場合にも、丙が取得した乙の居住の用に供されていたB部分は、上記「(2) 丙が相続により取得した部分」と同様に特定居住用宅地等に該当することとなる。


 事例を簡略化すると次のとおり(情報では事例3ですが、ここでは事例1とします)。

《事例1》
  ・被相続人:甲、相続人:子乙、子丙
  ・土地 甲所有
  ・建物 甲所有(2世帯住宅・区分所有なし)
  ・1階(B部分)に乙居住、2階(A部分)に甲居住 (生計一or別)

 ア 乙が全体取得 ○(乙は甲となんちゃって同居しているので)
 イ 丙が全体取得 ○(乙は甲とガチ同居していないので)
 ウ 乙丙が1/2づつ取得 ○(アイの合成)

 本文ではウで乙が「生計別」の場合、上記引用の【参考】では同じく「生計一」の場合が書かれています。
 いずれの場合でも、乙丙の持分全体に特例受けられるんだと。


 こうなってくると、タックスアンサーの「除きます」ルール、ますます意味が分からないですよね。

 2 「被相続人の居住の用に供されていた宅地等」が、被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物(「建物の区分所有等に関する法律第1条の規定に該当する建物」※を除きます。)の敷地の用に供されていたものである場合には、その敷地の用に供されていた宅地等のうち被相続人の親族の居住の用に供されていた部分(上記〔特定居住用宅地等の要件〕区分Aに該当する部分を除きます。)を含みます。

No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

 情報の【参考】では「含まれる」としながら、タックスアンサーでは「除きます」としていると。
 穿った見方をするならば、一般に目の触れやすいタックスアンサーでは適用範囲を狭く、触れにくい情報では広く、説明を書き分けているということもできます。


 除きますルール、どの場面で働くか想像してみると分かるのですが、「家なき子」を排除する場面です。

 というのも、「@からAを除く」という物言い、《事例1》のように除かないと@に含まれてしまう場合を想定しているはずです。

 次の《事例2》のように、はじめから@とAが別建物であれば、わざわざ除きますという必要はない。
 適用範囲がかぶっていないので、@から除きようがない。

《事例2》
  ・土地 甲所有 (建物ABが隣接して建っている)
  ・建物A 甲居住 ←@
  ・建物B 乙居住(生計一) ←A

 また、《事例3》のように、Aを除いたら丸ごと@が無くなるような事例も想定していないはずです。

《事例3》
  ・土地 甲所有 
  ・建物 甲乙ガチ居住(生計一) ←@A

 そうすると、やはり《事例1》のように、生計一親族の独立部分があり、かつそこが@と重複している場合を想定していることになるのでしょう。

 で、生計一親族乙からすれば、除かれた部分はAでいけば済む話なので不都合はありません。
 除かれて困るのは家なき子丙のほう。

 これまでの改正では、せっかく創設された家なき子特例に対して、その適用を制限する取得者要件が盛り込まれてきたわけです。
 タックスアンサーでは、このような改正の「方向性」を汲み取って、勇み足をかましているのではないか、と思えます。

 が、条文から読み取れない立法担当者の「想い」から何某かの解釈を導くことの俗悪さは、これまでにも述べてきたとおりです。

横流しする趣旨解釈(TPR事件・東京高裁令和元年12月11日判決)
あの日見た特例の趣旨を僕達はまだ知らない。 〜家なき子特例の趣旨探訪3(完)
アレオレ租税法 〜立案者意思は立法者意思か?


 タックスアンサー、通常は、法令や通達などから直接読み取れることで構成されているものが大部分です。

 そんななかで、独自の解釈が混ざり込んでいると、その記述が浮き上がって見える。
 受験生の必需品、「暗記シート」で隠してみると、その部分だけ文字が消えない、みたいな。

 いまのところ、そのような暗記シートに対応するような便利グッズは出ていませんので、日々、法令通達をしっかり読み込んでおき、自ずから異常値を感知できるようしておくことが大事なんでしょう。
posted by ウロ at 00:00| Comment(0) | 相続税法