2022年01月01日

記事一覧

206記事

【日常系税務リーガルマインド】
税理士だって日常系税務でリーガルマインドを実践したい!
親族概念の、いてもいなくてもどっちでもいい奴感
森田宏樹「契約責任の帰責構造」(有斐閣2002) 〜印紙税法における「結果債務・手段債務論」の活用 
内面重視 〜ブログタイトル変更しましたのお知らせ
「リーガルマインドとは何か?」
税法・民法における行為規範と裁判規範(その1)
税法・民法における行為規範と裁判規範(その2)
税法・民法における行為規範と裁判規範(その3)
税法・民法における行為規範と裁判規範(その4)
税法・民法における行為規範と裁判規範(その5)
税法・民法における行為規範と裁判規範(その6)
税法・民法における行為規範と裁判規範(その7)

【判例イジり】
解釈の解釈を解釈する(free rider) 〜東京高裁平成30年7月19日判決
加算税をめぐる国送法と国税通則法の交錯(平成29年9月1日裁決)
解釈の解釈の終わり? 〜さらば東京高裁平成30年7月19日判決
横流しする趣旨解釈(TPR事件・東京高裁令和元年12月11日判決)
解釈の解釈は終わりました。〜最高裁令和2年3月24日判決【判例速報】
解釈の解釈の介錯 〜最高裁令和2年3月24日判決

【法律書マニアクス】
供え本(法学体系書編)
石田穣「民法総則」(悠々社1992・信山社2014)
人類は、差異を産み育むことでマニアとなる。 〜法律書マニアクス全開
潮見佳男「民法(全) 第2版」(有斐閣 2019)
法学研究書考 〜部門別損益分析論
積読ループ
「法律学大系」(有斐閣) 〜或るstalk。
白石忠志「技術と競争の法的構造」(有斐閣1994)
最近の気になる本

【法学入門書探訪】
横田明美「カフェパウゼで法学を―対話で見つける〈学び方〉」(弘文堂2018)
大屋雄裕「裁判の原点:社会を動かす法学入門」(河出書房新社2018)
道垣内正人「自分で考えるちょっと違った法学入門 第4版」(有斐閣2019)
大橋 洋一「社会とつながる行政法入門」(有斐閣2017)
団藤重光「法学の基礎」(有斐閣2007)
伊藤正己「近代法の常識」(有信堂1992)
南野森「ブリッジブック法学入門(第2版)」(信山社2013)
太田勝造「AI時代の法学入門 学際的アプローチ」(弘文堂2020)

【租税法の教科書】
税法思考が身につく、理想の教科書を求めて 〜終わりなき旅
金子宏・中里実「租税法と民法」(有斐閣2018)
中里実ほか「租税法概説 第3版」(有斐閣2018)
金子宏「租税法 第23版」(弘文堂2019)
岡村忠生ほか「租税法 (有斐閣アルマ) 」(有斐閣2017)
三木義一「よくわかる税法入門 第14版」(有斐閣2020)
渡辺徹也「スタンダード法人税法 第2版」(弘文堂2019)
田中二郎「租税法(第3版)」(有斐閣1990)
浅妻章如「ホームラン・ボールを拾って売ったら二回課税されるのか」(中央経済社2020)
酒井克彦「プログレッシブ税務会計論」(中央経済社2018)
「新 実務家のための税務相談(民法編) 第2版」(有斐閣2020)
伊藤滋夫編「租税訴訟における要件事実論の展開」(青林書院2016)
佐藤英明「スタンダード所得税法 第2版補正2版」(弘文堂2020)

【アクティブ・ラーニング】
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民1)
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民2)
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民3)
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民4)
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民5)
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民6)
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民まとめ)

【税務】
あるべき税理士
肩たたき券取引と税務
税金(国税)の納付の仕方(いろいろ)
税金(地方税)の納付の仕方(いまいち)
あえて言おう!カスであると!(被用者・応募者側からみたみなし残業代)
税金(地方税)の納付の仕方(前進)

【法人税法】
税務における事前判断と事後判断 〜所得拡大促進税制の適否判定(また改正するので)
ふたりはプリキュア(後日テコ入れで増員) 〜グループ法人税制のおさらい〜
武器としての所得拡大促進税制 〜労働者にとっての。
ここがヘンだよ所得拡大促進税制 〜委任命令におけるゆらぎとひずみ
さらば所得拡大促進税制(Arrivederci) 〜評判良ければ続くやつ
みんな大好き!倒産防。 〜措置法解釈手習い
「定期同額給与」のパンドラ(やめときゃよかった)
西村美智子 中島礼子「組織再編税制で誤りやすいケース35」(中央経済社2020)

【所得税法】
色々な壁の話し(配偶者控除・配偶者特別控除)2018ver.
年末調整H29
社員割引
出張手当は節税になるのか?
支払調書における「支払金額」(支払の確定した金額)について
利子・配当・譲渡所得の課税方式の選択について(2020.2.24現在)

【消費税法】
消費税、免税とるって大変よ、という話(2018.1.11現在のルール)。
特定新規設立法人のインフィニティ感

【相続税法】
パラドキシカル同居 〜或いは税務シュレディンガーの○○
イタチ、巻き込み。 〜家なき子特例の平成30年改正
ヤバイ同居 〜続・家なき子特例の平成30年改正
関場修 山口暁弘「小規模宅地等の評価減の実務 第4版」(中央経済社2018)
タックスアンサーの中の譲歩と抵抗 〜小規模宅地等の特例を素材に
「要件書き込み」は趣旨解釈を駆逐する。〜小規模宅地等の特例を素材に
オーバーホール租税法・序論 〜小規模宅地等の特例を素材に
白井一馬「小規模宅地等の特例」(中央経済社2020)
僕たちは!出戻り保護要件です!! 〜家なき子特例の趣旨探訪1
ぼくたちは出戻り保護ができない。 〜家なき子特例の趣旨探訪2

【印紙税法】
私法の一般法とかいってふんぞり返っているわりに、隙だらけ。〜契約の成立と印紙税法
Janusの委任 〜成果報酬型委任と印紙税法
続・契約の成立と印紙税法(法適用通則法がこちらをみている)
続々・契約の成立と印紙税法(代理法がこちらをみている)
さよなら契約の成立と印紙税法 (結局いつもひとり)
魔界の王子と契約の成立と印紙税法
二段の推定と契約の成立と印紙税法 〜印紙税法における実体法と手続法の交錯
おかわり契約の成立と印紙税法(法人法がこちらをみている)

【地方税法】
無償減資で均等割下げ(節税系の記事ではなく)

【国際租税法】
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その1)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その2)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その3)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その4)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その5)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その6)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その7)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その8)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その9)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その10)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その11)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その12)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(まとめ)
井上康一・仲谷栄一郎「租税条約と国内税法の交錯 第2版」(商事法務2011)

【会計】
財務分析総論 〜稼ぐ、彼女の如く。
金子智朗「経営分析の超入門講座」(秀和システム2012)

【基礎法学】
「ポケット六法」は総合事項索引を倒さないと本体に攻撃が通らない 〜事項索引 de 勉強法
「法律学小辞典」の「小」は「小スキピオ」の「小」
ホッブズ「リヴァイアサン」 〜彼の設定厨。
田中成明ほか「法思想史」(有斐閣1997)
判例の機能的考察(タイトル倒れ)

【民法】
潮見佳男「新債権総論1・2(法律学の森)」(信山社 2017)
潮見佳男「基本講義 債権各論1 契約法・事務管理・不当利得」(新世社2017)
ユーのネームは。 〜「新注釈民法」と私
前田達明「続・民法学の展開 (民法研究 第三巻)」(成文堂2017)
潮見佳男「詳解 相続法」(弘文堂2018)
平井宜雄「債権各論I上 契約総論」(弘文堂2008)
内田勝一「借地借家法案内」(勁草書房2017)
米倉明「プレップ民法(第5版)」(弘文堂2018)
池田真朗「スタートライン債権法(第7版)」(日本評論社2020)
窪田充見「家族法 第4版」(有斐閣2019)
時効の中断・停止から時効の完成猶予・更新へ
ドキッ!?ドグマだらけの民法改正
どんな子にも親に内緒のコトがある。 〜民法98条の2の謎に迫る(迫れていない)
後藤巻則「契約法講義」(弘文堂2017)
加賀山茂「求められる改正民法の教え方」(信山社2019)
内田貴「民法3(第4版)債権総論・担保物権」(東京大学出版会2020)

【会社法・商法】
前田庸「手形法・小切手法入門」(有斐閣 1983)
川口恭弘「金融商品取引法への誘い」(有斐閣2018)
近藤光男「商法総則・商行為法 第8版」(有斐閣2019)
関俊彦「商法総論総則」(有斐閣2006)
小塚荘一郎,森田果「支払決済法 第3版」(商事法務2018)
高橋美加ほか「会社法(第2版)」 (弘文堂2018) 〜付・税理士と会社法の教科書
大垣尚司「金融から学ぶ会社法入門」(勁草書房2017)

【労働法】
下井隆史「労働基準法 第5版」(有斐閣2019)

【民事訴訟法】
新堂幸司「民事訴訟制度の役割」(有斐閣1993)
新堂幸司「新民事訴訟法 第6版」(弘文堂2019) 〜付・民事訴訟法と税理士

【知的財産法】
システム開発における先行者利益について
田村善之「知財の理論」(有斐閣2019)

【破産法】
小林秀之「破産から新民法がみえる」(日本評論社 2018)
美人若女将連続バラバラ租税債権 〜犯人は破産法

【憲法】
大島 義則「憲法ガール Remake Edition」(法律文化社 2018) 〜あわよくばSuccubus。
戸松秀典「憲法」(弘文堂 2015)
ミシェル・トロペール(南野森訳)「リアリズムの法解釈理論」(勁草書房2013)

【刑法】
井田良「入門刑法学・総論」(有斐閣2018)ほか
井田良「講義刑法学・総論 第2版」(有斐閣2018)
井田良「講義刑法学・各論 第2版」(有斐閣2020)
辰井聡子「因果関係論」(有斐閣2006)
裁判所職員総合研修所「刑法総論講義案 (四訂版)」(司法協会2016)
松澤伸「機能主義刑法学の理論―デンマーク刑法学の思想」(信山社2001)
安田拓人ほか「ひとりで学ぶ刑法」(有斐閣2015)
小林憲太郎「ライブ講義 刑法入門」(新世社2016)
藤木英雄「公害犯罪」(東京大学出版会1975)
井田良「犯罪論の現在と目的的行為論」(成文堂1996)

【国際私法】
視野を広げるための、国際私法
多層的請求権競合論と、メロンの美味しいところだけいただく感じの。
野村美明「新・ケースで学ぶ国際私法」(法律文化社2020)

【弁護士と税理士】
弁護士事務所と税理士事務所(似ていない)

【酒撮り】
東洋美人(一番纏 純米大吟醸)【山口】
雄町(天吹・純米吟醸)+ 愛山(天吹・大吟醸)【佐賀】
夢+叶(東薫大吟醸)【千葉】
寿 満寿泉(大吟醸)【富山】
夢穂波(大吟醸)【岩手】
獺祭(純米大吟醸 磨き二割三分)【山口】
浜千鳥(純米大吟醸)【岩手】

【ガジェット】
Logicool G105(ゲーミングキーボード)
Logicool G300s(ゲーミングマウス)
刷り込み−会計ソフトの選び方
開放感−そして携帯端末の思ひ出
架空の思い出 −私とテレビゲームの。
ジオンはあと10年は戦える
モニ旅。 〜ぼくのPCモニター遍歴
Logicool G910R(ゲーミングキーボード)

【メンタル】
メンタル・ロック(mental lock)
「俺がガンダムだ!」
あなたの動機はどこから?
あなたは仕事に何を求めているのか。

【音楽と私】
チェリビダッケ&ミュンヘン・フィル/ブルックナー:交響曲第8番 ハ短調
シューリヒト&ウィーン・フィル/ブルックナー: 交響曲第9番
カイルベルト&ベルリン・フィル/ブルックナー:交響曲第9番
三上ちさこ「I AM Ready!」 〜付・音楽と私

【日記】
神宮詣
定規か電卓か、いや定規と電卓だ。
俺のいちごミルクフォルダが火を噴くぜ 2017
カテゴリラ 〜固めるテンプル
なぜ吸血鬼は自分の血を吸わないのか。 〜AI時代の吸血士のための生存戦略セミナー
ブログURL変更しましたのお知らせ
俺のいちごミルクフォルダが火を噴くぜ 2018
ネット古書店 購入お作法(含、小トラブルご報告)
俺のいちごミルクフォルダが火を噴くぜ 2019

【事務所案内】
はじめに
事務所名について
税理士事務所(個人)と株式会社の関係について
はじめます!!!
会社名の由来
なんでブログを書いているの?
サービスと対価(税理士報酬の場合)
圧倒的インプット
押収品
私たちのファームに新しいクルーがジョインしてくれました!!!!!!
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2021年12月31日

供え本(法学体系書編)

 「供え本」(そなえぼん)とは、読まなくてもよいからさしあたり書棚にお供え(備え)しておきなさい、という本です。

 一度も開かないまま、改訂版が出ても逐一悲しまない(繰り返し経験済み)。
 むしろ改訂版を出してくれたことを喜びましょう。
 持っててよかった、と思うときがくるかもしれないし。 

 ラインナップ、万人向けと個人的嗜好との葛藤が垣間見えるかもしれません。

【憲法】
戸松秀典「憲法 」(弘文堂2015)

【行政法】
宇賀克也「行政法概説1 第7版」(有斐閣2020)
宇賀克也「行政法概説2 第6版」(有斐閣2018)
宇賀克也「行政法概説3 第5版」(有斐閣2019)
宇賀克也「地方自治法概説 第8版」(有斐閣2019)
藤田宙靖「新版 行政法総論 上巻 」(青林書院2020)
藤田宙靖「新版 行政法総論 下巻 」(青林書院2020)

【民法】
中田裕康「債権総論 第4版」(岩波書店2020)
中田裕康「契約法 」(有斐閣2017)
奥田昌道,佐々木茂美「新版 債権総論 上巻 」(判例タイムズ社2020)

【会社法・商法】
江頭憲治郎「商取引法 第8版」(弘文堂2018)
黒沼悦郎「金融商品取引法 第2版」(有斐閣2020)

【民事手続法】
伊藤眞「民事訴訟法 第7版」(有斐閣2020)
新堂幸司「新民事訴訟法 第6版」(弘文堂2019)
中野 貞一郎,下村 正明 「民事執行法 」(青林書院2016)

【倒産法】
伊藤眞「破産法・民事再生法 第4版」(有斐閣2018)
伊藤眞「会社更生法・特別清算法 」(有斐閣2020)

【刑法】
裁判所職員総合研修所「刑法総論講義案 四訂版」(司法協会2018)
西田典之,橋爪隆「刑法各論 第7版」(弘文堂2018)

【刑事手続法】
酒巻匡「刑事訴訟法 第2版」(有斐閣2020)
三井誠,酒巻匡「入門刑事手続法 第8版」(有斐閣2020)

【租税法】
金子宏「租税法 第23版」(弘文堂2019)

【労働法】
菅野和夫「労働法 第12版」(弘文堂2019)

【知的財産法】
中山信弘「著作権法 第3版」(有斐閣2020)
中山信弘「特許法 第4版」(弘文堂2019)

【独占禁止法】
白石忠志「独占禁止法 第3版」(有斐閣2016)

【信託法】
新井誠「信託法 第4版」(有斐閣2014)
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2020年11月30日

ぼくたちは出戻り保護ができない。 〜家なき子特例の趣旨探訪2

 前回の記事で、「家なき子特例、出戻り保護してなくね?」と疑問を呈しました。
 今回は、そこから先の掘り下げです。

【小規模宅地等の特例】
パラドキシカル同居 〜或いは税務シュレディンガーの○○
イタチ、巻き込み。 〜家なき子特例の平成30年改正
ヤバイ同居 〜続・家なき子特例の平成30年改正
関場修 山口暁弘「小規模宅地等の評価減の実務 第4版」(中央経済社2018)
タックスアンサーの中の譲歩と抵抗 〜小規模宅地等の特例を素材に
「要件書き込み」は趣旨解釈を駆逐する。〜小規模宅地等の特例を素材に
オーバーホール租税法・序論 〜小規模宅地等の特例を素材に
僕たちは!出戻り保護要件です!! 〜家なき子特例の趣旨探訪1

【条文】
租税特別措置法69条の4
租税特別措置法施行令40条の2

【タックスアンサー】
No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

【家なき子の取得者要件】
(原則要件)
 1   被相続人に配偶者・同居法定相続人がいない
 2−1 相続前の3年間に
    ア 自分と自分の配偶者
    イ 三親等内の親族
    ウ 特別の関係がある法人
    の持ち家に住んでいない
 2−2 相続開始時に住んでいる家を過去所有したことがない
 3   相続から申告期限まで継続保有

(除外要件)
 2−1 「相続開始直前に被相続人の居住の用に供されていた家屋」は除く


  以下、相続人A、配偶者なし、長男B(同居)、次男C(家なき子)とします。


 前回の記事で家なき子特例の各要件を検討してみたところ、いずれの要件とも本気で「出戻り」を保護する気がなさそうに思えました。

 そもそも、出戻りを保護するならば、要件の組み立てとしては直接、
  ・出戻ったらOK
または、
  ・出戻る見込みならOK
とするのが素直でしょう。

 出戻りと直接関係のない回りくどい要件をあれこれ要求したところで、《出戻り促進税制》にはなりません。
 要件3以外は「ない」「ない」「ない」と、何か見えない敵から家なき子特例を守ろうと一生懸命で、肝心の出戻りそのものを積極的に保護しようとする気がない。

 「よーしお父さん、はりきって出戻り保護しちゃうぞー」とか言ってこんな消極要件詰め合わせを持ってきたら、娘からガン無視されること必定。
 金持ちCさんがよくて貧乏Cさんがダメな理由は、一体なんなのおじさん。

 「特例クイズ!一体何を保護しているのでしょ〜う、か!?」

 とかいって、何の特例かをいわずに要件だけを順番に出していっても、最後まで誰も正解できないんじゃないですかね。
 一般正解率、たぶんこんな感じ。

 第1問 原則要件1   一般正解率0%
 第2問 原則要件2−1 一般正解率0%
 第3問 原則要件2−2 一般正解率0%
 第4問 原則要件3   一般正解率0%
 第5問 除外要件2−1 一般正解率0%

 むしろ、相続直前で持ち家に住んでいようが、過去所有していた家に住んでいようが、将来出戻るなら適用受けられる、と設計したほうが、出戻り促進に資するでしょうよ。

 なお、「見込み」なんてあやふやな要件、課税要件としては許容できない、と思った方。
 もしいらしたとしても大丈夫です。
 組織再編税制における適格要件などという大事な要件で、支配継続の「見込み」が要求されていることに対して、定評のある教科書では、

 「事後の事情を考慮しないという意味で、法的安定性を重視した結果として評価できる」

などという評価が出されていますから、安心してください!安定していますよ!

中里実ほか「租税法概説 第3版」(有斐閣2018)


 同居者がいないとか持ち家がないという制約条件は、一見すると、保護すべき出戻りとそうでないものを選別しているようにみえるかもしれません。
 が、前回事例をあげて検討したとおり、規制範囲が雑すぎて、実際の出戻りを保護できなかったり、逆に出戻りするつもりのないものを保護したり、結論がめちゃくちゃでした。
 単純に、狭すぎるとか広すぎるというのではなく、いびつ(流行り言葉でいうと、偽陰性と偽陽性の両パターンあるということ)。

 が、めちゃくちゃ・いびつという評価は、あくまでも同特例を「出戻り保護」だという色眼鏡で見るから出てくるものにすぎません。
 なにか別の理由付けが見つかれば、救われる可能性はある(といいながら、私はもはや無理だと思う)。

 一応、要件を標語チックに書いておきましょう。

 1   同居者がいたら譲ってあげましょうね。
      でも二世帯住宅の場合はワンチャンあるから諦めないで。
 2−1 自分や親しい者の持ち家に住むのはやめましょう。
      直前に引っ越しても間に合わないので引っ越すならお早めにどうぞ。
      どれだけ不動産持っていてもいいから、とにかく自分で住むのだけはやめてね。
 2−2 自分が昔持っていた家に住むのはやめましょう。
      住んだことがなくても、一瞬でも持っていたらダメだからね。
      もし今住んでいるなら、相続直前にでも引っ越しましょうね。
 3   申告期限までは売らないでね。
      そのあとはどうぞご勝手に(ニヤリ)。

 なんなのこいつら。あらためて、同じ一つの制度の中の要件同士とは思えない。
 出戻り保護標語コンクールに応募したら、こいつら全員落選だわ。

 ちなみに、除外要件2−1はというと、

 除外要件2−1 でも被相続人が住んでいたところなら大丈夫だよ。

と、一人だけ全く性格が違う(イチジ・ニジ・ヨンジとサンジの関係)。
 でも、この子にしても出戻りを要求しているわけでもないので、そもそもデモコン(出戻り保護標語コンクール)への参加資格がない。

 週刊「家なき子特例」。
 毎号付属の要件を組み立てると出戻りを保護してくれる特例が完成する。創刊号は特別価格290円(税込)。
 という謳い文句だったのでウキウキで定期購読していたのに、完成してもさっぱり出戻り保護機能が働かない。


 先に趣旨側を決め打ちしてから要件を解釈するの、正しいようでいて間違い、というのが私の見立て。

 正しくは、個別具体的な条文上の要件から制度趣旨を導き出す、その上でその趣旨解釈により要件の意味内容を充填する、というのがあるべき姿だと思います。
 実際の要件とは無関係な趣旨を勝手にどこかから持ち込んで、条文に書かれざる意味内容を要件に盛り込むの、解釈論を超えた「立法論」になっています。
 
  × 制度趣旨 ⇒ 要件解釈
  ○ 要件確認 ⇒ 制度趣旨 ⇒ 要件解釈

 これが、複数の要件のうち一つだけが「出戻り保護」とは逆方向を向いている、という場合に、他の要件と整合するように調整を施す、ならまだ有りだと思います。
 が、要件どれもこれもが出戻り保護のほうを向いていないのに、全員無理やり出戻り保護に向かせるのは"Over The Hermeneutics"でしょう。

 と、自分の中では考えていながらも、こんなの単なるスタンスの違いにすぎないかなあとも思っていたのですが、例の東京高裁判決が出たおかげで、税法分野における「趣旨からスタート」の実害がはっきりとしました。

横流しする趣旨解釈(TPR事件・東京高裁令和元年12月11日判決)

 同判決では、趣旨から勝手に要件を創設する、などという禁忌を犯しています。
 要件側から解釈をスタートする、というお作法を守らないから、支配関係のルールを完全支配関係にまで持ち込む、などという横流しを実現してやがる。

 「趣旨からスタート」派の方からすれば、東京高裁様も自分たちと同じ立場だ、ということで有利に援用するのかもしれません。
 が、書いてない要件を付け加えるの、書いてある要件に反する「反制定法解釈」と同罪ですからね。
 もちろん、「絶対的に」許されないというわけではありません。が、相当慎重にやるべきことであって、カジュアルに発動してよいものではない。


 非専門家向けに説明するためには、細かい要件を云々するより「出戻り保護」と決め打ちしたほうが分かりやすい、という意見もあるかもしれません。
 が、もしも前回記事の各事例におけるCさん(ただし金持ちCさん除く)から、「出戻り保護だときいていたのに、なんで自分の出戻りは保護されないんだ!」と詰められたら、説明できないですよね。
 「趣旨はCさん保護してあげましょうと言ってくれているんですが、要件の奴らがいうこときかなくってですね…」などと言い訳したところで、納得してもらえるとはとても思えない。
 やはり趣旨と要件が仲違いしているのがおかしいんですよ。

 ましてや税理士向けの実務書ならば、なおさら、実際の要件を説明できない制度趣旨を掲げるべきではないでしょう。

 これがたとえば、交際費の損金不算入の趣旨を「冗費の抑制」だとかいうのは、個別具体的な交際費該当性の判定にはさっぱり役立たないものの、少なくとも条文解釈の邪魔にはなることはないです。
 他方で、家なき子特例を「出戻り保護」といってしまうと、正確な要件理解を妨げることになります。

 上で標語チックに記述したあいつらに「出戻り保護しろや!」ていっても、全然言う事聞かなそうじゃないですか。
 というか、彼らだって「今日から君たちには出戻りを保護してもらいます。」とか言われたら、「え、俺たちが?無理じゃね?」という反応になるでしょうよ。

 エドワード(シザーハンズ)に「お前の愛する出戻り抱きしめてみろよ」と煽るみたいな。
 珍妙な喩えと思うかもしれませんが、もし本当に家なき子特例の核に「デモドリ姫」が実在していたとしたら、要件2−1(右シザー)と要件2−2(左シザー)にズタズタに引き裂かれて瀕死の重傷な姿が、私にはありありと思い浮かぶ(ものすごい妄想力ですね)。
 瀕死の姫を救うには、聖剣や秘石などによる奇蹟(立法論に相当)に賭けるしかない(いろんなテイルズ要素が混入)。

 でも大丈夫。実際にはそんな姫いないから。

 『一体いつから 鏡花水月を遣っていないと錯覚していた?』


 制度趣旨はあくまでも「出戻り保護」であってイタチごっこ改正のせいで歪になっているだけだ、という見方も可能かもしれません。
 が、イタチな要件のせいで出戻り保護が侵食されているのだとしたら、もともとの制度趣旨はもはや維持できない、と考えるほうが素直でしょう。
 そして、条文が解釈を施せないほど明確になってしまった以上、出戻り保護へ回帰させるのは立法論として展開するっきゃない。

 すでに重機が入ってあちこち掘り起こされているにもかかわらず、「ここは旦那様がいた頃の美しい庭園のままだ。」などと、在りし日のあの頃を思い浮かべている老庭師が思い浮かぶ。

 白井一馬先生が「組織再編税制」に対する評価として述べている『マニュアル化』、家なき子特例もそうみたほうがいいんじゃないですかね。


 立法担当者が開陳する見解、というのも必ずしもあてにならない。

 たとえば民法415条但書の帰責事由について、契約(=合意)を重視するか取引上の社会通念も重視するか、すでに解釈割れてますからね。改正したばっかりだというのに。
 それを外野が云々するならともかく、立法に関与した人の中でも争われているという。

民法第四百十五条(債務不履行による損害賠償)
 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

 そうすると、やはり出来上がった文言をベースに解釈するしかないでしょう。
 この場合だと、文言上優先劣後の関係をつけているわけではないのだから、どちらも重視すべきと解釈すると。


 さて、ここまで検討してきたのは、「家なき子特例」の立法趣旨などという極めて限局された論点にとどまります。
 が、その背後には、実は壮大な物語が広がっています(神々の大地)。

 そこで次回最終回では、壮大な物語へのプレリュードを奏でてみたいと思います(プレリュードなのに最終回なのは、未完成交響曲を意識)。

 ということで、恒例の次回予告ワード。

 ・牧歌的な草食系、脳筋な肉食系
 ・要件増し増し
 ・クリーチャー化
 ・英霊同士の抗争
 ・みんな大好き「租税法律主義」
 ・立法担当者ちゃん
 ・大平原に着々と高層ビルが建設されていく
 ・文言アゲ・趣旨サゲ
 ・お作法無視の飛び道具的判決
 ・条文突き破った裁判チャレンジ
 ・小難しい法曹解釈お作法
 ・剥き出しのアンパンマン
 ・こいつ裁判所の役割を完全放棄しやがった

(せっかく大げさな惹きで煽ったのに、これら用語で台無し)
posted by ウロ at 00:00| Comment(0) | 相続税法

2020年11月23日

僕たちは!出戻り保護要件です!! 〜家なき子特例の趣旨探訪1

 前回の予告どおり。予告詐欺にならずに済みました(しかし、以下の検証の結果タイトル詐欺となります)。

白井一馬「小規模宅地等の特例」(中央経済社2020)

 前回の記事で、当該書籍に記載の「立法趣旨」に疑問があると書きました。

 それは「家なき子特例」のところ。
 ただ、私が読み違えているだけかもしれませんので、以下では本書とは独立した一般的な見解、として検討します。


 家なき子特例特例の趣旨について、一般的に『いずれ被相続人と同居する予定だった者の居住の保護』だといわれることがあります(以下、これを「出戻り保護」と称します)。
 が、実際の取得者要件を見る限り、そのような趣旨にそった要件になっていないように思います。

【家なき子の取得者要件】
(原則要件)
 1   被相続人に配偶者・同居法定相続人がいない
 2−1 相続前の3年間に
    ア 自分と自分の配偶者
    イ 三親等内の親族
    ウ 特別の関係がある法人
    の持ち家に住んでいない
 2−2 相続開始時に住んでいる家を過去所有したことがない
 3   相続から申告期限まで継続保有

(除外要件)
 2−1 「相続開始直前に被相続人の居住の用に供されていた家屋」は除く


 順番に考えてみましょう。
 以下では、被相続人A、配偶者なし、長男B(同居)、次男C(家なき子)とします。

【小規模宅地等の特例】
パラドキシカル同居 〜或いは税務シュレディンガーの○○
イタチ、巻き込み。 〜家なき子特例の平成30年改正
ヤバイ同居 〜続・家なき子特例の平成30年改正
関場修 山口暁弘「小規模宅地等の評価減の実務 第4版」(中央経済社2018)
タックスアンサーの中の譲歩と抵抗 〜小規模宅地等の特例を素材に
「要件書き込み」は趣旨解釈を駆逐する。〜小規模宅地等の特例を素材に
オーバーホール租税法・序論 〜小規模宅地等の特例を素材に

【条文】
租税特別措置法69条の4
租税特別措置法施行令40条の2

【タックスアンサー】
No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)


 要件1:被相続人に配偶者・同居法定相続人がいない

 配偶者・同居法定相続人(以下「同居者」といいます)がいないというのは、Cの出戻りの「露払い」のために必要かに思えます。
 が、次のような事例をイメージしてみましょう。

【事例1】
 BはAを介護するためAとガチ同居していたがAが亡くなった。
 Bは念願の夢だった海外移住をするため現金を相続し、A宅はCが相続・居住し実家を守ってもらうことにした。

 この場合、BはもちろんCも特例を受けることはできません。Bがガチ同居していたせいで。
 Cが「実際に」出戻りしているにも関わらずです。

 そもそも、相続時点で同居者がいる/いないと、Cが将来出戻る予定があるかどうかに直接の連関はありません。
 いないほうが出戻りしやすい、くらいの遠くて薄い関係。
 実際にCが出戻れるかどうかは、Bが相続後に居住を継続するつもりかどうかにかかっています。

 とすると、要件1はCの出戻りの要保護性の問題ではなく、同居者にCよりも優先的に適用を受けさせるための規定、と理解すべきでしょう。
 としても、事例1のように、Bが適用受けるつもりがなくてもCが排除されてしまうのは何なのか。
 せっかくBに受けさせてあげようとしたのに、受けないっていうならもう誰にも受けさせねえぞとへそ曲げちゃって。

 他方で、ここで「ガチ同居/なんちゃって同居」と同居概念を分裂させると、同居者の優先保護は途端に雲行きが怪しくなる。

【いろんな同居】
a どの範囲で特例の適用を受けられるかを判定するときの同居
 ⇒一棟の建物で判定 (令40条の2第4項)
b 同居親族が適用を受けるために、同居しているかを判定するときの同居
 ⇒一棟の建物で判定 (法69条の4第3項2号イ)
c 家なき子が適用を受けるために、他の相続人が同居していないかを判定するときの同居
 ⇒独立部分で判定 (通達69の4-21)
d 家なき子が適用を受けるために、被相続人が居住していたかを判定するときの居住
 ⇒???

 aとcの組み合わせにより、二世帯住宅(区分所有なし)のB居住箇所にも家なき子特例が適用できてしまいます。
 本来Bを優先させるためにはたらく要件1が、a+cルールで骨抜きにされている。
(だとすると、cは通達ルールにすぎないので法令解釈として間違い、と判断される可能性もありえます。が、おそらく問題はcだけにあるのではなく、各要件がうまく連動していないことにあると思われます。)

 で、同居特例と家なき子特例が重複する場合には両適用可能者間での特例奪い合いが勃発し、遺産分割デッドロックへ突入(丸の内サディスティックを意識)。

 ここで想起されるのは、節税屋さんがBに対して「ガチ同居しなくても小宅いけるよ。」とか言ってわざわざ二世帯住宅(区分所有なし)に建て替えさせた後、Cから「俺も受けられるらしいな。」などと言われる事態になること。
 税理士がBCから申告依頼を受けたとしたら、もしCが気づいていなかったとしても適用できることを説明すべきしょうし。

 なんにしても、要件1はCの出戻り保護を積極的に根拠付けるものではない。


 要件2−1ア:相続前の3年間に自分と自分の配偶者の持ち家に住んでいない
 
 本人(と配偶者)に持ち家あったらそりゃダメでしょ、と思うかもしれません。
 が、次の事例はどう感じるでしょうか(以下、「持ち家」とは自己所有の建物に居住していることを表します)。

【事例2】
 C宅は築古の中古狭小住宅。
 リフォームしようとコツコツ貯金をしていたが、Aが障害を負いA宅をバリアフリー化しなければならなくなった。
 そこで、Cは自分の貯金を使い果たしてA宅をリフォームしてあげた。が、二世帯住宅にするまでの資金は出せなかった。
 Aが亡くなったので、A宅へ引っ越すことにした。C宅はわずかばかりの代金で売却したが、建物取壊費用でむしろマイナスとなった。

 皆さんお分かりの通り、C宅がどんなものであろうと、他に何ら財産を保有していなかろうと、自宅を所有しているかぎりはダメなんです。

【事例3】
 Cは多数の不動産収益物件を抱えていてウハウハである。
 なのに、Cの住居は自己所有ではなく、とある高級賃貸マンション(レジデンス)である。
 Aは一人暮らしのためCに同居してほしかったが、Cに拒絶され続けたまま亡くなった。

 同じ記号「C」なのに所得格差ありすぎですね(金持ちCさん貧乏Cさん)。
 高低差ありすぎて耳キーンてなりますでしょうか?

 C宅が第三者所有であるかぎり、どれだけ他に居住用不動産をかかえていようが、家なき子特例を使うことができます。
 ので、本件のA宅は、お安くCの不動産投資グループの一員となることができます。


 さて、事例2と事例3を並べてみて、要件2−1アは一体何を同特例から排除しようとしたのか、分かりますか?
 「持ち家がない」だけを要求して、その持ち家がどんなものか、持ち家以外の財産がどれくらいあるか、といった事情を一切考慮していないわけです。

 しかも持ち家があるとかないとか言っているの、あくまで「建物」だけの問題で、「土地」は自己所有でもいいことになっています。
 自分の土地に第三者に建物を建ててもらって住み続ける、というのが、特例狙い以外で一般的にあり得るのかどうか想像しにくいですが、規定上は建物さえ他人なら適用OKということです。
 土地活用ってことで借地権を設定してデベロッパーに高層マンションを建築してもらう、自分はそのうちの一室を賃借して住む、といった場合とかですか。


 この、相続時点で持ち家がある/ないという事情が、Cの出戻りの要保護性に影響を及ぼすでしょうか。
 事例2と事例3とでは、持ち家のある/なしと、出戻りの要保護性が反比例しています。
 これら事例は極端、だとしても、一般論として、相続時点の持ち家の存否が出戻りの要保護性に連動するといえるのかどうか。


 ましてや「3年」経てばいいというのも、それによって出戻りの要保護性が高まるとは思えないんですけど。

【相続時点で】
 × 持ち家に住んでいる
 × 持ち家に住んでいた(3年以内)
 ○ 持ち家に住んでいた(3年経過)
 ○ 持ち家に住んでいない(はじめから)

 この点、「事業用」や「貸付用」が3年縛りを要求するのは分かる。
 これまで一定期間にわたり事業等を続けてきたことの見返りであって、これから初めますじゃだめってことですよね。

 ただし誤解してはいけないのは、これらの継続が要求されているのはあくまでも「申告期限まで」ってこと。それ以降も事業継続していくことやその見込みすらも要件ではない。

 ので、これら制度の趣旨を「事業継続」というのは不正確。そのように捉えてしまうと、申告期限後も事業継続しなければならないと、過剰に誤解するおそれがある。

 とはいえ、相続したらすぐ止めていいわけでもなく、申告期限までは続けてねとなっていると。
 この、相続〜申告期限までの期間限定なことをどうにか整合的に説明するならば、

  ・できれば事業残してもらいたいな。
  ・でも、いきなりの相続だし難しい、かな。
  ・よしじゃあ、期間限定お試しでってなら大丈夫、だよね。
  ・続けられそうなら続けて欲しいけど、無理はしないでね。

 こんな感じになるでしょうか。
 立法担当者の当初の心積もりは、本気で事業継続を促進したかったのかもしれません。が、実際に出来上がった中途半端な要件に即した説明をしようとするならば、こういう説明にならざるをえない。

 ところが、こんな優しい気遣いお構いなしに初めから転売予定で相続したとしても、申告期限まで我慢しさえすれば要件は満たせてしまう。
 できれば継続して使ってね、というつもりで試供品を配ったのに、分解されて使えるパーツだけ転売されちゃうみたいな話。

 実は上記説明でもまだ、無理して事業継続におもねった内容にしています。
 実際の要件にピッタリと収まるような説明をするならば、「いきなり事業放置されるとその事業に関わってきた人達が困るから、せめて、せめて申告期限までは続けてね。」となります。
 なかなかの後退っぷりですが、要件を過不足なく説明するにはこう言うしかないんじゃないですか。


 ちなみに、このタイプの誤解を何の躊躇いもなく開陳しているのが、下記記事の「79 財産分与」のところ。
 離婚直前に居住用財産の贈与特例つかうのは法の趣旨にそぐわない、とか言っちゃっている。

アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民6)

 なおこの本、第2版が出るらしいですが、編集方針が変わって「新々」にでもならないかぎりは、もはや読むつもりはないです。
 皆さんはぜひ、私のツッコミも含めてアクティブ・ラーニングの材料にして、チャレンジしていただければと思います。



 新 実務家のための税務相談(民法編)〔第2版〕(有斐閣2020)


 さて話は戻って、3年他人の家に住めば出戻りOKという点。

 なぜおかしいと感じるかといえば、「将来の」出戻りを保護するというのに、なぜ「過去の」他人の家への居住実績を要求するのか、というところにあるのでしょう。
 自社PRで「うちの会社は出戻りに手厚いよ!」と書いてあるからてっきり未来志向な会社かと思って面接にいったら、面接官にやたらと過去どこに住んでいたかを聞かれた、みたいな。
 え、これから出戻りするつもりがあるかどうか、全然聞かないんですか?

 出戻り保護という先入観を外して、この3年縛りを文字通りに理解するならば、『他人の家に3年住めば、見返りとしてAの家をお安く相続させてあげるね』と理解することになりますか。

 自分で書いておいてなんですが、何なのこれ?


 要件2−1イウ:相続前の3年間に三親等内の親族・特別の関係がある法人の持ち家に住んでいない

 アですらよく分からないのだから、イウなんてなおさら謎(ウは省いてイのみ検討します)。

 公式で想定している典型例は、《Cと一緒に住んでいる未成年孫Dへの遺贈》を適用不可とすること。

 が、実際の規制範囲は孫(=Cの一親等親族)にとどまらず、かなり広範囲。
 しかも、CD間に「同居」や「生計一」も「無償性」も要求されないので、単に親族関係があるというだけでアウト。

【事例4】
 Cは、叔父さん(三親等親族)がやっている賃貸マンションの一室に相場通りの賃料で住んでいた。

 叔父さんが不労所得でウハウハであることが、Cの出戻りとなんの関係があるというのか。
 叔父さん所有マンションに住むか、第三者所有マンションに住むかで、Cの出戻りの要保護性に違いがあるとは思えませんけど。

 C本人と同一視できる範囲内ならまだしも、ここまで広範囲に拡張した時点で、なにか別の考慮要素が入り込んだ、と考えるしかないでしょう。

 もう一つ事例あげておきます。

【事例5】
 Aに介護の必要が生じたが、A宅は手狭なため、Cは隣のA所有家屋へ引っ越した(生計別、建物別)。

 被相続人も「三親等内親族」に含まれるという罠。そしてこの罠に華麗に引っかかっているのが、最初にリンクを張った記事の本(ドッキリを仕掛けられる側のプロみたいな感じ)。



 被相続人(親)が三親等内親族に含まれるのは、言われてみれば当たり前のことであって、「罠」などというのは言いがかりかもしれません。
 が、ちゃんとした税理士法人がちゃんとした出版社から出版した本ですら欺かれているわけで。

 罠が言い過ぎなら、「人間の先入観を利用した意地悪ななぞなぞクイズ」とでも言っておけばよろしいでしょうか。

 そして、別居・生計別・建物別と揃ってしまうと、詰み。除外要件2−1も作動しない。

 ここまでくると、一体何から家なき子特例を守ろうとしているのか、もう訳がわからないよ。
 村が滅んだ後もプログラム通りに村を守ろうとする古代文明のロボットかよ(冗長な喩えツッコミ)。


 要件2−2:相続開始時に住んでいる家を過去所有したことがない

 公式が想定する典型例は、《持ち家を他人に名義移転しておきながら住み続ける場合》を適用不可とする、というもの。

 が、ここでも「譲渡取引の合理性」「居住の無償性」「譲渡前からの居住の継続性」といった事情を要求しておらず、単に昔所有していた家に住んでいる、ということだけでアウトになります。
 昔所有していた家に住んでいることそれ自体が、将来の出戻りを保護しない理由になるとはとても思えません。

 他方で、要件2−1と違って本人以外所有ならOKなのも謎。


 要件3:相続から申告期限まで継続保有

 申告期限まで「所有」するだけでいいと。
 申告期限までに実際に出戻ることまで要求しないにしても、出戻る「見込み」すら要求していません。

 ので、相続直後から他人に貸し出してもいいし、申告期限後なら売却することすら可能です。
 仮に、二世帯住宅(区分所有なし)に「なんちゃって同居」しているBがいたとしても、です。で、BがCと賃貸借契約を締結していなければ(引渡はある)、買主には居住権を対抗できないでしょう(The 地震売買)。
 もちろん、民法上の例外則の発動はありうるでしょうが。


除外要件2−1:「相続開始直前に被相続人の居住の用に供されていた家屋」は除く

 この要件、次のような事例を想定するなら意味は分かる。

【事例6】
 Aの土地にCが建物を建ててACが同居していた。Cが転勤で借家住まいとなり、Aが一人暮らしになって寂しくなったのか、すぐに亡くなってしまった。

 Cは自分の持ち家に住んではいたけど、そこではつい最近までAと同居していたわけです。
 ので、この場合のCを保護すべき、というのは納得はいきます。

 ただ、「同居」と書いていることからも分かるとおり、これはどちらかといえば「同居特例」の系列です。
 「同居特例」から漏れ出づる「さっきまで同居」を保護しているだけで、「出戻り」とは毛並みが違う。

 他方で、次の事例のように「同居」要素がない場合でも、この要件を使うことが可能です。
 
【事例7】
 Aは自分の土地に建物(旧)を建てて住んでいたが、Cが同建物を取り壊して同土地上に建物(新)を新築した。
 AはCが新建物で同居させてくれるものと思っていたが、CはAにボロアパートをあてがい、新建物にはC一人で住んだ。
 Cが転勤することになったので、Aに新建物に住まわせて維持管理をさせることにした。
 高齢の一人暮らしには住みにくい造りであったり、慣れない環境であったこともあってか、Aは居住後すぐに亡くなってしまった。

 書いているだけでなかなか胸くそ悪くなる事例ですね。もっと盛れそうですがこの程度にします。

 この事例で何が言いたいかというと、CはAと同居する必要はないってことです。

  C居住開始⇒C借家転居⇒A居住開始⇒A死亡(C転居から3年以内)
 と、居住期間がかぶっていなくても要件満たせます。

 この事例に関しては、事実認定の問題として、Aの「居住」を否定する、という考えもありうるかもしれません。
 が、他に住むところがなかったならば、やはり同建物に居住していたというしかないですよね。
 《心のふるさと》理論で、「Aの真の住処はすでに取り壊されてこの世に存在しない旧建物にある」とでもいいますか。

 そもそもこの要件、「同居」なんてことは一言も言っていない。
 単に相続時にAが居住していればいいだけ。ので、こんな胸くそ事例でも適用ができてしまう。
 ゴリゴリの親不孝案件だというのに、Aを住まわせておけばそれでいいんだと。

 原則要件と除外要件の両面が揃っているのだから、そこから何がしかの趣旨が見えてきそうなものですけど、私にはさっぱりわかりません。


 以上、家なき子特例における各要件と出戻り保護との親密度を検証してみました。
 結果、「なんか関係なくね?」というのが私の抱いた感想。

 このズレが生じる原因、要件見ないで先に趣旨を決め打ちしちゃうところにあると思うのですが、次回でこのあたりを掘り下げます。
 前回に引き続き、次回予告としての意味深なキーワード列挙をどうぞ。

 ・よーしお父さん、はりきって出戻り保護しちゃうぞ
 ・消極要件詰め合わせ
 ・特例クイズ!一体何を保護しているのでしょ〜う、か!?
 ・安心してください!安定していますよ。
 ・偽陰性と偽陽性
 ・出戻り保護標語コンクール
 ・週刊「家なき子特例」
 ・Over The Hermeneutics
 ・ただし金持ちCさん除く
 ・今日から君たちには出戻りを保護してもらいます
 ・お前の愛する出戻り抱きしめてみろよ
 ・デモドリ姫
 ・いろんなテイルズ要素
 ・一体いつから 鏡花水月を遣っていないと錯覚していた?
 ・イタチな要件
 ・壮大な物語へのプレリュード

 それでは次回、お楽しみに!
posted by ウロ at 00:00| Comment(0) | 相続税法

2020年11月16日

白井一馬「小規模宅地等の特例」(中央経済社2020)

 小規模宅地等の特例、第2期3部作で一区切りつけたはずでした。

【小規模宅地等の特例】
・第1期
パラドキシカル同居 〜或いは税務シュレディンガーの○○
イタチ、巻き込み。 〜家なき子特例の平成30年改正
ヤバイ同居 〜続・家なき子特例の平成30年改正

関場修 山口暁弘「小規模宅地等の評価減の実務 第4版」(中央経済社2018)

・第2期
タックスアンサーの中の譲歩と抵抗 〜小規模宅地等の特例を素材に
「要件書き込み」は趣旨解釈を駆逐する。〜小規模宅地等の特例を素材に
オーバーホール租税法・序論 〜小規模宅地等の特例を素材に

 が、白井一馬先生の本が出たということで、読んでみることに。



 白井一馬「小規模宅地等の特例」(中央経済社2020)

【条文】
租税特別措置法69条の4
租税特別措置法施行令40条の2

【タックスアンサー】
No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)


 以前の記事で、税務本には表ものと裏ものがある、ということを書きました。

【税務本の表と裏】 
西村美智子 中島礼子「組織再編税制で誤りやすいケース35」(中央経済社2020)

 本書は裏のほう。

 表本だけでは見落としがち・誤解しがちな箇所を、Q&A形式で解説してくれています。
 他方で、知識・情報が網羅されているわけではないので、本書だけで本特例を理解できるわけではない。
 あくまでも、表本で得た知識の補強・目地埋めとして利用するものです。

 また、「立法趣旨」を重視した記述をされているので、暗記に頼らない制度理解を進めることができます。
 ただし、その「立法趣旨」が本当に正しいか、疑問に思わないでもない箇所が。

 その疑問について、特例の立法趣旨の検討から始まって、一気に書き上げました。
 が、書評記事というにはあまりにも脱線しまくっていたり、もしかして私が読み違いをしているだけかもしれません。
 ので、次週以降に別記事として掲載いたします。

 意味深なキーワードを背景に流す次回予告のイメージで、登場する重要用語を列挙しておきます。
 ただし番組内容は変更する可能性があります(いわゆる次回予告詐欺)。
 
 ・露払い
 ・へそ曲げちゃって
 ・遺産分割デッドロック
 ・節税屋さん
 ・レジデンス
 ・金持ちCさん貧乏Cさん
 ・高低差ありすぎて耳キーン
 ・試供品
 ・うちの会社は出戻りに手厚いよ!
 ・ドッキリを仕掛けられる側のプロ
 ・人間の先入観を利用した意地悪ななぞなぞクイズ
 ・古代文明のロボット
 ・The 地震売買

 次回、お楽しみに!

僕たちは!出戻り保護要件です!! 〜家なき子特例の趣旨探訪1
posted by ウロ at 09:17| Comment(0) | 相続税法