2019年11月25日

藤木英雄「公害犯罪」(東京大学出版会1975)

 今様にいうと「環境犯罪」。
 公害に限らず「環境」という上位概念で括られる感じの。



藤木 英雄 公害犯罪(東京大学出版会1975)

 一応リンク貼ってありますけど、クレプラ(クレイジープライス)ならばさすがに買う必要はないと思います(当時の定価は980円)。

 さしあたりで藤木先生の著書を読むなら「刑法案内」で。
 2は板倉先生執筆らしくて私も未読ですけど、1のほうは原文が藤木先生なので。



 藤木英雄・板倉宏 刑法案内1・2(勁草書房2011)

 今どきの教科書では無視されがちな「誤想防衛=正当防衛説」とか主張されているんですが、ついつい説得されそうになる。
 ゴリゴリの結果無価値論から勉強をスタートさせた私ですら。

 要するに違法性と責任の役割分担の問題にすぎないのであって、適切に犯罪の成否が制御できるならば、違法性が無くなるといおうが、責任(故意)がなくなるといおうがどちらでもいいのではないか、というところまで、今は落ち着いてきています。

 ちなみに、タイトルに『案内』とあるのは、「勁草法学案内シリーズ」として括られている例のアレです。

【案内シリーズ】
内田勝一「借地借家法案内」(勁草書房2017)


 例によって、私の税理士実務にはさしあたり関わりはないです。

 なのですが、頭のいい人の書かれた文章を読むことで自分の頭をブラッシュアップする、という使い方。
 しかも、専門外の一般向けに書いてくれていますし。

【頭のいい人の文章を読む営みの例】
白石忠志「技術と競争の法的構造」(有斐閣1994)


 公害問題を目の前にして、「これでいいのか刑法理論」(当時の)といった問題意識から、新しい理論を提唱されています。
 今どきの教科書では枕詞的に安易に否定されがちな「危惧感説」とか。

 この危惧感説、今どきの教科書だと「責任主義に反し妥当でない」と軽く否定されて具体的予見可能性説の踏み台にされてしまっています(「俺を踏み台にした!? 」)。
 が、この説の主眼は、単に予見可能性を緩めるってだけの話ではないです。

 公害問題というのは、ちょっとの油断で広範囲に多大な被害が生じる可能性がある、という特徴があります。
 しかも因果経過は追いにくいし組織内の出来事だし、ということで、昔ながらの過失犯のように、具体的予見可能性まで要求していたら、ことごとく予見可能性が否定されてしまって、そして被害が拡大してしまうおそれがあると。

 そこで、危惧感にまで予見可能性を下げてもいいことにしましょうと、他方で、広がり過ぎな部分は結果回避義務のほうで調整をかけることにすると。
 というように、予見可能性を過失における独立の要素として捉えるのではなく、結果の重大性や結果回避義務との相関で要求水準がかわってもいいじゃん、というのが危惧感説の言わんとすることなんだと、私は思いました。

 ので、予見可能性を緩めている部分だけを取り出して批判するのは、正面からの批判になっていない。
 もっというと、因果関係論や組織犯罪論などといった、他の要素も含めた上での検討をしないといけないんじゃないかと。

 こんなことちゃんと書いてくれている教科書なかったじゃん、と思って、そういえば井田良先生が危惧感説を支持されていたなあ、と思い出して教科書を読み直したら、「結果回避義務関連性」という表現でしっかり書かれていました。

 読み込み足らず。

井田良「講義刑法学・総論 第2版」(有斐閣2018)


 しかしこの考え、ノリが我妻先生の「相関関係説」に似ていますよね。
 「違法性」の問題として論じられていたり考慮要素は当然違うし、ということではありますが。

 1つの要素を固定的に捉えるのではなく、他の要素との関係で可変する感じが似ている。

 ちなみに、相関関係説では「刑罰法規違反」を要素として取り込んでいるのですが、刑法上の過失との関係はどういうことになるんでしょうか。



 我妻 榮 事務管理・不当利得・不法行為(日本評論社1937)


 こういう本を読むにつけ、すべての犯罪に共通する要件を打ち立てるの無理がある気がします。
 今の「刑法総論」における議論の仕方に対する疑問。

 公害犯罪というのは、その特徴として、
  ・ちょっとのミスで広範囲に被害が広がる。
  ・しかもその被害が甚大。
  ・原因の特定が困難。
  ・組織犯罪であって特定の個人に帰責するのは無理がある。

といったことがあるわけです。

 にもかかわらず、「過失」なり「因果関係」といった概念は、旧来型の「個人対個人」の犯罪要件と同じ内容のものでいいのかどうか。

 もちろん、「因果関係が結果犯の犯罪成立に要求されるのはなぜか」といったそもそも論自体は共通だとは思います。
 が、その中身は犯罪類型だったり行為態様ごとに異なっていてもいいんじゃないかと。
 極端な話、ある場合は客観説で判断しある場合は主観説で判断する、ということがあってもいい気がします。

 実際のところ、刑法総論で議論されているときも特定の犯罪類型が念頭に置かれていて、すべての犯罪類型にその規範が使えるのかチェックしている形跡がないし。


 「総論・各論問題」については、このブログでもちらちらイジってきましたが、主として「法学教育」の観点からでした。
 初学者にとって、総論だけを先行して学習するのは理解しにくいと。

 が、そろそろ、総論の議論を一回各論側に還元して、総点検をしたほうがいいんじゃないですかね。
 部品を全部バラしてオーバーホールする感じの。
posted by ウロ at 10:53| Comment(0) | 刑法

2019年11月18日

加算税をめぐる国送法と国税通則法の交錯(平成29年9月1日裁決)

 どうにも理解しにくい裁決があったので、頭の整理のために記事にしておきます。
 (※以下、生煮え状態なのでもう少し考察すすめます。)

内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律第6条第2項の規定は国税通則法第65条第5項の規定の適用がある修正申告書にも適用されるとした事例(平成29年9月1日裁決)

公表裁決事例集No.108

 事例をめちゃくちゃ単純化すると、所得税で確定申告⇒修正申告⇒国外財産調書の順番で提出した場合、修正申告が調査通知前予知前であっても、国送法6条の過少申告加算税が課されるか、という問題。

 以下、用語は次の前提で使います。
  提出義務: 調書提出義務があるものとします。
  国外所得: 国送法の加算税の対象となる所得をいいます。
  確定申告: 国外所得なし、調書なしで申告
  修正申告: 漏れていた国外所得を追加して申告


 まずは関連条文。例によって極端に省略しています。
 正確にはリンク先へどうぞ。

国税通則法65条
内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(国送法)6条


国税通則法 第65条(過少申告加算税)

1 
期限内申告書が提出された場合において、修正申告書の提出があつたときは、

当該納税者に対し、その修正申告に基づき第三十五条第二項の規定により納付すべき税額に百分の十の割合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは、百分の五の割合)を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する。

5 
第一項の規定は、

修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合において、

その申告に係る国税についての調査に係る第七十四条の九第一項第四号及び第五号に掲げる事項その他政令で定める事項の通知(次条第六項において「調査通知」という。)がある前に行われたものであるときは、適用しない。


 国送法 第6条(国外財産に係る過少申告加算税又は無申告加算税の特例)

1 
国外財産に関して生ずる所得で政令で定めるものに対する所得税(以下この条において「国外財産に係る所得税」という。)に関し修正申告書の提出(以下この条及び第六条の三において「修正申告等」という。)があり、国税通則法第六十五条の規定の適用がある場合において、

提出期限(前条第一項の提出期限をいう。以下この条において同じ。)内に税務署長に提出された国外財産調書に当該修正申告等の基因となる国外財産についての同項の規定による記載があるときは、

同法第六十五条の規定による過少申告加算税の額は、これらの規定にかかわらず、これらの規定により計算した金額から当該過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に百分の五の割合を乗じて計算した金額を控除した金額とする。

2 
国外財産に係る所得税に関し修正申告等があり、国税通則法第六十五条の規定の適用がある場合において、

前条第一項の規定により税務署長に提出すべき国外財産調書について提出期限内に提出がないときは、

同法第六十五条の規定による過少申告加算税の額は、これらの規定にかかわらず、これらの規定により計算した金額に、当該過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に百分の五の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする。

4 
前条第一項の規定により提出すべき国外財産調書が提出期限後に提出され、かつ、修正申告等があった場合において、

当該国外財産調書の提出が、当該国外財産調書に係る国外財産に係る所得税についての調査があったことにより当該国外財産に係る所得税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは、

当該国外財産調書は提出期限内に提出されたものとみなして、第一項又は第二項の規定を適用する。



 これら規定を単純に図式化すると、

  A 通則法65条1項:修正申告
           ⇒過少申告加算税を課すよ
  B 通則法65条5項:修正申告+調査通知前・予知前
           ⇒過少申告加算税を課さないよ

  C 国送法6条1項:修正申告+通則法65条適用あり+期限内調書
           ⇒過少申告加算税を減らすよ
  D 国送法6条2項:修正申告+通則法65条適用あり+期限後調書or調書なし
           ⇒過少申告加算税を増やすよ

  E 国送法6条4項:修正申告+期限後調書+予知前
           ⇒ 期限内調書とみなすよ

という感じ。


 で、この事例では、Bで加算税なしかと思いきやDで加算税ありになるのか、という論点。

 裁決では争点を2つ設定した上で、次の結論。

争点1
 Dは、Bの適用がある修正申告書に適用されるか

 ⇒適用される
争点2
 修正申告書提出後の国外財産調書は、Eにより提出期限内に提出したものとみなされるか

 ⇒みなされない

 その理由は次の通り。

争点1
・文理:
 国送法6条では「国税通則法第六十五条の規定」とあり特定の項に限定していないし「これらの規定にかかわらず」とあるから、Bも排斥される。
・実質:
 Bが排斥されないとすると、通知前・予知前の修正申告を出しさえすれば、その後調書を出さなくても加算税が課せなくなってしまう。

争点2
・文理:
 国送法6条4項の「かつ」は一体不可分または加重的要件を意味するから、調書提出前提で修正申告書を提出した場合に限られる。
・実質:
 修正申告⇒調書でもEの適用ありとしてしまうと、先に通知前・予知前の修正申告書を出しさえすれば、調書をどれだけ遅れて出そうが期限内調書扱いになってしまう。

 意訳しすぎで意味わからん、て感じかもしれません。
 原文短いのでリンク先の裁決文読んでみてください。

公表裁決事例集No.108

 その上で、なるほどよくわからん、てなってどうぞ。


 私のモヤるところは次のとおり。

争点1:文理
 通則法65条をまるっと持ってきているというなら、加算するもとの税額がなければ国送法の加算税も発生しない、と読むこともできるのでは。

争点1:実質
 通則法65条全体が排斥されるとすると、同条4項の「正当な理由」がある場合も加算税が発生することになるが、そういう結論でよいのか。
 調書不提出でも加算税が課されないことの不都合をいうが、「期限内に国外所得含めた確定申告をしたが調書不提出の場合」には加算税が発生しないこととのバランスはどのように考えているのか。
 加算税が課されないとしても、調書不提出・期限後提出には「罰則」があるんだから(国送法10条)、調書不提出等にかかるペナルティはこれで十分では。

 さしあたり国送法65条4項を無視して事例を並べると以下の感じになります(50万円超云々はおいといて)。
 3の、通則法が0%でも国送法は5%になるというのが、今回のポイント。

 1  確定申告(国外含む)+期限内調書     ⇒加算税なし

 2a 確定申告(国外含む)+期限後調書     ⇒加算税なし +罰則
  b 確定申告(国外含む)+調書×       ⇒加算税なし +罰則

 3a 確定申告+修正申告(通知前)+期限後調書 ⇒0%+5% +罰則
  b 確定申告+修正申告(通知前)+調書×   ⇒0%+5% +罰則

 4a 確定申告+修正申告(予知前)+期限後調書 ⇒5%+5% +罰則
  b 確定申告+修正申告(予知前)+調書×   ⇒5%+5% +罰則

 5a 確定申告+修正申告(予知後)+期限後調書 ⇒10%+5% +罰則
  b 確定申告+修正申告(予知後)+調書×   ⇒10%+5% +罰則

 6a 確定申告+修正申告(正当の理由あり)+期限後調書 ⇒0%+5% +罰則
  b 確定申告+修正申告(正当の理由あり)+調書×   ⇒0%+5% +罰則

 僕たち私たちの「加重」イメージからすると意外もしれませんが、裁決によるとこうなります。
 普通に考えると、加減するもとの加算税があった上で国送法で増やすなり減らす、という制度だと思ってしまうところ。
 が、確かに国送法の条文上は、「加算/控除」としっかり書き分けられていて、裏表の制度にはなっていないんですよね。

争点2:文理
 「かつ」って言葉ひとつにそこまでの意味を盛り込めるのかどうか。
 3つの意味があるまでは分かるとして、先後関係を表すってのは飛びすぎじゃね?

争点2:実質
 修正申告書本体が通知前に出てきている以上は、加算税を課さなくてもよいのではないか。
 「予知」の対象を修正申告と同じ事由に設定したということは、修正申告に連動することを認めているから、ともいえるのではないか。
 上記の通り、調書不提出等にかかるペナルティは罰則で十分なのでは。


 裁決全体のノリとして、とにかく加算税を課せないと困るという方向での検討に偏っているのでは、という印象を受ける。

 解釈論やる場合って、明らかに加算税を課すべき典型例と明らかに加算税を課すべきでない典型例を想定しつつ、その間のどこに線を引くか、ということを両方の側から詰めていく必要があると思うんです。
 が、どうも片側からしか見ていないような感じ。

 調書全然出さないとかものすごい遅く出すとか、そういう極端な例をあげて加算税課せないと困る、といっているわけです。
 けども、そういう事例を出すのであれば、他方で「修正申告も調書も通知前に出したけど調書は申告より1日だけ遅れて出した」という場合に、加算税を課すのが問題な事例もあげて、それでもこの理屈で走っていいかどうか検討すべきだと思うんですけど。

 「正当の理由」(通則法65条4項)がある場合ですら、提出順を間違えると国送法によって加算税が課されてしまうというのも、やりすぎ感がある気がしますし。
 裁決の理屈からすると、5項は排斥されるが4項は排斥されないなんて結論、ひねり出せないですよね。


 もし裁決のような「提出順」で加算税のありなしが変わる、なんて立場をとるのだとすれば、

  提出義務: あり or なし
  提出順:  調書⇒修正申告 or 修正申告⇒調書
  修正申告: 通知前 or 予知前 or 予知後
  調書:   通知前 or 予知前 or 予知後 or 不提出

で場合分けをして、それぞれの事例での加算税ありなしが適切に制御できているか、を検討しなければならないはず。
 で、国送法の上書きっぷりが、通則法で税率に0%⇒5%⇒10%とグラデーションつけた趣旨を没却していないか、ということをみていかないといけないのではないかと。
 特別法(国送法)は一般法(通則法)を好きなように上書きできる、なんて単純な話ではない。

 が、少なくとも表に出てきている裁決文を見る限りでは、極端事例で加算税を取りこぼさない理屈をたてることに集中していて、当該事案で課税されることの妥当性を考慮に入れていない気がします(あるいは、あえて見ないようにしているか)。

 事案限りの解決をするのが審判所(あるいは裁判所)の一次的な役割だ、というおなじみの言い訳がありますが、そういわれる場合って、少なくとも当該事案の解決それ自体は妥当な場合です。
 他の事案にその規範当てはめるとまずそう、というだけで。

 が、本件では、調書出さないとかすごい遅れるといった他の事案の妥当な解決のために、2週間遅れただけの本件事案を巻沿いにしたってことですからね。


 さすがに全事例をチェックすることはできないので、怪しいところを考えてみます。
 (提出義務あり前提とします)

 1 期限後調書(通知前)⇒修正申告(通知前) 0%-5% +罰則
 2 修正申告(通知前)⇒期限後調書(通知前) 0%+5% +罰則

 提出順を間違えるとこうなります。
 1は、同項の適用があるけども本体が0%なので「控除」するものなしと。
 2は国送法6条4項の適用なしと。

 ここでは提出義務あり前提といっていますが、現実には国外財産が5000万円あるかどうか微妙な事案というのもあるわけです。評価方法なり外貨換算なり、国内財産以上に大変。
 もし私が、調書作成に必要な資料が揃わない段階で相談受けていたら、「通知受ける前に先に修正申告だけしておきましょうか」と、この裁決知らなかったらそういうアドバイスしていた可能性あるよなあと、震える。

 2 修正申告(通知前)⇒期限後調書(通知前) 0%+5% +罰則
 3 修正申告(通知前)⇒期限後調書(通知後) 0%+5% +罰則
 4 修正申告(通知前)⇒調書不提出      0%+5% +罰則

 で、先に修正申告してしまうと、調書をいつ出そうがあるいは不提出でも、5%加重は変わりません。

 裁決では、「修正申告」をいつ出すかで国送法の加減がかわるのはおかしい、といっているわけですが、逆に、裁決の立場だと「調書」をいつ出しても国送法の加減がかわらない、という現象が生じることに。
 そのへんの悪質性は罰則のところで調整するつもりでしょうか。

 形式論抜きの実質論だけで考えると、提出順にかかわらず、
  2は加算税なし
  3・4は加算税あり
とするのがいいように思えます。2はどちらも通知前に出ているわけで。

 のに、国送法6条4項の通則法によせた風な規律のせいで、提出順を付けざるをえなくなり、うまく制御できない結果になっています。

 以下は「予知前調書⇒修正申告」順なので、いずれも国送法6条4項が適用されるパターンです。

 1 期限後調書(通知前)⇒修正申告(通知前) 0%+0% +罰則
 5 期限後調書(予知前)⇒修正申告(予知前) 5%-5% +罰則
 6 期限後調書(予知前)⇒修正申告(予知後) 10%-5% +罰則

 5は通則法の5%から5%控除されて0%、6は通則法の10%から5%控除されて5%、こういう結論になるってことでいいですか。


 これらを税率でグループ分けするとこうなります。

・0%パターン
 1 期限後調書(通知前)⇒修正申告(通知前) 0%+0% +罰則 (1+1)
 5 期限後調書(予知前)⇒修正申告(予知前) 5%-5% +罰則 (2+2)

・5%パターン
 2 修正申告(通知前)⇒期限後調書(通知前) 0%+5% +罰則 (1+1)
 3 修正申告(通知前)⇒期限後調書(通知後) 0%+5% +罰則 (1+2〜)
 4 修正申告(通知前)⇒調書不提出      0%+5% +罰則 (1+10〜)
 6 期限後調書(予知前)⇒修正申告(予知後) 10%-5% +罰則 (3〜+2)

 後ろの数字は、修正申告+調書の提出時点について、
  通知前 1
  通知後 2〜
  予知前 2
  予知後 3〜
  未提出 10〜
と、それぞれの遅れっぷりの悪質性を数値化してみたものです。
 調書の遅れと申告書本体の遅れが同じ数値でいいのか、という問題はありますが、単純化のため。

【数値化して衡量する営み例】
井田良「講義刑法学・各論」(有斐閣2016)

 今ならドミネーターをご利用ください(高い!)。

 

 で、比べてみると、
  5が結果として軽くなっている
  2が重くね
  346はバラバラなのに結果同じなんだな
とかが分かります。

「正当の理由」あり(数値0とします)パターンもトッピングしておきましょうか。

・0%パターン
 10 期限後調書(通知前)⇒修正申告(正当の理由) 0%-5% +罰則 (0+1)
 11 期限後調書(予知前)⇒修正申告(正当の理由) 0%-5% +罰則 (0+2)

・5%パターン
 7 修正申告(正当の理由)⇒期限後調書(通知前) 0%+5% +罰則 (0+1)
 8 修正申告(正当の理由)⇒期限後調書(通知後) 0%+5% +罰則 (0+2〜)
 9 修正申告(正当の理由)⇒調書不提出      0%+5% +罰則 (0+10〜)
 12 期限後調書(予知後)⇒修正申告(正当の理由) 0%+5% +罰則 (0+3〜)

 ここでも7の可哀想さが際立つ。

 裁決の立場に対しては、当初から得も言われぬ違和感があったのですが、おそらくこのあたりの「パースの狂ったデッサン感」が潜在していたからではないか、というのが数値化してみての推測。


 ここまでボロクソに批判してみたものの、現行の規定を前提に課税範囲を適切に制御するの、解釈論では限界があると思う。

 諸悪の根源と思われるのが国送法65条4項。
 先に修正申告してしまうと予知しようがなくなる、という変な連動を起こすので。

 そのせいで、加算税を相当取りこぼすか、歪なかたちでも課税するか、どちらかでいくしかない。

 課税庁側からすると、今後の取りこぼしはともかく、これまでの加算税をごっそり還付しなきゃいけないとなったら、まあ大変。
 ので、審判所も、どこぞの野良ブログにあれこれ言われようとも、還付しないですむ理屈でいくと(邪推)。

 お気持ちはまあ分かりますが、趣旨解釈で規定のバグをカバーする解釈態度、今どきの裁判例の傾向からするとあまりウケがよくない。

【趣旨に合わなくても強引に文理で行く所作例】
解釈の解釈を解釈する(free rider) 〜東京高裁平成30年7月19日判決


 最終的には「立法論」で解決するしかないんでしょう。

 たぶんですけど、この手の期間制限を、いつするかも決まっていない調査通知とか主観的な予知とか、そういうふんわり事由をもって区切るの、うまくない。
 こうやって複数制度が絡んだときに、バグを起こすみたいだし。
 (しかし「予知」って。なんかオカルティックですね。)

 ので、「○○から○○日以内」のような確定期限が望ましい。
 これなら、順番間違えたらアウト、みたいな変な結論にはならないし。

 もしかして通則法さんは他人事のように聞いているのかもしれませんが、むしろお前の問題だぞ。

 ちなみに、同様の批判は、適格組織再編における支配関係継続の「見込み」という要件についてもしました。
 不確定概念追放運動の一環。

中里実ほか『租税法概説 第3版』(有斐閣2018)


 以上、最初に書いたとおり全然考えが煮詰まっていないので、もう少し考察すすめます。
posted by ウロ at 10:11| Comment(0) | 判例イジり

2019年11月11日

伊藤正己「近代法の常識」(有信堂1992)



 伊藤 正己 近代法の常識(有信堂1992)

 極めてオーソドックスな法学入門書。

 目次を書き出してみると、

1 法と常識
2 法学という学問
3 法とは何か
4 法と道徳
5 法と強制
6 成文法
7 慣習法
8 判例法
9 学説と条理
10 市民法と社会法
11 権利と義務
12 権利の主体と客体
13 むすび

といった感じ。

 法の基礎理論として扱われる領域が一通り網羅されています。

 基礎理論ものは、どうしても記述が抽象的になりがちなところ、具体例多めなので初学者でも理解しやすいと思います。

 伊藤正己先生といえば、以下の本が有名ですかね。



 伊藤 正己 憲法 (弘文堂1995)
 伊藤 正己 裁判官と学者の間(有斐閣2001)

 特に後者は名著だと思いますが、オンデマンド版で買うかアマゾンマケプレのクレプラで買うか、お気軽に買えないのが残念。

 憲法の体系書のほうは、伊藤先生が最高裁判事になって忙しくなったので、ということで、戸松秀典先生が一部執筆に加わっているとのこと。

戸松秀典『憲法』(弘文堂 2015)
posted by ウロ at 09:18| Comment(0) | 法学入門書探訪

2019年11月04日

小林憲太郎「ライブ講義 刑法入門」(新世社2016)

刑法総論・各論の一冊本。
残念ながら、総論・各論が第一部と第二部で別れています。
まあ、それが通例どおりなんですが。



 小林 憲太郎 ライブ講義 刑法入門(新世社2016)

【総論・各論問題】
井田良「講義刑法学・総論 第2版」(有斐閣2018)
井田良「講義刑法学・各論」(有斐閣2016)

 本文240頁程度で、しかも判例が長々と引用されているので、実際のボリュームはもっと少なめ。

 これまでの小林先生の著書と比べると、かなり読みやすくなっています。
 頭のいい人が、ちゃんと我々一般人にレベルをあわせて記述してくれると、とてもわかり易くなるという一例。

 抽象論・具体例の比率が、従前8:2だったのが2:8に逆転したくらいの印象。
 (※あくまで個人の感想です)

 が、やはり説明不足感は否めない。
 入門書ポジションなんだから、判例の長々とした引用を減らして、説明をさらに丁寧にしたほうがいい気がします。

 ご自身でも判例集出されているところですし、詳しくはそちら、で済ませられる。



 小林 憲太郎 重要判例集 刑法総論(新世社2015)

 あるいは、判例と正面から格闘した、こんな本もあるわけですし。



 小林 憲太郎 刑法総論の理論と実務(判例時報社2018)
タグ:入門書 刑法
posted by ウロ at 08:53| Comment(0) | 刑法