2020年03月30日

浅妻章如「ホームラン・ボールを拾って売ったら二回課税されるのか」(中央経済社2020)

 一つ前の判例イジりの記事の見直しは、来週くらいにしておきます。

解釈の解釈は終わりました。〜最高裁令和2年3月24日判決


 さて、最近は本一冊を読み通す集中力も減退ぎみですが、この本は面白くて一気読みできました。

 タイトルだけみると、うす味のビジネス書風。
 ですが、中身はガチガチの租税法学もの。



浅妻章如 ホームラン・ボールを拾って売ったら二回課税されるのか(中央経済社2020)

 ある意味タイトル詐欺よ。
 表紙イラストに野球ボールを書いたりとか、いかにもユーザーフレンドリーな雰囲気出してますけども(このボール、飛んでるっぽいんですが全く躍動感ないの。これは時間停止ものか?)。


 このブログで中央出版社さんの書籍を取り上げるのは初。

 どちらかというと実務書メインの出版社なので、学術書イジりを主食とするこのブログとはあまり交わらない。
 なお、学術書イジりが過ぎて、各学術書出版社からはガン無視されているような気がするこのブログ。
 この記事も、著者及び出版社から禁忌として扱われる気がしないでもない。

 この本はタイトルから受ける雰囲気に反して、ガチ目の学術書といっていいと思います。
 メインテーマが「二重課税」とか、もうね。

 ということで、このブログで取り上げてみることに。


 ちなみに、この本自体の問題ではないのですが、「二重課税」という用語には要注意。

 というのも、「二重課税」と表現すると、課税するのが不当だという結論を先取りしているように読めてしまいます。

 が、たとえば、法人税と法人事業税(所得割)は、同じく法人の課税所得に課税されるわけですが、これが二重課税だから不当だとは一般的に考えられていません。
 また、地方法人税や法人住民税(法人税割)は法人税額を課税標準とするわけですが、これは税金に税金をかけるもので二重課税だから不当だとも考えられていません。
 あるいは、不動産取得税と固定資産税は同じく不動産にかかる税金ですが、取得と保有で違うとかいうことで、これも二重課税で不当だとはされていません。

 要するに、同じようなものに同じような課税をすることそれ自体では不当だという評価はでてこない。
(ただし、これらはあくまで一般的には、ということで、当たり前を疑う必要はあるでしょう。)

 極端な話、たとえば、あるひとつの不動産の売却益に対して、譲渡年と翌年の2回にわたって課税したとしても、それが直ちに不当かというと必ずしもそうはならない。
 というのも、仮に、現行法では譲渡年に分離で税率20%のところを譲渡年は分離10%、翌年も分離10%という制度に改正する、としてもおかしくないわけです。
 この場合、ある種の(一部)納税猶予になってむしろ納税者有利ですし(ので、割引価値を考慮して合計20%超の税率(10%+10%+α%)というのも許容されうる)。

 ということで、二重課税らしきものがあっても、不当なものとそうでないものがある、ということは、この用語を使う際には念頭においておいたほうがよいです。


 ここでは「不当」という法的に曖昧な用語を使いましたが、二重課税が問題となりうるレベルは一つではないです。

【問題となりうるレベル】
  1 憲法解釈論: 2つの課税が憲法解釈上許されるか。
  2 法律解釈論: 2つの課税が法律解釈上許されるか。
  3 立法論・政策論: 2つの課税は租税政策上望ましいか。

 それぞれのレベルで「不当」とか「許されない」というのは、
  1 違憲(法令違憲/適用違憲)
  2 違法
  3 妥当でない、望ましくない
などと表現されることになります。

 そして、実際に二重課税が問題になるとしたら、ほぼほぼ3のレベルが主戦場かと。

 というのも、2(法律解釈)のレベルで二重課税が問題となるのは、あくまでも課税を排除する旨の個別規定がある場合に限られるからです。
 たとえば、所得税法9条1項16号のような。

所得税法第九条(非課税所得)
1 次に掲げる所得については、所得税を課さない。
 十六 相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの


 そういった個別規定がないかぎり、二重課税それ自体は法律レベルで問題とはなりにくい。

 じゃあってことで、一つレベルをあげて1(憲法解釈)だとどうか。
 やはり憲法解釈レベルでも、二重課税を問題とするのは難しいと思います。

 憲法問題にできるとしたら、複数課税を合計したら税率100%近くになっちゃった(財産権の侵害)とか、本人が任意に選択しえない属性でもって追加的な課税がされる(平等原則違反)などといった場合でしょうか。
 が、それはまさにそのこと自体が憲法違反となるのであって、あえて「二重課税」という迂路を経由させる必要はないような。

 ということで、二重課税問題の主戦場は3(政策論)のレベルだろうと。

 課税は常に被課税者(納税者)の効用を損ねるわけで、効用を損ねることだけから課税は望ましくないという結論は導けません(納税気持ちイイッ!とかいうアブノーマリティは考慮外)。
 課税パターンがA・Bとある場合に私人+国家の効用の総量がもっとも多くなる課税をすべき、とか、私人の効用が異常に減少してしまうから課税すべきでない、などといった議論をするのが政策論のレベル。

 と、ここまでひたすら文章でつらつらと書いてきたようなことを数理的に説明してくれているのが本書となります(当然ながら、本書のほうが段違いにレベルが高い)。


 浅妻先生といえば、下記教科書の「第4章 個人の所得課税」を執筆担当されています。



中里実ほか『租税法概説 第3版』(有斐閣2018)

 以前この本の書評を書いていますが、改めて読み返してみて第4章はイジりを入れていないのでセーフ(何が?)。


 章タイトルは次のとおり。

第1章 ホームラン・ボールを拾って売ったら二回課税されるのか?
第2章 生命保険年金受給権に相続税を課すのに、さらに所得税も課すのか?
第3章 公平と中立性との違い
第4章 所得税があるのに相続税も課すのはおかしいのではないか?
第5章 家族を扶養したら、寄附金と同じように所得を分割できるのか?
第6章 【利子に課税しないほうが中立・公平である】という考え方は金持ち優遇とは別
第7章 資産課税も利子課税と同様の二重課税を含んでいる
第8章 法人所得課税と個人所得課税の二重課税を調整する方法はない
第9章 今年黒字なのに税金を納めない輩がいるのは、けしからん?
第10章 消費税(付加価値税)の納税義務者を規定しても負担者は分からない
第11章 外国で納めた税額について日本で二重課税を救済する
第12章 貧しい人に低価格で保育や教育を提供すべきか?
第13章 才能を測定できるなら才能に課税すべきか?

 どうにかキャッチーにしようと頑張っているのでしょうが、そこはかとなく漏れいづるガチ感。
 実際、第1章からフルスロットルよ。


 全面にわたって数理的な説明をしてくれているので、自分でエクセルイジりながら読み進めれば、言わんとすることはなんとか理解できるはず。
 そういう意味では、はしがきにも記載のとおり、法学的素養がなくても読めます。

 が、一貫した数理的な説明が仇となって、その主張が「解釈論」なのか「政策論」なのか、油断しているとどちらを論じているのか分からなくなります。ここまでが「解釈論」、ここからが「政策論」といったラベルが貼られているわけではないので。

 もちろん、そのことを自分で強めに意識しながら読めばいいんでしょうが、少なくとも非・法学学習民には無理ですよね。

 確かに、そのへんの法学入門書にかかれているような「法的三段論法」などというものは、額面通りに受け取れるものではないと、私も思います。
 「大前提(規範)⇒小前提(事実)⇒結論」の順番どおりに解釈するなんて、現実的ではなかろうと。

 極端な場合には、
  結論⇒事実・規範
と、結論を決めてから、事実認定や規範定立を調整するとか、そこまでではないにしても、
  規範⇔事実⇔結論
と、3つの間をいったりきたりしながら、全体をかためていく、というのが現実だろうと思います。

 ので、表向きの着飾った理由付けに惑わされることなく、背後にある本当の理由付けを探る、ということが重要となります。

 が、そうはいっても、やはり定石通りの法解釈お作法についても一度手順を踏んで理解しておくべき、とも思います。一応、業界の共通言語なわけですし。

【法とフィクション】


来栖三郎 法とフィクション(東京大学出版会1999)

税法・民法における行為規範と裁判規範(その5)


 ということで、この本を先に読むとしても、その後に定石通りの法解釈お作法を身につけてから再度読み直してみるといいと思います。

 共通言語、ということでいうと、解釈論/政策論のラベルはないものの、当該主張が租税法学の共通了解なのか異説なのかといった区別は逐一書いてくれていますので、そういう点では安心して読めます。

 なお、二重課税とはちょっとズレますが、刑事罰を課すこととの「二重処罰」の問題は、数理的に一元化して分析することはできるんでしょうかね?


 はしがきに「良い入門書が既に複数ある」と書かれているんですが、そんな入門書があるなら教えてほしい。
 初学者がいきなり読んでも大丈夫な入門書だと私が思えるのは、今のところ佐藤英明先生の「プレップ租税法」くらい。



佐藤英明 プレップ租税法 第3版(弘文堂2015)

税法思考が身につく、理想の教科書を求めて 〜終わりなき旅


 二次元にしか興味がないといいながらも、そちら系の喩えとかが全くでてこないのは、さすが学者としての自制心ですかね。

 初めての単著、とかいったら浮かれて自分の趣味をふんだんにぶち込みそうなものですけど。
 これは、それにも劣らず二重課税問題も大好きだから好きなもの同士を混ぜ込みたくない、ということでしょうか(何の話?)。


 さて最後に、徹底した数理による説明を尽くしたこの本に、例の記述をぶつけてみましょう。

三木義一ほか「よくわかる税法入門 第14版」(有斐閣2020)

初版はしがき
「この本を読んだ方が、税法の中に数式ではなく、人々の生活の息吹や社会の動きを感じ取って、税法の面白さを少しでも理解してくれたら」


 この記述、以下の記事でも引用していて(しつこい)、自分の考えに対するアンチテーゼとしてフル活用中。
 数理的な説明と、息吹を感じるなんてスピリチュアルな説明とで、どちらに説得力があるかということです。

窪田充見「家族法 第4版」(有斐閣2019)
横流しする趣旨解釈(TPR事件・東京高裁令和元年12月11日判決)
posted by ウロ at 10:06| Comment(0) | 租税法の教科書

2020年03月26日

解釈の解釈は終わりました。〜最高裁令和2年3月24日判決【判例速報】

 出ましたね、最高裁判決。

 結論だけいうと、譲渡所得は売主の含み益に課税するものなんだから、同族会社となるかどうかは譲渡前の売主の支配力によって判定すると。
 「通達を文理解釈する」などというストレンジ判決は、破棄されました。

【最高裁のサイト】
取引相場のない株式の譲渡に係る所得税法59条1項所定の「その時における価額」につき,配当還元価額によって評価した原審の判断に違法があるとされた事例
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89339
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/339/089339_hanrei.pdf

 取り急ぎ速報ベースで記事にしておきます。
 判決文よく読んでから、そのうち再掲する予定(が、たぶん初見の感想とほぼ変わらないはず)。


 当ブログでも原判決である東京高裁判決をイジり倒したところですが、補足意見を含めた最高裁判決の判断、このブログとほぼ同旨といっていいんじゃないでしょうか。

解釈の解釈を解釈する(free rider) 〜東京高裁平成30年7月19日判決
解釈の解釈の終わり? 〜さらば東京高裁平成30年7月19日判決

 そうはいっても、残念ながらこれは「予測が的中したぜ、いえ〜い!」とドヤ顔できるほどのことではないです。
 最高裁が、「通達を文理解釈する」などというエキセントリックな手法をとらず、法律の趣旨に則った解釈をするという、品行方正・清廉潔白な王道の手法をとったからにすぎません(対して原判決が邪道の極み)。

 大昔のコンピュータリバーシゲーム的な。
 定石どおりにしか打たないので、手が読めてしまう感じの。

 判決はドキドキハラハラなゲームじゃないんだから、「予測可能性」という観点からはそれでいいのです。
 理由付けがシンプルで説得力のある判決だと思います(急に謎の上から目線)。

 最高裁であっても、一般民事・刑事以外の領域だと、ときとして妙な判決を出すことはあります。
 結論はともかく、たとえば武富士事件判決には、そこはかとなくそういう感を、私は感じます(ということから、やたらと最高裁判決を神格化させる学習法には違和感バリバリ)。

【借用概念論】
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その12)

 が、今回はちゃんとお作法通りの解釈となりました。
 やはり、宇賀克也判事、宮崎裕子判事が所属されている第三小法廷だった、というのが大きいんでしょうね。租税事件だという特殊性に惑わされることなく。


 やや脱線しますが、プロパー裁判官でないからといって、必ずしも自己の学問的良心にしたがった判断をするとは限りません。
 特に学者出身の最高裁判事の場合、過去の判例とマッチしない学説を主張していた場合は悩みどころ。

 そのことを主題としているものとして、たとえば伊藤正己先生のご著書。



伊藤正己 裁判官と学者の間(有斐閣1993)

 伊藤正己先生・判事ご自身は、積極果敢に少数意見を書かれていて、それが一冊の本として仕上がっているのですが、皆が皆そうできるわけではない。


 話を戻して、結論は「破棄差戻し」。
 ということは、納税者側にもワンチャン(ワン・チャンス)なくはない。

 というのも、宇賀判事、宮崎判事お二人の補足意見をみると、通達に対するダメ出しをされています(特に宮崎判事はキツめ)。
 ここに突破口を見出すと。

 以前の記事でも最後にちらっとふれたところですが、「通達が分かりにくいのが悪い」ということで「信義則」などで救済してもらう道も考えられなくはない。

 が、そんな最高裁に歯向かうような判決を、東京高裁に期待するのは望み薄でしょうね。

 確かに、最高裁自身が信義則云々について明言しているわけではありません。
 けども、信義則云々を明言しないまま納税者有利の原判決を破棄して差戻ししているってことは、信義則云々は本件で問題としない、ということが暗に示されているからだと考えられます(信義則と弁論主義の関係はさておき)。
 とすると、差戻審たる東京高裁が、そこをほじくり返すなんてことはしないだろうなと。

 そもそも、東京高裁の判事をやっているほどの優秀な裁判官が、「通達を文理解釈する」なんてビザールな法解釈をしたこと自体が不可解なわけです。
 法解釈のお作法なんて、当然心得ているはずで(ずっと事務方だった、とかでない限り)。

 その行動原理をどうにか説明するならば、近時の最高裁の文理解釈重視の税法解釈におもねったからだと考えざるをえません。最高裁が税法の文理解釈を重視しているのならば、通達も文理解釈するのが最高裁のお眼鏡にかなうはずだろうと。
 「納税者を救済したい」などという熱い気持ちでは、法解釈の常道を踏み外させることはできなかったでしょう。

 で、それが完全に的外れだったと。

 これは決して高裁判事を揶揄しているのではなく。
 優秀なはずの裁判官を、ひどく奇妙な解釈へ向かわせたことの合理的な説明をするとしたら、こういう方向で考えるしかないのではないかという観点からの推測です。

 このあたりは、楊修が曹操に処刑された理由を想起してもらえれば大丈夫です。

 われわれ外野の立場からすれば、東京高裁には、最高裁に嫌がられようとも「信義則アタック」をかましてもらいたいところ。
 で、再度最高裁に上告受理されてその点を明示的に判断してもらえれば、税務信義則判例がまた一つ増えることになりますし(ので、揶揄のつもりはないが煽ってはいる)。


 最初にこのブログとほぼ同旨と言いましたが、私が全然考慮していなかったところが一つ。

 お二人の補足意見では、やけに、所得税基本通達59-6の「例により」に着目されていました。

所得税基本通達59−6(株式等を贈与等した場合の「その時における価額」)
 法第59条第1項の規定の適用に当たって、譲渡所得の基因となる資産が株式である場合の同項に規定する「その時における価額」とは、23〜35共−9に準じて算定した価額による。この場合、23〜35共−9の(4)ニに定める「1株又は1口当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」とは、原則として、次によることを条件に、「財産評価基本通達」の178から189-7まで((取引相場のない株式の評価))の例により算定した価額とする。


 補足意見のこの箇所、私には、

 『「例により」ってのは、評価通達をそのまま横流しするんじゃなく、所得税法の趣旨にあわせるってことを言っているんだよな、な、そうだよな、そうだったってことにしておこうな。』

と言っているように読めました。

 通達の出来の悪さを論難しておきながらあとからフォローしてあげる、いわゆる「ツンデレ補足意見」です。
 しかも、通達の文言の中でも脇役っぽい子をいきなり表舞台に立たせて活躍させる的な。シンデレラですか。

 さすがに私には、このようなツンデレ要素やシンデレ要素というのが備わっていないので、ここまでの予測はできませんでした。
 精進いたします(宮崎判事のほうは「ツン」が強すぎる気がしますが)。


 ところで、同じくこのブログでイジった東京高裁判決(TPR事件)も上告中です。

横流しする趣旨解釈(TPR事件・東京高裁令和元年12月11日判決)


 こちらの高裁判決は趣旨解釈らしきことをしているので、譲渡所得課税の趣旨から解釈をしている今回の最高裁判決と軌を一にするかのように思えるかもしれません。
 が、散々イジったとおり、こちらの高裁判決、趣旨解釈とはいっても「横流し系」「ロンダリング系」の邪道な趣旨解釈だというのが私の見立て。

 しかもその趣旨というのを立法担当者の解説から流用している、というところがいかにもまずい。
 最高裁が趣旨解釈を重視している、という傾向におもねったつもりなんでしょうが、違うそうじゃない。

 もしまた第三小法廷に係属してしまったら、宮崎判事に「いち立法担当者の解説を鵜呑みにしてんじゃねえ、ちゃんと裁判所として整合性のとれた解釈を示せよ」と言われてしまう気がする。

 なんか感情移入して泣きそう。
 誰か、ツンデレ解釈またはシンデレ解釈をしていただけませんか(介錯ではなく)。
posted by ウロ at 10:50| Comment(0) | 判例イジり

2020年03月23日

南野森「ブリッジブック法学入門(第2版)」(信山社2013)

 この本、「“一風変わった”法学入門」と自称されていて、確かにそうなっていました。



南野 森 ブリッジブック法学入門(第2版)(信山社2013)
 
 編者は憲法学者の南野森先生。
 以前、トロペール先生の翻訳書を記事にしたことがあります。

ミシェル・トロペール(南野森訳)「リアリズムの法解釈理論」(勁草書房2013)


 目次をあげると次の通り。

T 法学の基礎
第1章 法と法学
第2章 法と法学の歴史
第3章 法律と法体系
第4章 裁判制度とその役割
第5章 判例の読み方

U 法学の展開
第6章 違憲審査制と国法秩序
第7章 保証人とその保護
第8章 会社とその利害関係者
第9章 民事訴訟における主張共通の原則
第10章 刑罰権の濫用防止と厳罰化
第11章 刑事訴訟の存在意義
第12章 社会保障法による医療の保障
第13章 著作権保護と表現の自由

 前半が一応、一般的な法学入門で触れられる基礎知識の部分になっています。
 通常の授業でも使えるように、ということでのアリバイ的な記述に思えなくもない(邪推)。

 ただし、南野先生執筆の第1章は、上記のトロペール先生の考えがバックグラウンドにあってとても読み応えあるので、とりあえずこの章だけでも目を通しておくといいと思います。

 で、後半が「論文」と言われているとおり、かなり突っ込んだ内容になっています。

 法学に興味をもってもらう、という趣旨では、こういう構成いいと思いました。
 が、前半で得た基礎知識だけで後半が読みこなせるか、というと難しい。

 学習過程を三段階に分けることってよくあると思いますが、「二段階目」が抜けているイメージ。

【三部構成】
安田拓人ほか「ひとりで学ぶ刑法」(有斐閣2015)

 ので、後半読んでみて難しそうなら他の本に移って、しばらくしてから戻ってくる、という読み方がいいかもしれません。


 こういうコンセプトの本読んでみて、思い出したのが下記の本。



落合 誠一編 論文から見る現代社会と法(有斐閣1995)

 論文執筆者が自分の書いた論文の解説を通して、各法分野の説明をするというもの。
 社会人から入学した大学院生向けの導入講義を書籍化したもののようです。

 この講義用の論文ではなく、もともとどこかの学術誌に発表したガチの論文を題材にしているので、内容は濃い。のですが、法学部以外の出身者を対象としていて法学の知識は前提としていないので、入門書として読んでもよさそう。
 ただ、それなりの社会人経験もあるということは前提でしょうから、まっさらな学生さんがいきなり読むのは、それはそれで大変かも。


 さて、話は戻って、この本を入門書として捉えたときに気になるのが、「法制史」にふれた第2章。

 たとえば、「インスティテュシオン(法学提要)体系」とか「パンデクテン(学説彙纂)体系」とかって単語が書いてあるのに、その意味がどこにも書いていない。
 法制史の記述って、紙幅が限られているとどうしても単語の羅列になりがちではありますが、まあ不親切。

 限られた紙幅で法制史を記述するならば、たとえば、
・この本の他の章を法制史の観点から経時的にみることで立体的に展開する
とか、
・仮想通貨みたいな今どきの論点を法制史の観点から分析してみることで法制史の勉強にどんな意味があるのか理解する
とか、ポイントを絞って記述したほうがいいと思うんですけども。

 ちなみに、上記2つの単語について、たまたま平行して読んでいた篠塚昭次先生の入門書では、「オープンリール式」と「カセットテープ式」などと喩えられていました。
 さすがに時代を感じさせる喩えで、今となっては理解できるのはオールドオーディオマニアくらいでしょう(当時も?。 
 ですが、初学者(当時の)に理解してもらおうという親切心、読んでいて安心するわけです。



 篠塚 昭次 民法 よみかたとしくみ(有斐閣1992)

 なお、「法学入門」の法制史の記述で私が一番よかったと感じたのが、三ケ月章先生のもの。

 

 三ケ月 章 法学入門(弘文堂1982)

 過去の西欧から明治の日本法に到達するまでの、流れるような記述が素敵。
posted by ウロ at 11:51| Comment(0) | 法学入門書探訪

2020年03月16日

横流しする趣旨解釈(TPR事件・東京高裁令和元年12月11日判決)

 いわゆるTPR事件の高裁判決。

 ・適格合併(完全支配関係あり)
 ・支配関係5年超(欠損金額引継制限なし)

と形式的に要件満たす場合でも、事業実態が完全子会社(被合併法人)⇒親会社(合併法人)に移転していない場合には、法人税法132条の2で欠損金の引継ぎが否認されるか、という論点を扱ったもの(以下、条数は法人税法のもの)。

法人税法 第百三十二条の二(組織再編成に係る行為又は計算の否認)
 税務署長は、合併、分割、現物出資若しくは現物分配(第二条第十二号の五の二(定義)に規定する現物分配をいう。)又は株式交換等若しくは株式移転(以下この条において「合併等」という。)に係る次に掲げる法人の法人税につき更正又は決定をする場合において、その法人の行為又は計算で、これを容認した場合には、合併等により移転する資産及び負債の譲渡に係る利益の額の減少又は損失の額の増加、法人税の額から控除する金額の増加、第一号又は第二号に掲げる法人の株式の譲渡に係る利益の額の減少又は損失の額の増加、みなし配当金額の減少その他の事由により法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる。
一 合併等をした法人又は合併等により資産及び負債の移転を受けた法人



 以前も東京高裁の判決を検討しましたが、きっかけは「違和感」なんですよね。

解釈の解釈を解釈する(free rider) 〜東京高裁平成30年7月19日判決
解釈の解釈の終わり? 〜さらば東京高裁平成30年7月19日判決
解釈の解釈は終わりました。〜最高裁令和2年3月24日判決

 それが何に対する違和感かといえば「解釈方法」のところ。
 判決の結論は、以前の記事のは「納税者有利」、今回のは「納税者不利」と、必ずしも納税者不利な結論だから文句をいうわけではないです。
 その結論に至るプロセス(解釈方法)がなんかおかしい、ということ。

 プロセスにこだわるのは、それが過去の判決を検討する主目的だから。

 結論それ自体は当該事案かぎりのもので、他の事案に役立つわけではない。じゃあ、なにが他の事案に資するかといえば、その結論に至ったプロセス部分にあります。
 それが説得力のある解釈であればあるほど、他の事案でも使い回しがされるだろうと、予測をたてることができます。

《判決の強さの縦軸と横軸》
 ・地裁 ⇔ 高裁 ⇔ 最高裁
 ・説得力弱い ⇔ 説得力強い

【判例の拘束力について】
判例の機能的考察(タイトル倒れ)
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その12)

 他方で、奇妙な解釈は、よくよく検討すれば説得力がないことが分かるにしても、「東京高裁の判決があるぞー!」とかいって、中身も検討せずに権威付けに使われることもあるわけです。

 ということで、奇妙な判決は奇妙な判決であることを、しっかり主張しておこうと。
(などという理由が最初からあったわけではなく、「なんかこいつ気持ち悪い」を言語化しようと思ったのが最初のきっかけです。)


 本件の事案については、事実の評価として、本当に事業実態が移っていないといえるか、という点も問題になります。
 が、ここでは単純化のために、全く移っていないものとして論じます(子会社の事業を別会社にまるっと譲渡して親会社には欠片も引き継がれていない)。

 また前提として、そもそも57条3項に形式的に引っかからないのに法132条の2を発動していいのか、という点も争われています。
 こちらは、一応争ってみたレベルの論点でしょうから、省略します。


 まずは、税務上の合併要件を簡単におさらい。

A 適格要件(簿価移転となるかどうか)

ア 完全支配関係あり(当事者間)
 1 金銭等不交付要件

イ 完全支配関係あり(同一の者)
 1 金銭等不交付要件
 2 株式継続保有要件

ウ 支配関係あり(当事者間)
 1 金銭等不交付要件
 3 従業者引継要件
 4 事業継続要件

エ 支配関係あり(同一の者)
 1 金銭等不交付要件
 2 株式継続保有要件
 3 従業者引継要件
 4 事業継続要件

オ 共同事業
 2 株式継続保有要件
 3 従業者引継要件
 4 事業継続要件
 5 事業関連要件
 6 事業規模要件or経営参画要件

(ここでいう「2 株式継続保有要件」の「見込み」に対して、「法的安定性を重視した」とかいう評価をしている記述をイジったことがあります。なお、3も4も「見込み」。)

中里実ほか『租税法概説 第3版』(有斐閣2018)

B 欠損金の引継制限

 で、適格要件を満たすと判定できたあとに、欠損金の引継制限がかかるかを検討します。

 なお、はじめから欠損金の引継が主目的、ということもあるでしょうが、この判決によればそれを主目的にするのはまずい、ということになりました。
 ので、適格要件から順番に検討するという形でどうぞ。

ア 支配関係あり (制限受けるのは)
 7 支配関係5年以内
 8 みなし共同事業要件満たさない

イ 支配関係なし
 制限なし


 そうすると、親会社が完全子会社を吸収合併する場合は、

 1 金銭等不交付要件
 7 支配関係5年超

という要件を満たしさえすれば、適格合併かつ欠損金の引継制限なし、となるはずです。


 が、原判決(東京地裁)及び本判決では、事業実態が親会社に移っていない場合は欠損金の引継制限を受ける、という結論に。

 関係する本判決の判示を引用すると次のとおり。

「控訴人は、法人税法57条2項は、組織再編成に係る未処理欠損金額の引継ぎについて、適格合併が行われた場合には、同条3項の適用がない限りは、引継ぎを認めており、適格合併では、完全支配関係がある場合は、金銭等不交付要件のみを充たせば足りるものとして、従業者引継要件及び事業継続要件を必要としていないから、これらを実質的に充足することを求めることは予測可能性を著しく害するなどと主張する。

 確かに、完全支配関係にある法人間の適格合併については(法人税法2条12号の8イ)、支配関係にある法人間の適格合併におけるような従業者引継要件及び事業継続要件(同条12号の8ロ)の定めは設けられていない。

しかしながら、原判決第5・3(2)が説示するように、組織再編税制は、組織再編成の前後で経済実態に実質的な変更がなく、移転資産等に対する支配が継続する場合には、その譲渡損益の計上を繰り延べて従前の課税関係を継続させるということを基本的な考え方としており、また、先に組織再編税制の立案担当者の説明を引用して判示したとおり、組織再編税制は、組織再編成により資産が事業単位で移転し、組織再編成後も移転した事業が継続することを想定しているものと解される。

加えて、これも原判決が第5・3(2)で説示するとおり、支配関係にある法人間の適格合併については、当該基本的な考え方に基づき、前記の従業者引継要件及び事業継続要件が必要とされているものと解され、殊更に、完全支配関係にある法人間の適格合併について、当該基本的な考え方が妥当しないものと解することはできないから、当該適格合併においても、被合併法人から移転した事業が継続することを要するものと解するのが相当である。

そして、これらの基本的な考え方等を踏まえれば、完全支配関係にある法人間の適格合併について、法人税法132条の2の適用の有無に関し、その不当性要件に係る租税回避の意図があるか否か、同法57条2項の趣旨目的から逸脱しているか否かについては、関係者において、当該行為自体から認識し検討することが可能というべきである。

よって、完全支配関係にある法人間の適格合併について、事業の移転及び継続を含め検討すべきものとしても、納税者の予測可能性を害するものとはいえず、控訴人の主張を採用することはできない。」



 いわゆる「趣旨からの解釈」をしているみたいなんですが、どうにもすんなり理解しがたい。

 個々の要件の意味を明確にするために立法趣旨から解釈する、というのが通常の趣旨解釈のあり方だと思います。
 ところが、この判決では、組織再編税制という制度全体の趣旨から、完全支配関係の場合に要求されていない従業者引継要件・事業継続要件を付加する、という、かなりアクロバティックな解釈をやっているようにみえます。

完全支配関係あり(当事者間)
 1 金銭等不交付要件
 3 従業者引継要件  ←New!
 4 事業継続要件   ←New!

 7 支配関係5年超

 これがたとえば、7の支配関係について、名義だけあればいいのではなく実質的に支配してないとだめ、とかならまだ分からないではない。あくまでも既存の要件を精緻化しているだけなので。
 が、あたらしく3、4の要件を付加するなんてことを解釈レベルでやってしまってもいいのか。

 もしこの判決を擁護するとしたら、正面から要件として付加しているわけではない、否認規定を使ってその趣旨を反映しているだけだ、といえるのかもしれません。

 それが、あくまでも否認するための一要素としての考慮にとどまるなら、そういえなくもない(もちろん、余計な考慮要素を増やすと「明確性」の問題がでてきますが、それは否認規定自体の問題でもあります。)。
 ところが、上記判示では「被合併法人から移転した事業が継続することを要する」とはっきり書いてしまっています。

 ので、事業継続していない場合は「必ず」否認されることになります。
 事業継続してないのに欠損金使うのは、常に「不当に」に該当するわけで。

 実際に課税庁が否認規定を発動するかどうかは別として、実体法レベルではそういうことになります。

 もう勇み足感満々。


完全支配関係あり(当事者間)
 1 金銭等不交付要件
 3 従業者引継要件(←否認発動条件として)
 4 事業継続要件 (←否認発動条件として)
 7 支配関係5年超

支配関係あり(当事者間)
 1 金銭等不交付要件
 3 従業者引継要件
 4 事業継続要件
 7 支配関係5年超

 並べると、完全と非完全で要件全く同じだぜ。
 これがたとえば、3の「おおむね80%」が完全ならおおむね50%でいいよ、とかいうなら違いがでるんでしょうが、そういうことを判示しているわけでもない。
 完全だから100%必要とか言い出さないだけましですか。

 そもそもこの判決、完全の場合にも3・4と同じものを要求しているのか、それともそれらしい何かを要求しているのか、判示からは読み取れない(のに、予測可能性を害しないとか言っちゃってる)。


 「否認の場合は課税庁に立証責任があるから違うんだ!お前は違いの分からない奴だな!」という反論があるかもしれません。

 が、(この記事では単純化のために省略してしまいましたが)本件事案では「事実認定」ではなくその事実の「評価」のところ(とその前提の法解釈)が主戦場になっています。

 1 法解釈 《完全でも事業継続を要するか》
 2 事実認定 《どういう事実があったか》 ←立証責任が働くところ
 3 事実の評価 《その事実は事業継続と評価できるか》

 ある事実が認定できたとして、それが事業継続と評価できるかというところ。
 ので、立証責任を転換されたところで、おそらく結論に影響がない。

 そもそも、立証責任を転換できるのは、そうできるだけの「事実的基礎」があるからです。

 たとえば、A時点とB時点での占有が認定できるなら、A〜B間の占有も推定する、とか。

  前提事実: A時点占有 B時点占有
  推定事実: A〜Bの占有

 AとBで占有しているってことは、普通はその間もずっと占有してたってことだろ、みたいな。
 で、A〜B占有を否定したい側が、その間の断絶を立証すべきことになると。

 が、完全支配関係と従業者引継・事業継続の間にはそんな連関は存在しない。
 支配とヒト・モノは、全く別物。

【そんな連関ない】
  完全支配関係あり合併: ヒト・モノも継続するのが普通
  完全支配関係なし合併: ヒト・モノは継続しないのが普通

 ということで、完全支配関係があることをもって従業者引継・事業継続の立証責任を転換するなどというのは、およそ合理性を欠いています。


 ところで、これは平成22年税制改正「前」の事案です。

 ここに、平成22年税制改正で導入された「グループ法人税制」を視野にいれると、違った様相になってきます。

ふたりはプリキュア(後日テコ入れで増員) 〜グループ法人税制のおさらい〜

 同制度に、この論点が直接規定されているわけではないです。
 が、「完全」支配関係があるかどうかで同制度の適用を受けるかどうかが決まる、というのは、100%グループとそれ以外とでは、法人税法上も別物だという評価がされているということがいえます。

 そうすると、趣旨解釈をするというならば、この判決のように、ただの支配関係間の合併の趣旨を無遠慮に完全支配関係間の合併にも持ち込むことは、もはやできない。
 完全支配関係間の合併の場合でも、支配関係にとどまる場合と同じ趣旨があてはまる根拠を説明しなければならない。

 本判決では「殊更に、完全支配関係にある法人間の適格合併について、当該基本的な考え方が妥当しないものと解することはできない」とか、積極的な論拠もない雑な判示をしているんですが、こんな無粋に、非完全の趣旨をノールックで完全のほうに「横流し」できないってこと。

 というか、同制度が施行される前の行為であっても同じであることの説明が必要だったと思いますが、その必要性がさらに高まったということです。

 そもそも本判決がやってる解釈、趣旨解釈というよりもはや「類推解釈」へ逝っちゃってると思う(あえての誤字)。
 非完全と完全との違いを捨象して、完全のほうに存在しない要件を持ち込んじゃっているわけで。

 これが、完全に要求される要件なら非完全にも要求されるはずだ、という「完全⇒非完全」方向の横流しだったら「勿論解釈」といえるんでしょう(大は小を兼ねる)。
 ところが本判決はその逆、小は大を兼ねる(!?)などという倒錯した解釈に手を出している。
 
【横流し2ルート】
 完全⇒非完全: 大は小を兼ねる (分かる)
 非完全⇒完全: 小は大を兼ねる (!?)

 いやいや、本判決は非完全から直接完全に横流ししているんじゃない、組織再編成の趣旨に遡って検討しているんだ、とかいう反論があるかもしれません。

 が、それ横流しよりさらに悪質な「趣旨ロンダリング」(趣旨ロン)ですからね。

【趣旨ロンダリング】
趣旨ロン.png

 趣旨ロン、ちょっと試してみましょう。

 《メリーゴーラウンド ⇒ 遊園地の遊具 ⇒ ジェットコースター》
  メリーゴーラウンドは幼児でも楽しめる遊園地の遊具だ
  ジェットコースターは遊園地の遊具だ
  ゆえにジェットコースターは幼児でも楽しめる

 《O氏 ⇒ 日本の女性歌手 ⇒ A氏》
  O氏はA氏に過激発言をする日本の女性歌手だ
  A氏は日本の女性歌手だ
  ゆえにA氏はA氏に過激発言をする



 鬼束ちひろ 「REQUIEM AND SILENCE」(Victor Entertainment2020)
 
 「またベスト盤か」とか言わないように。
 新曲『書きかけの手紙』、心がえぐられますよ。

 要するに、後の矢印それ自体の論拠を示すこともなく前の矢印だけを強調したところで、何の根拠にもならない、ということ。

 これがたとえば、

@非完全の適格要件として金銭等不交付要件が要求されている。
A完全の適格要件として金銭等不交付要件が要求されている。
Bゆえに、グループ内合併の適格要件は合併時に支配関係が変動しないことが基本的な考え方。

なら理屈はつながります
 共通要件を括りだしているだけなので。

共通要件.PNG

 これを
  @非完全の適格要件では事業継続が必要
  Aグループ内組織再編成は事業継続が基本的な考え方となっている
  B完全で欠損金を引き継ぐには事業継続が必要
とかやるから、理屈がガッタガタになるわけです。

ガッタガタ.PNG

 よりつめて考えてみると、本判決、洗浄2つカマしてませんか。

ダブル洗浄.PNG

 条文にない事業継続を正面から要件として要求するとゲートにひっかかるから、否認規定の「不当に」の中に詰め込んで持ち込むと。
 手口が巧妙すぎやしませんか。


 ちなみに、本判決の趣旨ロン、どうも以下の記述を彷彿させるんですよね。

「この本を読んだ方が、税法の中に数式ではなく、人々の生活の息吹や社会の動きを感じ取って、税法の面白さを少しでも理解してくれたら」

三木義一ほか「よくわかる税法入門 第13版」(有斐閣2019)

 条文上の要件に反映されていない「息吹」(組織再編税制は事業継続がキモだ!)を制度の背後に感じ取って、その「息吹」から一定の解釈を導くみたいなノリ(今だと『ミタマセキュ霊ティ』でイメージしてもらえばいいですか?)。


 さらにいうと、同じく平成22年税制改正で導入されたもので、完全子会社を「清算」した場合に欠損金の引継ぐ、ということになりました。

 なんと、事業を引き継がなくても欠損金を引き継げるという制度ができてるじゃないですか(新しい制度というか57条2項に事由が追加されただけ)。
 要は、100%グループならなるべく一体として扱おうぜ、の一環(ので、これもグループ法人税制のひとつですが、別立てで取り上げます)。

 まさか清算の場合にまで、事業継続が隠しコマンドとして存在するなんておバカなこと言いませんよね。

【事業継続横流し新ルート開拓】
  非完全合併 ⇒ 組織再編成 ⇒ 完全合併 ⇒ 完全清算??

 では、もし本件が改正後で「清算」ルートでいった場合はどう評価されるのか。
 本件事案と同じようなことは、別会社に事業譲渡をしてから子会社「清算」でも実現できるわけです(あるいは、改正前の「子会社株式清算損」ルートでもよさそう)。

 親会社:不動産屋、完全子会社:ナタデココ屋でイメージしてみましょう。

 合併ルート1:不動産屋が、ナタデココ屋の事業を他社に事業譲渡してから吸収合併
 合併ルート2:不動産屋が、ナタデココ屋を吸収合併してから同事業を他社に事業譲渡
 清算ルート: 不動産屋が、ナタデココ屋の事業を他社に事業譲渡してから清算
 (合併ルート2があるのは、事業継続要件が「見込み」なせいです)

 もちろん「組織再編成」の132条の2は使えませんが、「同族会社」の132条の適用があるのかどうか。

 合併ルートでいくと否認されるから清算ルートでいったんだろ、とか、別会社にまるっと事業譲渡していてそっちが事業やっているから実質的に清算したとはいえない、とかいう理由で否認されてしまうのか。

 さすがにそこまでの拡張はされないはずですが、この判決のノリからすると、そういうことを言い出しても驚かない。


 グループ法人税制も清算も、本件組織再編成「後」に施行された制度なわけです。

 なので、これら制度が直接本件組織再編成に適用されることがないのは、(遡及規定がないかぎり)当然です。
 そうだとして、これら規定の「趣旨」は、否認規定にいう「不当に」には反映されないのか。
 「不当に」の評価は、あくまでも行為時の法人税法を前提に判断するのか、それとも判決時までの事情も考慮に入れることができるのか。

 通常は行為時点で確定、なんでしょうけども、現時点で不当とはいえないものを否認するの(を裁判所が是認するの)は、どうも筋が悪い気がする。

 たとえばですけど、
  更正時に否認するのは適切だった
  でも判決時には不適切になった
という場合に、本税は返すけど還付加算金は付加しない、みたいな中間的な解決はできないものかどうか。

 こういう発想、以前書いた《解釈の幅》と似たような話です。

【解釈の幅】
税法・民法における行為規範と裁判規範(その7)

 あちらは、
  判決時には課税すべきという解釈になった
  でも行為時に課税されないと解釈することも無理はない
という場合に、判決前の行為には課税すべきではない、というものでした。


 さて、現時点で同じように事業継続なし合併をした場合、やはり否認されるんでしょうか。
 横流しするならするで、ちゃんと射程範囲を明示せえよ、と思う。

 この事件は上告・上告受理申立てをされているので、最高裁の判示に注目です。

 仮に結論が同じだとしても、高裁の理由付けが粗すぎるってことで、何がしかの判断はすると思うんですよね(個人的には結論ひっくり返すと予測していますが、「最高裁の良心を信じる」程度の見立て)。

 いずれにしても、現時点での実務的なアドバイスとしては、合併する「事業目的」をしっかり整えておきましょう、となります。

 これは別に組織再編だけの話ではなく、各種節税が絡むものに共通することです。

 保険のごとく細かく通達が整備されているものについては、それに従っているかぎりは基本的に否認されにくいわけです(あくまで「されにくい」)。
 他方で、組織再編だったり株価評価だったり、要件が整っているようで隙があるタイプの制度に関しては、単に形式だけを整えておけばいいのではなく、しっかり実質も整えておきましょう、ということになります。

 が、本件判決のような制度趣旨「横流し」系の判断をされるのでは、どんな実質を整えておけばいいのか予測がつけにくくて困る。
posted by ウロ at 16:47| Comment(0) | 判例イジり

2020年03月09日

窪田充見「家族法 第4版」(有斐閣2019)

 家族法の教科書。親族法と相続法をカバーしています。

 2018年の相続法改正や2019年の特別養子の改正までフォローしているので、旧版を持っている人でも買わざるをえないところ。



 窪田充見「家族法 第4版」(有斐閣2019)

 親族法と相続法を両方カバーしているとはいえ、668頁というのはなかなかのボリューム。

 なぜこんなボリュームになるかというと、通常の教科書でいうところのいわゆる「行間」を、ぐいっと広げて、我々常人が理解できるレベルになるまで、そこにひたすら言葉を詰め込む、ということをしているせいです。

 駄菓子屋のおばあちゃんが、おまけとかいって袋にものすごい量のお菓子を詰め込んでくれる的な、親切心に溢れた所作(こういう喩えは、もはや伝わらない世代が多いのでしょうか)。

 その、論理飛躍のない地の足についた説明のおかげで、ボリューム感をあまり感じずにスムースに理解することができます。
 下手に「条文引き写し系」の薄い本を読むよりも、理解するのは早くなると思う。

 逆に、丁寧な説明をしたせいで、いまいち論理が薄いところがあぶり出されてきます。
 が、そういった箇所は率直にそういうものとして言ってくれるので、安心して読めます。

 ひたすら文章による説明で、図表の類がほとんど出てこないのは、あえてそうしているのかどうか。

 同じコンセプトで、『不法行為法』も出ています(むしろこちらがご専門)。



窪田充見「不法行為法 第2版」(有斐閣2018)


 ちなみに、潮見佳男先生の『詳解 相続法』は相続法だけで616頁もあります。



潮見佳男「詳解 相続法」(弘文堂2018)

 さぞかし説明が丁寧かと思いきや、そうではなく、ものすごい数の「CASE」が載っているせいでこうなっています。
 本文の解説自体は簡潔なところがほとんど。「事例で語る」といった趣の(「事例を」ではなく)。

 という感じなので、窪田先生の本で理解した知識を潮見先生の「CASE」で実践してみる、という使い方をすると良さそう。


 個人的に、「お!」と思った文章。

 「個人的なことになるが、具体的相続分の計算という問題、筆者は、比較的好きである。計算ばかりであんまり好きではないという諸君も多いのではないかと思うが、そうした計算の前提となる仕組みの中には、相続をめぐる基本的な問題が見え隠れしていると感じられるからである。」

 私のブログを読んでくれている人であれば、なぜこの文章を引用したかお察しいただけるかと思います。

 これとの対比をするためです。
 
三木義一ほか「よくわかる税法入門 第13版」(有斐閣2019)

 「この本を読んだ方が、税法の中に数式ではなく、人々の生活の息吹や社会の動きを感じ取って、税法の面白さを少しでも理解してくれたら」

 行為/裁判規範がらみで散々イジった本ですが、この数式に否定的な見方をする税法教科書と、肯定的な見方をする民法教科書とのコントラストを味わってどうぞ(勝手に対立を煽る)。

税法・民法における行為規範と裁判規範(その1)

 煽っておいてなんですが、後者の文章も、本当は窪田先生と同じ趣旨のことを言いたかったのかもしれませんね。
 が、やっぱり数式「ではなく」はないよなあ。


 巻末に「特別講義」として、「家族法×税法」の絡みについて佐藤英明先生と対談されています。

 佐藤先生も、窪田先生と同様に分かりやすい教科書をお書きになる先生です。



佐藤英明 プレップ租税法 第3版(弘文堂2015)
佐藤英明 スタンダード所得税法 第2版補正2版(弘文堂2020)

 比較的丁寧に説明してくれているものの、多分これだけ読んでも理解するの難しいと思う。
 ここは、なんかそういう論点があるんだなあ、くらいの雰囲気が掴めればいいんじゃないんですかね。
 で、あとは佐藤先生の教科書を読むと。

 いっそのこと、巻末のおまけなどではなく、独立の一冊ものとして、家族法全体を税法の観点から総点検する本を、このお二人で作ったほうがいいんじゃないでしょうか。


 ところで、窪田先生は「はしがき」の中で、太田武男先生のおかげで、的なことを書いています。
 のに、〈参考文献〉には太田先生の教科書がなぜか掲げられていない。

 なぜだ?



太田武男 親族法概説(有斐閣1990)
太田武男 相続法概説(一粒社1997)

 もちろん、古いとか入手困難とかで載せないってことはありますが、〈参考文献〉には古くて入手困難な本も載っているんですよね。
posted by ウロ at 13:36| Comment(0) | 民法

2020年03月02日

無償減資で均等割下げ(節税系の記事ではなく)

 無償減資で均等割が下げられる、というのは、すでに人口に膾炙したところかと思います。
 今さらブロク記事にするような人も、ほとんどいないのかもしれません。

 が、ここでいう「無償減資」というのを正確に理解しておかないと、それらしい手続をとったのに要件満たしていませんでした、となって、取り返しがつかないことになりかねない。

 ということで、条文にそって整理しておきます。
 珍しく節税系の記事かと思いきや、お馴染みの条文読み込み系の記事です。

【これと同じノリ】
みんな大好き!倒産防。 〜措置法解釈手習い


 地方税法、地方税法施行規則、会社法、会社計算規則に跨っていますので、順をおって記述していきます(例によって条文は適宜省略いれています)。

 まずスタートは、何を基準に均等割が決まるかです。

地方税法 第五十二条(法人の均等割の税率)
1 法人の均等割の標準税率は、次の表の上欄に掲げる法人の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に定める額とする。
二 資本金等の額を有する法人で資本金等の額が千万円を超え一億円以下であるもの 年額五万円


 均等割は「資本金等の額」を基準に算定されるとあります。

 「資本金等の額」とは何かというと、

地方税法 第二十三条(道府県民税に関する用語の意義)
1 道府県民税について、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
四の五 資本金等の額 次に掲げる法人の区分に応じ、それぞれ次に定める額をいう。
イ 第五十三条第一項の規定により申告納付する法人 同項に規定する法人税額の課税標準の算定期間の末日現在における法人税法第二条第十六号に規定する資本金等の額と、当該算定期間の初日前に終了した各事業年度(イ及びロにおいて「過去事業年度等」という。)の(1)に掲げる金額の合計額から過去事業年度等の(2)及び(3)に掲げる金額の合計額を控除した金額に、当該算定期間中の(1)に掲げる金額を加算し、これから当該算定期間中の(3)に掲げる金額を減算した金額との合計額


 法人税法上の「資本金等の額」に何やら調整を加えるのだと。
 法人税法上の「資本金等の額」については、法人税法施行令に鬼のような加減算がありますが、話が長くなるので中身については省略します。

法人税法 第二条(定義)
 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
十六 資本金等の額 法人が株主等から出資を受けた金額として政令で定める金額をいう。


 ということで、地方税法上の「資本金等の金額」を式で書くと次のとおり。

 =地方税法上の資本金等の金額
   法人税法上の資本金等の金額
    +過去事業年度の(1)
    −過去事業年度の(2)(3) 《控除》


 「控除」とあるので、ここまででマイナスなら零とします。そして、

    +当該算定期間の(1) 加算
    −当該算定期間の(3) 減算


と、ここは加算・減算なので、もしマイナスになるならマイナスとする、ということです。


 この、控除・加算・減算する(1)(2)(3)が、複数法令を引用しているので、分解して整理します。

(1)
 平成二十二年四月一日以後に、会社法第四百四十六条に規定する剰余金(同法第四百四十七条又は第四百四十八条の規定により資本金の額又は資本準備金の額を減少し、剰余金として計上したものを除き、総務省令で定めるものに限る。)を同法第四百五十条の規定により資本金とし、又は同法第四百四十八条第一項第二号の規定により利益準備金の額の全部若しくは一部を資本金とした金額


会社法 第四百四十六条(剰余金の額)
 株式会社の剰余金の額は、第一号から第四号までに掲げる額の合計額から第五号から第七号までに掲げる額の合計額を減じて得た額とする。(各号は省略)

会社法 第四百四十七条(資本金の額の減少)
1 株式会社は、資本金の額を減少することができる。この場合においては、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。

会社法 第四百四十八条(準備金の額の減少)
1 株式会社は、準備金の額を減少することができる。この場合においては、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
二 減少する準備金の額の全部又は一部を資本金とするときは、その旨及び資本金とする額

地方税法施行規則 第一条の九の四(法第二十三条第一項第四号の五イ(1)に規定する剰余金として計上したもの等)
1 法第二十三条第一項第四号の五イ(1)に規定する総務省令で定めるものは、会社計算規則第二十九条第二項第一号に規定する額とする。

会社計算規則 第二十九条 (その他利益剰余金の額)
2 株式会社のその他利益剰余金の額は、次項、前三款及び第四節に定めるところのほか、次の各号に掲げる場合に限り、当該各号に定める額が減少するものとする。
一 法第四百五十条の規定により剰余金の額を減少する場合 同条第一項第一号の額(その他利益剰余金に係る額に限る。)に相当する額

会社法 第四百五十条(資本金の額の増加)
 株式会社は、剰余金の額を減少して、資本金の額を増加することができる。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 減少する剰余金の額
二 資本金の額の増加がその効力を生ずる日


 以上から、(1)に含まれるのは平成22.4.1以降の、
  利益剰余金⇒資本金
  利益準備金⇒資本金

に限られ、
  資本剰余金⇒資本金
  資本準備金⇒資本金 

は括弧書きによって除かれていることがわかります。

(2)
 平成十三年四月一日から平成十八年四月三十日までの間に、資本の減少(金銭その他の資産を交付したものを除く。)による資本の欠損の填補に充てた金額並びに会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律((2)において「会社法整備法」という。)第六十四条の規定による改正前の商法((2)において「旧商法」という。)第二百八十九条第一項及び第二項に規定する資本準備金による旧商法第二百八十九条第一項及び第二項第二号に規定する資本の欠損の填補に充てた金額


 旧法の引用は省略しますが、(2)には平成13.4.4から18.4.30までの
  資本金⇒欠損填補
  資本準備金⇒欠損填補

が含まれ、(3)との対比でいうと、資本剰余金を経由する必要がないことになります。

(3)
 平成十八年五月一日以後に、会社法第四百四十六条に規定する剰余金(同法第四百四十七条又は第四百四十八条の規定により資本金の額又は資本準備金の額を減少し、剰余金として計上したもので総務省令で定めるものに限る。)を同法第四百五十二条の規定により総務省令で定める損失の填補に充てた金額


会社法四百四十六条、第四百四十七条、第四百四十八条は(1)と同じ。

地方税法施行規則 第一条の九の四(法第二十三条第一項第四号の五イ(1)に規定する剰余金として計上したもの等)
2 法第二十三条第一項第四号の五イ(3)に規定する剰余金として計上したもので総務省令で定めるものは、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める額とする。
一 会社法第四百四十七条の規定により資本金の額を減少した場合 会社計算規則第二十七条第一項第一号に規定する額
二 会社法第四百四十八条の規定により準備金の額を減少した場合 会社計算規則第二十七条第一項第二号に規定する額
3 前項各号に定める額は、会社法第四百五十二条の規定により損失の填補に充てた日以前一年間において剰余金として計上した額に限るものとする。
4 法第二十三条第一項第四号の五イ(3)に規定する総務省令で定める損失は、会社法第四百五十二条の規定により損失の填補に充てた日における会社計算規則第二十九条に規定するその他利益剰余金の額が零を下回る場合における当該零を下回る額とする。

会社計算規則 第二十七条(その他資本剰余金の額)
1 株式会社のその他資本剰余金の額は、第一款及び第四節に定めるところのほか、次の各号に掲げる場合に限り、当該各号に定める額が増加するものとする。
一 法第四百四十七条の規定により資本金の額を減少する場合 同条第一項第一号の額に相当する額
二 法第四百四十八条の規定により準備金の額を減少する場合 同条第一項第一号の額に相当する額

会社法 第四百五十二条(剰余金についてのその他の処分)
 株式会社は、株主総会の決議によって、損失の処理、任意積立金の積立てその他の剰余金の処分(前目に定めるもの及び剰余金の配当その他株式会社の財産を処分するものを除く。)をすることができる。この場合においては、当該剰余金の処分の額その他の法務省令で定める事項を定めなければならない。


 以上から、(3)には平成18.5.1以降の、
  資本金⇒資本剰余金⇒欠損填補(1年以内)
  資本準備金⇒資本剰余金⇒欠損填補(1年以内)

 が含まれていることがわかります。

 ・資本剰余金を経由する必要があること、
 ・資本金、資本準備金を減少して生じた資本剰余金であること
 ・資本剰余金に振り替えてから1年以内に欠損填補すること

というのがポイントですかね。


 均等割の算定基準、もう一つ重要なルールがあります。

第五十二条(法人の均等割の税率)
2 法人の均等割の税率は、次の各号に掲げる法人の区分に応じ、当該各号に定める日現在における税率による。
一 次条第一項の規定により申告納付する法人 当該法人の同項に規定する法人税額の課税標準の算定期間の末日
4 第二項第一号に掲げる法人の資本金等の額が、同号に定める日現在における資本金の額及び資本準備金の額の合算額に満たない場合における第一項の規定の適用については、同項の表の第一号ホ中「資本金等の額が」とあるのは「次項第一号に定める日現在における資本金の額及び資本準備金の額の合算額が」と、同表の第二号から第五号までの規定中「資本金等の額が」とあるのは「次項第一号に定める日現在における資本金の額及び資本準備金の額の合算額が」とする。


 地方税法上の資本金等の金額 < 会計上の資本金+資本準備金の合計額


の場合は、右辺が基準となります。
 これは「自己株式の取得」などで、資本金等の金額が会計上の資本金・資本準備金を下回った場合などにきいてくるルールです。

 張り切って左辺を減少させても、あわせて右辺も減少しておかないと意味がない、ということです。


 以上を整理すると次のとおり。

【均等割の算定基準】
 地方税法上の資本金等の金額
  =法人税法上の資本金等の金額
   +過去事業年度の(1)
   −過去事業年度の(2)(3) 《控除》

   +当該算定期間の(1) 加算
   −当該算定期間の(3) 減算

(1)22.4.1〜 無償増資
  利益剰余金⇒資本金
  利益準備金⇒資本金

(2)13.4.1〜18.4.30 無償減資
  資本金⇒欠損填補
  資本準備金⇒欠損填補

(3)18.5.1〜 無償減資
  資本金⇒資本剰余金⇒欠損填補(1年以内)
  資本準備金⇒資本剰余金⇒欠損填補(1年以内)

 地方税法上の資本金等の金額 < 会計上の資本金+資本準備金の合計額
の場合は、右辺を基準とする。



 並べてみて思ったのが、(1)と(3)が表裏になっていないこと。

 たとえばですけど、
  資本金    1000万円
  資本剰余金   500万円
  利益剰余金 ▲1000万円

という会社があったとして、
 資本剰余金をいきなり欠損填補にあててしまうと、(3)の流れに該当しないし、また1年以内という期間制限も超過してしまっているはずです。

  × 資本剰余金⇒欠損填補 

 そこで、資本剰余金を一旦資本金なり資本準備金に振り替えてから、再度資本剰余金に戻して欠損填補したら(3)に該当することになるんでしょうか。

 1資本剰余金⇒2資本金or資本準備金⇒3資本剰余金⇒4欠損填補


 1⇒2は(1)に該当しないので加算されないし、2⇒3⇒4は形式的には(3)に該当しています。

 実際にこういう状態が生じるのか、すぐに思いつかないのですが、たぶんありえますよね。
タグ:均等割
posted by ウロ at 11:23| Comment(0) | 地方税法