2020年09月14日

アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民まとめ)

 前回までの、ツッコミ入れながらの雑感をまとめます。

「新 実務家のための税務相談(民法編) 」(有斐閣2017)
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民1)
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民2)
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民3)
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民4)
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民5)
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民6)


 ツッコミ入れながら思ったことは、多数執筆者が参加しているにもかかわらず、ツッコミ要素が似たものばかりという点です。

 このことから邪推できることは、個々の執筆者の問題というよりも、編集方針の問題なのではないか、ということ。

 本書の特徴は、最初に書いたとおり、次のようなものでした。

 ・むやみに多数の項目が取り上げられていて、
 ・やたらと多数の執筆者が参加していて、
 ・一項目がどれもこれも3,4頁程度と短く、
 ・当該項目にかかわる法規定と通達・裁決・判決をパラパラと並べた、
感じの記述が延々と続く。

 多数の項目を扱っているなら内容豊富でいいじゃん、と思うかもしれません。
 が、その項目というのが、民法の編成に従って機械的に細分化されてしまっています。

(以下、この状態を「パンデクテン」と形容します。こう呼ぶとパンデクテンに対する風評被害ともなりかねないところですが、他に呼びようがないので)。

 このパンデクテン、民法内部の制度を整理するためのお道具箱としては優れているのかもしれません。
 が、それ以外の用途には有害無益でしかない。

 内輪のノリを外でやるなよと。


 たとえば、税法の側からみて「無効・取消」と「契約の解除」を分断して論じることに、何の意味があるというのか。
 税法の立場からすれば、いずれも「当初の状態が事後的に変動した場合」として共通しています。

 もちろん、変動事由によって税法上の対応も異なってきます。にしても、それを比較対照しながら論ずることに意義があります。
 のに、別々の執筆者がそれぞれ思うままに記述してしまっているせいで、「比較」という視点が全く抜け落ちてしまっている。


 設例(Question)に正面から答えない、というのも、多数項目に共通する要素でした。

 これも、回答者側が答えをパンデクテンで区切られてしまっていることが要因のひとつではないかと。

 本当は、回答者自身も質問者の望んでいる答えを言いたいのに、当該項目以外の回答をしようとすると声が出なくなる呪いにかけられている、みたいな。

 なんなの、その縛りプレイ。


 また、消費税や印紙税などの論点が埋草的に使われているのは、重要度にかかわらず分量が均一なせいではないかと思われます。

 隙間があれば書くけどなければ書かないと。論ずるべきだから書く、ではなく。


 以上、「民法×税法」モノを作る場合において、本書の編集方針は失敗というのが私の見立て。
 パンデクテン縛りで書かせるだけ書かせておいて、統一性を持たせないという。
 ので、個々の執筆者に対しては、あまり責める気にはなれない。

 私のように、「アクティブ・ラーニング」として用いるのはひとつの利用方法。
 しっかり読み込んだ上でのものではなく、かなりの流し読みでもこれだけのツッコミどころがあったわけです。
 ので、掘ればまだまだ発掘できるかもしれませんし。

【アクティブ・ラーニングもの】
後藤巻則「契約法講義 第4版」(弘文堂2017)
三木義一「よくわかる税法入門 第14版」(有斐閣2020)


 ということで、「民法×税法」モノとしてのありうる方向性はふたつ。

1 ひとつは、前著のように論点を絞って深く論ずること。
2 もうひとつは、当該項目に関連する税制を完全網羅したインデックスに徹すること。

 「新」で前著を換骨奪胎したわけだから、「新々」でもリビルド可能でしょ。


 なお、「会社法編」については、パラッと見た感じ中小企業向けの記述と大企業向けの記述が混在していて、かつ、どちらかというと大企業向けの記述のほうが多そうだったので、読むのやめておきます。

 なんか第2版が出るようですけども。

 

「新 実務家のための税務相談(会社法編) 第2版」(有斐閣2020)

 全くの余談ですけども、会社法「実務」について書かれた本にもかかわらず、大企業向け/中小企業向けの記述が区別されていないものは読まないほうがいい、というのが私の持論。

 「実務」という側面からみた場合、どう考えても別世界でしょう。
 ので、読み手の側で区別をしながら読み進めないといけないわけです。
 だったら、はじめから区別してくれている本を読んだほうが、余計な仕分け作業をしないで済む。

 単一法で収められているからといって、実務本までその編別に倣う必要はまったくない。
 「民法×税法」をパンデクテンで解説するのとおなじくらいの愚挙、と私は思う。

 この点、大垣先生の会社法の教科書では、会社の発展に即した記述がなされていて、非常に理解しやすい。
 こういう配慮がされた本を積極的に読んでいくべきでしょう。
 
大垣尚司「金融から学ぶ会社法入門」(勁草書房2017)
posted by ウロ at 09:36| Comment(0) | アクティブ・ラーニング

2020年09月07日

アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民6)

 今回は「親族編」と「相続編」。
 ちょっと駆け足気味。

 出会う人出会う人全員に「大島さんですか?」とボケられ続けたら、そりゃあしんどいよなあと思うなど。
 ボケるにしても、バリエーション増やしてくれないと飽きがくる。

「新 実務家のための税務相談(民法編) 」(有斐閣2017)
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民1)
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民2)
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アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民4)
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民5)


76 親族の範囲

「しかし、こうした専門性をもった仕事について、夫婦や親子だからといって「生計を一にしている」といえるかは、今日では疑問です。」

 所得税法56条に疑問をもつのは結構ですが、「生計」と「専門性をもった仕事」とがどういう連関をもつというのか。

【選民思想??】
 ・専門性あり夫婦 ⇒生計別
 ・専門性なし夫婦 ⇒生計一

 職務の専門性とご家庭のお財布事情に、税法上特別扱いすべき何らかの相関関係があるというのか。
 「専門性のある仕事に従事している夫婦は、生計が別なのが通常」とでも思っているのか。


「他方で、財産評価基本通達をうまく使えば、トラブルを未然に防ぐこともできます。遺産分割に際して、5%未満しか取得しないように処理すれば、配当還元価格が何の問題もなく適用されるからです。」

 何の問題もなく、だと!?

 仮にそうだとしても、相続でそれを実現するには相続人が都合21人必要だということになるぞ(100÷21<5%)。基礎控除とれなくても養子縁組しまくれとでも。

 もちろん、グループ外に出せるならそこまでは必要ないです。
 が、資本政策そっちのけで相続税対策だけをやるというのは、劣悪な節税対策の典型例。

 もしかして、一般社団法人を想定しているのかもしれませんが、パンデクテンの呪いにより他項目については語れないということなのか。
 語ったら語ったで、上記記述のノリからすると「一般社団法人に沢山もたせておけば、その他の少数株主は何の問題もなく配当還元価格が適用される」とか言いかねない。が、もはやそんな単純な話ではない。


78 婚姻費用

「過去分の婚姻費用を支払う場合は分割払となることが多く、現実に贈与税の課税がされることはないといえます。」

 連年贈与/定期贈与の問題がでてくるような気がしますけど、どうなんでしょう。


79 財産分与

「贈与税の特例として、婚姻期間が20年を経過している場合は居住用財産を配偶者に贈与すれば最大2000万円の控除額の適用が可能(相税21条の6)です。もっとも離婚をしようとしている夫婦が離婚の直前にこの特例を適用するのは法の趣旨にそぐわない気もします。」

 これ読んで思ったのが、この特例の趣旨は、

  ・これまでありがとう。

なのか、

  ・これからもよろしくね。

なのか、どちらなんでしょう。

 この記述は後者で決め打ちしています。
 けども、婚姻期間を20年も要求していることや婚姻継続の見込みを要求していないことからすれば、前者の過去の精算とみるほうが自然なように思えます。
 いわゆる立法担当者がどのように解説していようが、条文上の要件から読み取れない立法趣旨を、勝手に持ち込むべきではないでしょう。

横流しする趣旨解釈(TPR事件・東京高裁令和元年12月11日判決)


80 認知

Question「〜認知が確定しました。そこで、他の相続人に相続分の引渡しを求めましたが、」

 被認知者による「相続分の引渡し」とは何か?


「税法では民法の規定とは逆に、相続税申告書提出のときにおいてまだ生まれていないときは、その胎児がいないものとして計算・申告します。」

 「1 人(胎児・外国人)」では、民法上も停止条件だから民法・税法で理解が異なるわけではないと書いてある。
 ちゃんと整合とりなさいよ。

アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民1)


90 相続財産2(債務の相続)

 「その合意内容等について債権者の承諾を得られることができれば、一種の免責的債務引受があったものとして、その合意内容を債権者に対して対抗することができます。」

 こういう雑な言葉の使い方、すごい気になる。

 「対抗」というのは、法律用語としては「当事者間の法律関係を当事者以外の第三者にも主張できること」を意味します。

【正確には辞書を引け】
「法律学小辞典」の『小』は「小スキピオ」の『小』

 が、ここで書かれていることは「債権者」の承諾があるから「債権者」に対抗できるということ。
 承諾した本人に主張できるのは、対抗の問題ではない。

 もちろん、日常用語としては間違ってはいません。
 が、専門家向けの書籍でありながら、こういう無配慮な記述を放り込んでくるの、なんか嫌。


「相続税法上控除される債務は、相続開始の「時」ではなく「際」に存するものとなっています。この「際」の解釈について判例では、「社会通念上これ〔相続開始〕から起因して生じる事態の経過を含めた時間の範囲」を示すものだとしています。」

 いやだから、唐突に判例の規範だけ書かれても。
 これが具体的に何を想定しているのか書いてくれないと。


97 限定承認

「限定承認をする場合は、被相続人について債務超過のおそれがある場合であり、通常は相続税の税額が算出されることはありません。しかし、被相続人が株主代表訴訟の被告になっている場合には訴訟中の債務が相続開始日に現実化しておらず、債務控除ができません。」

 ここでなぜいきなり「株主代表訴訟」がでてくるのか。
 何の脈絡もない。


「以上から考えると、Questionについてはケースバイケースといわざるをえません。」

 正気ですか?
 税務相談されて、「ケースバイケースですね」で終われるのか。
 
 せめて、どういう場合にどうなるのか、という場合分けをした説明をするもんじゃないんですか。


99 相続人不存在・相続財産法人・特別縁故者

「相続財産法人は、その名のとおり法人であり、国内に主たる事務所を有するといえそうなので、法人税法上の納税義務者に該当するものと思われます。」

 「いえそう」とはなんだ。


100 遺言

「道府県は、相続にかかる不動産の取得に対しては、不動産取得税を課することはできませんが」

 都は課せるのか、そうなのか。

 や、むしろ都に不動産取得税は存在しないのか、やったね都民(ヒント:地方税法の編成)。


 最後は駆け足になりましたが、次回で全体の「まとめ」をします。
posted by ウロ at 11:10| Comment(0) | アクティブ・ラーニング