2022年05月02日

非居住者に対する退職所得と住民税

 地方税法、以下の記事でも書いたとおり、なかなか難解。

「合計所得金額」に退職所得は含まれるし含まれない。〜令和4年度税制改正大綱を素材に

 次のような、国境を跨いで退職金が発生した場合、住民税の処理はどうなるでしょうか。

《事案》
 10年前 入社 (居住者)
 5年前 海外赴任 (非居住者)
 2022年 海外で退職、退職金1000万円支給 (非居住者)
     その後、帰国(居住者)、2023年1月1日以降も居住予定。


 まず、この場合の所得税法上の取り扱いは、

ア 原則
 「非居住者」に支給する退職所得に該当するため、国内勤務に対応する500万円(1000万円×5年/10年)につき源泉徴収(源泉分離課税20.42%)をする(所得税法161条12号ハ、164条2項2号、169条、170条)。

イ 例外(選択課税)
 本人は「退職所得の選択課税」により、1000万円全額を「居住者」に対する支給とみなして還付申告をすることができる(所得税法171条、173条)。

となります。


 これはまあ分かる。では、住民税は課税されるのでしょうか?

ウ 特別徴収
 2022年1月1日現在住所がなく、所得税法199条による源泉徴収ではないため、支給者(会社)は「特別徴収」を行わない(地方税法328条)。

 ここまではそこらの《税務お役立ち記事》にも書いてあることでしょう。
 問題はこの先、年内に帰国していることがどう影響してくるか。

エ 住民税申告
 2023年1月1日現在住所があるため、前年支給を受けた退職金が課税対象となり、本人による「住民税申告」が必要(??)。

 《税務お役立ち記事》では、会社が特別徴収しないからそこで課税関係が終了するかのような書き方がされます。
 が、退職所得が特別徴収(現年分離課税)の対象外となるのであれば、原則(前年所得課税)に戻って課税判定をすることになります。

 ので、2023年1月1日現在でまだ帰国していなければ2022年の退職所得に課税されることはないが、帰国していれば課税される、ということになります。


 課税されるとして、その計算はどうなるのか。所得税が「ア 原則」の場合は、

 (国内収入500万円−退職所得控除(国内5年))×10%(標準税率)

ということでいいのかどうか。
 住民税は、所得税と違って非居住者に対する「源泉分離課税」制度がないので、こうなるのではないかと。

オ 選択課税
 では、本人が所得税で「選択課税」による還付申告を行った場合はどうか。
 所得税に連動して、
 
 (収入1000万円−退職所得控除(10年))×10%(標準税率)

ということになるのかどうか。

 地方税法施行令48条の5の2(非居住者期間を有する所得割の納税義務者の課税標準の算定)がここに関係しそうな規定っぽいのですが、退職所得の場合にどのように適用されるのかが読み取れない。

○地方税法施行令
(非居住者期間を有する所得割の納税義務者の課税標準の算定)
第四十八条の五の二 前年中に所得税法第二条第一項第五号に規定する非居住者であつた期間を有する者の同法第七条第一項第一号及び第二号に規定する所得並びに同法第百六十四条に規定する国内源泉所得に係る法第三百十三条第一項の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額は、法又は法に基づく政令で特別の定めをする場合を除くほか、所得税法その他の所得税に関する法令の規定による同法第百六十五条及び所得税法施行令第二百五十八条の所得税の課税標準の計算の例によつて算定するものとする。


 事案が発生してから、各自個別に自治体へご相談いただくのがよろしいかと。
 実情は、自治体のほうでも本人が申告してくれないかぎり支給実績を把握しようがない、というところなのでしょうが。
posted by ウロ at 10:02| Comment(0) | 地方税法