実務書の中には、一方の極に「条文引き写し系」や「運営見解垂れ流し系」のものがありつつ。
他方で、著者の深い経験を踏まえた、実務で使いこなすための知恵(wisdom)がふんだんに盛り込まれたものもあったりします。
それなりの購入歴を積んである程度鼻が利くようになったとはいえ、まだまだハズレを掴まされることもあり。まだまだ精進が足りません。
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私も紛いなりにも実務家なので、学術書よりも圧倒的に実務書のほうを読んでいるわけですが。
本ブログでは、学術書のほうがネタになりやすい、ということで、学術書の記事のほうが多くなっています。
が、《実務書類型論》の確立をしたいなあ、となんとなく思っていて。上記のような系統分類です。
今後は、少しづつ実務書の記事も増やしていきたいところです。
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で、本書はというと。
萩原京二、岡崎教行「個人契約型社員制度と就業規則・契約書作成の実務」(日本法令2023)
従前は集団的・画一的となっていた労働条件に対して、多様な働き方を実現するために、もと個別的な労働条件の設定を推進していきましょう、というかなりチャレンジングな内容となっています。
単なる法律・制度の解説だけではこういう内容にはならないのであって。
労働基準法を中心とした画一的・強行的なルールや、就業規則などによる集団的なルールがある中で、どこまで個別的な条件設定が可能になるのか、考えてみる良いきっかけとなりました。
ということで、本書は当たりのほうでした。よかったね。
系統名としては《制度活用系》とか《実務経験盛込型》とかにあたるでしょうか(名称はまだ煮詰まっていません)。
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まだ全然妄想段階ですが。
・個別の労働条件ごとに処遇を紐付けることで「均等・均衡待遇」ルールも同時に実現できるかも。
・さらに「人事評価制度」や「人材育成制度」も、個別の労働条件ごとに紐付けることが可能か。
紐づけさえきちんと初期設定しておけば、一気通貫のパーソナル制度が出来上がるかも。
・完全パーソナルにもっていくには、それ用のシステム導入が必要ではないか。さすがに手作業で個別管理は大変でしょうし。
逆にいうと、今までは適合するシステムがなかったせいで集団管理せざるをえなかったところ、適合するシステムさえあれば個別管理も実現可能になるか。
現状だと、たとえば勤怠管理システムでも、個人ごとに設定できる項目と会社・事業所単位でしか設定できない項目があったりするので、どこまでパーソナルな運用ができるか。
以上、本書を一読した段階でのただの妄想ですが、もう少し考えてみます。
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なお、以下は全くの別件です。
上記では、勤怠管理・給与計算、人事評価・人材育成など含めて、諸々をひとつのクラウドシステムの中で完結できれば効率的だよなあ、と妄想していました。
が、当該システムが落ちたら何も業務ができなくなる、というのはさすがに脆弱すぎる、ので、効率と分散のバランスをとることも重要だなあと、近時の《エムケイ事変》をみて、あらためて感じるところです。
我が税理士事務所は、お客様がクラウドシステムを利用されることについてはオススメも拒絶もどちらもせずに、完全お任せ状態ではあります。お客様にとっての「向いている/向いてない」は言いますけども。
わざわざマネーフォワード会計+給与の検定2級をとってロゴまでもらったので、こういう所に貼って「クラウド得意!」とかアピールすればいいのでしょうが。いまさら言うのは、なんか一昔前の「コンピュータ会計やってます」に近しい匂いがして抵抗感があるんですよね。
単に使うのがお上手、というだけで、システムに関する知識は何もないわけですし。
それはさておき、お客様がクラウドシステムを利用している場合でも、会計データにかぎっては事務所利用のオンプレミス型の会計ソフトでバックアップを取ってあります。
ので、最悪当該クラウドシステムが落ちてしまっても、どうにかなるようにはしています。そもそも、会計データ自体、仕訳データ(CSV)さえあればどうにでもなりますし。
そして、税務申告ソフトはゴリゴリのオンプレミス。さすがにここをクラウドでやろうとは、まだまだ思えない。
e-Tax・eLTAXが落ちたら何かしらの救済はあるでしょうが、民間のクラウドシステムが落ちたところでそう簡単には救済してくれないでしょうし。
2023年06月12日
萩原京二、岡崎教行「個人契約型社員制度と就業規則・契約書作成の実務」(日本法令2023)
posted by ウロ at 11:19| Comment(0)
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