2023年07月31日

所一彦「刑事政策の基礎理論」(大成出版社1994)

 夏休み読書感想文、といった趣のセレクト。

 所一彦「刑事政策の基礎理論」(大成出版社1994)

 夏だからといって、極端に暇になるわけでもなく。極端に忙しくもなりませんが。
 が、なんとなくの気分で、仕事から離れた本を読みたくなる気分にはなります。

 といいながら、法律書から離れることもなく。


 イカれた書籍嗜み屋としての性癖のひとつ。
 全く同じ本を購入するという所作。AIに画像生成していただいたわけではありません。

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 2冊購入したからといって、理解度が2倍になるわけでもないのに。

 たとえば、金子租税法を2冊買うというのは、自宅用と事務所用に備(供)えておくということで、実務家としては標準の所作かと思います。
 なお、「自炊用1冊でいいだろ」という見解は、《積極的偶像崇拝派》(むしろ偶像が本体思想)たる我々とは相容れません。

 金子宏「租税法 第24版」(弘文堂2021)


 「刑事政策」という分野、大学で履修したこともなく。あれやこれやの政策手法の集積、くらいのイメージしかなかったため、まともに勉強することもありませんでした。
 刑事実体法である「刑法総論」の基本書・教科書の類をやたら保有しているのと比較して。1冊ももっていませんでした。

 本書は、タイトルに「基礎理論」とあったので、もしかしたら興味を持てるかもと思って。読んでみたらとてもよかったよ、というのが今回のご報告です。

 が、噛み砕いてご紹介できるほど理解できていないので、中身については触れられず。章タイトルだけ貼り付けておきます。

 第1章 刑事政策の課題と方法
 第2章 刑罰と責任の理論
 第3章 少年保護と福祉の理論
 第4章 犯罪化・非行化と社会変動
 第5章 刑事政策の近代化と伝統文化
 第6章 刑事政策の組織と民主的統制
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2023年07月24日

小西國友「社会保障法」(有斐閣2001)

 重厚な体系書ですらソフトカバー(かつ紙質が貧弱)で出版される近時の風潮とは異なり、かつてはガワとしてのハードカバー/ソフトカバーと中身のハード/ソフトはおおむね対応関係にありました。
 なお、ハードカバーの上位機種が(今となっては絶滅危惧種の)函入。

 本書も、「有斐閣ブックス」とかいう、ソフトカバーのシリーズ物の中の一冊だったため、単なる制度陳列系(以下「セドチン」という。)の概説書なのかと思って読まずにいたところでした。

小西國友「社会保障法」(有斐閣2001)

 本書の裏表紙にはこんなことが書いてあります。

社会保障法は,社会の構成員が社会的事故に遭遇することに関連して各種の保障を行う法である。実体面に重点を置き制度解説を中心にした従来型のテキストではなく,法的側面から構造を解き明かすテキストは本書がはじめてである。真に社会保障法の名に値する画期的なテキストが登場した。

 これまで法学専門書出版社による宣伝文句には、さんざん煮え湯を飲まされてきたわけで。今さらこんな、大言壮語な美辞麗句を額面通りに受け取ることなんかできません。

税法思考が身につく、理想の教科書を求めて 〜終わりなき旅

 特に「社会保障法」なんて、セドチン系の薄味本を読まされたばかりですし。

黒田有志弥ほか「社会保障法(有斐閣ストゥディア)」(有斐閣2019)

 ところが、実際読んでみたら、この宣伝文句どおりの内容となっていました。がっつりめの理論書。完全に、オオカミ少年の寓話どおり。

 本書の出版以降どこかの時点で、出版社内の宣伝文句担当の倫理感がどうにかなってしまうような、転換点というものがあったのでしょうか。あるいは、宣伝文句担当は時代を経ても何も変わらず、中身のほうがそれに伴わなくなっていっただけなのか。


 総論の目次を眺めるだけでも、良い雰囲気でてますよね。

第1編 総論
  第1章 序説
  第2章 社会保障基本権
  第3章 保障主体
  第4章 保障規範
  第5章 保障行為
  第6章 保障関係
  第7章 給付制限
  第8章 紛争解決手続

 もちろん、個別制度を知らずにいきなり総論を読んでも、なんのことやら理解できないと思います。が、ひととおり制度理解をしてから総論を読むと、自分の頭の中でバラバラだった知識がよく整理できるようになると思います。


 本書のよさをご理解いただくために、どこの記述を切り出してもいいのですが、たとえば次のような記述はどうでしょうか(P.46)。

 市町村と特別区(市町村。市区町村とも市町村等とも総称されることがある)は、一定の目的(立法・行政)のために国の一定の地域において住民により構成される組織的統一体である地方公共団体の一種であって、前者の市町村は普通地方公共団体であり後者の特別区は特別地方公共団体(財産区も同様)である。市町村は地方公共団体の組織体自体を意味することが多いが(たとえば、「市町村又は特別区は、この法律の定めるところにより、国民健康保険を行う」という場合。国民健康保険法三条)、社会保障法の領域においては、市町村の行政府を意味することもある。たとえば、国民健康保険法九条が「世帯主は……被保険者の資格の取得及び喪失に関する事項その他必要な事項を市町村に届け出なければならない」と規定する場合の「市町村」は市町村の行政府のことである。
 市町村という概念が地方公共団体(地方団体とも呼ばれる)の組織体自体とその機関である行政府の双方を意味するのは、地方公共団体に関しては国のレベルにおける「国」とその行政府である「政府」についてと異なり、地方公共団体の行政機関の全部または一部としての行政府の存在が明瞭に意識されないことによるものである。その存在が明瞭に意識されるのは地方公共団体における行政機関としての都道府県知事や市町村長であるが、内閣の所轄下に行政機関があるように都道府県知事や市町村長の所轄下にも行政機関が存在し、これらが一体となって地方公共団体の行政府を構成していると考えられる。


 この「行政組織法」味あふれる記述、グッときますよね。

藤田宙靖「行政組織法 第2版」(有斐閣2022)

 「市町村」なんて用語、当然にその意味はわかっているとばかり、薄ぼんやりとしか読めていなかったわけですが。使われる局面によって意味が異なるんだと。

 言葉の意味を正確に記述しようとしている様をみると、書籍への信頼感がとても上がります。


 あるいは次のような記述はどうでしょうか(P.138)。国民健康保険法36条1項1号の「診察」について。

「診察」とは、医師や歯科医師が傷病の状態を判断するために、質問を発しまたは発することなく、心身を調査することである。したがって、近視やその他の目の傷病の状態を判断するために行う検眼は、それが医師による場合(診察は医師・歯科医師によらなければならない)には「診察」である。しかし、近視の有無の判断のためではなく単に眼鏡の装用のための検眼は、眼鏡店におけるものでなく医師によるものであっても「診察」ということができない。また、このような目的から行われる検眼は所得税法七三条の規定する医療費控除の認められる「医療又はこれに関連する人的役務の提供」ということもできない(藤沢税務署長事件・横浜地判平成一・六・二八行裁例集四〇巻七号八一四頁参照)。

 「診察」なんて言葉、日常用語でもあるので定義なんか気にせずわかった気になってしまうところです。この点も、きちんと定義づけがされた上で外延を示し、さらに税の扱いにまで触れるという周到ぶり。事項索引にまで「診察」が入っていますし。


 各論の中でも、各章において「個別的な法律問題」という項目を設けて、法的論点についてしっかりとした議論が展開されています。田中二郎先生の『租税法』が、総論がっつり・各論セドチンなのとは違って。
 きっちり尻尾まであんこがつまった、たい焼きの如く。

田中二郎「租税法(第3版)」(有斐閣1990)

 社会保障「法」の教科書なんだから、法的論点を検討するのは当たり前、と思うのですが。残念ながらセドチン本がのさばってしまっている。


 たとえば、受給権の「消滅時効」について。セドチン本では単に2年とか5年とかいう数字だけが並んでいるだけのところですが。

 本書では、年金受給の支分権はともかく、基本権まで5年で消えるのは、長年保険料を納付してきたことと対比して酷くないか、という問題意識から基本権には消滅時効の規定は適用されない、という解釈論を展開しています。しかも、単純に基本権はすべて消滅時効排除というのではなく、受給権の性質ごとに(療養、年金、扶助など)検討をされています。

 裁判所がこのような解釈をそのまま採用することは考えにくいです。ですが、個別事案ごとの事情に応じて例外的に消滅時効の適用しない、という結論を出すことは十分ありえます。裁判所がおよそ採用しえない見解など主張する意味がない、ということにはならないはずです。

 セドチン本では、こういったことを考える素材すら提供してくれない。


 しかしまあ、学問というのは先人の業績を踏まえて少しづつでも漸進していくものだと思うのですが。なぜセドチン本に退化・回帰してしまうのか。
 裏表紙の宣伝文句で「従来型のテキスト」呼ばわりされていたものなんですが。

 昨今の厳しい出版事情の元では、法学専門書なんて、共著の・セドチンの・薄い本を大学の指定教科書にしてもらうことでしか生き残れないのでしょうか。
 売れ筋の小型六法と指定教科書をTOY'S FACTORYにおけるMr.Childrenと位置づけ、そのおこぼれで他のアーティストを細々と育てていく的な(もちろんBUMPとかも所属しているわけですが、さすがに別格でしょう)。

 残念ながら、本書は2001年に出版されたきり後続がないままです。
 が、「法学」としての社会保障法を学びたいというならば、『最新の法改正に対応!』だけが売りのセドチン本よりも、たとえ古くても本書のような理論書を読んだほうが、勉強になるはずです。
posted by ウロ at 10:49| Comment(0) | 社会保障法

2023年07月17日

倉重公太朗,白石紘一「実務詳解 職業安定法」(弘文堂2023)

※以下は「実務書を《読みもの》として読む」という、イカれた趣味の持ち主によるヤジ・ガヤの類となりますので、ノーマルの実務家の方は気にせず本書をご購入いただいて大丈夫です。


 はしがきにいきなり「職安法で実務に使える良い本がない」と書かれているのですが。

 倉重公太朗,白石紘一「実務詳解 職業安定法」(弘文堂2023)

 現行で出ている職安法の本って、下記書籍くらいしかないのであって。

 労働新聞社「職業安定法の実務解説 改訂第7版」(労働新聞社2023)

 要するに、同書を実質名指しで「実務で使えない」とディスっているという理解でよいでしょうか。本書の中の【文献】にも出てきませんし。


 下記の◯×は、本書に対する私の評価一覧。
 共著ゆえ、章(節)ごとに大きく評価が分かれる結果となりました。

 もちろん、こんなものは私が勝手に本書に期待したこととのギャップを表したものにすぎず。一般的な評価とは異なります。

  序 章 職安法の過去・現在・未来
   第1節 職安法規制はなぜ始まり、何を防ぎたかったのか ◯
   第2節 職業キャリア形成の現状とこれから ―
  第1章 令和4年改正職安法の全体像 ×
  第2章 雇用仲介サービスの全体像 ―
  第3章 職業紹介 ×
  第4章 募集情報等提供 ×
  第5章 労働者供給 ×
  第6章 労働者の募集 ◎
  第6章補論 企業グループの募集採用をめぐる問題 ◎
  第7章 個人情報の取扱い ×
  第8章 職安法違反における行政の対応 ×
  終 章 雇用仲介規制とこれからの職安法 ◎


 ということで、以下個別に記述します。


 序 章 職安法の過去・現在・未来
  第1節 職安法規制はなぜ始まり、何を防ぎたかったのか ◯


 いわゆる「史」の部分。流れるような記述でとてもわかりやすかったです。


 序 章 職安法の過去・現在・未来
  第2節 職業キャリア形成の現状とこれから ―
 第2章 雇用仲介サービスの全体像 ―

 「―」というのは、無評価という意味です。

 確かに、キャリア形成・人材サービスに関する現状を知るという意味では非常に有益な記述でした。
 なのに、なぜ無評価なのかというと。

 他章において、これら現状認識を前提とした解釈論が展開されるということもなく。なのに、あえて法律実務書たる本書にねじ込む必要があったのか疑問に思った、という意味合いからです。


 第1章 令和4年改正職安法の全体像 ×
 
 コピペなはずなのに、P52の3号の図が間違っているのはなぜなのか、というのはさておき。
 取り急ぎ単年度の改正法だけ知りたい人にとっては、よくまとまっているなあ、というところだと思います。

 が、「使える実務書」を志向するのであれば、この箇所に配置すべきなのは、単なる単年度の改正内容のご紹介ではなく。
 職業安定法の法的性質や規律の仕方の特徴、指針・要領を含めた全体の構成、あるいは人材サービスに関する規制全体の中における職業安定法の位置づけなどを論ずるべきではないでしょうか(職業安定法総論または労働市場法総論)。

 私の勝手なイメージだと、第1章がそのままだとして、序章第2節や第2章あたりがそっくりそのまま《総論》に置き換わってくれると、「法律書」としてしっくりきます。

 という意味合いで×としました。
 内容自体がいいとか悪いではなく。そもそも、単年度の改正内容のご紹介にいいも悪いもありません。

 また、まとめて最後に述べますが、本章にも「シン・職安法」というフレーズが出てきます。が、このことについての何かしらの理論的考察が展開されるということもなく。淡々と、令和4年改正の内容が説明されています。


 第3章 職業紹介 ×
 第4章 募集情報等提供 ×
 第5章 労働者供給 ×
 第6章 労働者の募集 ◎
 第6章補論 企業グループの募集採用をめぐる問題 ◎


 各行為類型の規律内容を解説する箇所です。総論をすっ飛ばしていきなり行為類型の解説に入るのは、やはり法律書として落ち着かない(個人の感想です)。

 「3・4・5」と「6・6補論」とでぱっくり評価が分かれる結果となりました(以下、それぞれを前者/後者といいます)。


 前者は、もっぱら運営(厚生労働省)の情報をベースとして記述が構成されています。に対して、後者では運営の情報を前提としつつも、疑問点がある場合はきちんと指摘がされています。

 デフォルメして表すと、

前者が、
 ◯◯は△△しなければならない(法◯条)。
 また、◯◯は□□しなければならない(要領◯)。
と法の規律と単なる要項の記述を並列的に扱っているのに対し、

後者では、
 ◯◯は△△しなければならない(法◯条)。
 また、厚生労働省は、◯◯は□□しなければならないとの見解を示しているが(要領◯)、××の点で疑問がある。
と、要項はあくまでも運営の解釈にすぎないことを明記しつつ、疑問点をしっかり指摘しています。

 勝手な推測ですが、前者から条文・指針・要領などの記述を排除していったら、地の文がほとんど残らないんじゃないですかね。


 条文をそのまま引用しているのではなく、その内容を解説をしているはずの箇所で、次のような記述をみると、ものすごい損した気持ちになります。

P.143 (第3章)
 職業紹介事業者は、職安法32条の16第3項(法33条4項、38条の2第7項および33条の3第2項において準用する場合を含む。本章第16節2参照)の規定による情報の提供を行うにあたり、その紹介により就職した者のうち期間の定めのない労働契約を締結した者(以下、本項において「無期雇用就職者」という)が職安則24条の8第3項2号(令25条1項、25条の2第6項および25条の3第2項において準用する場合を除く)に規定する者に該当するかどうかを確認するため、当該無期雇用就職者に係る雇用主に対し、必要な調査を行わなければならない(職交指針第6-11(1))。


 「職安則24条の8第3項2号(令25条1項、25条の2第6項および25条の3第2項において準用する場合を除く)に規定する」などという記述を地の文にそのまま貼り付けるなんて、正気とは思えません。

 これに対して第6章。
 法42条の2では法20条を準用するとしているのですが、準用して読み替えた後の記述に置き換えてくれています(P.318)。同じ書籍の中でこんなに親切具合が違うとか、高低差ありすぎでしょう。

 なお、本書がサイレント「使えない」呼ばわりしている『実務解説』の記述。

 職業紹介事業者は、(1)の情報の提供を行うに当たり、無期雇用就職者が(1)のロに掲げる者に該当するかどうかを確認するため、当該無期雇用就職者に係る雇用主に対し、必要な調査を行わなければなりません(様式例第6号参照)。

 法条の部分を(1)、(1)ロとして括りだすことで、だいぶすっきりした記述になっています。


 職業紹介/募集情報等提供の区分(第3章)、労働者供給/労働者派遣/請負/出向などの区分(第5章)なんて、花形の論点だと思うのですが。
 残念ながら、要領中心の記述にとどまってしまっています。要領記載の労働者供給の2類型とか、未だにしっくりこない。

 これに対して第6章だと。
 「固定残業代」につき、要領だと金額・時間・超過精算すべて明記しなさいとあるが、固定残業代の有効要件以上のものを要求している、といった指摘がされています。
 あるいは、要領だと「愛読書」を聞くのは職業差別につながるから避けろと書いてあるが、必ずしもそうではない、といった指摘もされています。

 運営の情報をそのまま並べている記述と、きちんと疑問点を指摘している記述とで、どちらが「使える実務書」といえるでしょうか。
 その認識は個々の執筆者ごとにお任せしたので、前者と後者とで執筆内容が大きく異なってしまったということでしょうか。


 さて。第6章補論。

 なぜか2段組の細かい文字に圧縮されてしまっていて、一見コラム的な軽いものかと思いきや。
 その内容は、企業グループで採用活動する場合にどうすれば「委託募集」にあたらないようにできるか、といった非常に実践的なものとなっています。職安法違反の場合の民事的効力にまで触れているなど、非常に周到な内容になっています。

 にも関わらず、これを「補論」扱いにして、しかも文字を圧縮しているというあたりから、本書の方向性を推して知るべきだったのでしょうか。


 第7章 個人情報の取扱い ×

 個人情報保護法の規律と、職業安定法(というか指針とQA)の規律が平行的に記述されていて、それぞれの内容はよくわかるのですが。

 「実務で使える」ようにするためには、2つの規律を別々に走らせておくのではなく、統合したかたちで運用できるのが望ましいわけです。
 企業会計/会社法会計/税法会計と3つの会計があるからといって、3つの会計を別々に処理なんかしていられない、というのと同じことです。大きな会社なら企業会計ベースで処理して申告時のみ申告調整、小さな会社ならはじめから税法会計ベースで処理して申告調整を(ほとんど)しない、とか。

 「足して1」にはできないとしても、2倍までの労力をかけずに、両法の規律を同時に満たせるような運用方法を提示してほしいところ。
 個人情報保護法:一般法/職業安定法:特別法という関係にあると思うのですが、せめて、一般法と特別法の規律を溶け込ませてひとつの規律として記述ができないものかどうか。


 また、法律上は同じ規律であっても、それぞれの立場によって実際に要求される内容は異なってくるはずです。単純な話、自社募集の場合と委託募集の場合でも、個人情報の取扱い方に微妙な違いが出てくると思います。
 このあたりの具体的な書き分けをしておいて欲しいところです。

 本来なら、第7章で情報保護・総論を展開してから第3〜6章で各論を展開すべきものなんでしょうけども。実際には、第3〜6章では「詳しくは第7章で」とあり、他方で第7章ではどの類型にでも当てはまるような形で記述されています。


 「リクナビ事件」については、同章でご紹介がされています。
 個人的に、本件は結局のところ職業安定法何条に違反していたのか疑問があったのですが、同章では「(法51条の2への違反と思われる)」という当て推量しか書かれていませんでした。
 これが51条の間違いなのかどうか知りませんが、具体的なあてはめもなく単なる法条摘示がされているだけなので、何がどう違反していたのかがはっきりしません。

 第3章〜第5章からも感じたことですが。
 法に違反して違法なのか、単に要領に違反しているだけで望ましくないレベルどまりなのか。これが大きく違うということに、あまり意識が向いていないように感じてしまいました。
 これがお役所内部の資料であれば、法令も通達等の内部文書も同格扱いされるのは分かるのですが。


 第8章 職安法違反における行政の対応 ×

 職業安定法の、行政法としての基本的な性質とか、本書で盛んに引用されている指針・要領の位置づけなど、基礎理論にあたる部分をすっ飛ばして、運営側の対応手法の解説だけされてもなあ、という印象。
 どこまでいっても、総論不在が響いてくる。

 指導・助言に従わなかったら罰則の適用対象にもなる、みたいなことが書かれているのですが(P405)、指導・助言に従わなかっただけでは罰則の対象にはならないはずです。
 指導・助言の対象が法違反行為であってはじめて改善命令→罰則に流れていくのであって(法違反行為がダイレクトに罰則につながるものもあり)。「望ましくない」レベルで実施した指導・助言に従わなかったからといって、罰則が適用されることにはなりません。

 このあたりも、法違反/要領違反の違いがあまり意識されていないことから、単なる指導・助言違反も罰すべき、みたいな考えが出てきてしまうのでは、と感じてしまいます。


 終 章 雇用仲介規制とこれからの職安法 ◎

 「終章」などと位置づけられているので、あまり期待せずに読んだのですが。
 とても鋭い分析が展開されており、むしろここから本書を組み立てるべきだったのでは、と思わされました。

 たとえば、募集情報等提供事業につき、6つの要素を抽出して類型ごとの理論的分析をしたり。あるいは、「介在度」という概念を使って、職業紹介/募集情報等提供の区分をしたり。
 本来であれば、こういった理論的分析を、本書の全面にわたって展開すべきものでしょう。というか、終章とかいって端っこに押し込められているの、非常にもったいない。

 本書における終章や第6章補論の窓際的な扱い、私にはよく理解できません。

 ちなみに、本章執筆の今野浩一郎先生といえば、下記書籍もとてもよいものでした。

 今野浩一郎「同一労働同一賃金を活かす人事管理」(日本経済新聞出版2021)


 特に、同じく行為類型を記述している第3章〜第6章補論のクオリティの違いをみて、ふと思ったことですが。

 職業安定法について、どのような立場の人間が読むかを捨象して記述するのは、もはや無理があるのではないでしょうか。
 自社募集する企業にとって、職業紹介事業の許可申請の手数料がいくらかなんて、どうでもいいことですし。他方で、これから許可申請する企業が本書だけで許可申請できるようにはならないでしょうし。
 『逐条解説』モノの場合は別として、特定の立場に特化した形で構成しないと、誰にとっても中途半端ということになりかねない。


 とはいえ、こんなニッチな分野の実務書、対象読者を絞ってしまったら部数がでなくなってしまうのでしょう。それゆえ、どうしても「職業安定法に関わるすべての人に」みたいな感じで、幅広に設定せざるをえないのかもしれません。

 『内定辞退率を勝手に予測されて企業に提供された求職者のための・職業安定法』なんて本、まあ売れませんよね。

 本書は、第6章・第6章補論が実践的な、充実した記述であることからすると、自社(グループ含む)で募集をする企業にとっては非常に有益と思われます。


 ところで、本書にそこかしこにでてくるフレーズ。

 市場における情報流通をめぐる諸問題の解決を目指す法システム―情報法とでもいうべきもの―の一環たる、「シン・職安法」

 このような認識が、本書の個別具体的な解釈論に活かされているとか、情報法学の知見を活かした記述になっているとか、そういうことは特になく。

【それぞれ、法学プロパーからすると独特な立ち位置ですが】
 林紘一郎「情報法のリーガル・マインド」(勁草書房2017)
 小向太郎「情報法入門 第6版」(NTT出版2022)

 私も、本書がこんなフレーズを謳っていなければ、なにか特別な期待を持つことはなく。そして勝手に裏切られた気持ちになることもなく。普通の職安法解説書として流していたはずですし、こんなブログ記事を書く羽目にもならなかったはずです。

 ここでもやはり、総論不在ゆえ、「総論で議論を敷衍してから各論で具体的に展開する」ということが出来ていないのではないか、というのが私の邪推。
 中小企業の社長がいきなり、『うちのCredoは今日から「顧客に寄り添う」になったから!』とだけいって、具体的にどうするかはお前たちで考えろ、とぶん投げる的な。

 フレーズが一人歩きしている(や、歩いてすらいない?)のが現状なので、第2版では正面から議論を展開してくれることを期待しています。

 が、カタカナで「シン・」とかいうの、いつまで通用するんですかね。
 とある古い民法入門書で、わかりやすく記述するためにでしょうが「オープンリール」という単語が出てきたのですが、私にはなんのことやら分かりませんでした。

 ので、第2版が出版されるころには、もはや「シン・」なんて通用しなくなっているかもしれません。


 一応、擁護的なことを書いておくと。

 いわゆる「労働法コンメンタール」シリーズの主要領域うち、雇用保険法と職業安定法は古いまま放置されています(どうせ品切れで買えないかクレイジープライスでしょうから、貼りません)。

六訂新版 労働組合法 労働関係調整法 (労務行政2015)
令和3年版 労働基準法 上巻 (労務行政2022)
令和3年版 労働基準法 下巻 (労務行政2022)
八訂新版 労働者災害補償保険法 (労務行政2022)
改訂2版 労働者派遣法 (労務行政2021)
改訂2版 労働安全衛生法(労務行政2021)
改訂14版 労働保険徴収法(労務行政2018)

 それゆえ、同シリーズの役割である「ひたすらお役所の見解を網羅する」ポジションの本が存在しない状態になっています。ので、本書がその役割も兼ねざるをえず、運営の情報をペースとした記述が中心となってしまった、という擁護はできるかもしれません。

 ということで、いつかコンメンタールが出版されましたら、本書はその役割から開放されて、より突っ込んだ内容に生まれ変わることを期待しております。

 なお、さすがの私でも、同シリーズに対して「運営の情報しか載ってねえじゃんか!」などとクレームをつけることはおよそありません。むしろ、「シン・職安法」などの余事記載を含まずに、純然たる運営の情報を得られる、というのが同シリーズの最大のメリットなわけです。

 そして、同書で運営側の手の内を理解した上で、ではどう対応するかを記述するのが、在野の法律実務書の役割となります。


 次のような書籍が今度でるらしく。

山本龍彦,大島義則「人事データ保護法入門」(勁草書房2023)

 本書が謳っておきながらも不足している、《情報法》としての側面を補うような内容になっていると期待してもよろしいでしょうか。ただ、法学書でタイトルに『入門』て入っている書籍には警戒的にならざるを得ません。

 というのも、法学書で『入門』とタイトルが入っている書籍、
  1 正しい意味での初学者向けの入門書
  2 単なるセドチン(制度陳列)系の言い訳として
  3 ガチ勢が読むほどのレベルじゃありませんよ、という後ろ向きの趣旨
などなど(あくまで一例)、実際に読んで見るまでどういう意味合いで使っているかが分からないからです。出版社の宣伝文句は当然として、「まえがき」に書いてある自己規定も当てにならず、中身を読むまでは判断ができないものです。

 ということで、同書も中身がわかるまでは様子見です。

 というか、本記事は「シン・職安法」などというフレーズに飛びついて予約購入してしまった自分への戒め文でもあります。宣伝文句に警戒的だったはずなのに、今度こそはと飛びついてしまったわけです。

 もちろん、上記評価一覧のとおり、とても良かった箇所もあったわけで。本書からの学びの一つは、「共著は一部執筆者だけで判断してはいけない。」ということです。
 ネット上でも「試し読み」が提供されていることがありますが、本当に一部分だけ。なので、共著の場合には正当な購入可否の判断ができません。

 なかには、共著にもかかわらず悪い方向で記述レベルが統一されている、という書籍もあったりますが。

「新 実務家のための税務相談(民法編) 第2版」(有斐閣2020)

 極めてレアケースでしょうよ。
posted by ウロ at 10:07| Comment(0) | 労働法

2023年07月10日

安部 慶彦「詳解 合同会社の法務と税務」(中央経済社2023)

 「合同会社」って、一方では設立費用をお安く上げるためだけに利用されていたり。他方では複雑怪奇なスキームの中に組み込まれて利用されていたり。ニーズが極端に分かれている。

 前者については、運用段階では合同会社特有の論点というのはほとんど無く。後者も合同会社単体の論点というよりはあれやこれやの組織体の組み合わせによって生じる論点が中心だったり。

 という状況の中で、その中間あたりで、正面から合同会社を活用してみようという人間が読める本というのがほとんど見受けられない、というのが現状でした。


 そんな中で本書は、正面から合同会社を使えるようにするための知識・知恵が盛り込まれている、今までにあまりなかったタイプの本だと思います。

 安部 慶彦「詳解 合同会社の法務と税務」(中央経済社2023)

 この手の本は、「条文引き写し系」のつまんない本になりがちなところ。特に、単著で法務と税務が両方カバーされている場合、どちらかがおろそかになりがち。

 に対して本書は、一読しただけでも確かな実務経験に基づいた地に足のついた記述であることが理解できると思います。


 合同会社を理解するにあたって、どうしても我々は「株式会社」とのアナロジーで理解しようとしがちです。

 僕たち私たちの前田会社法入門なんて、本文860頁中、合同会社の項目は5頁だけ。

 前田庸「会社法入門 第13版」(有斐閣2018)

 供え本(備え本)たる江頭株式会社法の場合は、タイトルどおりはじめから省略されています。

 江頭憲治郎「株式会社法 第8版」(有斐閣2021)

 しっかり「会社法」を勉強したつもりでも、その知識はやたらと「株式会社」に偏っているはずです。
 そこを本書では、逐一株式会社との対比で合同会社について説明をしてくれているので、偏った脳に自然な形でインストールができるようになっています。大変な親切設計。


 税理士的には、「計算」のところを数字をあてはめながら説明してくれているところが、特によかったです。
 類書だと、おなじみの掛け算・割り算の数式だけ貼り付けて終わってしまうところ。数式の意味するところを具体的なイメージをもって理解することができます。

【数式vs息吹】
三木義一「よくわかる税法入門 第17版」(有斐閣2023)


 ただ、本書でかなり論点に深入りしてくれているおかげで、見えてきたところなんですが。

 未だに見解の定まらない論点というものがいくつかあり。実務で出くわしたらなかなか怖いなあと。
 フルスロットルで合同会社を全面活用する場合の落とし穴となりうるような。

 なるべくそのあたりに触れないようなかたちで運用していくのが、日常系税務の実務家としての、オススメの遣り口。
posted by ウロ at 11:28| Comment(0) | 会社法・商法

2023年07月03日

森戸英幸「プレップ労働法 第7版」(弘文堂2023)

 (絶え間なく続く(everlasting)おふざけ文章に耐えられるならば)最良の労働法の入門書だと思います。

 森戸英幸「プレップ労働法 第7版」(弘文堂2023)

 たとえば、自分が中2の頃に戻ったと想像してみてください。
 友人の多串くん(仮名)から「録音したから聞いてみて」と言われて渡された『ルッキン多串のオールナイトニッポン!!』と書かれたカセットテープ(録音媒体は各自の時代ごとに置き換えてください)を、微笑ましい気持ちで聞いてあげられるかどうか。なお、CMも多串くんが作っています。

 「うん、耐えられそう」というなら、ぜひ本書を読んでみてください。


 どの程度のおふざけなのかをご紹介するのに、どこを切り取るか悩ましいのですが。
 たとえば、以下の記述(P.293)。

 ●訂正しお詫び申し上げます
 労組法18条の地域的一般的拘束力につき、第6版までは「ほとんど使われないのでこの際無視する」と記載しておりましたが、最近この規定が発動され、家電量販店の年間所定休日に関する労働協約が茨城県で拡張適用されました(中労委令和3・8・4「労働協約の地域的拡張適用に関する決定を求める申立て」に係る決議、厚生労働大臣決定令和3・9・22)。軽率な表現を渋々お詫びするとともに、皆様のご意見・ご指摘を表面上は真撃に受け止め、今後このようなことがなきよう努めるフリをします。


 通常の教科書であれば、決議・決定を内容を紹介するはずのところ、こういう書きぶりになっています。
 というか、第6版を読んでいた人が第7版も読んでいる前提でお詫びしてますよね。
 けども、普通の労働法入門者が、第6版に続き第7版も読むってことはないんじゃないですかね。毎版読むとしたら、森戸先生大好きっ子か、おじさんのおはしゃぎ大好きっ子か、あるいは我々のような入門書ソムリエくらいしかいないんじゃないですか(最後の奴の嫌な野郎感が際立つ)。


 上記のようなおふざけが極まった記述がある一方、次のような記述も。
 高プロについての説明(P.221)。

 「高度にプロフェッショナルだぜ!」「時間に囚われないクリエイティブな仕事だぜ!」といえる特定の業務に従事し、相当高い給料をもらっている労働者については、本人の同意、労使委員会の決議及びその行政官庁への届出、健康確保措置の実施があれば、労働時間、休憩、休日及び深夜の割増質金に関する規制が適用されない(労基41条の2)。

 これ、私が勝手に中略したとかではなく。
 途中までは頑張って噛み砕いて説明してくれていたのに、急に《専門用語の悪魔》に脳を乗っ取られたみたいな感じになっています。前半/後半で完全に別人。
 森戸先生をもってしても、高プロを完全に噛み砕ききれていない。

 話はややズレますが、先日書いた一般向けの電帳法・インボイス本の紹介記事の中で。

小島孝子「電帳法とインボイス制度のきほん(令和5年度税制改正大綱対応版)」(税務研究会出版局2023)

 制度が複雑になりすぎて、入門書ライターの方が一般向けに噛み砕いて説明するのはもはや無理があるのでは、という話をしました。
 労働法領域についても、クラシカル、レガシーな制度ならばともかく、当代の複雑怪奇な制度を入門書レベルで説明するには限界があるのだろうな、という気がしています。


 本書は(抵抗感のないかぎり)極めて理解しやすい言葉で書かれているわけですが、そのせいで、たとえば学部試験などでそのまま吐き出すことはできません。
 この点で、ちょうど相性がよさそうだな、と思ったのが下記ドリル。

 渡辺悠人「アガルートの司法試験・予備試験 総合講義1問1答 労働法 第2版」(サンクチュアリ出版2021)

 用語の正確な定義などについて、一問一答形式でトレーニングできるようになっています。ので、頭の中で理解していることを、そのままよそ行き用の言葉に置き換えることができると思います。
 最初にガチガチの定義から入るよりも、しっかり自分の頭で理解してからのほうが、難しい言い回しも覚えやすくなるのではないでしょうか。

 ちなみに、1問1答をやってみて思ったのが、本書のカバー領域が意外にも広いなあということです。

【プレップシリーズ】
米倉明「プレップ民法(第5版)」(弘文堂2018)


  以下は本書の評価とは直接関わらない余談。
 賃金の直接払の原則に関する記述(P.195)。

 賃金債権が差し押えられた場合には、使用者が債権者や国税徴収職員に直接支払いをしてもよいと解釈されている(「お上」が絡むと明文がなくてもよいということ?)。ただし国税徴収法や民事執行法は「給料」「賃金」「退職手当」等については一定の差押え限度額を定めている(民執152条、国税徴76条)。全額差し押さえられて全然もらえないということはないわけだ。

「明文がない」とかそんなわけあるか、と一瞬思ったのですが。
 以下、一般債権者を前提とします(なお、上記で「税務署」とかではなくきちんと「国税徴収職員」と書いてあるのはさすが)。

民事執行法 第百五十二条(差押禁止債権)
1 次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。
二 給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権


 まず、民事執行法152条では、3/4が差押禁止とは書いてあるものの、1/4を差し押さえてよいとは書いていません。これに関しては「143条で100%差し押さえできるが152条で3/4は制限される」と捉えればよいだけなので、大した問題ではありません。

同法 第百四十三条(債権執行の開始)
 金銭の支払又は船舶若しくは動産の引渡しを目的とする債権(動産執行の目的となる有価証券が発行されている債権を除く。以下この節において「債権」という。)に対する強制執行(第百六十七条の二第二項に規定する少額訴訟債権執行を除く。以下この節において「債権執行」という。)は、執行裁判所の差押命令により開始する。


 問題は、なぜ給与を一般債権者に直接払いしてよいかです。同法155条には一般債権者に「取立権」が付与されることが書かれているものの、これが当然に労基法24条の直接払の原則に優越するわけではありません。

同法 第百五十五条(差押債権者の金銭債権の取立て)
1 金銭債権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から一週間を経過したときは、その債権を取り立てることができる。ただし、差押債権者の債権及び執行費用の額を超えて支払を受けることができない。


 バッティングする両条が並列的に存在しているという状態にすぎず、ここに優劣をつけたいならば、何らかの解釈を加える必要があります。

 そこで、同法155条の規定は労基法24条1項の2つ目の「別段の定め」ということで、「賃金控除」として扱うことはできるでしょうか。賃金控除できるというのは、全額払の例外というだけではなく、直接払の例外でもあるんだと。

労働基準法 第二十四条(賃金の支払)
1 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。


 こう解釈できるならば、「明文がない」というのは言い過ぎでしょう。というか、上記記述では明文もなしに、どういう条文操作をもって「解釈されている」と想定しているのでしょうか。


 しかしまあ、「自力執行の禁止」を謳っておきながら、債権取立ての場面では一旦私人間で直接やり取りさせるというのは、面白い制度設計ですよね。そこですんなり解決できなければ、結局裁判所(取立訴訟)に戻ってくるし。

 供託がもっとカジュアルに利用できるようになるならば、供託を強制するという制度でもよいような気がしますが。
posted by ウロ at 10:14| Comment(0) | 労働法