いつ頃から流行りだしたのか把握しておりませんが。
国税庁が公式の「通達」ルートによらずに、単なる情報提供にとどまらない独自の解釈を乗っけた文書を公表することが目立つようになっています。
「定期同額給与」のパンドラ(やめときゃよかった)
タイトルは様々ですが、本記事では『Q&A』と総称しておきます。要するに、行政手続法の規律が及ばない(と国税庁自身が思っている)ものです。
《日常系税務》の世界で生きる税理士にとって、『Q&A』をガン無視して業務を進めることは非現実的です。が、そうはいっても、ワナビー達のように『Q&A』に振り回されて仕事をするのもみっともない。
【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 決定版
では、どうしたらよいのでしょうか。
◯
私自身は、『Q&A』を読むにあたって、次のタイプがあることを意識しながら読んでいます。
ア 法令どおりのことが書いてある
イ 通達どおりのことが書いてある
ウ 法令・通達に書いていないが矛盾しない
エ 法令・通達に書いていないが矛盾する
本当はもっとグラデーションがかかっていますが、デフォルメ版として。
少なくとも、『Q&A』をベタ読みで「文言解釈」するなんて所作は、徒労に終わるものと思われます。
【通達の文言解釈(笑)】
解釈の解釈の介錯 〜最高裁令和2年3月24日判決
で、これらを見極めるにはどうするかですが。
外形的には「語尾」「末尾」が一応の目安となります。文末に(法◯◯)とあればア、(通達◯◯)とあればイ、「差し支えありません」とあればウかエ、といった具合に。
ただ、それはあくまで外形にすぎません。
・
たとえば、「8割特例」についての『Q&A』の記述。
インボイス制度に関するQ&A(国税庁)
免税事業者からの仕入れに係る経過措置(P137)
適格請求書等保存方式の下では、適格請求書発行事業者以外の者(消費者、免税事業者又は登録を受けていない課税事業者)からの課税仕入れについては、仕入税額控除のために保存が必要な請求書等の交付を受けることができないことから、仕入税額控除を行うことができません(新消法30F)。
ただし、適格請求書等保存方式開始から一定期間は、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れであっても、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられています(28年改正法附則52、53)。
いずれの文末にも(法◯◯)とあるため、てっきり条文どおりのことが書いてあるのかと思いきや。
それぞれの条文には「適格請求書発行事業者以外の者」などとは書かれていませんし、そのような限定解釈ができるような書きぶりにもなっていません。
これは要するに、アに偽装してエを記述しているということです。手口としてはおそらく、附則を無理やり限定したいという下心があり、それにあわせて本法のほうも条文から離れて勝手に書き替えることにしたのでしょう。
なお、このQ&Aの「実質修正版」では、条数を引用しなくなっています。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_faq.htm
お問合せの多いご質問(令和5年11月13日更新) 問F
『Q&A』の中には、条数が引用されているものとそうでないものがあるのですが。一体どういう基準で振り分けているのかが謎です。
・
また、「お問合せの多いご質問(令和5年11月13日更新)」の問Aの(注)には、あたかも偽インボイスでも「災害その他やむを得ない事情」があれば仕入税額控除を受けられるかのような記述があります。
が、仮に税額控除の対象となったとしても、令46条をみるかぎり、偽インボイスでは控除税額が算出されないことになっています。積上計算ならもちろん割戻計算でも、計算対象となっているのはインボイスが発行された場合と《インボイスいらない特例》を受けた場合だけですので。
「偽インボイスでも控除対象になる!(ただし控除額は0円な)」なんて物言い、詐欺師の手口じゃねえか。
納税者有利だからといって鵜呑みにしていると、裁判所で軽く弾かれてしまうような気がします。
◯
では、このようなデマに惑わされないようにするためにはどうしたらよいのでしょうか。巷の解説書もことごとく『Q&A』コピペで役に立ちません。
やはり、自分で条文を読むしかないのでしょう。
で、見極めができたとして。概ね下記のような方針でいきます。
ア そのまま乗っかる(命令の法律適合性の検討は別途)
イ そのまま乗っかる(通達の法令適合性の検討は別途)
ウ 納税者有利ならさしあたり乗っかる、納税者不利なら解釈論展開
エ 納税者有利でも要検討、納税者不利なら解釈論展開
もちろん、個別事案に応じて細かく枝分かれしていきますが。
◯
最終的には身も蓋もない話になってしまうのですが。
残念ながら、《日常系税務》の領域においても、国税庁の情報を鵜呑みにして業務をすすめるには危うい、というのが現状なのでしょう。組織再編や国際課税といった特定の領域にとどまらず、あらゆる領域で税制が複雑になりすぎている。
何でもかんでも逐一条文を読んでいられないとしても。情報鵜呑みで省力化する部分と、きっちり検討する部分の見極めができる能力は必要なのだと思います。
◯
しかしまあ、課税機関(実働部隊)のトップである国税庁から出てくる情報の、劣化具合が酷くなってきていませんかね。
現場の調査官が税法の細かい規定を把握しきれていない、というのは今さら責める気にはなりません。組織内部のあれやこれやは、外野の人間には分かりませんが。モチベーション的には、頑張って税法を勉強しても報われることのない会計事務所職員とたぶん同等なんじゃないですかね。
指揮命令によって適切に制御されているのならば、個々の調査官の精度を上げてくれとは、もはや要求いたしません。
ですが、トップのレベルが劣化してしまったら、そのような制御が働かなってしまうのではないか、と危惧されます。中央の人間まで現場に駆り出されてしまって、リソースが足りていないのかどうか。
管見によれば、従前の税務調査の主戦場は上記ウだったものと認識しております。ところが、法令と矛盾するような『Q&A』が頻発されるようになると、主戦場がエに移ってしまうのではないかと。
税理士側が法令に従った主張をしても、調査官としては組織の見解を無下にすることもできず、板挟みになってしまわないか、今から余計な心配をしています。
2023年11月27日
国税庁『Q&A』解釈方法論 序説
posted by ウロ at 09:14| Comment(0)
| 日常系税務リーガルマインド
2023年11月20日
【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 決定版
先日取り急ぎで書いた記事、妄想を付け足して書き直しました。
【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 確定版
◯
クソ真面目に検討したものが、しれっと、あっさりと・・・。
【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 暫定版
【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 暫定版補遺
【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 暫定版余滴
下記の問Fをご覧ください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_faq.htm
お問合せの多いご質問(令和5年11月13日更新)
(適格請求書発行事業者からの課税仕入れに係る経過措置の適用等)
問F 当社は、仕入先が多数あり、登録番号の記載のない請求書の交付を受けることも多くあります。この場合、適格請求書発行事業者から交付を受けた登録番号の記載のない請求書等を含め、登録番号の記載のない請求書等については、一律に、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置の適用を受けてもよいでしょうか。
【答】
適格請求書発行事業者以外の者(消費者、免税事業者又は登録を受けていない課税事業者)からの課税仕入れであっても、適格請求書等保存方式開始から一定期間は、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられています。
ただし、当該経過措置の適用は、取引の相手方が適格請求書発行事業者以外の者である場合に限りませんので、例えば適格請求書発行事業者から交付を受けた登録番号のない請求書等を含め、区分記載請求書等の記載事項を満たしたものの保存がある場合には、一律に、当該経過措置の適用を受けることとなります。
【答】の一段落目とニ段落目とで、どう考えても矛盾しているのですが。
【AただしB構文】
A 「適格請求書発行事業者以外の者」からの課税仕入なら経過措置受けられる。
ただし、
B 経過措置は「適格請求書発行事業者以外の者」からの課税仕入に限られない。
どうしても従前の記述(A)を訂正するような表現にはしたくなかったんでしょうか。下衆の勘ぐりセンサーからすると、どうにも立案担当者の「往生際の悪さ」を感じざるをえない構文(以下、これを「AただしB構文」といいます)。
下記は、もちろん妄想です。
【「AただしB構文」誕生の経緯】
・本来であれば「適格請求書発行事業者以外の者」からの課税仕入だけに限定するつもりだった。
・が、法30条1項は「ヒト」ではなく「モノ」の観点から控除対象を制御している。そこで、本経過措置も「モノ」の観点から規律することにした。ただ、見出しだけは当初の「つもり」である「ヒト」のまま残しておいた。
・ところが、「モノ」の観点から制御したせいで、「適格者(インボイス無し)」が控除対象に含まれることになってしまった。
・条文立案ミスがバレたくないが、かといって嘘を書くわけにもいかない。ので、「Q&A」では「適格請求書発行事業者以外の者」と書き、「適格者(インボイス無し)」も控除対象になることについてはダンマリを決め込んだ。
・その後、大量に問い合わせが来てしまい誤魔化しきれなくなったので、「お問合せの多いご質問」に明記せざるをえなくなった。が、条文立案ミスを正面から認めたくはないので、「AただしB構文」を使って、本来は「適格請求書発行事業者以外の者」だけが対象だが、運用で「適格者(インボイス無し)」も対象に含めてあげているかのような書きぶりとした(どうせお前ら条文読まないだろと舐めている)。
こんなものは、私の逞しい妄想力の産物にすぎません。が、これくらいしょうもない妄想によらなければ、上記のようなひねくれた書きぶりにはならないと思うのです。
素直に間違いを認めるのならば、わざわざニ段落に分けて記述する必要はありません。条文どおり、旧法では受けられたが新法では受けられない場合として、まとめて列挙すればいいだけです。
◯
いずれにしても、適格者がインボイスをくれない(が区分記載請求書はくれる)場合も経過措置受けられるんだと。まあ、条文通りの結論であって、何をいまさらというところなんですが。
他の回答にあるような、「差し支えありません」系の、運用で勝手に緩める回答ではありません(が、「AただしB構文」を使うことにより、あたかも「差し支えありません」風の書きぶりに見せかけている)。
立案担当者からすれば「過小課税」であって、本来は「適格請求書発行事業者以外の者」だけが対象なんだと強調したいのかもしれません。が、みずほCFC事件最高裁判決の「形式重視」からすれば、「適格者(インボイス無し)」が含まれるのは当然の帰結でしょう。
「本当はそんなつもりで書いていない」は無視すべきことになるはずで。納税者不利な方向のみに「形式重視」を発動するなんて、許されるはずもない。
みずほCFC事件判決 〜最高裁令和5年11月6日判決 (雑感)
みずほCFC事件判決(最高裁令和5年11月6日)と形式的犯罪論
のはずなんですが、形式重視だと納税者有利になってしまうということで、形式無視の実質重視な高裁判決もあるわけで(上告不受理)。
横流しする趣旨解釈(TPR事件・東京高裁令和元年12月11日判決)
本経過措置については、運営側が自白してくれたからよいようなものの(が、施行後公表というのにも、往生際の悪さを感じる)。これが、公式ではダンマリ決め込んだままだったら、どうなっていたことか。
立案担当者の「つもり」にのっかった「実質重視」の判決が出たとしても、おかしくない。
◯
ということで、Q&Aワナビーの、インボイス解説モノの執筆者各位は、条文読まずに不十分な情報を拡散したことを、自省されたほうがよろしいかと。立案担当者の条文作成ミスに付き合わされて、ウソの拡散に加担させられていただけですよ。
が、そんなことはお気になさらず、おそらく「国税庁の最新情報を反映した決定版!!」とか言って、上記「AただしB構文」をコピペするだけの改訂版を出して終わってしまうのでしょう。運営の情報更新(すり替え)を、単なる改訂チャンスとしてしか見てないのか。
上記のとおり、「お前らどうせ条文なんて読まねえだろ」と舐めプかまされているわけで。
カリスマ指導者に『国民よ立て!悲しみを怒りに変えて。立てよ国民!』くらい煽られないと、目覚めることはないのでしょうか。
【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 確定版
◯
クソ真面目に検討したものが、しれっと、あっさりと・・・。
【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 暫定版
【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 暫定版補遺
【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 暫定版余滴
下記の問Fをご覧ください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_faq.htm
お問合せの多いご質問(令和5年11月13日更新)
(適格請求書発行事業者からの課税仕入れに係る経過措置の適用等)
問F 当社は、仕入先が多数あり、登録番号の記載のない請求書の交付を受けることも多くあります。この場合、適格請求書発行事業者から交付を受けた登録番号の記載のない請求書等を含め、登録番号の記載のない請求書等については、一律に、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置の適用を受けてもよいでしょうか。
【答】
適格請求書発行事業者以外の者(消費者、免税事業者又は登録を受けていない課税事業者)からの課税仕入れであっても、適格請求書等保存方式開始から一定期間は、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられています。
ただし、当該経過措置の適用は、取引の相手方が適格請求書発行事業者以外の者である場合に限りませんので、例えば適格請求書発行事業者から交付を受けた登録番号のない請求書等を含め、区分記載請求書等の記載事項を満たしたものの保存がある場合には、一律に、当該経過措置の適用を受けることとなります。
【答】の一段落目とニ段落目とで、どう考えても矛盾しているのですが。
【AただしB構文】
A 「適格請求書発行事業者以外の者」からの課税仕入なら経過措置受けられる。
ただし、
B 経過措置は「適格請求書発行事業者以外の者」からの課税仕入に限られない。
どうしても従前の記述(A)を訂正するような表現にはしたくなかったんでしょうか。下衆の勘ぐりセンサーからすると、どうにも立案担当者の「往生際の悪さ」を感じざるをえない構文(以下、これを「AただしB構文」といいます)。
下記は、もちろん妄想です。
【「AただしB構文」誕生の経緯】
・本来であれば「適格請求書発行事業者以外の者」からの課税仕入だけに限定するつもりだった。
・が、法30条1項は「ヒト」ではなく「モノ」の観点から控除対象を制御している。そこで、本経過措置も「モノ」の観点から規律することにした。ただ、見出しだけは当初の「つもり」である「ヒト」のまま残しておいた。
・ところが、「モノ」の観点から制御したせいで、「適格者(インボイス無し)」が控除対象に含まれることになってしまった。
・条文立案ミスがバレたくないが、かといって嘘を書くわけにもいかない。ので、「Q&A」では「適格請求書発行事業者以外の者」と書き、「適格者(インボイス無し)」も控除対象になることについてはダンマリを決め込んだ。
・その後、大量に問い合わせが来てしまい誤魔化しきれなくなったので、「お問合せの多いご質問」に明記せざるをえなくなった。が、条文立案ミスを正面から認めたくはないので、「AただしB構文」を使って、本来は「適格請求書発行事業者以外の者」だけが対象だが、運用で「適格者(インボイス無し)」も対象に含めてあげているかのような書きぶりとした(どうせお前ら条文読まないだろと舐めている)。
こんなものは、私の逞しい妄想力の産物にすぎません。が、これくらいしょうもない妄想によらなければ、上記のようなひねくれた書きぶりにはならないと思うのです。
素直に間違いを認めるのならば、わざわざニ段落に分けて記述する必要はありません。条文どおり、旧法では受けられたが新法では受けられない場合として、まとめて列挙すればいいだけです。
◯
いずれにしても、適格者がインボイスをくれない(が区分記載請求書はくれる)場合も経過措置受けられるんだと。まあ、条文通りの結論であって、何をいまさらというところなんですが。
他の回答にあるような、「差し支えありません」系の、運用で勝手に緩める回答ではありません(が、「AただしB構文」を使うことにより、あたかも「差し支えありません」風の書きぶりに見せかけている)。
立案担当者からすれば「過小課税」であって、本来は「適格請求書発行事業者以外の者」だけが対象なんだと強調したいのかもしれません。が、みずほCFC事件最高裁判決の「形式重視」からすれば、「適格者(インボイス無し)」が含まれるのは当然の帰結でしょう。
「本当はそんなつもりで書いていない」は無視すべきことになるはずで。納税者不利な方向のみに「形式重視」を発動するなんて、許されるはずもない。
みずほCFC事件判決 〜最高裁令和5年11月6日判決 (雑感)
みずほCFC事件判決(最高裁令和5年11月6日)と形式的犯罪論
のはずなんですが、形式重視だと納税者有利になってしまうということで、形式無視の実質重視な高裁判決もあるわけで(上告不受理)。
横流しする趣旨解釈(TPR事件・東京高裁令和元年12月11日判決)
本経過措置については、運営側が自白してくれたからよいようなものの(が、施行後公表というのにも、往生際の悪さを感じる)。これが、公式ではダンマリ決め込んだままだったら、どうなっていたことか。
立案担当者の「つもり」にのっかった「実質重視」の判決が出たとしても、おかしくない。
◯
ということで、Q&Aワナビーの、インボイス解説モノの執筆者各位は、条文読まずに不十分な情報を拡散したことを、自省されたほうがよろしいかと。立案担当者の条文作成ミスに付き合わされて、ウソの拡散に加担させられていただけですよ。
が、そんなことはお気になさらず、おそらく「国税庁の最新情報を反映した決定版!!」とか言って、上記「AただしB構文」をコピペするだけの改訂版を出して終わってしまうのでしょう。運営の情報更新(すり替え)を、単なる改訂チャンスとしてしか見てないのか。
上記のとおり、「お前らどうせ条文なんて読まねえだろ」と舐めプかまされているわけで。
カリスマ指導者に『国民よ立て!悲しみを怒りに変えて。立てよ国民!』くらい煽られないと、目覚めることはないのでしょうか。
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| 消費税法
2023年11月14日
【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 確定版
クソ真面目に検討したものが、しれっと、あっさりと・・・。
【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 暫定版
【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 暫定版補遺
【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 暫定版余滴
下記の問Fをご覧ください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_faq.htm
お問合せの多いご質問(令和5年11月13日更新)
(適格請求書発行事業者からの課税仕入れに係る経過措置の適用等)
問F 当社は、仕入先が多数あり、登録番号の記載のない請求書の交付を受けることも多くあります。この場合、適格請求書発行事業者から交付を受けた登録番号の記載のない請求書等を含め、登録番号の記載のない請求書等については、一律に、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置の適用を受けてもよいでしょうか。
【答】
適格請求書発行事業者以外の者(消費者、免税事業者又は登録を受けていない課税事業者)からの課税仕入れであっても、適格請求書等保存方式開始から一定期間は、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられています。
ただし、当該経過措置の適用は、取引の相手方が適格請求書発行事業者以外の者である場合に限りませんので、例えば適格請求書発行事業者から交付を受けた登録番号のない請求書等を含め、区分記載請求書等の記載事項を満たしたものの保存がある場合には、一律に、当該経過措置の適用を受けることとなります。
一段落目とニ段落目とで、どう考えても矛盾しているのですが。
1 「適格請求書発行事業者以外の者」からの課税仕入なら経過措置受けられる。
2 経過措置は「適格請求書発行事業者以外の者」からの課税仕入に限られない。
どうしても従前の記述(1)を訂正するような表現にはしたくなかったんでしょうか。
いずれにしても、適格者がインボイスをくれない(が区分記載請求書はくれる)場合も経過措置受けられるんだと。まあ、条文通りの結論であって、何をいまさらと。
他の回答にあるような、「差し支えありません」系の、運用で勝手に緩める回答ではありません。
ということで、Q&Aワナビーの、インボイス解説モノの執筆者各位は、条文読まずに不十分な情報を拡散したことを、自省されたほうがよろしいかと。
【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 決定版
【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 暫定版
【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 暫定版補遺
【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 暫定版余滴
下記の問Fをご覧ください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_faq.htm
お問合せの多いご質問(令和5年11月13日更新)
(適格請求書発行事業者からの課税仕入れに係る経過措置の適用等)
問F 当社は、仕入先が多数あり、登録番号の記載のない請求書の交付を受けることも多くあります。この場合、適格請求書発行事業者から交付を受けた登録番号の記載のない請求書等を含め、登録番号の記載のない請求書等については、一律に、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置の適用を受けてもよいでしょうか。
【答】
適格請求書発行事業者以外の者(消費者、免税事業者又は登録を受けていない課税事業者)からの課税仕入れであっても、適格請求書等保存方式開始から一定期間は、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられています。
ただし、当該経過措置の適用は、取引の相手方が適格請求書発行事業者以外の者である場合に限りませんので、例えば適格請求書発行事業者から交付を受けた登録番号のない請求書等を含め、区分記載請求書等の記載事項を満たしたものの保存がある場合には、一律に、当該経過措置の適用を受けることとなります。
一段落目とニ段落目とで、どう考えても矛盾しているのですが。
1 「適格請求書発行事業者以外の者」からの課税仕入なら経過措置受けられる。
2 経過措置は「適格請求書発行事業者以外の者」からの課税仕入に限られない。
どうしても従前の記述(1)を訂正するような表現にはしたくなかったんでしょうか。
いずれにしても、適格者がインボイスをくれない(が区分記載請求書はくれる)場合も経過措置受けられるんだと。まあ、条文通りの結論であって、何をいまさらと。
他の回答にあるような、「差し支えありません」系の、運用で勝手に緩める回答ではありません。
ということで、Q&Aワナビーの、インボイス解説モノの執筆者各位は、条文読まずに不十分な情報を拡散したことを、自省されたほうがよろしいかと。
【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 決定版
posted by ウロ at 16:34| Comment(0)
| 消費税法
2023年11月13日
みずほCFC事件判決(最高裁令和5年11月6日)と形式的犯罪論
例によって、エキセントリックなタイトル。
先日、取り急ぎで雑感を書きましたが。
みずほCFC事件判決 〜最高裁令和5年11月6日判決 (雑感)
本判決の「形式偏重」な思考、以下のような物言いを想起させるんですよね。
【形式的犯罪論】
国家権力による恣意的な処罰を抑制するため、法律による定めなしに処罰することは許されない。この趣旨を貫徹するため、裁判官は法律を形式的に適用することしか許されず、実質的な判断を加えることは禁止される。
刑法総論の教科書の最初のほうで、すでに克服された考え方として紹介されているものです。
「実質的判断を入れただけでは、直ちに恣意的な処罰になるわけではない」ということについては、今どきの刑法学説であれば共通認識になっているものかと思います。形式的に構成要件に該当するというだけでは犯罪は成立せず、処罰に値するだけの法益侵害があるかどうかの検討は別途必要だと。
本判決の論理を刑法学上の道具立てになぞらえて説明するならば、
形式的に犯罪構成要件(課税要件事実)に該当するならば、実質的な法益侵害(合算に値する子会社所得)が存在しなくても、処罰(合算課税)すべきである。
ということになります。税法の課税要件事実は租税犯罪構成要件(の一部)でもあるわけだから、わざわざ「なぞらえて」なんて言わなくてもよいのかもしれませんが。
「形式的犯罪論」を完全トレースした物言い。
◯
一昔前の刑法学説(純粋な意味での形式的犯罪論)みたいなものが、税法分野では、令和時代の最高裁判決において堂々と展開されているなんて、周回遅れにも程がある。
ではありますが、最高裁を責めるのは酷であって。やはり税法学説において、租税法上の原理原則として「罪刑法定主義」(+そこからの派生原則)を唱えるだけで満足してしまっているのが問題なのでしょう。
『だったら、事前に・明確に・平等に、課税するって法律に書いておきゃいいんだろ。』に対して、「租税法律主義」だけではなんら対抗することができません。刑法学でいうところの「法益保護主義」に対応するような原理原則が、未だに開発されていない。
仮に、「早歩き罪」(早歩きしたら処罰)などという犯罪があったとしたら、何ら保護すべき法益がないから許されない、となるでしょう。に対して、「早歩き税」(早歩きしたら課税)という税目があったとしても、それを制約できるような道具立ては、税法学説内部に用意されていません。
◯
CFC税制のように、法令上は《割り切り》によって規定せざるを得ないとしても(「課税要件の明確性」)。また、課税庁が課税処分の段階で形式的に執行せざるを得ないとしても(「課税執行面における安定性」)。裁判所までもが、個別事案における救済を検討せずに形式判断だけで押し切らなければならない、ということにはならないでしょう。
本件でも、本来の趣旨から外れた「過剰課税」であることは認められているのだから。裁判所が個別救済したとしても「立法権の侵害」ということにはならないでしょう。もともと立法府が想定していた趣旨に沿って限定を加えているわけで。裁判所が独自の意味を勝手に充填するのではありません。
税法が「緻密で合理的な条文の集積」から成り立っているとして。
よく出来上がっている箇所については、余計な判断を加えず粛々と形式的なあてはめをしていけばいいのでしょう。が、そうではない箇所については、課税に値する実態が存するのかどうか、しっかり検討する必要があるのではないでしょうか。
◯
ここであらためて、本判決がいう「課税要件の明確性」について。
ここまでは、さしあたり「租税法律主義」から派生するところの『明確性(憲法原理)』として捉えておきました。で、課税に対する《制約原理》なのに、《拡張原理》として使うのはおかしい、と批難しました。
が、よくよく考えると、本判決がいうところの「課税要件の明確性」は、憲法原理としてのそれではなく。単に立法技術としての『明確性(立法技術)』を言っているのではないかと。
前回のイメージ図のごとく、楕円の制度趣旨にピッタリ寄り添う形で制度設計するのは立法技術的に無理がある、ので、ある程度の《割り切り》は『明確性(立法技術)』の観点から許される、といっているだけだと。
もしそうだとすると、法令そのものが違法とならない、というだけで。当該事案に適用することが許されるかどうかは、やはり、別途検討が必要になるのではないでしょうか。
◯
本判決において「裁判所が」個別救済をしない理由付けとして機能しているの、「調べりゃ回避できたはず」だけだと思います。「課税要件の明確性」は立法府向け、「課税執行面における安定性」は課税庁向けに使える理由にすぎず。裁判所が個別救済を拒絶する理由としては遠すぎる。
では、「回避理論」をもって個別救済を拒絶することが正当化されるでしょうか。
この理論、自招防衛などにおいて正当防衛を否定する根拠として使われる「退避義務」に似ているんですよね。自分で不正な侵害を招いたのであれば、反撃せずに退避すべき、として使われるやつ。
そうすると、本件でもみずほ様に「回避義務」が課せられるのかどうか、という評価が問題となってきます。
この点、「早歩き税」であれば、「早歩きしなければ課税を回避できる」からといって、課税が正当化されることにはならないでしょう。あまりにも行動制約が激しすぎるわけで。
本件においては、みずほ様に配当や事業年度終了のタイミングを調整させることが、どの程度の制約となるかにかかってくるかと思います。手続きそれ自体は簡単だとしても、他への影響を考えるとそんなお気軽にイジれるものではない、とかがありえるわけで。
本判決自身は、「やりゃあできる」程度にしか考えていないようですが。
◯
ここで「調整」といいましたが。CFC税制を回避するためだけにこれらタイミングを弄ることが、逆に、不当な「租税回避行為」だとか言い出さないかどうか。
「過剰課税」の場合でも形式重視で合算するといったわけですが。反対に「過小課税」の場合にも形式重視で合算しないといってくれるのか。
税法判決において最高裁が、形式重視でいくのか実質重視でいくのか、予測を立てるのが難しくなっているように思います。
最近の傾向からすると、どちらかというと形式を重視しているようにもみえます。が、りそな外税控除事件判決のように、制度濫用論なんてゴリゴリの実質重視を繰り出してくることもあり。
本事件における高裁も、決して最高裁様に逆らうつもりで実質重視でいったわけではなく。最高裁ルーレットの「形式/実質」の二択のうち実質にBETしたら外れた、というだけの話だと思います。
こんな状況で「信託SO」の事件がやってきたら、最高裁様のご機嫌はどちらだろうかと、下級審の裁判官は見極め困るだろうな、と思います。
信託型ストックオプション雑感
◯
なお、税法における「形式偏重」の最新例が「インボイス制度」です。
売上側が実質課税なのに対して、仕入側が形式控除なせいで「損税」が生じてしまっています。ここでいう「損税」というのが補足意見でいうところの「過剰課税」。
私自身は、「損税(=過剰課税)」というものはおよそ許されない、という考えで一連の検討を進めていたのですが。本判決によれば、「課税要件の明確性」「課税執行面における安定性」を理由にしさえすれば、消費者が消費した以上の消費税が生じたとしても別に構わない(し個別救済もしない)、ということになります。
「所詮カネだから」ということで許容されているのかもしれませんが。
「処罰すべき法益侵害はないけど、分かりやすさや執行しやすさを重視した結果、処罰範囲に入っちゃったので、処罰されても我慢してね。」なんて言ったら、刑法学者から袋叩きにあいますよね。こんな主張が許されてしまう、租税法学のぬるま湯感は異常。
インボイス行為無価値論 〜消費税法の理論構造(種蒔き編26)
先日、取り急ぎで雑感を書きましたが。
みずほCFC事件判決 〜最高裁令和5年11月6日判決 (雑感)
本判決の「形式偏重」な思考、以下のような物言いを想起させるんですよね。
【形式的犯罪論】
国家権力による恣意的な処罰を抑制するため、法律による定めなしに処罰することは許されない。この趣旨を貫徹するため、裁判官は法律を形式的に適用することしか許されず、実質的な判断を加えることは禁止される。
刑法総論の教科書の最初のほうで、すでに克服された考え方として紹介されているものです。
「実質的判断を入れただけでは、直ちに恣意的な処罰になるわけではない」ということについては、今どきの刑法学説であれば共通認識になっているものかと思います。形式的に構成要件に該当するというだけでは犯罪は成立せず、処罰に値するだけの法益侵害があるかどうかの検討は別途必要だと。
本判決の論理を刑法学上の道具立てになぞらえて説明するならば、
形式的に犯罪構成要件(課税要件事実)に該当するならば、実質的な法益侵害(合算に値する子会社所得)が存在しなくても、処罰(合算課税)すべきである。
ということになります。税法の課税要件事実は租税犯罪構成要件(の一部)でもあるわけだから、わざわざ「なぞらえて」なんて言わなくてもよいのかもしれませんが。
「形式的犯罪論」を完全トレースした物言い。
◯
一昔前の刑法学説(純粋な意味での形式的犯罪論)みたいなものが、税法分野では、令和時代の最高裁判決において堂々と展開されているなんて、周回遅れにも程がある。
ではありますが、最高裁を責めるのは酷であって。やはり税法学説において、租税法上の原理原則として「罪刑法定主義」(+そこからの派生原則)を唱えるだけで満足してしまっているのが問題なのでしょう。
『だったら、事前に・明確に・平等に、課税するって法律に書いておきゃいいんだろ。』に対して、「租税法律主義」だけではなんら対抗することができません。刑法学でいうところの「法益保護主義」に対応するような原理原則が、未だに開発されていない。
仮に、「早歩き罪」(早歩きしたら処罰)などという犯罪があったとしたら、何ら保護すべき法益がないから許されない、となるでしょう。に対して、「早歩き税」(早歩きしたら課税)という税目があったとしても、それを制約できるような道具立ては、税法学説内部に用意されていません。
◯
CFC税制のように、法令上は《割り切り》によって規定せざるを得ないとしても(「課税要件の明確性」)。また、課税庁が課税処分の段階で形式的に執行せざるを得ないとしても(「課税執行面における安定性」)。裁判所までもが、個別事案における救済を検討せずに形式判断だけで押し切らなければならない、ということにはならないでしょう。
本件でも、本来の趣旨から外れた「過剰課税」であることは認められているのだから。裁判所が個別救済したとしても「立法権の侵害」ということにはならないでしょう。もともと立法府が想定していた趣旨に沿って限定を加えているわけで。裁判所が独自の意味を勝手に充填するのではありません。
税法が「緻密で合理的な条文の集積」から成り立っているとして。
よく出来上がっている箇所については、余計な判断を加えず粛々と形式的なあてはめをしていけばいいのでしょう。が、そうではない箇所については、課税に値する実態が存するのかどうか、しっかり検討する必要があるのではないでしょうか。
◯
ここであらためて、本判決がいう「課税要件の明確性」について。
ここまでは、さしあたり「租税法律主義」から派生するところの『明確性(憲法原理)』として捉えておきました。で、課税に対する《制約原理》なのに、《拡張原理》として使うのはおかしい、と批難しました。
が、よくよく考えると、本判決がいうところの「課税要件の明確性」は、憲法原理としてのそれではなく。単に立法技術としての『明確性(立法技術)』を言っているのではないかと。
前回のイメージ図のごとく、楕円の制度趣旨にピッタリ寄り添う形で制度設計するのは立法技術的に無理がある、ので、ある程度の《割り切り》は『明確性(立法技術)』の観点から許される、といっているだけだと。
もしそうだとすると、法令そのものが違法とならない、というだけで。当該事案に適用することが許されるかどうかは、やはり、別途検討が必要になるのではないでしょうか。
◯
本判決において「裁判所が」個別救済をしない理由付けとして機能しているの、「調べりゃ回避できたはず」だけだと思います。「課税要件の明確性」は立法府向け、「課税執行面における安定性」は課税庁向けに使える理由にすぎず。裁判所が個別救済を拒絶する理由としては遠すぎる。
では、「回避理論」をもって個別救済を拒絶することが正当化されるでしょうか。
この理論、自招防衛などにおいて正当防衛を否定する根拠として使われる「退避義務」に似ているんですよね。自分で不正な侵害を招いたのであれば、反撃せずに退避すべき、として使われるやつ。
そうすると、本件でもみずほ様に「回避義務」が課せられるのかどうか、という評価が問題となってきます。
この点、「早歩き税」であれば、「早歩きしなければ課税を回避できる」からといって、課税が正当化されることにはならないでしょう。あまりにも行動制約が激しすぎるわけで。
本件においては、みずほ様に配当や事業年度終了のタイミングを調整させることが、どの程度の制約となるかにかかってくるかと思います。手続きそれ自体は簡単だとしても、他への影響を考えるとそんなお気軽にイジれるものではない、とかがありえるわけで。
本判決自身は、「やりゃあできる」程度にしか考えていないようですが。
◯
ここで「調整」といいましたが。CFC税制を回避するためだけにこれらタイミングを弄ることが、逆に、不当な「租税回避行為」だとか言い出さないかどうか。
「過剰課税」の場合でも形式重視で合算するといったわけですが。反対に「過小課税」の場合にも形式重視で合算しないといってくれるのか。
税法判決において最高裁が、形式重視でいくのか実質重視でいくのか、予測を立てるのが難しくなっているように思います。
最近の傾向からすると、どちらかというと形式を重視しているようにもみえます。が、りそな外税控除事件判決のように、制度濫用論なんてゴリゴリの実質重視を繰り出してくることもあり。
本事件における高裁も、決して最高裁様に逆らうつもりで実質重視でいったわけではなく。最高裁ルーレットの「形式/実質」の二択のうち実質にBETしたら外れた、というだけの話だと思います。
こんな状況で「信託SO」の事件がやってきたら、最高裁様のご機嫌はどちらだろうかと、下級審の裁判官は見極め困るだろうな、と思います。
信託型ストックオプション雑感
◯
なお、税法における「形式偏重」の最新例が「インボイス制度」です。
売上側が実質課税なのに対して、仕入側が形式控除なせいで「損税」が生じてしまっています。ここでいう「損税」というのが補足意見でいうところの「過剰課税」。
私自身は、「損税(=過剰課税)」というものはおよそ許されない、という考えで一連の検討を進めていたのですが。本判決によれば、「課税要件の明確性」「課税執行面における安定性」を理由にしさえすれば、消費者が消費した以上の消費税が生じたとしても別に構わない(し個別救済もしない)、ということになります。
「所詮カネだから」ということで許容されているのかもしれませんが。
「処罰すべき法益侵害はないけど、分かりやすさや執行しやすさを重視した結果、処罰範囲に入っちゃったので、処罰されても我慢してね。」なんて言ったら、刑法学者から袋叩きにあいますよね。こんな主張が許されてしまう、租税法学のぬるま湯感は異常。
インボイス行為無価値論 〜消費税法の理論構造(種蒔き編26)
posted by ウロ at 10:55| Comment(0)
| 判例イジり
2023年11月08日
みずほCFC事件判決 〜最高裁令和5年11月6日判決 (雑感)
一読しての第一印象。誤読・誤解もあると思うので、そのうち修正すると思います。
◯
「文言解釈の原則からしたら当たり前」というような、単純なお話しではなく。
最高裁令和5年11月6日判決
主戦場が「政令」となっているため、政令が法律の委任の趣旨をはみ出していないか、という「委任立法」の問題として論じる必要があります。
【参照:消費税法における委任立法】
条文解析《インボイスいらない特例》の法的構造について(その4) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編39)
「委任立法」の問題として論じる場合、
1 法律の委任の趣旨を明確にし、
2 政令の文言解釈で委任の趣旨をはみ出していなければそのままでOK
3 文言解釈だと委任の趣旨をはみ出すなら、趣旨にそった限定解釈を加える
4 限定解釈のしようがなければ政令を違法とする
という論じ方になります。
で、最高裁は案の定、そのままでよいと結論を出したわけですが(1⇒2までで終了)。いまいち中身が腑に落ちない。
◯
最初に。私が理解したところの、今回の判決のイメージはこんな感じ。CFC税制の制度趣旨に対して、政令(赤枠)がズレている様子を表しています。

本判決を読んでいて、真っ先に引っかかったのが以下の箇所(第2の2(1))。
「@ 本件委任規定は、私法上は特定外国子会社等に帰属する所得を当該特定外国子会社等に係る内国法人の益金の額に合算して課税する内容の規定である。
A これは、内国法人が、法人の所得に対する租税の負担がないか又は著しく低い国又は地域に設立した子会社を利用して経済活動を行い、当該子会社に所得を発生させることによって我が国における租税の負担を回避するような事態を防止し、
B 課税要件の明確性や課税執行面における安定性を確保しつつ、
C 税負担の実質的な公平を図ることを目的とするものと解される。」
丸数字は私が挿入しました。
CFC税制の規定を説明するにあたって、AによってCを実現する、というのはわかるのですが。その間にBが入ってくることに違和感を持ちました。何だよ「しつつ」ってと。
が、このあとに出てくる判示を読んで、わざわざBを挿入したことの意味が分かりました。
このような趣旨に基づく委任を受けて設けられた本件規定は、適用対象金額に乗ずべき請求権勘案保有株式等割合に係る基準時を特定外国子会社等の事業年度終了の時とするものであるところ、本件委任規定において課税要件の明確性や課税執行面における安定性の確保が重視されており、事業年度終了の時という定め方は一義的に明確であること等を考慮すれば、個別具体的な事情にかかわらず上記のように基準時を設けることには合理性があり、そのような内容を定める本件規定が本件委任規定の目的を害するものともいえない。
政令が「いささか精緻さに乏しい」割り切り方をしていることを正当化するために、法律自身もBを目的に含めていると布石を打っておいたのでしょう。Aとは別途独立に、BもCFC税制の目的にねじ込んだおかげで、個別事情を無視した《割り切り》をしてもCFC税制の「目的を害するものとはいえない」ということができるわけです。
が、これでは政令の《割り切り》から逆算して、CFC税制の目的をでっち上げただろと非難されてもおかしくない(ヤラセ疑惑)。
◯
そこで、これだけではヤラセ丸出しだと思ったのでしょうか。「前記事実関係等の下において本件規定を適用することが本件委任規定の委任の範囲を逸脱するか否か」などいうことまで検討し始めました(第2の2(2))。
政令が委任の趣旨通りに作られているのであれば、わざわざ個別事案ごとの検討なんていらないはずです。やはり、政令が、CFC税制の本来の制度趣旨であるAからはみ出して規定されていることに対する後ろめたさみたいなものがあったのではないかと、下衆の勘ぐりセンサーが働きます。
上記イメージ図では、これを緑の◯で表現しています。ぎりぎり政令のライン上に収まっているが(三笘の1mmを想定)、本来の制度趣旨(A)から距離があるものを、例外的に救済する余地を残したようにみえます。
が、本件では、草野補足意見で露骨に書かれているように「天下のみずほ様がwwwww、調査不足でしくじるとかwwwww、超ウケるwwwww」という具合で、救済方面の議論は積められることはなく。
ちゃんと調べりゃ回避できただろと言われて一蹴(上記イメージ図のオレンジの◯)。
【一応、補足意見の原文】
被上告人のような我が国を代表する金融機関が本件資金調達手続を立案するに当たっては、当然関係各国の税制を詳細に調査研究し、その内容を知悉することが前提であろうから、被上告人は、我が国のタックス・ヘイブン対策税制についても十分な調査を行い、かつ、(タックス・ヘイブン対策税制は頻繁に改正されるものであることは周知の事実であるから、)必要に応じて、本件資金調達手続の実施後においても最新のタックス・ヘイブン対策税制の内容を調査し、本件資金調達手続によって生み出された会社法や契約法上の権利義務関係に合理的な変更を加えることによって、予期せざる税務上の不利益が発生することがないよう注意を払い続けることを期待され得る立場にあった。
◯
まあ、一般論レベルで《過剰課税》を許容してしまった以上、個別論レベルで救済されるなんて、ほとんど見込めないように思えます。
下記の判示が象徴的です。
もっとも、前述のとおり、個別具体的な事情にかかわらず基準時を設ける本件規定の内容が合理的である以上、上記のような帰結をもって直ちに、前記事実関係等の下において本件規定を適用することが本件委任規定の委任の範囲を逸脱することとはならないところ、
いかにも《経路依存》な書きぶり。「個別事情は無視していいことにしたので個別事情は無視する」といっているだけ。
私が《ヤラセ》と評価する所以です。
◯
本判決では「課税要件の明確性」「課税執行面における安定性」というマジックワードが出てきたわけですが。
以前検討したムゲンエステート・ADW事件判決においても、「課税の明確性の確保」「適正な徴税の実現」といったマジックワードをもって、用途区分における《割り切り》が正当化されていて。
虚弱判決(その2) 〜ムゲン・ADW事件判決(最判令和5年3月6日)
今後もこの手のマジックワードが頻発するようであれば、しばらく税法判決の理論的発展というものが望めない状況になりはしないかと、不穏な気持ちになります(最高裁判決の《金太郎飴答案》化現象)。
特に、「課税要件の明確性」「課税執行面における安定性」のためなら、本来の制度趣旨から外れた局面においても課税できること(過剰課税)を正面から認めてしまったのは、かなり致命的ではないかと。
これまで税法学の世界では、「租税法律主義」及びここからの派生原則が、教科書の最初のほうでやたらと強調されるのに対して。「じゃあ書いときゃいいんだろ!」に対抗できる原理原則というものの発展が目立ちません。
そのせいかどうか、「課税要件の明確性」という、本来であれば適正課税を導くための《規制原理》として主張されていたはずのものを、過剰課税を正当化するための《拡張原理》として流用(盗用)されてしまっている始末。
「課税執行面における安定性」にしたって、適正な課税を安定的に執行するということを意味するはずで。「抜けがあると嫌だから多めにとっておけ」などというものを正当化できるものではないはずです。
どうすんのこれ?
◯
今後、本判決の表面的な理解だけが独り歩きして。
本来の制度趣旨に「課税要件の明確性」「課税執行面における安定性」をくっつけさえすれば、個別事情を無視して文言解釈だけで突っ走れる、という下級審判決が続出する予感。
さすがに、「通達」までもを文言解釈するなんてイカれた判決は、金輪際出現することはないでしょうが。
解釈の解釈の介錯 〜最高裁令和2年3月24日判決
本来の制度趣旨からあまりにも外れた内容となっていた場合には、さすがに最高裁だってアウトと判定するんじゃないですかね。一応、救済の余地は辛うじてほんのり残されたわけですし。
◯
なお、草野補足意見の下記推察。
・一般に、我が国の税法は、世界的にも稀有といえるほどに緻密で合理的な条文の集積から成り立っており、
・このことが税制に対する国民の信頼や我が国企業の国際競争力の礎となってきたことは税法の研究や実務に携わる者が均しく首肯するところではないかと推察する。
後半部分はよく分かりませんが、前半部分について。
「緻密」とまでいえるかはともかく、我々税理士が逐一税法条文を読まずとも《日常系税務》の仕事ができちゃっているのは、(通達等が整備されていることもありますが)やはり大元の税法条文が良くできているから、といえるんじゃないですかね。
条文知らずに税務ができちゃうのは、安定的な制度設計がなされているからだといえるのではないかと。パソコンの仕組みを知らずにパソコンが使える、みたいな。
ただ、近時のイタチごっこ改正などで制度が複雑になってきたせいで、そのような素直な評価が通用する場面が減っていっているように思えます。
あるいは、下記で検討したように、立案担当者が当初意図したであろう適用範囲と、実際の条文本体に書かれている適用範囲がズレているという現象も生じており(条文見出しが当初意図の名残り)。
【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 暫定版
今後、条文作成能力の劣化によっても「緻密で合理的な条文の集積」が崩れていくのかもしれません。
みずほCFC事件判決(最高裁令和5年11月6日)と形式的犯罪論
◯
「文言解釈の原則からしたら当たり前」というような、単純なお話しではなく。
最高裁令和5年11月6日判決
主戦場が「政令」となっているため、政令が法律の委任の趣旨をはみ出していないか、という「委任立法」の問題として論じる必要があります。
【参照:消費税法における委任立法】
条文解析《インボイスいらない特例》の法的構造について(その4) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編39)
「委任立法」の問題として論じる場合、
1 法律の委任の趣旨を明確にし、
2 政令の文言解釈で委任の趣旨をはみ出していなければそのままでOK
3 文言解釈だと委任の趣旨をはみ出すなら、趣旨にそった限定解釈を加える
4 限定解釈のしようがなければ政令を違法とする
という論じ方になります。
で、最高裁は案の定、そのままでよいと結論を出したわけですが(1⇒2までで終了)。いまいち中身が腑に落ちない。
◯
最初に。私が理解したところの、今回の判決のイメージはこんな感じ。CFC税制の制度趣旨に対して、政令(赤枠)がズレている様子を表しています。

本判決を読んでいて、真っ先に引っかかったのが以下の箇所(第2の2(1))。
「@ 本件委任規定は、私法上は特定外国子会社等に帰属する所得を当該特定外国子会社等に係る内国法人の益金の額に合算して課税する内容の規定である。
A これは、内国法人が、法人の所得に対する租税の負担がないか又は著しく低い国又は地域に設立した子会社を利用して経済活動を行い、当該子会社に所得を発生させることによって我が国における租税の負担を回避するような事態を防止し、
B 課税要件の明確性や課税執行面における安定性を確保しつつ、
C 税負担の実質的な公平を図ることを目的とするものと解される。」
丸数字は私が挿入しました。
CFC税制の規定を説明するにあたって、AによってCを実現する、というのはわかるのですが。その間にBが入ってくることに違和感を持ちました。何だよ「しつつ」ってと。
が、このあとに出てくる判示を読んで、わざわざBを挿入したことの意味が分かりました。
このような趣旨に基づく委任を受けて設けられた本件規定は、適用対象金額に乗ずべき請求権勘案保有株式等割合に係る基準時を特定外国子会社等の事業年度終了の時とするものであるところ、本件委任規定において課税要件の明確性や課税執行面における安定性の確保が重視されており、事業年度終了の時という定め方は一義的に明確であること等を考慮すれば、個別具体的な事情にかかわらず上記のように基準時を設けることには合理性があり、そのような内容を定める本件規定が本件委任規定の目的を害するものともいえない。
政令が「いささか精緻さに乏しい」割り切り方をしていることを正当化するために、法律自身もBを目的に含めていると布石を打っておいたのでしょう。Aとは別途独立に、BもCFC税制の目的にねじ込んだおかげで、個別事情を無視した《割り切り》をしてもCFC税制の「目的を害するものとはいえない」ということができるわけです。
が、これでは政令の《割り切り》から逆算して、CFC税制の目的をでっち上げただろと非難されてもおかしくない(ヤラセ疑惑)。
◯
そこで、これだけではヤラセ丸出しだと思ったのでしょうか。「前記事実関係等の下において本件規定を適用することが本件委任規定の委任の範囲を逸脱するか否か」などいうことまで検討し始めました(第2の2(2))。
政令が委任の趣旨通りに作られているのであれば、わざわざ個別事案ごとの検討なんていらないはずです。やはり、政令が、CFC税制の本来の制度趣旨であるAからはみ出して規定されていることに対する後ろめたさみたいなものがあったのではないかと、下衆の勘ぐりセンサーが働きます。
上記イメージ図では、これを緑の◯で表現しています。ぎりぎり政令のライン上に収まっているが(三笘の1mmを想定)、本来の制度趣旨(A)から距離があるものを、例外的に救済する余地を残したようにみえます。
が、本件では、草野補足意見で露骨に書かれているように「天下のみずほ様がwwwww、調査不足でしくじるとかwwwww、超ウケるwwwww」という具合で、救済方面の議論は積められることはなく。
ちゃんと調べりゃ回避できただろと言われて一蹴(上記イメージ図のオレンジの◯)。
【一応、補足意見の原文】
被上告人のような我が国を代表する金融機関が本件資金調達手続を立案するに当たっては、当然関係各国の税制を詳細に調査研究し、その内容を知悉することが前提であろうから、被上告人は、我が国のタックス・ヘイブン対策税制についても十分な調査を行い、かつ、(タックス・ヘイブン対策税制は頻繁に改正されるものであることは周知の事実であるから、)必要に応じて、本件資金調達手続の実施後においても最新のタックス・ヘイブン対策税制の内容を調査し、本件資金調達手続によって生み出された会社法や契約法上の権利義務関係に合理的な変更を加えることによって、予期せざる税務上の不利益が発生することがないよう注意を払い続けることを期待され得る立場にあった。
◯
まあ、一般論レベルで《過剰課税》を許容してしまった以上、個別論レベルで救済されるなんて、ほとんど見込めないように思えます。
下記の判示が象徴的です。
もっとも、前述のとおり、個別具体的な事情にかかわらず基準時を設ける本件規定の内容が合理的である以上、上記のような帰結をもって直ちに、前記事実関係等の下において本件規定を適用することが本件委任規定の委任の範囲を逸脱することとはならないところ、
いかにも《経路依存》な書きぶり。「個別事情は無視していいことにしたので個別事情は無視する」といっているだけ。
私が《ヤラセ》と評価する所以です。
◯
本判決では「課税要件の明確性」「課税執行面における安定性」というマジックワードが出てきたわけですが。
以前検討したムゲンエステート・ADW事件判決においても、「課税の明確性の確保」「適正な徴税の実現」といったマジックワードをもって、用途区分における《割り切り》が正当化されていて。
虚弱判決(その2) 〜ムゲン・ADW事件判決(最判令和5年3月6日)
今後もこの手のマジックワードが頻発するようであれば、しばらく税法判決の理論的発展というものが望めない状況になりはしないかと、不穏な気持ちになります(最高裁判決の《金太郎飴答案》化現象)。
特に、「課税要件の明確性」「課税執行面における安定性」のためなら、本来の制度趣旨から外れた局面においても課税できること(過剰課税)を正面から認めてしまったのは、かなり致命的ではないかと。
これまで税法学の世界では、「租税法律主義」及びここからの派生原則が、教科書の最初のほうでやたらと強調されるのに対して。「じゃあ書いときゃいいんだろ!」に対抗できる原理原則というものの発展が目立ちません。
そのせいかどうか、「課税要件の明確性」という、本来であれば適正課税を導くための《規制原理》として主張されていたはずのものを、過剰課税を正当化するための《拡張原理》として流用(盗用)されてしまっている始末。
「課税執行面における安定性」にしたって、適正な課税を安定的に執行するということを意味するはずで。「抜けがあると嫌だから多めにとっておけ」などというものを正当化できるものではないはずです。
どうすんのこれ?
◯
今後、本判決の表面的な理解だけが独り歩きして。
本来の制度趣旨に「課税要件の明確性」「課税執行面における安定性」をくっつけさえすれば、個別事情を無視して文言解釈だけで突っ走れる、という下級審判決が続出する予感。
さすがに、「通達」までもを文言解釈するなんてイカれた判決は、金輪際出現することはないでしょうが。
解釈の解釈の介錯 〜最高裁令和2年3月24日判決
本来の制度趣旨からあまりにも外れた内容となっていた場合には、さすがに最高裁だってアウトと判定するんじゃないですかね。一応、救済の余地は辛うじてほんのり残されたわけですし。
◯
なお、草野補足意見の下記推察。
・一般に、我が国の税法は、世界的にも稀有といえるほどに緻密で合理的な条文の集積から成り立っており、
・このことが税制に対する国民の信頼や我が国企業の国際競争力の礎となってきたことは税法の研究や実務に携わる者が均しく首肯するところではないかと推察する。
後半部分はよく分かりませんが、前半部分について。
「緻密」とまでいえるかはともかく、我々税理士が逐一税法条文を読まずとも《日常系税務》の仕事ができちゃっているのは、(通達等が整備されていることもありますが)やはり大元の税法条文が良くできているから、といえるんじゃないですかね。
条文知らずに税務ができちゃうのは、安定的な制度設計がなされているからだといえるのではないかと。パソコンの仕組みを知らずにパソコンが使える、みたいな。
ただ、近時のイタチごっこ改正などで制度が複雑になってきたせいで、そのような素直な評価が通用する場面が減っていっているように思えます。
あるいは、下記で検討したように、立案担当者が当初意図したであろう適用範囲と、実際の条文本体に書かれている適用範囲がズレているという現象も生じており(条文見出しが当初意図の名残り)。
【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 暫定版
今後、条文作成能力の劣化によっても「緻密で合理的な条文の集積」が崩れていくのかもしれません。
みずほCFC事件判決(最高裁令和5年11月6日)と形式的犯罪論
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| 判例イジり
2023年11月06日
「丸善リサーチ」と私。
さしあたり「有料立ち読みサイト」というのが、私の現状での位置づけです。
丸善リサーチ
◯
意図的かどうか、ラインナップを見る限り各出版社、様子見って感じで。本気のコンテンツ差し出しがまだ始まっていません。多くの税理士が、改訂の都度購入しているであろう、あの本やこの本が全く含まれていない。
FIFAワールドカップの予選に各国クラブが一線級の選手を出し渋るとか、かつてWBCにメジャーリーガーがあまり出てこなかったとかのイメージ。そこで活躍することで、クラブ・球団に還元される道筋が見えていない、みたいな。
サイトの機能自体は、とても洗練されていて使いやすいと思います。が、いかんせんコンテンツの顔ぶれが微妙。
あまり積極的に本を買わない、あるいはたまに思いつきで本を買う税理士先生の事務所の本棚ぽくみえる(既視感)。《揃っている》感がないんですよね。
◯
だからといって、「これからガンガン充実していくよ!」とかいって、頭数だけ揃えればいいというものでもありません。
たとえば「インボイス」について。
昨今、ただでさえ少ないリアル書店の税務棚を占拠しているインボイス解説本。こいつらが収録されたところで、内容は全部同じです。運営発行の「Q&A」の引き写しなだけ。
せっかくの「横断検索機能」ですが、複数書籍からずらずらと同じ内容が出てくるだけでは、何の参考にもならないでしょう。
『複数の書籍が同じことを言ってるから信用できる!』ではおよそなくて。単に出処が同じなだけで、大元がアレならワナビー達もみんなアレですよ。
【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 暫定版
そのことが分かっての上なのかどうか。
インボイスものに関しては「資料」というカテゴリの中に「Q&A」だけが掲載されています。あえてそうしているなら、とてもよい見極めだなあと思います。
検索汚しになるだけなので、今後も「Q&A引き写し本」は収録しないで欲しい。
インボイスを例に出しましたが、他のジャンルでも同様です。横断検索ができたところで、通達とか質疑応答事例を引き写しただけの記述が上がってくるのでは、ただの「インターネット検索」と変わりません。
税務に関して何かしらインターネット検索した方であれば、お分かりになるかと。◯◯税理士事務所のサイトにも、△△税理士のブログにも、国税庁のサイトと同じことしか書かれていない現象。
あれを有料サービス上で再現するという虚無。
可能ならば「インターネット上で拾えるレベルのものは検索に上がってこない」という機能を備えてほしい。「論文コピペチェッカー」があるんだから、普通にできますよね(なんてことをしたら、1件もヒットしないことがありえる)。
◯
ただ、ラインナップが一線級でなくても、それなりに意味はあって。
私が開業したときから比較しても、近場のリアル書店は激減しており、存続していても専門書の棚が縮小・消滅の憂き目にあっていたり。中身を確認してから買うことのハードルがかなりあがってしまっています。
ネット上に一部「試し読み」の機能がついているものもありますが。本当に一部で、最初の数ページだけで全体の良し悪しを判断するのは困難。
酷いものだと、はしがきと目次だけで終わっていたり(私の観測範囲では「◯◯×Amazon」がそれでがっかりさせられることが多い)。
あとの頼りは出版社の宣伝文句だけですが。これも「売らんがな」要素を排除しながら見極めなければなりません。
高木光「行政法」(有斐閣2015)
専門書なんて、手間暇かけて宣伝したってどうせ売れねえよ、と思っているのかもしれません。ので、安易に売れそうな宣伝文句だけ貼り付けて済ませてしまうんだと。
が、興津征雄先生の『行政法T』ように、ボリュームたっぷりでお高めの教科書であっても、中身を丁寧に作り、かつ著者ご自身がSNS上でしっかり宣伝していけば、売れるものになるはずです。
興津征雄「行政法I」(新世社2023)
◯
若干話が脱線しましたが。
というような状況で、二線級の本のために遠出して現物を確認しにいくのか、あるいは、宣伝文句を信じて目押しで購入してしまうか、どちらかしかありませんでした(なお、ここで「二線級」と言っていますが、確認するまでは一線級か二線級以下かはわからない状態であることに留意)。
そこで、本サービスに対象の書籍が収録されていれば、中身を全て確認してから書籍を購入できることになります。
収録されているならわざわざ購入しなくてもよいのでは、と思われるかもしれません。
ですが、残念ながら本サービス上に収録され続けるという保証はどこにもありません。で、収録されなくなってから紙の本を買おうと思っても、品切れ絶版になっていること必至。
ということで、私にとって、本サービスを利用した場合の効用としては、「無駄撃ち」がなくなるということかなと。蔵書(積み本)が減ることはないと思います。
◯
私としては、無料期間終了まで様子見て、ラインナップの方向性が変わらなそうであれば、一旦解約でしょうか。ラインナップの揃い具合によっては再開するかも、ぐらいの感じ。
ところで、この手のサービス、実際に登録しないと収録ラインナップが見られないことが多いのですが、どういう作法なんですかね。
今はキャンペーン中だからいいとして、通常は、収録内容も分からずに有料登録なんてしづらいと思うのですが。
丸善リサーチ
◯
意図的かどうか、ラインナップを見る限り各出版社、様子見って感じで。本気のコンテンツ差し出しがまだ始まっていません。多くの税理士が、改訂の都度購入しているであろう、あの本やこの本が全く含まれていない。
FIFAワールドカップの予選に各国クラブが一線級の選手を出し渋るとか、かつてWBCにメジャーリーガーがあまり出てこなかったとかのイメージ。そこで活躍することで、クラブ・球団に還元される道筋が見えていない、みたいな。
サイトの機能自体は、とても洗練されていて使いやすいと思います。が、いかんせんコンテンツの顔ぶれが微妙。
あまり積極的に本を買わない、あるいはたまに思いつきで本を買う税理士先生の事務所の本棚ぽくみえる(既視感)。《揃っている》感がないんですよね。
◯
だからといって、「これからガンガン充実していくよ!」とかいって、頭数だけ揃えればいいというものでもありません。
たとえば「インボイス」について。
昨今、ただでさえ少ないリアル書店の税務棚を占拠しているインボイス解説本。こいつらが収録されたところで、内容は全部同じです。運営発行の「Q&A」の引き写しなだけ。
せっかくの「横断検索機能」ですが、複数書籍からずらずらと同じ内容が出てくるだけでは、何の参考にもならないでしょう。
『複数の書籍が同じことを言ってるから信用できる!』ではおよそなくて。単に出処が同じなだけで、大元がアレならワナビー達もみんなアレですよ。
【事例検討】インボイス経過措置(8割特例・5割特例) 暫定版
そのことが分かっての上なのかどうか。
インボイスものに関しては「資料」というカテゴリの中に「Q&A」だけが掲載されています。あえてそうしているなら、とてもよい見極めだなあと思います。
検索汚しになるだけなので、今後も「Q&A引き写し本」は収録しないで欲しい。
インボイスを例に出しましたが、他のジャンルでも同様です。横断検索ができたところで、通達とか質疑応答事例を引き写しただけの記述が上がってくるのでは、ただの「インターネット検索」と変わりません。
税務に関して何かしらインターネット検索した方であれば、お分かりになるかと。◯◯税理士事務所のサイトにも、△△税理士のブログにも、国税庁のサイトと同じことしか書かれていない現象。
あれを有料サービス上で再現するという虚無。
可能ならば「インターネット上で拾えるレベルのものは検索に上がってこない」という機能を備えてほしい。「論文コピペチェッカー」があるんだから、普通にできますよね(なんてことをしたら、1件もヒットしないことがありえる)。
◯
ただ、ラインナップが一線級でなくても、それなりに意味はあって。
私が開業したときから比較しても、近場のリアル書店は激減しており、存続していても専門書の棚が縮小・消滅の憂き目にあっていたり。中身を確認してから買うことのハードルがかなりあがってしまっています。
ネット上に一部「試し読み」の機能がついているものもありますが。本当に一部で、最初の数ページだけで全体の良し悪しを判断するのは困難。
酷いものだと、はしがきと目次だけで終わっていたり(私の観測範囲では「◯◯×Amazon」がそれでがっかりさせられることが多い)。
あとの頼りは出版社の宣伝文句だけですが。これも「売らんがな」要素を排除しながら見極めなければなりません。
高木光「行政法」(有斐閣2015)
専門書なんて、手間暇かけて宣伝したってどうせ売れねえよ、と思っているのかもしれません。ので、安易に売れそうな宣伝文句だけ貼り付けて済ませてしまうんだと。
が、興津征雄先生の『行政法T』ように、ボリュームたっぷりでお高めの教科書であっても、中身を丁寧に作り、かつ著者ご自身がSNS上でしっかり宣伝していけば、売れるものになるはずです。
興津征雄「行政法I」(新世社2023)
◯
若干話が脱線しましたが。
というような状況で、二線級の本のために遠出して現物を確認しにいくのか、あるいは、宣伝文句を信じて目押しで購入してしまうか、どちらかしかありませんでした(なお、ここで「二線級」と言っていますが、確認するまでは一線級か二線級以下かはわからない状態であることに留意)。
そこで、本サービスに対象の書籍が収録されていれば、中身を全て確認してから書籍を購入できることになります。
収録されているならわざわざ購入しなくてもよいのでは、と思われるかもしれません。
ですが、残念ながら本サービス上に収録され続けるという保証はどこにもありません。で、収録されなくなってから紙の本を買おうと思っても、品切れ絶版になっていること必至。
ということで、私にとって、本サービスを利用した場合の効用としては、「無駄撃ち」がなくなるということかなと。蔵書(積み本)が減ることはないと思います。
◯
私としては、無料期間終了まで様子見て、ラインナップの方向性が変わらなそうであれば、一旦解約でしょうか。ラインナップの揃い具合によっては再開するかも、ぐらいの感じ。
ところで、この手のサービス、実際に登録しないと収録ラインナップが見られないことが多いのですが、どういう作法なんですかね。
今はキャンペーン中だからいいとして、通常は、収録内容も分からずに有料登録なんてしづらいと思うのですが。
posted by ウロ at 11:22| Comment(0)
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