2024年07月05日

最高裁令和6年7月4日・第一小法廷判決 雑感(労災・メリット制)

 こういう理屈のたて方をみると、いい意味でも悪い意味でも、最高裁判事(and最高裁調査官)ってものすごい頭いいんだなあ、と思わされます(偉そう)。

療養補償給付支給処分(不支給決定の変更決定)の取消、休業補償給付支給処分の取消請求事件
令和6年7月4日最高裁判所第一小法廷判決 

 中身については思いっきり専門外なので、深堀りはせずざっくり感想だけ。
 あくまでも、「租税訴訟」にも参考になるかな、という興味本位のみで触れています。

【判断の内容(意訳)】
 事業主が、労働者に対する保険支給処分を争うことはできない。
 保険支給処分は、労働者に対する早期救済のためのものであって、その効力は、事業主に対する保険料決定に関する法律関係にまでは及ばない。

 保険料に不服があるなら、ダイレクトに事業主に対する保険料認定処分を争えばよい。
 ここで、保険給付が支給要件を満たしていなかったことを争うことができる。


 私のような単純脳では、「保険給付処分があるままでは保険料認定処分争えないんじゃない?」とか短絡視してしまうところ。
 そうではなく、早期救済用に設計された行政処分があるだけだったら、別の行政処分には影響しないぞと。

 それはそれでいいとして。以下のような疑問があります。

【疑問】
1 保険料認定処分を争う中で保険給付が支給要件を満たさないことが明らかになった場合、遡って保険給付処分は違法だったことになるのか?


 判決は、「保険給付処分→保険料認定処分」のことしか判断しておらず、「保険料認定処分(の取消訴訟の認容判決)→保険給付処分」にまでは触れていないわけです。

2 保険不支給処分に対して労働者が取消訴訟を提起した場合、事業主は国側に補助参加できるか?


 これはできるとされています。
 保険不支給処分の取消訴訟が認容されて支給処分がされたら、保険料決定処分に影響してしまうからだと。

平成12(行フ)3  補助参加申出の却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
平成13年2月22日最高裁判所第一小法廷決定

 ・保険支給処分に対する取消訴訟   ←事業主は提起できない
 ・保険不支給処分に対する取消訴訟  ←事業主は国側に補助参加できる

 これを整合的に説明するならば、単なる行政処分レベルで「給付する」と判断されても保険料認定処分には及ばないが、不支給処分の取消訴訟が認容された場合には及んでしまう、ということになるでしょうか。

 このことからすると、保険料認定処分の取消訴訟で「支給要件なし」として認容された場合には、保険給付処分にも影響が及ぶことにならないでしょうか。
 保険給付処分と保険料認定処分とが、行政処分レベルで併存しているかぎりでは、どちらにも影響がないものの。どちらかの処分に裁判所の判断が出てしまうと、他方の処分にも取消訴訟の判決の効力が及ぶことになるからです。

 もしそうだとすると、保険給付処分を受けた労働者は、事業主が提起した保険料認定処分の取消訴訟に、国側で補助参加する利益があることになりそうです。

 ・保険料認定処分に対する取消訴訟  ←労働者は国側に補助参加できる(?)


 本判決をもって、「保険給付/不支給決定と保険料認定とは相互に無関係」との判断を示したものと理解する人がいるかもしれません。
 が、平成13年決定を変更すると明示していない以上、同決定との整合性を保たなければなりません。

 そうすると、
 ・行政処分レベルでは、相互に影響しない。
   ア 保険給付処分→保険料認定処分 ⇒及ばない(本判決)
   イ 保険料認定処分→保険給付処分 ⇒及ばない(?)
 ・取消判決が出たら、認定事実を共通とする他の行政処分・取消訴訟には影響を及ぼす。
   ウ 保険不支給処分に対する取消判決→保険料認定処分 ⇒及ぶ(平成13年決定) 
   エ 保険料認定処分に対する取消判決→保険給付処分  ⇒及ぶ(?) 
と理解すべきではないでしょうか。


 以上、単なる素人の浅読みにすぎません。

 あらためて、「取消訴訟の判決の効力」というものをよくよく勉強しておかなければ、と思いました。

最高裁令和6年7月4日第一小法廷判決(労災・メリット制)における「行政/司法」と「実体法/手続法」の交錯
posted by ウロ at 14:05| Comment(0) | 判例イジり