みんな大好き!倒産防(その4) 〜令和6年度税制改正大綱
掛金:損金算入 ⇒解約手当金:益金算入
掛金:損金不算入 ⇒解約手当金:益金不算入
という素朴な《オセロ思考》が、法人税法22条の解釈論から導くことができるのだろうかと。
※《オセロ思考》とは
「表が白なら裏は黒に決まっている」という、省エネ・節約系の思考方法のことをいう
そこで今回は、パターン分けをして、問題の所在を整理するところまで手をつけてみます。
なお、実務家としては、上記の《オセロ思考》で処理しておけばさしあたり問題はないのでしょう。以下はただの《お戯れ》です。
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掛金の処理として考えられるパターンは、以下の通りになるかと思います。

表の説明をくわえると。
・掛金、実体要件
条文上は、掛金を納付したら「損金とする」となっており、「損金算入できる」ではありません。
ので、条文の書きぶりに忠実にしたがって《文言解釈》するならば、掛金を納付した以上、問答無用で損金算入するのであり。納税者が自由に選択できるものではないはずです。
なお、納付しなければ損金算入するものがないので、こちらははじめからパターンには組み込んでいません。
・会計
「費用」が損金経理をした場合、「資産」が損金経理をしなかった場合です。
・申告調整
「費用」としておきながらあえて加算する、とか、資産としたうえで申告調整しない、というパターンも組み込んでおきました。
なぜ、わざわざ課税所得を増やすようなことをするのか、といえば、繰越欠損金の問題とか税額控除の上限の問題とか、まあ、そういう事情があるわけです(当然、行為計算否認規定の発動はありうる)。
・明細添付、手続要件
明細書を添付しなければ、損金算入できません。
かつて、とある特例の手続要件が省令だけに規定されていたことが違法とされた判決がありましたが、ここでは、きちんと法律レベルで実体要件と並べて記述されています。
・課税所得
マイナスというのが損金算入した場合、0がしなかった場合です。
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さて、このような掛金処理パターンがあるなかで、《オセロ思考》によれば、解約手当金の処理は次の帰結となります。
・1、5の場合 ⇒益金算入する
・それ以外の場合 ⇒益金算入しない
1,5の場合に益金算入するのは、さしあたりよいということにして。それ以外の場合の全てが益金算入しないということでよいのかどうか。
どういう問題意識があるのかというと。
上述のとおり、掛金を納付した以上は損金算入するものであり、納税者が任意に損金算入を選択できるものではないはずです。にもかかわらず、
・あえて明細添付せずに損金算入しない(2,4,6,8)
・費用処理しておきながら、わざわざ加算する(3,4)
・資産処理をした上で、きちんと減算していない(7,8)
といったやり口で損金算入しなかった場合、解約手当金を益金算入しなくてもよいのか、という疑問があるわけです。
そもそもの話、解約手当金の性質は、掛金につきどの処理を行おうが変わるわけでもないのであって。益金性が左右される根拠は、どこにもないわけです。
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最初に述べたとおり、これは単なる《お戯れ》であって。実務家の方が深入りするようなものではないです(が、研究者はきちんと理論づけをしておいてください)。
なお、パターンが複雑になるので省略しましたが、ここに「2年ルール」が絡んでくると、さらに面倒なことになります(あえて2年以内に納付したので保護しなくてよい、と評価するのか、損金算入できないのは本人のせいじゃない、と評価するのか)。
やはり、実務家的には《オセロ思考》で済ませてしまうのが、楽になれてよいのでしょう。