2025年03月10日

「事前確定届出給与、支給日前に不支給決議すればお咎めなし」なる謎理論について

 事前確定届出給与について、「支給日前に不支給決議しておけば、支給せずともお咎めなし」なるテーゼが、定説として人口に膾炙しているようです。
(ここでは詳論しませんので、「事前確定届出給与 支給しない」とかで雑に検索して出てくる《税務お役立ち記事》にて、同テーゼの内容をご確認ください。)

 が、私にはなぜそのような帰結になるのか、まるで理解が及びません。
 他方で、「事前確定届出給与の制度趣旨云々」とかいうことを根拠に、「税務署に否認される可能性がある」みたいな物言いをされている方々の主張も、ふんわりしすぎてまるでしっくりきません。

 ということで、今回はそのあたりの整理をしておきます。


 まずは、条文の書きぶり。金銭交付の部分のみ抽出します(以下、用語のお約束として「職務」と「業務」は互換的に用います)。

事前確定届出給与とは(法法34条1項2号)
「その役員の職務につき所定の時期に、確定した額の金銭を交付する旨の定めに基づいて支給する給与で、定期同額給与及び業績連動給与のいずれにも該当しないもの」


 税法で「確定」というと(条文上なんら根拠のない)「権利確定主義」にいうあれか、と思われるかもしれません。
 がそうではなく。ここでいう「確定」は、会社法のそれです。

会社法 第三百六十一条(取締役の報酬等)
1 取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。
一 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額


 つまり、一定の時期までに報酬決議で支給額を決めれば損金算入を認める、ということです。

 だったら「定期同額給与」なんて設けずに、一定時期までの報酬決議さえあれば損金算入できる、だけのルールでも足りそうなものです。

 おそらくですが、どうせ中小企業なんて後づけで報酬決議とかしやがるだろ、ということなんでしょう。かといって、全件届出されてもウザい。そこで、金額で規制を設けておき(定期同額)、途中で金額イジりたい場合にだけ事前に届出をさせる、という規律にしたのでしょう。

 いずれ、「議事録にタイムスタンプ押しておけば届出不要」みたいなルールができそうですが、それはまた先のお話し。


 ちなみに、最近、「合同会社」も事前確定届出給与使えるよ、という(私からするとファンキーな)文書回答事例が出ています。

合同会社の社員に対して事前確定届出給与を支給する場合の税務上の取扱いについて(文書回答事例)

 合同会社には、上記の会社法361条に対応する規定がありません。にもかかわらず、株式会社の真似ごとみたいな処理をすれば、事前確定届出給与使っていいんだと。

 私には、法人税法も同法施行令も、事前確定届出給与については株式会社だけを想定していて、持分会社(合名会社、合資会社、合同会社)を含めた書きぶりにはなっていないと読めるのですが。そのまま横流ししちゃっていいということのようです。よかったですね。

 定款に「当社は社員総会(任意機関)を置く。」「任期は◯年以内の定時社員総会終結時まで。」「報酬は社員総会で決定する。」とか、それっぽいことを書いておく必要があるのかどうか(会社法制定当時の「お前、有限会社の定款テンプレ、コピペしただけやろ!」と突っ込まれる感じのやつ)。


 話を戻して。
 結果、事前確定届出給与の要件を満たすには、会社法における報酬決議が必要になります。で、報酬決議をした時点で、会社には報酬支払債務が発生することになります。

最高裁平成4年12月18日判決
 株式会社において、定款又は株主総会の決議(株主総会において取締役報酬の総額を定め、取締役会において各取締役に対する配分を決議した場合を含む。)によって取締役の報酬額が具体的に定められた場合には、その報酬額は、会社と取締役間の契約内容となり、契約当事者である会社と取締役の双方を拘束するから、その後株主総会が当該取締役の報酬につきこれを無報酬とする旨の決議をしたとしても、当該取締役は、これに同意しない限り、右報酬の請求権を失うものではないと解するのが相当である。この理は、取締役の職務内容に著しい変更があり、それを前提に右株主総会決議がされた場合であっても異ならない。


 そうすると、支給日前だろうと後だろうと、(本人同意のもとに)不支給決議をした場合は、支給決議時に発生した報酬債務を消滅させたことに変わりはありません。それゆえ、支給日前に不支給決議をした場合も、「債務を消滅させた」という事実に対して課税するかどうかが問題になるはずです。
(一般に「債務免除益課税」という言い回しがされることが多いところ。ですが、消滅原因は必ずしも「免除」(民法519条)とはかぎらないため、以下では「債務消滅益」と記述します。)

 そこいらの《税務お役立ち記事》では、支給日前なら債務は発生していないから債務消滅益も発生しない、などと書かれています(恐ろしいほど皆同じ論調。全員同じところから節税記事買ってんのか)。
 が、このような記述は、およそ民法・会社法における一般的な理解からはかけ離れた異説にすぎません。
 
【異説】
・同時履行の抗弁が存在するかぎり、債務は「発生」しない。
・確定期限が到来するまで、債務は「発生」しない。

 法人税法の側で議論しなければならないことは、私法レベルで発生した債務を事後的に消滅させたとして、それが「益金」に該当し課税をすべきかどうか、という点です。
 私法レベルでの異説を唱えて税法上の論点は無いものとする、のではなく。正面から税法上の問題として論ずるべきものでしょう。


 ちなみに、このような民法上の異説を信じてしまう理由。税理士が《仕訳思考》《簿記思考》で物事を考えがちだから、ではないかと邪推しています。

 すなわち、単に契約を締結しただけでは仕訳を起こすことはないのであり。で、仕訳を起こさない以上、法律上の債務もまだ発生していない、と勘違いしてしまうのではないかと。

【仕訳思考】
 ・支給決議時 : 仕訳なし →債務は発生していないに違いない!

 そして、支給日前に不支給決議をすれば、消し込みをする未払金が計上されていない以上、対応する債務消滅益も計上しなくてよいと。

【仕訳思考】
ア 支給日前
 ・支給決議時 :仕訳なし
 ・不支給決議時:仕訳なし →未払金が計上されていないから債務消滅益も計上しない!

イ 支給日後
 ・支給決議時 :仕訳なし
 ・支給日   :役員報酬/未払金
 ・不支給決議時:未払金/債務消滅益 →未払金を消し込むために債務消滅益を計上する!

 仕訳から税法上の論点にアプローチする思考。役にたつ場面もあるのでしょうが、正確な税法理解を妨げる要因にもなりうるということです。


 では、この場面で「債務消滅益」に課税すべきかどうかですが。この点は「債務消滅益」に関する課税理論に関わることであり、ここで深入りするつもりはありません。
 ごくごく簡単にさわりだけ触れると。
 
 一連の「企業再生税制」を念頭に置くと、再生場面では課税しなくてよいといえそうです。また、「臨時改定事由」にあたる事実が存在する場合も、(どう理屈づけるかはさておき)課税しなくてよいという結論になりそうです。
 他方で、単に「今期思ったより利益でなかったな、てへっ」程度の理由では、およそ救済すべき理由とはならないでしょう。

 平時の場面でありうる考えとしては、「債務に対応する反対給付が未履行なら課税しない」という規範が考えられるでしょうか。
 たとえば、3/1〜3/31の間有償でコンサルをするということで2/15に契約した場合、報酬債務自体は2/15に発生しています。その後、コンサル開始前の2/28に合意解約した場合、その報酬債務は消滅しますが、この消滅という事実に課税せよ、ということにはならないはずです。
 なぜかといえば、報酬の支払いは免れているものの、他方で、それに対応する役務の提供を受けていないからです。


 問題は、この理屈が「役員報酬」にもあてはまるのか、ということです。

 というのも、役員報酬というのは、1年の職務執行期間に対応するものとはいえても、その期間中のなにか特定の業務に対応するものではありません。
 「定期同額部分」は、便宜的に従業員と一緒の給与計算期間で処理されることがあるものの、1月ごとの給与計算期間と業務執行とが一対一対応しているわけでもありません。
 ましてや「事前確定部分」なんて、特定の業務との結びつきはないといっていいでしょう。

 もしも、事前確定部分に対応する業務が特定されているならば、その業務の執行前に不支給決議をすれば債務消滅益に課税しなくてもよい、といえるのかもしれません。が、対応する業務が不明確な以上、事前確定部分にかかる反対給付をまだ受けていない、ということはできず。やはり、報酬債務を免れたことに対して課税せざるをえないのではないでしょうか。

 この帰結が正しいかどうかはさておき。
 少なくとも、「支給日」の前後で債務消滅益に課税する/しないが変わるなんて考え、およそ根拠のない珍説としか、私には思えません(のに、大部分の人々がこれを信奉しているようであり。私のほうが根本的な思い違いをしているのでしょうか)。

 もちろん、支給日前なら所得が「確定」していないから所得税が課税されない、ということにはなるのでしょう。が、そのことと、法人側に債務消滅益課税が生じないかどうかは、別次元のお話しです。


 話は脱線しますが。
 そもそもの話として、役員報酬について、所得税(法)上の扱いは従業員と同じ、というのが未だにしっくりきていません。

 何を気にしているかといえば、請負(事業所得)を交えた以下の対比。

◯雇用(従属) :給与所得
 1 雇用契約締結 ←賃金債務発生
 2 労務の提供
 3 支払期日 ←所得確定

◯請負(独立) :事業所得
 1 請負契約締結 ←報酬債務発生
 2 役務の提供 ←所得確定
 3 支払期日

◯委任(独立) :給与所得
 1 委任契約締結、選任決議・報酬決議 ←報酬債務発生
 2 業務の執行
 3 支払期日 ←所得確定

 「従属/独立」という括りでいうと、受任者は請負人と同じく独立性ありだというのに、所得の「確定」は従業員(従属)の給与所得と同等に扱われています。これがどういう理屈によるものなのか。
 というか、なぜ給与所得は支払期日まで「確定」しないのに、事業所得は役務の提供完了時に「確定」してしまうのか。その違いすら、私にはよく分かりません。

さよなら「権利確定主義」(その1) 〜事業所得と給与所得


 「従業員と役員、違うんだか同じなんだか問題」、税法のみならず社会保障法の領域でもあって。

 役員を、雇用保険法の被保険者、労災保険法の適用者とするのは、文言上さすがに無理だとして。健康保険法・厚生年金保険法の「使用される者」には含まれるとされています。

・適用事業に雇用される労働者(雇用保険法)
・労働者(労災保険法)
・適用事業所に使用される者(健康保険法、厚生年金保険法)

 もちろん、「役員、社保に入れてあげないと可哀想よ。」というお気持ちは分かります。が、だとすると、労災保険・雇用保険だって同じことだと思うのですが。

黒田有志弥ほか「社会保障法(有斐閣ストゥディア)」(有斐閣2019)


 以上、極めて歯切れの悪い内容であり。

 ですが、「債務消滅益」の課税問題、組織再編税制のように制度自体が難解なものを除けば、相当な難問のうちの一つであって。少なくとも、節税屋さんが「支給日前なら大丈夫だよ〜」なんてお気軽に言えるようなものではないと思う。
posted by ウロ at 09:58| Comment(0) | 法人税法

2025年03月03日

一時所得がキモいのだが。

 一時所得と雑所得の関係について、一般に、雑所得が最終的なバスケットカテゴリーであり、一時所得はその手前に位置している、と理解されているように思われます。

  利子所得等 →一時所得(利子所得等以外) →雑所得(一時所得以外)

 確かに、法35条の書きぶりだけをみると、そのような理解に至ってしまうのも分かります。

法第三十五条(雑所得)
1 雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう。


 が、法34条のほうを読んでみると、そのような理解は不正確ではないか、と感じるわけです。

法第三十四条(一時所得)
1 一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう。


 1つ目の「以外」は(利子所得等以外)を意味するとして。2つ目の「以外」は何なんだよと。しかも、その後ろに「有しない」とさらに否定形が出てくるし。

 ということで、今回はこのあたりの違和感を言語化してみます。


 法34条に規定されている、一時所得該当性の要件を抽出すると、次の通りとなります。

要件1
 利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得
要件2
 営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外(の所得)
要件3
 一時の所得
要件4
 ア 労務その他の役務の対価としての性質を有しないもの
 イ 資産の譲渡の対価としての性質を有しないもの

 このような、消極要件だらけの一時所得につき、「課税要件事実論」を展開されている方々からはどのような理解がなされるのか、非常に興味のあるところ。

伊藤滋夫編「租税訴訟における要件事実論の展開」(青林書院2016)
伊藤滋夫ほか「要件事実で構成する所得税法」(中央経済社2019)

ですが、今回はこの点については触れず、あくまでも実体要件レベルで論じます。


 まず、要件1それ自体は、まあ当然だと。ただ、別途、要件4が要求されていることにつき、説明が必要ではないかと思います。

 ア「労務」の対価なのであれば、それは「給与所得」に該当するのではないか(なので要件4は不要では)、と疑問に思う方がいるかもしれません。
 これは、「労務」の対価としての性質をもっていたとしても、必ずしも「給与所得」になるとはかぎらず。雑所得にもなりうるという前提があるということです(これが「役務」となると「給与所得/事業所得/雑所得」と広がります)。

 イ「資産の譲渡」のほうも同様で、「譲渡所得」「事業所得」のほかに、「雑所得」にもあたりうるという前提があるということです。

  役務の対価(としての性質を有するもの)   :給与所得/事業所得/雑所得
  資産の譲渡の対価(としての性質を有するもの):譲渡所得/事業所得/雑所得

 それゆえ、要件1とは別に要件4を要求し、「雑所得」になるものを除外しているということです。

 ちなみに、要件1と4がこのような関係だとすると。
 たとえば「資産の譲渡の対価」にあたることが明らかな場合、まず要件1で譲渡所得or事業所得に該当するかを判定し、それから要件4の判定をする、などという迂路を経由する必要はなく。端的に要件4イに該当することがいえれば、「一時所得でない」と結論づけることができます。


 要件2では、営利かつ継続的行為である場合に、一時所得から除外されることとされています。

  A  営利+継続的行為 →除外(雑所得へ)
  B  営利+単発的行為
  C 非営利+継続的行為
  D 非営利+単発的行為

 除外されるAは、要件1「のうち」とされていることから、必然的に「雑所得」に該当することになります。

 条文上、「継続的行為」とされているとおり、ここで除外されるのは所得が発生する原因となる「行為」が継続的かどうかで判定するということです。
 所得それ自体が継続/単発かは、要件3として別に要求されています。


 要件3が、唯一の「積極要件」となっています。

 要件2のBCDにあたる行為によるものであっても、得られる所得が「一時」でなければ、一時所得にはならないということです。


 以上を踏まえて。

 要件1で利子所得等にあたる所得を除外し、要件3で積極的に「一時の所得」にあたるものを一時所得で受け止める、というかぎりでは、

  利子所得等 →一時所得(利子所得等以外) →雑所得(一時所得以外)

という序列であることに違和感はありません(雑所得がバスケット)。

 ところが、要件2と4は、「雑所得に該当しないものを一時所得とする」という書きぶりであり、むしろ、以下のようなポジションとなっているように読めるわけです(一時所得がバスケット)。

 利子所得等 →雑所得(利子所得等以外) →一時所得(雑所得以外)

 この2つを整合させるために、一時所得/雑所得を直列一本に並べるのではなく、積極要件(要件2、4)を満たす雑所得Tと、すべての所得類型該当性が否定された末の雑所得Uを分岐させてみたらどうでしょうか。

 利子所得等 →雑所得T(利子所得等以外) 
       →一時所得(利子所得等以外) →雑所得U(一時所得等以外)

要件1: 一時所得/雑所得共通の要件
 →他の所得にあたらなければ、一時所得or雑所得の判定をスタートさせる
要件2、4: 雑所得に振り分けるための要件
 →これらに該当したら、雑所得Tとなる。
要件3: 一時所得固有の要件
 →これに該当したら一時所得、該当しなかったら雑所得U

 常に一時の所得かどうか(要件3)を判定しなければ、雑所得該当性に進めないというのではなく。雑所得の判定が先にくるパターンもありうる、ということです。

 これは、あくまでも思考プロセスの問題にすぎません。
 が、「否定してばかりの」法34条がすんなり理解できない人は、同条が(一時所得の消極要件を定めていると同時に)雑所得の積極要件を定めていると捉えると、理解しやすくなるのではないでしょうか。

【利子所得等以外の所得】
・雑所得T
 営利を目的とする継続的行為から生じた所得(=業務に係る所得)
 労務その他の役務の対価としての性質を有する所得
 資産の譲渡の対価としての性質を有する所得
・一時所得
 一時の所得
・雑所得U
 公的年金等に係る所得
 その他いずれにも該当しない所得

 法35条の書きぶりだと、一番最後の「いずれにも該当しない所得」だけが雑所得であるかのように誤解してしまいます。が、法34条の規律をあわせて考えると、上記のような編成になっていることが理解できるかと思います。

 なお、「公的年金等」は、要件124は満たすが3を満たさない、ということで雑所得Uに流れてくることになるはずです。
 本来であれば、「年金所得」という独立のカテゴリーがあってもおかしくないのですが、おそらく所得分類を増やしたくない、という理由で、雑所得に押し込められているのでしょう。


 完全なる邪推ですが。

 「包括的所得概念」を採用したことの宣言的効果を狙って、どうしても、法35条のように「他の所得類型のどれにも該当しなくても、必ず課税するぞ」という表現にしたかったのではないか、と思われます。

 法34条の要件2,4が果たすべき機能を素直に表現するならば、「雑所得以外の所得」と書くべきところです。が、これだと「包括的所得概念」宣言規定たる法35条との間で無限ループが生じてしまいます。

 それゆえ、要件2、4のように、正面から「雑所得」という用語を使わない書き方をせざるを得なかったのではないかと。

 もちろん、このような理解、実際の沿革とは異なるでしょう。
 が、現行法における一時所得/雑所得の関係につき、条文の書きぶりと実際の中身を整合的に説明しようと思ったら、このような説明をするしかないんじゃないですかね。

 そもそも、一時所得に課税していることも、現行法が「包括的所得概念」を採用していることを正当化する根拠となるのであって。
 無理に雑所得だけを最後尾に配置する必要はなく。一時所得・雑所得とが相まって、他の所得からこぼれ落ちる所得を拾い上げている、と理解すればいいと思います。


 ということで、「一時所得がキモい」と感じたのは、法35条の雑所得を最終的なバスケットカテゴリーとして記述しようとしたしわ寄せで、法34条を不自然な書き方にせざるをえなかった、ということかと思います。

 一時所得は被害者であるにもかかわらず、「キモい」呼ばわりしてしまい、申し訳ありませんでした。


 ちなみに、「一時所得にとっては消極要件なのに雑所得にとっては積極要件」など、税法世界においては、積極/消極といった表裏、あるいは納税者にとっての有利/不利は、状況によってひっくり返ることがしばしばあります。

 にも関わらず、「課税要件事実論」を展開されている方々は、こういったことにまるで無頓着。ただ単に「民事要件事実論」を横流しすればすむ、と思っているようなフシがあるように、私には感じられるところです。
posted by ウロ at 00:00| Comment(0) | 所得税法