ということで、買手側を軸として、インボイス制度の荒ぶりっぷりを見ていきたいと思います。
インボイス百景(その1) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編62)
ただ、今回検討する「買手:消費者」と「買手:免税事業者」については、特におかしなことは起こりません。
◯買手:消費者の場合
消費者が買手となる場合は、次の通りとなります。
売手 買手
1 消費者− 消費者−
2 免税事業者× 消費者−
3 課税(本則)適格,INV有◯ 消費者−
4 課税(本則)適格,INV無◯ 消費者−
5 課税(本則)非適格◯ 消費者−
6 課税(簡易)適格,INV有△ 消費者−
7 課税(簡易)適格,INV無△ 消費者−
8 課税(簡易)非適格△ 消費者−
この一覧の意味は、3であれば、本則課税の適格者がインボイスを発行した場合、買手:消費者は仕入控除はできない(‐)、売手:課税事業者は売上に課税される(◯)、ということを意味しています。
売手:簡易(6〜8)が△となっているのは、課税はされるものの、消費者からもらった消費税をそのまま納税するわけではない、ということを意味しています。
買手:
消費者が消費税を負担するという建前からは、買手:消費者が仕入控除できないのは当然です。
売手1
消費者同士なら事業取引とは無関係なので、消費税法は関わってきません。
売手2
インボイスが導入されても、免税事業者制度があるかぎり、免税事業者が課税資産の譲渡をしておきながら納税義務を負わないという点は残ります。
売手3〜5
適格者かどうか、インボイスを発行するかどうかにかかわらず、課税資産の譲渡をした以上は問答無用で課税されます。
売手6〜8
インボイスが導入されても、簡易課税制度があるかぎり、課税事業者が課税資産の譲渡をしておきながら消費税をそのまま納税しなくてよいという点は残ります。
◯買主:免税事業者の場合
売手 買手
1 消費者− 免税事業者×
2 免税事業者× 免税事業者×
3 課税(本則)適格,INV有◯ 免税事業者×
4 課税(本則)適格,INV無◯ 免税事業者×
5 課税(本則)非適格◯ 免税事業者×
6 課税(簡易)適格,INV有△ 免税事業者×
7 課税(簡易)適格,INV無△ 免税事業者×
8 課税(簡易)非適格△ 免税事業者×
買手:
免税事業者が買主となる場合、納税義務がないのと同時に仕入税額控除もできません。
ただ、理論的に当然ということではなく、30条1項で免税事業者が仕入税額控除できる事業者から除外されていることによるものです。
売手:
お気づきかどうか、売手側の◯△×‐は、消費者が買主の場合と全く同じです。
ここから、問答無用の売上課税ルールは、仕入控除ルールを気にすることなく作動していることがお分かりになるかと思います。仕入側にあわせて売上課税ルールを変える、などということはないわけです。
次回も買手ごとに検討をしていきますが、売手側の◯△×‐は、誰が買主であっても同じ結論になっています。
ここで区切って、次回は、買手が課税事業者(本則)、課税事業者(簡易)、課税事業者(非課税売上)の場合を検討します。
2025年07月07日
インボイス百景(その2) 〜消費税法の理論構造(種蒔き編63)
posted by ウロ at 11:43| Comment(0)
| 消費税法