特に今回の改正のメインどころなんで。
T巻906頁、U巻864頁という飛び抜けたボリュームですし。
潮見佳男「新債権総論1(法律学の森)」(信山社2017)
潮見佳男「新債権総論2(法律学の森)」(信山社2017)
本題とは外れますが、信山社の「法律学の森」ってシリーズ、なかなか素敵なラインナップですし、結構長く続いてますよね。この信山社、石田穣先生の体系書も出されてる出版社です。
法律書の出版社、ここ最近でもなくなっているところがいくつかあります。
ので、硬派な体系書に力をいれて売れ筋(といっても法律書)をほとんど出さない姿勢は、積極的に応援していきたいところです。
石田穣『民法総則』(悠々社1992)(信山社2014)
本題に戻ります。
民法改正の解説本はすでに何冊も出回っていますし、これからも沢山出回るはずですが、しばらくは公式見解に乗っかった内容がほとんどでしょうから、どれを読んでもあんまし変わらないと思います。
それに対して潮見先生のこの本の場合、改正過程に関わった学者さんでもあるので一応改正法の立法趣旨を尊重しながらも、妥協によってできあがった改正法の一貫してしない箇所の指摘をしていたりと、内在的な批判を展開していたりもします。
なので、現在出回っている、公式見解の上辺だけをなぞったような解説本では理解しにくいところも、きちんと説明しているので、改正法の内在的理解がすすむと思います。
とはいえさすがにボリューム多いですよね。
はしがきには次のような記述があります(信山社の試し読み)。
「今回の改正が市民にとってわかりやすい法典への改正というよりは、社会の現代化に合わせたプロ仕様の改正という面を有している」
と、民法改正を語るほとんどの人が、表向きは「国民一般にわかりやすい民法」をめざしたとか言っている中、極めて真っ当な評価をぶっちゃけているあたり、とても好感がもてます。
たしかに法案提出の『理由』には、「社会・経済の変化への対応」だけが書かれていて、「国民一般にわかりやすい民法」のほうは書かれていないんですよね。
なぜか法務省作成の『改正法の概要』や『Q&A』にはちゃっかり両方書かれているんですけど。
法務省:民法の一部を改正する法律案
当然のことながら、まだT巻の途中までしか辿り着いていないので、中身の評価はできません。
ちなみに、改正法全体を概観するには、さしあたり同じ潮見先生の以下の本でいいと思います。
そのうち決定版的な解説書もでてくるでしょうし。
潮見佳男「民法(債権関係)改正法の概要」(きんざい2017)
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