2018年01月18日

弁護士事務所と税理士事務所(似ていない)

 弁護士事務所と税理士事務所、どちらの経験もあるんで、これからその違いみたいなのを書いていこうかと思います。とはいえ自分の経験の範囲内なので、大規模事務所とか弁護士法人・税理士法人の話は省きます。

 まずは、弁護士と税理士の事務所形態とか勤務形態などを比較してみます。もちろん色んなバリエーションありますので、あくまで1パターンということでご理解いただければ。

○弁護士事務所

・1人事務所

 まあ普通にありますよね。

・共同事務所

 それぞれ独立した複数の弁護士が一緒に事務所をやる形態。パートナー、ていわれるやつですね(横の関係)。
 弁護士が複数いたほうが事務所大きくみせられるとか、事務所経費を分担できるとか、そういうメリットがあります。
 仕事の請け方については、完全に別々に受任する、共同で受任する、契約上は共同受任だが実質は単独で動く場合、などがあるかと思います。

 弁護士が複数いても、ボス弁とイソ弁複数、というパターン(縦の関係)もありますので、その場合はここでいう共同事務所とは違います。まあ、表向き横の関係でも、実態は縦の関係だったりすることもありますが。

・イソ弁 (居候)

 1人事務所なり共同事務所なりで、そこの弁護士に雇用されている弁護士の俗称。シャレオツにアソシエイトとも言います。で、雇っているほうを「ボス弁」とかいう。
 雇用とはいいましたが、雇用契約書とか就業規則とか整備されてないこともあり。残業代何それ?みたいな。
 事務所とは別に単独で仕事請けられるかどうかは、ボス弁とのお約束次第。

・ノキ弁 (軒)

 独立費用がないとか、雇ってもらえる事務所がない場合に、既存事務所を間借りする弁護士の俗称。
 あくまで間借りしてるだけで、その事務所に所属しているわけではないです。

・事務員

 弁護士事務所に雇用されて、弁護士業務以外の仕事をする人。弁護士業務以外でどこまでやってもらうかは、事務所によりけり。
 とはいえ、弁護士業務は弁護士しかやっては駄目ってことになっているので、あくまで弁護士業務以外のことをやる、てことになっています。

 ということで、しばしば問題としてあげられるのが、お客さんが事務所に連絡してもなかなか弁護士本人と話しができなくって、いつも事務員がでてくる、みたいな事案とか。弁護士が事務員を監督してさえいればいいってことではなく、弁護士が直接対応しなさい、と。

 「パラリーガル」という言葉があって、単なる事務作業でなくって、ある程度の法的知識を備えてそれを活かした仕事をする人、のことを言ってるんだと思いますが、そうは言っても直接顧客との打合せやら相手方との交渉をすることはできません。


 こういう弁護士事務所の知識・経験を前提に、だいたい同じような感じだろうと思って税理士事務所に入ったんですが、だいぶ違ってました。

○税理士事務所

・1人事務所

 制度上「開業税理士」と呼ばれます。「ボス弁」のような俗称ではなく、税理士法基本通達にそう書いてあります。
 以下述べるように、税理士事務所の場合、「1事務所1税理士」が大原則になってるようです。

・共同事務所 (できない)

 独立した複数の税理士が一緒に事務所をやる、てのはできません。ボスはあくまで1人だけ。
 一つの事務所の中に複数税理士置きたい場合は、次の所属税理士制度を利用することになります。

 なので、個人の税理士事務所なのに「○○パートナーズ会計事務所」とか名乗っていたとしても、少なくとも税理士事務所内には税理士のパートナーは制度上存在しえないことになります。

・所属税理士

 開業税理士の補助者として1人事務所に勤務しつつ、ボスに承諾もらえば自分の名前でもその事務所で税理士業務ができる、という何ともアンビバレントな立場の税理士。こちらも「イソ弁」のような俗称ではなく、税理士法施行規則にそう書いてあります。
 イソ弁ができる仕事はあくまでボス弁とのお約束次第ですが、こちらは公式の制度で、がっちり仕組みが決められています。

 で、税理士として登録できるのは、開業税理士か所属税理士としてだけなので、「ノキ弁」のような既存の税理士事務所に間借りして、みたいな形態は、税理士の場合はできないんじゃないかと。
 仮に、同じフロアでやるにしても、自分の事務所としての機能をひととおり構える必要があるわけで。

・税理士有資格者

 所属税理士制度がそんな微妙な感じなので、税理士試験合格していつでも税理士登録できるけど独立はしない、という人は、立場上は普通の職員として勤務してたりします。
 他の職員との違いを表現するために、こういう俗称が存在します。登録してないけど、試験は合格してるんだぞと。

・税理士補助

 税理士事務所の採用情報みると、業務内容に「税理士補助」て書いてあることが多いと思います。
 これ、税理士が「指導・監督」していれば、普通の職員でも税理士業務の補助(あくまで補助!という建付)をさせていいってことになっているためです。

 で、実際どうかというと、お客さんのところへの訪問とか税務相談とかを普通の職員が直接行っていて、税理士は年1回職員が作った申告書をチェックするだけ、みたいなことも。もちろん、これで適正な指導・監督になっているのか、という問題はありますが。

 これだけきくとなんかゆるそうな制度かと思いきや、これを職員じゃなく外注に出したりするのはアウトです。同じように「指導・監督」してても、内部の職員か外部の人間かで違うと。

・・・

 私が税理士事務所に入っていちばん驚いたのは、この、ただの職員に税理士業務やらせちゃう、という部分ですね。税務調査でも、3日間あったら最初と最後の30分しか出てこないとか。弁護士が第1回期日と判決言渡日にしか出てこず、あとは事務員に任せちゃう、なんてことはさすがに有り得ないので(というかできない)。
 まあ、税理士1人しかいないのに顧問先が100件200件とかあったら、どう考えても全社内容把握なんかできないですよね。

 税理士有資格者という言葉があるのに弁護士有資格者という言葉がないのは、税理士の場合、登録してなくっても税理士事務所に勤務してれば実質税理士と同じ仕事ができちゃうので、必ずしも登録する必要性がないのに対して、弁護士の場合は、登録してないとできる業務に制限があるから登録せざるを得ない、という違いがあるからじゃないかと思います。
posted by ウロ at 15:17| Comment(0) | 弁護士と税理士
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。