2018年03月13日

人類は、差異を産み育むことでマニアとなる。 〜法律書マニアクス全開

「マニア」というのは、その対象となる分野の中で、普通の人が意識することもない差異を見出しその違いを嗜む人種、ではないかと思っています。

 普通の人にとっては「鉄道」という一括りのものを、○○鉄、○○鉄、とジャンルを分け、そしてさらに、その中でも何が好きかで細分化されていく、みたいな。

 私がマニアクスを自称している「法律書」についても、なんで同じような本買ってるの?という疑問をもたれたりするので、その違いを類型別(言い訳別)に解析してみます(便宜的にグレード付けしてみました)。

1 新版がでたので(法改正・新判例反映型) beginner

 ・山下 友信/神田 秀樹 金融商品取引法概説 第2版(有斐閣2017)

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 法律書の場合、法改正やら新判例やらが出ると内容が古くなってきますので、それを反映した「新版」が出ることになります。

 この場合に買い換えるのは、まあ普通の行動です。読み終わらないうちに新しい版がでると悲しくなりますが。



2 同じジャンルだけど著者が違うので intermediate

 ・林幹人 刑法総論 第2版 (東京大学出版会 2008)
 ・山口厚 刑法総論 第3版 (有斐閣 2016)

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 たとえば、同じ『刑法総論』の教科書でも、著者違いで何冊か買ったりすることがあります。

 司法試験受験生のときには、基本書は一冊に絞るべきで何冊も買うやつは受からない、とか言われていましたが(そもそも学者本が不要、という風潮も)、ここではあくまで「マニア道」の話し。

 同じジャンルでも、書く人によって自分にとっての理解しやすさが違ったりするので、色んな本を読んでみるのもいいと思うのです。

 皆さんだって、同じブル9でも、指揮者違い・オケ違い・ホール違い・演奏日違い・レコード会社違いで、何枚もCDお持ちですよね。

【極々一部の例】
カイルベルト/ブルックナー:交響曲第9番
カール・シューリヒト&ウィーン・フィル/ブルックナー: 交響曲第9番



3 同じジャンルで同じ著者だけど対象読者が違うので intermediate

 ・井田良 入門刑法学・総論 第2版 (有斐閣 2018)
 ・井田良 講義刑法学・総論 第2版 (有斐閣 2018)
 ・井田良 刑法総論の理論構造 (成文堂 2005)

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 3冊とも井田良先生の『刑法総論』の本ですが、対象読者が違っています(初級・中級・上級)。

 ある程度勉強が進んでいても、あえて初学者向けの本を読むことがあります。というのも、頭のいい先生が初学者向けに書いた本てとても理解しやすくて、一応理解しているつもりだったけど実はちゃんと理解できていなかったことが分かったりすることがあるからです。

 中には対象読者が別なはずなのに、自分の他の本のコピペで済ましている不埒な輩もいたりするので、注意は必要ですが。



4 弟子が改訂したけども advanced

 ・四宮和夫/能見善久 民法総則 第9版 (弘文堂 2018)
 ・四宮和夫 民法総則 弘文堂 第4版補正版 (弘文堂 1996)
 ・芦部信喜/高橋和之 憲法 第7版 (岩波書店 2019)

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 名著だと、著者がお年になったり亡くなったりした後も、その弟子の方が改訂し続けることがあります。

 が、元の本が名著であればあるほど、弟子が本文に手を加えることに異論が出たりします。

 この四宮=能見『民法総則』、私が中身をどうこういうつもりはありませんが、能見先生が全面的に手を加える前の「第4版補正版」も並行してオンデマンド版で出したりしてるのも、何かを示唆しているような。

 私自身も写真のとおり「第4版補正版」を手元に残していたりして。

 さらに突き詰めると、補正版も補正箇所は四宮先生ご自身によるものではないようなので、純粋な四宮先生単著である「第4版」が欲しかったり。

 ちなみに、芦部信喜先生の『憲法』は、高橋和之先生が改訂し続けていますが、こちらは本文には手を加えず新判例を註で追加してるだけだそうで。こういう場合は安心して旧版とさよならすることができます。

 まあ、憲法というのが(いまのところ)法改正が無いおかげで、そういう改訂の仕方で済んでいるのかもしれませんが。



5 新版がでたので(著者改説嗜み型) advanced

 ・山口厚 刑法総論 第3版(有斐閣 2016)
 ・山口厚 刑法総論 第2版(有斐閣 2007)
 ・山口厚 刑法総論 (有斐閣 2001)
 ・山口厚 問題探究 刑法総論 (有斐閣1998)

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 1と外形的には全く同じ行動ですが、こちらはちょっとアレです。

 普通、新版が出た場合には、古い版は使えなくなるので売るか捨てるかしてしまうのですが、稀に、版ごとの著者の改説を嗜む、という貴族の遊びをすることがあります。

 たとえば、山口厚先生の『刑法総論』というのが第3版まで出てるんですが、論点本である『問題探求刑法総論』を含めて順に読んでいくと、当初はゴリゴリ理論重視の見解だったのが、徐々に判例寄りの規範を取り入れるようになっていって、そしてついに最高裁判事になられる、というシンデレラストーリー(?)を味わうとか。



6 新装版がでたので advanced

 ・白井駿 新装版 白井教授の刑事訴訟法講義(白順社 2004)

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 新装版て、基本的に装丁が新しくなっただけで、中身が変わることってほとんどないです。

 白井先生のこの本は、統計データが新しくなったのと新装版のあとがきが追加されたくらい。それでも買ってしまったわけです。



7 オンデマンド版がでたので advanced

 ・林屋 礼二 新民事訴訟法概要 第2版 (有斐閣 2004)
 ・林屋 礼二 新民事訴訟法概要 第2版【オンデマンド版】(有斐閣 2004)

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 法律書の場合、名著でも平気で売切・絶版とかになったりします。そう古い本じゃなくても。

 一昔前は、古本屋で高値がついてしまって買えなかったりしたんですが、オンデマンド版というのが普及するようになって、多少は手に入りやすくなりました。

 そうはいっても、オンデマンド版自体も当時の値段よりは高くなってしまうんですが。

 で、古本屋で運良くオリジナルを安く手に入れたとしても、安いってことは状態があまりよろしくないってことなので、愛着が持ちにくいわけです(赤鉛筆、青鉛筆の書き込み、線引きをよく見かける)。

 そんなときにオンデマンド版が出てると、つい買ってしまうことがあります。

 とはいえ、林屋先生のこの本は当時新刊で買ったやつなので、この理由では説明が付きません。もちろん当時の自分自身の書き込み・線引きが黒歴史感あって嫌だ、というパターンもありえますが、この本に関してはそういうわけでもありません。

 なぜ買ったんでしょう?



8 同じですけど何か? maniacs

 ・奥田昌道 債権総論 増補版 (悠々社 1992)
 ・奥田昌道 債権総論 増補版 (悠々社 1992)

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 はい、同じです。

 ここまでは、似たような本でも何かしら違うんですよ、と、どうにか差異を見出してきましたが、ここに至ってついに全く同じ本、爆誕。

 や、さすがに両方とも定価で買うってわけではなく、持ってる本なんだけど名著が古本屋でお安く売ってるのを見かけてしまってなんか可愛そう、という感じで買うわけです。

 これこれと同じノリですね。

【事務所メンバー紹介(寂しくはない)】
押収品
私たちのファームに新しいクルーがジョインしてくれました!!!!!!

 事務所用と自宅用、とか、あるいは自炊用にするかどうか。

posted by ウロ at 09:34| Comment(0) | 法律書マニアクス
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