2018年03月28日

税務における事前判断と事後判断 〜所得拡大促進税制の適否判定(また改正するので)

※改正ふまえて、記述を追加・修正しました
 と、このあと、所得拡大促進税制について、連載もの風にいくつか記事書いてます。

【措置法イジり(所得拡大促進税制編)】
 武器としての所得拡大促進税制 〜労働者にとっての。
 ここがヘンだよ所得拡大促進税制 〜委任命令におけるゆらぎとひずみ
 さらば所得拡大促進税制(Arrivederci) 〜評判良ければ続くやつ


 「所得拡大促進税制」、今までもあれこれ改正されてましたが、平成30年4月1日開始事業年度以降からのやつ、だいぶ変わるようで。

経済産業省関係 平成30年度税制改正について(29頁)

 まだ成立してないんですが(年度末までにしますよね?)、税制改正大綱ベースで試算用のエクセルシート作ってて気になったことだけ。成立したら見直します。
(ちゃんとギリギリで成立したので、以下、追加修正加えてます。)


 1「基準年度」との比較がなくなる。

 今までは、いつ適用する場合であっても基準年度は特定の年度に固定されてました。
 ので、基準年度の次年度にごっそり人件費削減すると、その後頑張って人増やしてもなかなか要件を満たせない、ということがありました。

  ・基準年度 10000 (ここで固定)
  ・次年度   2000 ←激しくリストラ
  ・前年度   4000 ←頑張る
  ・適用年度 10000 ←すごい頑張る。
            でも、基準年度+3%になってないので駄目

 改正後は前年度⇔適用年度の比較で判定するので、そういう制約はなくなりますね。

  ・前年度   4000 ←頑張る
  ・適用年度 10000 ←すごい頑張る。

 2「継続雇用者」の定義がかわる。

 今までは、前年度のどこかと適用年度のどこかで給与支給された人が継続雇用者となってました(一般被保険者とか継続雇用制度はおいといて)。

 改正後は適用年度と前年度の全期間の月分の給与支給された人が継続雇用者となります。通常であれば、24ヶ月間分支給された人、てことになります。

 継続雇用者要件の趣旨は、新しく人を増やしてトータルの人件費を増やしても、前からいる人に対する人件費を下げたら駄目だよ、ということなんですが、前より集計自体は単純。
 が、問題は、継続雇用者が誰かということが、今までは適用年度の初月の段階で特定できてたのが、改正後だと適用年度の決算月まで待たないと確定しないということです。

 もちろん今までも、前年度で辞めた人が適用年度で復帰した場合に継続雇用者に入れ直す必要はありましたけど、この場合はその人だけ加算すればいいわけで。
 ところが、改正後は、適用年度の決算月まで待たないと全員確定しないことになるんじゃないかと。


 具体例で考えてみます。

  ・決算月  12月
  ・適用年度 Hx2.12
  ・給与   当月末〆当月末払(単純化のため)

1 改正前
  ・前年度  1ヶ月でも支給あり
  ・適用年度 Hx2.1月1日以降勤務してればHx2.1月に支給あり
 ⇒
  継続雇用者に該当する、てことがHx2.1月1日時点でわかります。

2 改正後
  ・前年度  Hx1.1月〜12月まで全て支給あり
  ・適用年度 Hx2.1月〜11月まで支給あり
        Hx2.12月1日以降勤務してればHx2.12月に支給あり
 ⇒
  継続雇用者に該当するかどうかは、Hx2.12月1日まで待たないと分かりません。


 もし、前年12ヶ月間支給受けた人の中に給与上げた人と下げた人がいて、上げた人ばかり集中的に辞めたりすると、

  前年度:継続雇用者給与等支給額(下げる前)×101.5%
 >適用年度:継続雇用者給与等支給額(下げた後)

となって、要件満たさない、なんてことになるかもしれず、それはまあ仕方ないにしても、そのことが辞めるまで予測しにくいという。
 適用受ける気満々でいたら、突然受けられなくなることも。

 以下、このことを単純例で検証してみます。

  ・前年度  Aさん 50×12ヶ月 +Bさん 50×12ヶ月 =1200
  ・適用年度 Aさん 80×11ヶ月 +Bさん 30×12ヶ月 =1240

《Aさん昇給、Bさん減給、AさんHX2.11月末で辞めた場合(当月末〆当月末払とする)》

1 改正前

  ・比較平均給与等支給額 1200÷24人=50
  ・平均給与等支給額 1240÷23人=53.9

   ⇒比較平均給与等支給額<平均給与等支給額

 なので要件満たす。

2 改正後

  ・前年度  継続雇用者給与等支給額 600
  ・適用年度 継続雇用者給与等支給額 360

   ⇒前年度:継続雇用者給与等支給額×101.5%>適用年度:継続雇用者給与等支給額

  となって要件満たさない。

 もしAさんが12月末までいてくれたら、

  ・前年度  継続雇用者給与等支給額 1200
  ・適用年度 継続雇用者給与等支給額 1240

   ⇒前年度:継続雇用者給与等支給額×101.5%<適用年度:継続雇用者給与等支給額

 となって要件満たしてたわけで、Hx2.12月分支給が確定するまでそれが分からないってことになるのではないかと。


 この「継続雇用者」の内容変更について、「集計楽になったぜ、いえーい!」とか言っている人がいるの、ちょっと信じられない。

 確かに、決算締まってからおもむろに集計しだす系の人なら、そういえるのかもしれません。
 が、毎月の支給実績みながらあといくら出せば適用受けられるか、て逐一試算している人間からすると、継続の人がやめる都度さかのぼって計算しなおすの、「賽の河原の石積み感」があってきついはず。

 おもむろ系の人にしたって、エクセルで集計してるなら、拾い出しの条件式を変えるだけの話なので、別に大して楽になるわけでもない気もしますし。
posted by ウロ at 19:46| Comment(0) | 法人税法
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。