※以下、初版当時の記事になります。
潮見佳男「民法(全) 第3版」(有斐閣 2022)
750頁ほどで民法全体をカバーした本。
750頁というとボリューミーに感じるかもしれませんが、民法って、
民法総則
物権法
担保物権法
債権総論
契約総論
契約各論
事務管理・不当利得・不法行為
親族法
相続法
とジャンル分けされてて、
同じく潮見先生の書いた「新債権総論1・2(法律学の森)」(信山社 2017)だと、債権総論と契約総論だけで1770頁もあったりするので、なかなかの圧縮ぶりがイメージできるのではないかと。
この本で対応する箇所は140頁程度。
実際、余計な記述がないので、民法を一通り勉強した人が知識をすっきり整理するのによさそうです。
逆に言うと、初学者がいきなりこの本読んで民法を「理解」しようとするのは、無茶だと思います。
○
この本、改訂前は『入門民法(全)』て名乗っていたんですが、全然入門感なかったです。
ので、タイトル変更は正解(偉そうに)。
潮見佳男「入門民法(全)」(有斐閣 2007)
○
この本の厄介なのが、H29民法改正で改正された部分については、当然のように改正後の規定だけで書かれていることです。
まだ施行されてないししばらくは経過措置で混在するので、併記したほうがいいと思うんですけどそういう配慮が無くって。
改訂前の『入門民法(全)』も買ってね、てことですか。
経過措置って、学者本だと疎かにされがちですけど、実務的には超重要です。
せっかくだから、民法で経過措置ルールを学ぶいい機会だと思うんですけど。
あと、改正されてない部分は判例・通説ベースで書いてるんですが、改正された部分については、潮見先生の理解するところの改正法解釈をベースに解説されているんですよね。
この本のコンセプトからすれば、もう少し公式見解(と言ってよいかどうか)寄りに記述したほうがいい気がしますけど。
○
ので、この本を読む意味がある人って、
・一通り民法の知識はもっている
・普通の改正法の解説書を読んでいる
人で、間違い探し的に改正法がどこに紛れ込んでいるかを見つけるとか、改正法が民法体系の中にどんな感じで溶け込んでいるのか確認したいとか、改正されたばかりでも民法学者がどんな感じで解釈論を展開していくのかを知りたいとか、そんな読み方をしたい人向けなんじゃないかと。
出版社側の売出し方に反して、まさしく「法律書マニアクス」ジャンルに入れておくに相応しい(全力で褒めている)。
2018年04月06日
潮見佳男「民法(全) 第3版」(有斐閣2022)
posted by ウロ at 10:38| Comment(0)
| 法律書マニアクス
この記事へのコメント
コメントを書く