2018年05月09日

あえて言おう!カスであると!(被用者・応募者側からみたみなし残業代)

 ここで使ってしまった総帥のセリフ、もったいない。たぶん、かっこ内変えてまた使うと思います。

 自分の事務所のお客さん、当然雇用者(使用者)側がメインですけど、あえて言おう!みなし残業代、カスであると!
 以下、税理士事務所のお仕事を想定しながら書いてますので、他業種にはそのまま当てはまらないかもしれませんが(予防線)。


 固定残業代、かなり定着してきたんですかね。昔に「年俸だから残業代払わなくていい」なんて超理論唱えてた事務所がそのままスライドしてきているイメージ(個人の感想です)。

 私がたまに覗く税理士事務所の求人サイトの募集条件をみると(別にその気はないです)、一応労働基準法に気を使ってでしょう、

 A 月給200,000円(みなし残業代含む)
 B 月給200,000円(みなし残業代45時間含む)

みたいな、おもいっきりダメなやつはさすがに見かけなくって、

 C 月給200,000円(みなし残業代45時間51,000円含む)

と、一応逆算できるようになっている表記になっていますね。
 まあ、逆算しなきゃ分からないようになっている時点で、額面で釣る気満々なんでしょうが。

 試しにCを逆算してみると、

1 割増(25%)前の残業代を出す(全部法定外とする)
  51,000円÷100/125=40,800円

2 時給を出す
  40,800円÷45時間=907円

3 基本給を出す
  200,000円−51,000円=149,000円

4 勤務時間を出す
  149,000円÷907円=164時間

5 勤務日数を出す(1日8時間とする)
  164時間÷8時間=20.5日

て感じの勤務条件だということが分かるわけです。

 もし額面同じで残業代別だったとすると、時給は、

  200,000円÷164時間=1,219円

となるわけで、残業代込の907円とはだいぶ差が出ますね。最低賃金ギリギリを攻めつつ、うっかりみなし残業時間超えちゃっても、単価低めになるようにしてるってことですね。

 ちなみに、残業代別で45時間残業した場合の月給は、

  200,000円+1,219円×45時間=254,855円

と、込みで200,000円ポッキリとはこれだけ差が出るわけです。



 そもそも、みなし残業代をとったとしても、月ごとの時給計算や残業時間の管理はしないといけないわけで、勤怠管理が楽になることにはならないはずです(正しく運用する前提)。
 勤務日数を少ない月にあわせつつ、みなし残業時間を三六協定上限の45時間に設定することで、事実上管理しなくても済むようにしてる、てことなんでしょうけど。

 ただ、応募者側からみると、毎日2時間以上残業がある月があるってことか、と感じるわけで、敬遠される理由にはなりますよね。
 残業少ないとか謳っておきながらなぜかみなし残業代(しかも45時間)を採用している事務所よりも、残業多いけど残業代しっかり払うよ、という事務所のほうが正直でわかりやすいですし。


 いやいや、これはダラダラ残業を撲滅するための手段であって、仕事早い人は早く帰れるんですよ、という事務所もあるんでしょうが、本当にそういった健全な事務所かどうかは、入ってみないと分からないわけで。
 45時間までタダで働かせられる、てことで、早く仕事が終わってもその分仕事増やされたら本末転倒だし。仕事増やされてもダラダラ残業の人と同じお給料しかもらえないし。
 制度の健全性が、所長の仕事の振り方如何に依存してしまっているってことです。

○所長の意識が【みなし残業代=上限まで働かせ放題プラン】という事務所の場合

 ダラダラ残業の人:
  残業しない →20
  だらだら残業する →20

 仕事早い人:
  仕事早く終わる→仕事増やされる! →20
  仕事あえて遅くする →20

 ダラダラ残業の人がたくさん残業するインセンティブを減らすために導入した制度なんだとしても、所長がこういう事務所の場合、仕事早い人も、早く終わらせてしまうと仕事を振られてしまうので、あえて遅くする、ということになりかねません。

 筋金入りのダラダラ残業の人なら、みなし残業時間を突き抜けて残業しないともかぎらないし。

 プロ・ダラダラ残業の人:
  残業しない →20
  だらだら残業する →20
  みなし以上に残業する →20+残業代もらえる!

 そして、ダラダラ残業の人の残業時間を減らそうとして、仕事早い人にさらに仕事が振られるという悲劇も、容易に想像できます。


 みなし残業代て、仕事の中身と労働時間は必ずしも比例しない、なのに労基法上時間ベースで賃金計算がされてしまう、という矛盾を解決するための苦肉の策でもあったとは思うんです。実質裁量労働制のような。

 だとすると、この制度を健全に運用するには、

  『所長が仕事の「質」を正当に評価できる』

ことがキモになるはずです。
 なんか時間かかってるから大変そうだな、とか、すぐ終わってるから楽そうだな、みたく時間でしか評価できないとなると、結局無駄に時間かけたほうがいいんじゃん、てことになってしまいます。
 他事務所との給与水準の違い、てのもありますが、まず大事なのは、同じ事務所内の、他の従業員との比較で正当に評価されているか、だと思います。

 そもそも、みんな仕事が早くて早く帰れる事務所なら、みなし残業代制度とか必要ないわけで。ので、みなし残業代制度とってるってことは、そういう制度をとらないといけないほど、ダラダラ残業の人が在籍しているのでは、と邪推してしまいます。


 以上、あくまで税理士事務所での仕事を想定しながらみなし残業代について書いてみました。

 おそらくですけど、有資格者ではない一般職員に、単純に時間給では換算できないような仕事まで丸投げしてしまっている、という、税理士事務所特有の問題が、ここでの問題に関係してるんじゃないのかと、なんとなく感じています。税理士相手なら「専門業務型裁量労働制」を採用すればいいわけで。
posted by ウロ at 10:05| Comment(0) | 労働法
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