2018年05月30日

パラドキシカル同居 〜或いは税務シュレディンガーの○○

 いくら思考実験とはいえ、お猫様で例えるのはどうかと思うので伏字。
 なお、私の党派的な立場の表明として、犬派か猫派かについては完全中立、きのこ派かたけのこ派かについては完全たけのこ派とさせていただいております。

 パラレルワールドと言っても多重世界線と言ってもいいんですが、同居であると同時に同居でない、という状態を作り出す、さすが租税特別措置法の世界、クリエイティビティですねえという話。

租税特別措置法69条の4
租税特別措置法施行令40条の2

(それぞれ一条づつしかないのに本文貼り付けない理由は、リンク先を閲覧していただければわかります)


 特定居住用宅地の特例、節税に使われまくってるせいで、頻繁に改正が入ってます。平成30年改正でも、しっかり租税回避対策で要件が絞られました。
 一方で緩める側の改正も過去されてきてます(二世帯住宅、老人ホーム、限度面積、併用など)。

 なもので、かつてと比べると要件が相当複雑になってしまいました。もちろん、どストレートな典型例であれば迷うことはないんですが、そう単純なご家庭ばかりじゃないわけで。

 今回は、平成30年改正とかややこしい事案には触れずに、紛らわしい箇所をピンポイントでイジる感じです。

《事例1》
 A 被相続人(配偶者なし)
 B 相続人(子)

 A所有の土地建物(アパートで区分所有なし)
 101にA居住、401にB居住、その余は他人に賃貸

 Bが土地建物を相続し401で居住継続


 この場合、101だけでなく、401も「特定居住用宅地」にあたります。
 一棟の建物で、区分所有してなければ、親族B居住部分も該当すると。典型的な2世帯住宅だけでなく、マンションの別室でも、分譲じゃなきゃOK。しかもBは、生計が別でも大丈夫です。

 そのうち絞りが入りそうですけど、現時点ではそうなってます。

《事例2》
 A 被相続人(配偶者なし)
 B 相続人(子)、C 相続人(子)

 A所有の土地建物(アパートで区分所有なし)
 101にA居住、401にB居住、その余は他人に賃貸

 Cは別の賃貸住宅に住んでいた(過去家屋の所有なし)。
 Cが土地建物を相続し、101に居住。


 いわゆる「家なき子」の事例です。
 適用範囲の判定は《事例1》と同じです。この場合も、101だけでなく401も「特定居住用宅地」に該当します。

 で、「家なき子」の特例使うには、Aの居住部分に、一緒に住んでる法定相続人がいないことが条件になっています。この場合は、BとAは同じアパートだけど別の部屋に住んでるから、要件満たすと。


 事例1、2とも、相続発生前は同じ状態です。

 なんですが、特例の適用範囲を決めるときにはB居住部分もA居住部分と一緒に扱う、他方で、「家なき子」特例の同居人判定のときにはBはAと別居してると扱う、ということが起こっています。

 これ、別に矛盾してるわけじゃなくって、租税特別措置法69条の4&同施行令40条の2で、そのとおり書き分けがされています。


 そのあたり、正確に理解しているのかしていないのかわからないのですが、概要、次のような記述をしてる税理士先生のサイトが結構あったりします。

《事例1のあてはめ》(駄目な説明例)


 BはAと同じ建物に住んでいるので、Aと「同居」しているとみなされます。
 したがって、AB居住部分が適用範囲になります。
   101 A居住
   401 B居住 ←Aと同居とみなす

これだけだと、まあそうなんだいいね、くらいの感じですよね。

《事例2のあてはめ》(駄目な説明例)


 BはAと同じ建物に住んでいるので、Aと「同居」しているとみなされます。
 したがって、AB居住部分が適用範囲になります。
   101 A居住
   401 B居住 ←Aと同居とみなす

 また、Aと「同居」している人はいないので、Cは「家なき子」の要件満たします。
   101 A居住
   401 B居住 ←Aと同居していない

 こうつなげて書かれると、???てなりますよね。

 結論は間違っていません。
 でも、同じ「同居」という言葉を使っているせいで、AとBが「同居している」世界と「同居していない」世界が重なり合った状態が誕生してしまっています。

 そもそも、措置法・施行令では「同居」という用語は使われていないわけで、この用語使うにしても、適用範囲の判定と同居人いない判定のどっちかでしか使わないほうがいいと思うんです。
 たぶん後者で使うのが日常用語に近い。前者でも同居といいたくて仕方ないのであれば、「なんちゃって同居」とでも表現したらどうでしょう。このほうが実情をよく表してる気がします。

101 AB居住 ⇒Bは「同居」してる

101 A居住
401 B居住 ⇒Bは「なんちゃって同居」はしているが「同居」はしていない

 あの別に、全国の「特定居住用宅地の要件を満たすために親と同居せざるをえない皆様」に「なんちゃって同居」を推奨しているわけではなく、税法上そうなっていますよ、という説明ですので、念の為。


 ということで、冒頭で措置法ディスったものの、措置法自体はちゃんと書き分けてるわけで、それを説明しないほうが悪い、冤罪だからきちんと謝罪しろ、と言いくるめられそうです。
 が、そもそも、入り繰り入り繰りで細々と書き込まれても、そんなの説明しきれねえよ、という反論もできるわけで。

 ちなみに、国税庁のタックスアンサーでも、そのへんの違いはわかりにくいです(3(2)の表)。

No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

 取得者のところに「同居」とあるけど、これだけだとアパート・マンションの別部屋でもいい、とは読めないですよね。一応、注3Aに「二世帯住宅」のことが書いてあるけども、これが表の中のどこの要件にかかるものなのかが不明だし。

 タックスアンサー含め、国税庁側の出す情報の傾向として、

・うっかり優遇受けられると勘違いしがちな記述には厳密
・うっかり優遇受けられないと勘違いしがちな記述には寛容

というのがある気がします。まあ、そういうお立場ですし。

 ので、そのへんの読み解きをする、というのが税理士の出番になるんでしょう(のに、誤解の上塗りみたいなサイトがあるのはどうかと)。
 
posted by ウロ at 10:03| Comment(0) | 相続税法
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