いや、終わって欲しいの、このジャーニー。
かれこれ10年以上も理想を追い求めてきたわけですけど、未だに理想形を探しています。
さすがに、私が税法を勉強し始めたときから比べれば、だいぶ充実してきてはいるんです。
たとえば次の本は、教科書・入門書として、あるいは読み物としてかなり面白かったものです。
佐藤英明 スタンダード所得税法 第2版補正2版 (弘文堂2020)
渡辺徹也 スタンダード法人税法 第2版(弘文堂2019)
佐藤英明 プレップ租税法 第3版 (弘文堂2015)
佐藤英明他 租税法演習ノート 第3版 (弘文堂2013)
三木義一他 よくわかる税法入門 第14版 (有斐閣2020) ※
三木義一他 よくわかる法人税法入門 第2版 (有斐閣2015)
増井良啓 租税法入門 第2版 (有斐閣2018)
(※ただし、『よくわかる税法入門』についてはこちらの記事をご参照ください。)
三木義一ほか「よくわかる税法入門 第13版」(有斐閣2019)
【こちらも記事化しました】
渡辺徹也「スタンダード法人税法 第2版」(弘文堂2019)
他方で、いかにも面白そうな外形を纏っていながら、中身はイマイチ感満載、というものもありました。
もちろん、金子宏先生の『租税法』のように、はじめからゴリゴリの体系書感出しといてくれれば、そういうものとして読むのでいいんです。
金子宏 租税法 第23版 (法律学講座双書) (弘文堂2019)
金子宏『租税法 第23版』(弘文堂2019)
○
最近読んだ中では、たとえば、次の本がダントツイマイチでした。
ちょっと見てくださいよ、この宣伝文句。
すごい良さげ本じゃないですか。期待値高まりますよね。
基礎から学べる租税法(出版社のサイト)
確かに、
『1 法人税法上の法人とその区分ー法人税は誰に課されるのか』
みたいな感じで、見出しに必ず『問いかけ』をつけてるのは良かったんですが、褒められる部分はそこぐらい。
肝心の本文の記述が抽象的だし具体例が殆ど無いしで、とても初学者がすんなり理解できるような記述とは思えません。なんですか、最近の初学者様は超頭いいんですか。
『Keyword』とかいって、たとえば「グループ法人税制」について囲みで説明してあるんですけど、これ読んで意味が理解できる人いるんですか。
譲渡損益の実現事由を「譲渡、償却、評価換え、貸倒れ、除却等」とかってだらだら書くぐらいなら、思い切って「譲渡等」と省略して、もっと具体的な記述にすればいいのに。
「受取配当等の益金不算入」の項目の中に「みなし配当」の説明があるんですが、記述がほぼ条文引き写しなのは置いておくにしても、なぜここにでてくるのか、そもそも何でみなすんだよ、て感じで初学者には理解できないですよね。
単純に、条文の並びからすればそのとおりではあるんですけど、「みなし配当」なんて、自己株式の取得とか組織再編とかの資本等取引とセットで説明しないと、意味わかんないはず。
はじめから触れなきゃいいのに。
『差引計算思考』が身につく、とか謳ってるんですけど、びっくりするほど計算例が少ない。
『単なる計算じゃなくって、思考を学んでほしいの!』て言い分かもしれませんが、税法なんてまずは数字で理解できなきゃ思考も何もできないと思うんですけど(念のため、わたしゴリゴリの法学部生でしたが、それでもこう思う)。
全面的にそんな感じなんですが、たとえばということでいうと、
・「相続税の税額計算の仕組み」の図表が、まるまる1頁つかって載ってるんですけど、そこに、具体的な計算例が書かれていない。
遺産税方式と遺産取得税方式(法定相続分課税方式)の違いとか、言葉だけで説明されたってわかんないと思うし。
・消費税で「非課税取引」とされることが必ずしもメリットにはならない、というところは、具体的な数字を使って説明してあるので、ここは理解しやすかったです(医療業界の皆さん聞いてますか)。
他方で、「リバースチャージ方式」については、言葉での説明だけなので、まあなんのこっちゃ、てなりますよね。
こういった抽象的な記述ばかりになってしまうの、善意に理解すると、共著なせいで、ページ数と書くべき項目が先に決められちゃってるせいかもしれませんね。
が、もし私がガチ初学者の時代にこれ読んでたら、やっぱり税法難しすぎ、て敬遠する理由になっていた気がする。
こういう本をお勧めするとしたら、実務から入った人が、自分の知識を学問的に軽く整理するにはいいのかもしれません。抽象的な記述とか計算例の不足とかは、自分の実体験でカバーできるわけだし。
【気になるが未読】
浅妻 章如・ 酒井 貴子「租税法」(日本評論社2020)
2018年06月13日
税法思考が身につく、理想の教科書を求めて 〜終わりなき旅
posted by ウロ at 14:02| Comment(0)
| 租税法の教科書
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