2017年07月24日

石田穣「民法総則」(悠々社1992・信山社2014)

○『法律書マニアクス』て?

 以下、完全に趣味の話しです。
 なので、ブログをお客さんに対する情報提供活動の一環として用いるという観点からすると、まるで無意味なカテゴリとなります。

 通常、本の紹介をするブログであれば、皆さんに役に立つ、読んでもらいたいビジネス書みたいのを紹介するのが王道なんでしょうが、このカテゴリでは、私がただ書きたいから書く、そして読んでもらうことは基本的におすすめしない、という本の紹介記事が続いていく予定です。


 で、本題。

 大学の法学部に入学して以来、なぜか法律学の「体系書」というものが好物になりました。体系書というのは、たとえば民法とか刑法とかの学者さんが、自分の思うところの体系に従った構成で全体を網羅し、各種論点につき詳細に判例・学説の検討、自説の披露をする、というものが典型的なものになります。

 今どきは、ユーザーフレンドリーな「薄い本」とか、判例・実務寄りの本とかが法律書のメインを占めてしまっていたり(判例=攻め、実務=受け、で学説がモブでしょうか)、有力学者がロースクールやら何やらで忙しいのかあまり本格的な体系書が出てこなくなってしまっており、体系書不遇の季節が長らく続いています。

 そんな中でも、少ないながらも素晴らしい体系書が出版されることがありますので、これから少しづつ紹介していければと思います。
 もちろん、私などが学説の評価などするのはおこがましいので、日本酒の記事と同様、のみやすい、後味がすっきりしてる、味がしっかりしてる、程度の私の主観的な感想を書かせて頂きます。
 ただ、「体系書」に絞ってしまうとネタが限られてしまいそうなので、広く「法律書」という括りで進めてみます。


 そして、やっと紹介。

 何よりも最初にどうしても紹介しなければならないのが、石田穣「民法総則」(悠々社1992)です。
 この本は、私が大学1年のときに購入し、それ以降体系書集めに散財するきっかけとなった本です。

石田穣「民法総則」(悠々社1992)

 民法は、大学のカリキュラムでいうと

  民法総則
  物権法(担保物権法含む)
  債権総論
  債権各論(契約総論、契約各論、法定債権)
  親族法
  相続法

と分かれています(大学により編成や順序は異なります。)。

 大学1年生は民法総則からはじめるのですが、扱っている概念が抽象的だったり、まだ学んでいない部分を知らないとちゃんと理解できないところがあったりで、授業がとても理解しにくかったです(私の学力の問題でもあるのですが)。

 そういう場合、通常は「わかりやすい」「薄い」入門書を読むのが正解なんでしょうが、私の場合は、なぜか、できるだけ厚くて詳細に書かれている本のほうが理解できるんじゃなかろうか、と思ってしまい、当時大学の書店で一番ページ数の多かったこの本を購入しました(657頁あります・・・)。

 で、実際、普通の教科書では理由付けもなく結論だけ書かれているようなところも、しっかり言葉を尽くして説明がされていたので、曖昧に理解していた部分がだんだんはっきりとしてきました。
 ただ、多くの点においていわゆる通説的な理解とは異なる異説が多い、ということに、段々気がついていきます。

 なので、学部のテスト向けには、この本で一回理解を深めた上で、頭を通説的な発想に戻す、という大人の対応をすることになりました。
 とはいえ、この本のおかげで、通説を曖昧なまま丸覚えせず、どこに問題があるかを内在的に把握できていたので、展開もしやすかったです。

 司法試験などではさらに、判例・通説をベースに記述を展開しなければならない度合いが強まりますが、やはり一回深く理解した上で判例・通説に戻ってくる、という過程は無駄ではなかったと思います。
 試験対策一般、ということでいうと、合格ラインが70%だからといって70%の理解をしておけばいいのではなく、100%にできるだけ近づくように普段から勉強しておくことが、本番で70%の出力をだすためには必要、ってことだと思います。

 その後、この本は絶版となり、実質的な改訂版が別の出版社から出版されています。
 石田穣「民法総則」(信山社2014)で、これはさらにパワーアップして12,960円で1216頁もあります。

石田穣「民法総則」(信山社2014)

 出版後さっそく購入したものの、比較的時間のあった大学時代と違い、ほかにも読むべき本があったりでなかなか読めずにいます。
 2017年に民法改正があって総則部分にも影響があるので、はやく改訂版をだしてもらって、改正法に対する著者の見解を読んでみたいとも思いつつ、まだ全部読めていないうちに改訂版がでたら悲しいという思いもあったりします。

 まあ、今どきの、「クラウドファンディング、◯◯万円集まったら◯◯頁書きます」というのに比べれば、良心的な気もしますので、この著者の本は、出版される度にお布施感覚で購入するつもりです。

石田穣「物権法」(信山社2008)
石田穣「担保物権法」(信山社2010)
石田穣「債権総論」(信山社2014)
posted by ウロ at 20:07| Comment(0) | 法律書マニアクス
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