2018年09月25日

横田明美「カフェパウゼで法学を―対話で見つける〈学び方〉」(弘文堂2018)

 大学での勉強の仕方がわかる本。



 ビジネス書・実用書などにでてくる学習法・勉強法を、大学生活で出くわすイベントで使える形に仕上げてくれてるので、学生さんにとってお役に立つはずです。

 著者の横田明美先生(ぱうぜ先生)が行政法の先生なので「法学」が題材になってますが、少なくとも文系分野であれば、応用はしやすいと思います(理系はどうなんでしょう?)。

 この手の本にしてはちょっとだけお高めな気がしますが(税込2000円は下回るという勝手なイメージ)、入学直前から進路を決めるまでをカバーしてて、内容も充実してるので、そういう意味ではコスパはいいと思います。
 脚注や参考文献も豊富ですし。

 読み方としては、いきなり全体を読んでもいいんでしょうが、講義を受ける、教授にメールを送る、レポートを書く、試験を受ける、ディベートをする、ゼミに入る、卒論を書く、といったイベントにエンカウントする前に、その都度読んでいく、でもいいと思います。
 こうやって書いたとおり、個々のイベントごとに対処法が書いてあって、とても実践的です。

(勝手な推測ですけど、値段が障壁となって、1年生のうちはこういった副読本を買わず、2年生、3年生と、自己流では解決できない難易度の高いイベントがでてくるようになってから徐々に買い出す、という傾向があるのではないかと邪推。)

 クロスリファレンスもしっかりしてて事項索引もあるので、細切れで読んでも、あれどこに書いてあったっけ、てことが少なくてすみます。

 あと、初学者向けだからといって、安易に本文を「ですます調」にしなかったのはいいなと思いました。
 中身のわかりやすさで勝負してる感じ。

 こういう本は、大学で真面目に勉強したい人だけでなく、遊びの時間を増やしたい、という人こそ読んだほうがいいんじゃないですかね。
 というのも、この本に書かれた学習法使って勉強すれば、かなり無駄な時間をショートカットできるはずなので。

 私自身は真面目な学生さんでしたが、当時この本があれば、充実した大学生活がおくれたのではないかと妄想(こちらとあわせて「過去改竄」ネタがシリーズ化できそう)。


 以下は、気になったところを順不同でいくつか。

1 三色ボールペン法

 教科書を読みやすくする工夫として、色分けするの賛成です。

 あえて補足するとすれば、最初はどこに何色を引くか迷うと思うので、とりあえず1週目は「鉛筆」(あとで消しやすいやつ)でそれっぽいところに線を引いておいて、2周目から色付けしていく、というのが私個人のおすすめ。


「なぜ判例が生まれたかといえば、多くの場合は原告(民事訴訟・行政訴訟)や被告人(刑事訴訟)が頑張ったから、である。」

という記述があるんですが、なぜか民事・行政は訴えた側、刑事は訴えられた側になっている、という形式面はさておき、被告や検察官、そして裁判官だって判例形成に寄与しているはず。

 たとえば、民事でいうと、原告が契約に基づき代金請求してきたことに対し、被告が「公序良俗」違反(民法90条)を主張することで代金請求を拒む、そして裁判官がそれについて判断する、という流れがあって「公序良俗」の中身が充実していくわけですよね。
 ここでは、どちらかというと被告の側が判例形成に寄与しているわけです。

 あるいは、刑事でも、皆さんご存知「電気窃盗」なんて、窃盗罪(現行刑法だと235条に対応)にいう「所有物」は有体物のことだという当時の通念にもかかわらず、電力会社が被害を訴え、検事が公訴提起し、裁判所(大審院)が有罪としたことで、管理可能なものは窃盗罪の対象物だという判例ができあがったわけですよね(しかも、その後、245条の規定ができて立法にも影響を及ぼしている)。

 「多くの場合は」ということかもしれませんが、原告・被告人起点のケースであっても、相手方が真剣に争うことによって規範力高めな(?)判例が出来上がるんじゃないかと思うわけです。
 なので、わざわざ一方当事者だけをあげるのはなんか不自然だなと。

 このところ、井上治典先生の著書を読み返したりしてたせいか、そんなふうに感じました。




 ぱうぜ先生のセリフで「そこで、じゃーん。特別なシートをご用意しました。」と言って、フローシートの説明をしてくれるところがあります。

 じゃーんて、なんか初めてでてきたみたいに言ってるけど、あれ、数ページ前にすでにフローシートでてきたじゃん、と思って読み返してみると、時系列逆にして先取りで書いてますよ的なことがちゃんと書いてありました。
 いやあ、対話式ならなるべく時系列どおり書いてほしいところ。

 や、私の読み方が不注意なだけか。


 イメージしやすくするためでしょうが、インプット・アウトプットの仕方を「ケーキ作り」にたとえて記述しているところがあります。

 こういう喩えって、皆さんどれくらい理解しやすくなるものなんでしょう。

 私の場合は、クッキーやシュークリームを作ったことはあっても、ケーキを作ったことはないので、それなりに頭を置き換えしないと、想像がしにくかったです。
 というか、ケーキ作りをしたことがある人って、どれくらいいるものなんでしょう。今どき必修ですか。

 これ、インプット・アウトプットの仕方を学ぶと同時にケーキづくりも学ぼうぜ、という「二毛作」狙いなら、なるほどさすが、て感じですけど。


 「喩え」つながりでいうと、ジェネラリストとスペシャリストの使い分けを、「ロールプレイングゲーム」でたとえているところがあるんですが、これもどこまで理解してもらえるものなのか。

 ぱうぜ先生はドラクエとFFの特に4〜6あたりが好きとあって、私も同意見なんですが、ぱうぜ先生の喩えはどちらかというとドラクエ寄りで書かれています。

 私はといえば、どちらかというとFF寄りなので、ここの記述を理解するのに、ドラクエの転職システム⇒FFのジョブシステムへの頭の置き換えが必要でした。
 しかも、同じジョブシステムでも作品によって内容が違ってたりするので、何作目と置き換えるかも悩みどころです。FF12なんて、ゾディアックジョブシステムとかいって、同じ作品のリメイク(?)で、ジョブシステムかなりいじってきましたからね(最近のリメイクでもまたいじってる)。

 そして、その上で、FFのジョブシステム⇒ジェネラリスト・スペシャリストへの置き換えをする必要がでてきます。

 ドラクエ⇔FFであれば、まだ転職システムとジョブシステムといった比較的近いシステムだからいいですけど、メガテン(女神転生)好きにとっては仲魔システムと置き換えなきゃいけないわけで、結構大変なはず。

 なお、「法律書マニアクス」というカテゴリは、「真・女神転生3 NOCTURNE マニアクス」に由来しています。



 いっそのこと、RPGの喩えを出すときは、転職システムの原点、ドラクエ3で固定してしまう、ということでよいのではないでしょうか(提案)。

 という感じで、そもそもゲームやったことない人からしたら、私がここで書いたこともなんのこっちゃ、てなると思うんですよね。


 カフェ設定があるのだから、挿絵のコーヒーカップとかをもう少しこだわってほしかった(どうでもいいツッコミ)。


 『対話で学ぶ行政法』(有斐閣2013)をおすすめしてて、私も前々から読みたいと思ってるんですが、出版社で長らく品切れなので、再販するようせっついてほしい。

 なお、Amazonだと、品切本・絶版本でお馴染み「マケプレのクレプラ」(=マーケットプレイスのクレイジープライス。他の例としてこちら)なので、リンク貼りません。


 以上、しょうもないツッコミもしましたが、文系学生さんが有意義な大学生活を送るためには必読だと思います。

〔ここまで判明している当ブログの源流〕
・ もしもシリーズ(もしもアントニオ猪木がコンビニの店員だったら等)
・ 破産から民法がみえる
・ 真・女神転生3 NOCTURNE マニアクス

【追記】
 とか書いてたら、2の点につきぱうぜ先生御本人からご回答をいただいてしまいました。




 どうやって判例ができるのか、ということではなく、裁判やってくの大変だよ、というご趣旨のようでした。

 確かに、行政訴訟や刑事訴訟では、組織的対応ができて権限もある行政や検察を相手に裁判をしなければならない、原告(行政訴訟)や被告人(刑事訴訟)の負担は大きいですよね。

 ただ、民事の場合は、たとえば、一消費者が大企業を訴えることもあれば、大企業が一消費者を訴える、ということもあるので、必ずしも原告弱い⇔被告強いの関係になるとは限らないのではないかなあと。

 そのへんは当然わかった上で圧縮して書いている、ということで、私がブログでお気軽に感想書いているのとはおよそ比べ物にならないほどの苦労があるんですね。
 まあ、折り畳まれた行間を展開できたのはちょっとよかったかも。
posted by ウロ at 11:11| Comment(0) | 法学入門書探訪
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