2018年10月26日

潮見佳男「基本講義 債権各論1 契約法・事務管理・不当利得」(新世社2017)



 潮見佳男 「基本講義 債権各論1 契約法・事務管理・不当利得」(新世社2017)
 潮見佳男 「基本講義 債権各論2 不法行為法」(新世社2017)

 潮見佳男先生による債権各論の教科書。

 なんで、

  1 契約法
  2 事務管理・不当利得・不法行為

ではなく、

  1 契約法・事務管理・不当利得
  2 不法行為法

という切り分け方なのかはよくわかりません(「法」のついてるついてないも)。

 ・事務管理は、委任と対比するため
 ・不当利得は、契約関係の巻き戻しの側面もあるため

ということなんでしょうかね。


 中身のほうは、
 ・制度趣旨の記述が丁寧
 ・具体的でイメージしやすい
 ・要件事実にも配慮されている

と、教科書として充実した内容になっています。


 このブログでも頻繁に紹介しているように、潮見先生の本、よく読んでいるんです。

【書評】潮見佳男『民法(全)第2版』(有斐閣 2019)
【書評】潮見佳男『新債権総論1(法律学の森)』『新債権総論2(法律学の森)』(信山社 2017)





 そうすると、ツッコミをいれたくなる箇所もちらほら。
 今回の本だと、たとえば、拡大損害について論じた次の記述(1の113頁)。

『たとえば、売買された食品を購入した買主が、これを食べたところ食中毒を起こし、長期間入院したという場合のように、物の欠陥が買主の有している権利・利益(生命・身体・財産など)を侵害し、買主に損害を発生させることがあります。このような場合をどのように処理すべきかについては、大別して2つの見方が示されています(私自身は、第2説)。

 第1は、物の契約不適合を理由とする損害賠償責任の成否を検討したうえで、買主の生命・身体・財産等に生じた損害については、契約不適合からの拡大損害と捉え、民法416条の通常損害・特別損害の範囲確定の問題として処理するという見方です(旧法下での学説では、拡大損害については、民法416条2項の特別損害とみるものか多いようです)。

 第2は、給付目的物自体の損害と、生命・身体・財産上の損害とは、その原因となった権利・利益侵害が違うとする見方です。給付目的物自体の損害は、目的物の契約不適合により生じたものであるのに対して、買主の生命・身体・財産上の損害は、売買契約上で売主が買主に対して負っている保護義務の違反により生じたものであるとするのです。この立場からは、給付目的物自体の損害と、生命・身体・財産上の損害は、法的には別系統の問題として処理されます。そして、本章で扱った契約不適合に関する解釈論は、もっぱら前者の損害についてのみ関係するものだということになります。』
(引用ここまで。)

 今回の民法改正では、瑕疵担保責任でいう「瑕疵」という概念を「契約不適合」に置き換え、また、担保責任という概念を徹底的に解体し債務不履行責任に一元化する、ということをしたわけですよね。
 この本の該当する部分でもその方向性が強く打ち出されています。

 ところが、この第2説を読むと、今度は、給付物自体の損害賠償責任と、そうじゃない損害賠償責任とを別系統にしようとしているようです。

 せっかく、担保責任を債務不履行責任に収納したのに、また新しい何かが飛び出そうとしている予感。あくまで債務不履行責任の中の話だ、ということなんでしょうけども。

 もちろん、ここの記述だけからどうこういえるものではないですが、なんとなく「給付物のドグマ」ともいうべき、新しいドグマの胎動を仄かに感じてしまうのです(念のため、私自身はドグマであることが悪い、とは言ってないですからね)。

 それ誤解だから体系書のほうをちゃんと読め、と言われそうですが。

【ドグマイジリといえば】
ドキッ!?ドグマだらけの民法改正
posted by ウロ at 10:42| Comment(0) | 民法
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