2018年11月14日

関俊彦「商法総論総則」(有斐閣2006)

 井田良先生の本を紹介する中で、ちらっと「総論各論」問題に触れました。

井田良「講義刑法学・各論 第2版」(有斐閣2020)
井田良「講義刑法学・総論 第2版」(有斐閣2018)

 個人的に、各論で学んだ個別の議論が、総論でひとつに集約していく感じが好きだったりします。

 が、刑法総論と刑法各論との関係では、あまりそういうカタルシスを感じることがないです。

 というのも、「刑法各論」で議論されていることは、個別の犯罪類型ごとの論点がメインだし。
 他方で、「刑法総論」で議論されていることは、総論といいながら、それぞれの論点は特定の犯罪類型を念頭において議論されることがメインだし。各論の延長線て感じがして、各論からの集約感があまりないんですよね(私の読み込み不足なんでしょうが)。

 ので、刑法総論の総論(『刑法総論総論』)の誕生が、強く望まれる。


 「ザ・総論」とよべる本、私の中ではたとえば次のような本です。

大村敦志「民法総論」(岩波書店2001)
広中俊雄「新版民法綱要 第1巻 総論」(創文社2006)

 そして、今回紹介する関俊彦先生の本も「ザ・総論」な本です。

関俊彦「商法総論総則」(有斐閣2006)

(なお、志波海燕殿、シャア・アズナブル(キャスバルじゃないほう)、イルカ先生などのあの方とは違います。個人的には、星方武侠アウトロースターのフレッド・ロー推し。)

 この本は、商法分野で「総論」を正面から論じている本。
 類書だと、「商法総則」の最初のほうで、数ページ程度記述されて終わってしまうところ。

 たとえばこの本だと15頁。

【書評】近藤光男「商法総則・商行為法 第8版」(有斐閣2019)

 それを100頁ほど使って本格的に論じています。

 カバーする範囲としては、商法・会社法や手形法・小切手法にかぎらず、消費者法や経済法、労働法などの分野も鳥瞰されていて、かなり広い。


 このように「総論」が大きな視点で書かれている一方で、「総則」のほうは極めて丁寧な解釈が展開されています。
 特に、法源である慣習をめぐる、通則法3条(法例2条)、民法92条(+91条)、商法1条に関する解釈論は必読かと。

 残念なのが、「商行為法」がないこと。
 平成29年の民法改正についても取り込んだ上で加筆していただくことを熱望。

 関先生自身の「各論」としては、次の本。

関俊彦「金融手形小切手法 新版」(商事法務2003)
関俊彦「新訂版 会社法概論」(商事法務2009)

 私が「読み物」としてお勧めしている前田庸先生の手形法の本なんて、ボロクソに批判されていたりして、それはそれで読み応えがあります。

前田庸「手形法・小切手法入門」(有斐閣1983)
posted by ウロ at 12:54| Comment(0) | 会社法・商法
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