第4版は実物まだ読んでいませんが、どうやら問題11と12が削除されたようです。
わたしがイジった章がピンポイントで(たまたまでしょう)。
道垣内正人「自分で考えるちょっと違った法学入門 第4版」(有斐閣2019)
まるで続く気はしませんが、「法学入門」系の本を「法律書マニアクス」からカテゴリ分けしていくことにしました。
法学入門書探訪
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前半(問題1〜6)は「自分で考える ちょっと違った」のタイトルどおりの面白めな内容。
たとえば、問題1では、2人(または3人)でどうやってケーキを分けたらいいか、といった問題から紛争解決の仕方を学ぶといったテーマを扱っています。
こういった問題なら、法に関する前提知識なしでも自分なりの見解は持てるはずなので、ちゃんと「自分で考える」ことができると思います。
で、いろいろな解決方法をあげながら、実定法上参考になりそうな制度を紹介していくので、自分の見解と対比しながら、法制度に関する知識も見についていくと。
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他方で、後半(問題7〜12)は、まあ普通、というか初学者には難しいと思います。
たとえば、問題11では、日本の会社がアメリカの会社からアメリカの裁判所で技術侵害の訴訟を提起される、といった問題を扱っています。
この問題から、国際私法や国際民事手続法の仕組みを学んでいくんですが、こういうの、初学者がこれ読んでどれくらい理解できるものなんですかね。
理解するにしても、どうしても受け身にならざるをえず、「自分で考える」にも「ちょっと違った」にもならない気がするんですけど。
ちなみに、問題12では弁護士の増員とか報酬制度の問題を扱っています。
当時、弁護士にも競争原理を!と強く主張されていて、この本もどちらかというと積極的な論調で書かれているんですが、今現在の、司法改革曲がり角感強めな現状を踏まえて、ちゃんと答え合わせをしておいてほしいところです(冒頭に書いたとおり、第4版で項目まるごと削除する、というサイレント回答がなされています)。
といったところで、前半はおすすめ/後半は流れで、といった感じ。
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この本の前半と後半を対比しながら読んでみて、理想の「法学入門」の暫定版はこんな感じ。
1
扱うテーマ・事例は、社会人経験のない学生さんでも自分なりの見解を示せるようなものが望ましい。
見解を示すのに、一定の法的知識を必要とするようなものは相応しくない。
2
その事例の法的結論は、本の中に書いてある法制度のみで判断できるものが望ましい。
判断過程に、実は体系全体の知識が必要だったり、そこまでいかないでも書かれざる前提が含まれていたりするのは相応しくない。
優先順位はかなり下がりますが、「法学入門」についてもなるべく読んでいきたい所存。
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しかし、この表紙の絵の人、狂気を感じる。

見開きにデカデカと「六法全書」て書いてある本みて、「?? ??」とか。
これ、何してるんですか怖い。
まさかですけど、本の表表紙・裏表紙側を開いて読んでるんじゃないですよね。