2019年02月04日

視野を広げるための、国際私法

 民法とか刑法とかの勉強ばかりしているときに、気分転換にいいのが国際私法。
 真面目に勉強している人には失礼な話ですが。

 「国際私法」というのは、たとえば、日本人甲さんとA国人乙さんが結婚する場合にどこの国のルールに従うか、とか、前に道垣内正人先生の入門書を紹介したときにあげた国際特許紛争とか、そういうのを扱っている分野です(道垣内正人先生は国際私法が専門分野)。

道垣内正人「自分で考えるちょっと違った法学入門 第4版」(有斐閣2019)

 「法の適用に関する通則法」という、日本国内の法律の解釈論がメインどころなので、そういう意味では他の法分野と同じといえば同じです。

法の適用に関する通則法(e-Gov)

 が、そもそもどこの国の法律を適用するか、というレベルの話なので、考慮すべき要素が民法とか刑法とかの「実質法」とはだいぶ違ってくるわけです。
 国際私法上の公序とか国際私法上の利益衡量とか、あえて実質法上のそれとは違うことが明示された言葉がでてきますし。

 ので、法律の勉強でありながら、「実質法」とは違った発想が必要になってきます。
 し、各論点ごとに、実質法上の考慮とは混同してはだめ、と諌められることにもなっています(ある論者が他の論者にそういう批判しておきながら、他の論点では自分が混同した主張をしていたりとか、混線具合にクラクラしたりすることも)。

 あと、実質法の勉強をしているときも、たとえば、2017年の民法改正(債権関係)が

 「生命身体侵害の損害賠償請求権の消滅時効、債務不履行と不法行為で同じ期間に揃えてやったぜ、いえーい!」

とかイキっているのに対し、

 「それ、準拠法が不法行為は日本法、債務不履行は外国法とかになったら飛んじゃうよね」

とか、ちょっと違った視点で考えることができたり(さらに「請求権競合」の問題もありますが)。

 ちなみに、実質法と国際私法の関係について、道垣内正人先生の論点本(下の本の総論のほう)では、実質法を「蟻」、国際私法を「鳥」に喩えています。
 わざわざベージの下部に蟻、上部に鳥のイラストまで添えて。
 鳥がすげえ見下ろしている感じの。しかも蟻がやたら小さい。

 この喩え、実質法の学者の皆さんからは猛烈に怒られそうですが、どうなんでしょう。

 しかも、生き物に喩えたせいで、よくよく考えると蟻側がグロテスクなことに。
 虫とか苦手なので、わざわざ書きませんけど、準拠法決定の流れを書いておきますので、心に余裕のある方はちょっと想像してみてください(やめたほうがいい)。

【準拠法決定のプロセス】
 1 当該事案を通則法が定める「単位法律関係」に分解する
 2 それぞれの単位法律関係ごとに指定された「連結点」を確定する
 3 それぞれの連結点が指し示す「準拠法」を特定する
 4 それらをつなぎ合わせた適用結果が「公序」に反する場合は結論を調整する



道垣内正人 ポイント国際私法 総論 第2版 有斐閣2007
道垣内正人 ポイント国際私法 各論 第2版 有斐閣2014


 勉強の仕方として、今では、神前禎先生のわかりやすい「入門書」があるので、入りやすくなってます。
 第1部で通則法について、第2部で国際民事手続法について、で、第3部でそれら知識を具体的な仮想例にあてはめていく、という流れで、とても理解しやすい。



神前禎 プレップ国際私法 弘文堂2015

 ちなみに、この「プレップ」シリーズ、古い本含めて良書揃いです(当ブログは弘文堂の法学書に対して毀誉褒貶が激しい)。

プレップシリーズ(弘文堂)

【毀貶】
後藤巻則「契約法講義」(弘文堂2017)
税法思考が身につく、理想の教科書を求めて 〜終わりなき旅

【誉褒】
【書評】横田 明美「カフェパウゼで法学を―対話で見つける〈学び方〉」(弘文堂2018)
戸松秀典『憲法』(弘文堂 2015)


 で、「教科書」や「演習書」についても良い本が出てきているので学習はしやすくなっています。
 たとえば、



神前禎ほか 国際私法 第3版 (有斐閣アルマ) 有斐閣2012
櫻田 嘉章ほか 演習国際私法 CASE30 有斐閣2016
中西 康ほか 国際私法 第2版 (LEGAL QUEST) 有斐閣2018


 が、ですよ、通則法成立以降、重厚な「体系書」というのが出ていない。
 なんか、大御所が出してくれないと中堅どころも出せない、みたいな呪いでも罹っているんじゃないかと思うくらい。

 極個人的には、石黒一憲先生の本がオススメなんですが、これを体系書といってよいのかどうか。
 形式面でいうと、確かに鬼のような注釈数ですが。



石黒 一憲  国際私法 (新法学ライブラリ) 新世社2007

 が、ガチの体系書は、1989年法例改正よりも前に出版された、こういう本のことをいうわけだし。



石黒 一憲 現代国際私法〈上〉 東京大学出版会1986

【請求権競合論について】
 多層的請求権競合論と、メロンの美味しいところだけいただく感じの。
posted by ウロ at 11:32| Comment(0) | 国際私法
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