潮見佳男「詳解 相続法 第2版」(弘文堂2022)
相続法が改正されまして。
民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)(法務省)
内容が重要なのは当たり前として、実務的に気にしないといけないのが「施行日」。
で、こんな感じ。
1 2019.1.13 相続法A 自筆証書遺言
2 2019.7.1 相続法B 下記以外
3 2020.4.1 相続法C 配偶者居住権
4 2020.7.1 相続法D 遺言保管法
1はもう施行済み。
債権法の改正が3と同じ日なんですね。
3’2020.4.1 債権法
この差し込みっぷりをみて想起されたのが、前に紹介したこの本。
近藤光男「商法総則・商行為法 第8版」(有斐閣2019)
そこでは、先走って債権法改正後の世界だけを描いてしまったため、運送・海商法改正との不整合が生じてしまっていることを指摘しました。
潮見先生のこの本では、例によって4以降の世界を中心に描かれています。
ではありますが、今後、4以前に施行日がくる改正が差し込まれないかぎり、この本がおかくなることにはなりません。
○
問題は、『(全)』のほう(※その後、改訂されましたが記録として残しておきます)。
潮見佳男「民法(全)第3版」(有斐閣2022)
こちらの本では債権法改正後の世界を描いているわけですが、出版時期の関係から当然のことながら、相続法の改正には触れられていません。
ので、施行を○、未施行を×とすると、
(全):債権法○ 相続法ABCD×
となっているわけですが、現実の施行状況を時系列にそって並べると、
〜1 債権法× 相続法ABCD×
1〜2 債権法× 相続法A○、BCD×
2〜3 債権法○ 相続法AB○、CD×
3〜4 債権法○ 相続法ABC○、D×
4〜 債権法○ 相続法ABCD○
となって、(全)は、現実のどの時点とも一致しないわけです。
下記記事でもさんざんイジり倒しましたが、1冊本の役割は当該領域を一体として理解できるのがメリット、と思っているので、こういう不整合は早めに解消しておいてほしいです。
後藤巻則「契約法講義」(弘文堂2017)
内容については、ボリューミーで読み終わってないので、また後日。
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