2019年03月25日

多層的請求権競合論と、メロンの美味しいところだけいただく感じの。

 前回、国際私法に関する記事を書いた中で、「請求権競合」についてちらっと触れました。

 視野を広げるための、国際私法

 頭の整理をしておきたいので、ちょっと書いておきます。

法の適用に関する通則法(e-Gov)


 「請求権競合」というのは、たとえば、ある事実関係について契約責任と不法行為責任が成立しうるときに、どちらも請求していいの、といった論点です(もちろん、この例だけに限りません)。

 民法上は、両責任が併存するか、契約責任が優先するか、両責任を統合させるか、といった見解が主張されています。
 また、民事訴訟法上は、訴訟物の個数の問題という形で争われています(新旧訴訟物理論)。

 ここにさらに、国際私法上の争いが追加されるということで、さらに議論が錯綜します。

 民法、民事訴訟法では、あくまで両責任とも「日本法」が適用されることを前提にしていたわけです。

 が、通則法によって、契約法が「甲国法」、不法行為法が「乙国法」と違う準拠法が指定されることもありうるわけで、両責任を請求してきた場合には通則法上どう処理するんだ、ということがさらに問題になります(以下、通則法上は「法律行為の成立及び効力」となっているものを契約と言い換えます)。


 道垣内正人先生の論点本だと、通則法上で別々のルールを定めているんだから、契約は通則法7条・8条、不法行為は同法17条等でそれぞれ準拠法決めておしまい、実質法レベルで議論することなんてないよ、はい解散、みたいな感じのことが書いてあります(あくまで個人の印象です)。



道垣内正人 ポイント国際私法 総論 第2版 有斐閣2007
道垣内正人 ポイント国際私法 各論 第2版 有斐閣2014


 極めてシンプルで分かりやすい見解ですけども、そういうことでいいのかなあと思うわけです。


 請求権競合に関する諸外国の実質法のルールなんて私にはわかりませんので、理論的にあり得る立場を列挙してみると、

 A 併存認める。どちらかが成立すれば請求認容。
 B 併存認める。どちらかが不成立なら請求棄却。
 C 契約責任を優先する。
 D 不法行為責任を優先する。
 E 両責任を統合する。

といったあたりが考えられるかと。

 で、たとえば、

  甲国契約法=A、乙国不法行為法=A

みたいに、それぞれの指定準拠法が同じ立場なら、表立った不整合は生じないですよね(ただし、E×Eの場合は、統合の仕方が同じなら、という極めて限定された場合だけ)。

 他方で、たとえば、

  甲国契約法=D(不法行為優先)、乙国不法行為法=C(契約優先)

みたいに、両国がお互いに「どうぞどうぞ」状態になったらどう判断するんでしょう。どちらでも責任追及ができなくなるのかどうか。

 また、その国の請求権競合ルールが実質法(実体法)上にはなく、「手続法」で調整がされている場合は、「手続法は持ち込まない」ってことで、請求権競合ルール無しと扱うのか。
 それとも、本来、実質法で定めるべきものを手続法に外出ししてるだけ、てことで、手続法から請求権競合ルールを切り出してその国の実質法と扱うのか。


 道垣内先生の見解というのは、こういった込み入った議論を全部飛ばせるように、という考慮もあるのかもしれません。
 通則法上で併存を認めていることにしちゃって、かつ、実質法からは請求権競合ルールをすべて排除すると。

 が、通則法の解釈で、これまでの民法上の議論を全部すっ飛ばしてしまうような、他領域に踏み込んだ立場まで導けるのか、不勉強な私にはわかりません。
 通則法上でだって、当事者が一つの事実関係に複数の法的観点を主張してきた場合に、準拠法を指定する前、あるいは指定した後に、何らかの形で統合をするという道もありうるわけであって。


 ちなみに、以下は全く根拠のない邪推。

 日本の実務だと、実質法上も併存、手続法上も併存、が当然であるかのように扱われているところです。
 が、片方の準拠法が外国法になりそうだと分かった途端、日本法のほうに寄せようと、統合しだすんじゃないかなあと。
 「隙きあらば日本法」の法則が発動して。


 以上、国際私法に関しては、民法や刑法にも増して素人感満載なので、そういうレベルのものとして扱ってください。

 この論点、もっと深掘りするには以下のような本などを読むべきなんでしょうけども、なんせ趣味の範囲なものですから。



四宮和夫 請求権競合論 (一粒社1978)
国友明彦 国際私法上の当事者利益による性質決定 (有斐閣2002)
posted by ウロ at 12:24| Comment(0) | 国際私法
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