2019年02月18日

大橋洋一「社会とつながる行政法入門 第2版」(有斐閣2021)

 入門書の、理想のかたちのひとつ。

大橋 洋一「社会とつながる行政法入門 第2版」(有斐閣2021)

 身近な事例を題材に、行政法の基礎概念を学んでいく本。
 どんな事例かというと、目次をコピペ。
 行政法総論と行政救済法をひと通りカバーしてます。

【目次】
Chapter1 ライフサイクルと行政法●行政法への招待
Chapter2 ごみ屋敷対策●法律による行政の原理を学ぶ
Chapter3 一発レッドカード●行政上の一般原則を学ぶ1
Chapter4 卑弥呼のライバル登場●行政上の一般原則を学ぶ2
Chapter5 お年寄りと子どもを守れ●行政行為を学ぶ
Chapter6 水際作戦と孤独死●行政手続を学ぶ
Chapter7 保育所落ちたくない●行政基準を学ぶ
Chapter8 マンション選びクイズ●行政計画を学ぶ
Chapter9 江戸の敵を長崎で討つ●行政指導を学ぶ
Chapter10 活かされなかった教訓●事実行為を学ぶ
Chapter11 ロックダウンは憲法違反?●行政上の義務の実効性確保を学ぶ
Chapter12 いじめ事件の真相に迫る●情報公開法を学ぶ
Chapter13 タヌキの森はいま●行政訴訟を学ぶ1
Chapter14 少女の夢●行政訴訟を学ぶ2
Chapter15 ごみ処理の悩み●行政訴訟を学ぶ3
Chapter16 生活の糧を守る●行政不服申立てを学ぶ
Chapter17 ピラミッド崩壊●国家賠償を学ぶ
Chapter18 津波から命を守る●損失補償を学ぶ

社会とつながる行政法入門 第2版(有斐閣のサイト)


 ただ、事例と基礎概念の説明がメインで、論点チックな記述がほとんどないので、行政法「学」の、学問としての面白さはあまり感じないかもしれません。

 ので、この本で基礎固めをしたら、溢れないうちに上位の教科書に進むのがベスト。
 この本のおかげで、基礎概念に対するイメージづくりがしっかりできているはずなので、抽象的な記述が多い本でも、具体的な事例を思い浮かべながら読み進めることができると思います。

(なお、この手の本における「Coffee Break」と第するコラムのブレイク感の無さは異常。本文とゴリゴリ地続きじゃないですかと。)


 大橋先生的には、そのまま自分の教科書に進んでもらうのがスムース、ということかもしれませんが、私はこの本読んでから藤田宙靖先生の『行政法総論』を読み直したくなりました。

大橋洋一「行政法1 現代行政過程論 第5版」(有斐閣2023)
大橋洋一「行政法2 現代行政救済論 第4版」(有斐閣2021)
藤田宙靖「新版 行政法総論 上巻」(青林書院2020)
藤田宙靖「新版 行政法総論 下巻」(青林書院2020)

 大橋先生の1が行政法総論、2が行政救済法、藤田先生が一冊で行政法総論+行政救済法なので、ちょうどおなじ範囲をカバー。奇しくも値段も同等(と書いていたのですが、後者が2分冊となり値段もアップ)。

 ちなみに、初学者の方は、普通の教科書へ行く前に、藤田宙靖先生の『行政法入門』を一回挟んだほうがよいかも。
 こちらの本は基礎理論重視なので、大橋先生の入門書では手薄な理論の部分を学ぶことができます。



藤田宙靖「行政法入門 第7版」(有斐閣2016)
posted by ウロ at 10:19| Comment(0) | 行政法
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