2019年03月11日

田中成明ほか「法思想史」(有斐閣1997)

 最近、ブログ記事が法学書イジりばかりなので、どうにか軌道修正しようと、税務寄りな法学書である『租税法概説 第3版』を頑張って読むことにしました(追記:第4版がでました)。

 中里実他「租税法概説 第4版」(有斐閣2021)

 ところが、いつの間にか『法思想史』を読んでいる自分がいました。

 田中成明他「法思想史」(有斐閣1997)

中里実ほか『租税法概説 第3版』(有斐閣2018

 読む順は前後しましたが、ブログ記事は『租税法概説』のほうを先に書いたのでセーフ(何が?)。

 ということで、今回は『法思想史』のほうを以下書きました。


 この本、入門書風な感じですが、初学者がいきなり読んで理解できるようなものではないです。
 はしがきにも書いてあるとおり、これは入門書ではなく「概説書」ですね。

 「概説書」というのは、明確なカテゴリー分けがあるわけではないですが、

  ・対象領域を万遍なく扱っている
  ・個々の記述は簡潔

といったあたりが特徴です。

 ので、初学者に配慮したような記述ではなく、一通り勉強が進んだ人が、知識の整理をするのに使う用なんだと思います。
 あるいは、大学の講義のガイドとして使うとか。

 紛らわしいのが、最初に書いた『租税法概説』みたく、タイトルに「概説」とあるのにここでいう「概説書」よりは踏み込んだ記述になっている本もあったりすること。
 じゃあ、その本は初学者がいきなり読んで理解できるようになっているかというと、こちらはこちらで、税法特有の事情からやっぱり理解が難しい記述が多いです(という感じのことを、先日の記事にも書きました)。


 ちなみに、この「有斐閣Sシリーズ」とかいうの、本の「そで」に「豊富な図表・具体例の採用、重要ポイントなどが一目で分かるような表示など、読みやすさとわかりやすさに徹したシリーズです。」とか書いてあります。

 有斐閣Sシリーズ

 他の本は知りませんが、少なくともこの本に関しては、図表も具体例も重要ポイントがひと目で分かるような表示も、特にないです。

 ところどころ思想家の写真・肖像画・レリーフ(?)などが載っているくらい。

 「へー、ソクラテスおじさんって、こんな顔してこんなこと言っちゃうんだあ」

てなるか!(これはノリツッコミですか?)


 そんなこんなで、以下、私の思うこの本の使い方。

 民法とか刑法とか憲法とか、個別法の勉強しているときに、歴史の記述が出てきたりします。
 で、そういうところで得たばらばらの知識を時系列で整理し直すのに、この本を頭から読むといいです。
 「アウトラインプロセッサ」的に、時系列に沿って知識を並べ直していく感じ。

【アウトラインプロセッサもの】
Tak. 「アウトライナー実践入門」(技術評論社2016)

 で、興味のある箇所がでてきたら、この本から離れて、それが詳しく書かれた本にあたると。
 少なくとも、この本を一生懸命読んでも、何ごとか新しいことを理解するのは難しい気がします。


 この本は「法思想」の歴史の本なので、余裕があれば「世界史」の年表とかも並行してみていくと、より理解が進むかも。

 しかしまあ、「法思想史」で括ったときに、見事なまでに「西洋」法思想史になるのね。
 それ以外の世界が全く出てこない。

 世界史年表のほかに「世界地図」とか「地球儀」とかもあれば、と一瞬思ったんですが、欧(と米)だけあれば足りるので、そこまでは必要ないなあと。

posted by ウロ at 11:58| Comment(0) | 基礎法学
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