2019年03月01日

みんな大好き!倒産防。 〜措置法解釈手習い

 生保が損金算入制限されても倒産防は制限されない、でおなじみの。

経営セーフティ共済(独立行政法人 中小企業基盤整備機構)

 さっそく条文をみてみましょう(以下、条文イジりの記事であって節税系の記事ではないです)。

租税特別措置法(e-GOV)

第六十六条の十一(特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例)
1 法人が、各事業年度において、長期間にわたつて使用され、又は運用される基金又は信託財産に係る負担金又は掛金で次に掲げるものを支出した場合には、その支出した金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

二 独立行政法人中小企業基盤整備機構が行う中小企業倒産防止共済法の規定による中小企業倒産防止共済事業に係る基金に充てるための同法第二条第二項に規定する共済契約に係る掛金
(一号と三〜五号は省略)

2 前項の規定は、確定申告書等に同項に規定する金額の損金算入に関する明細書の添付がない場合には、適用しない。ただし、当該添付がない確定申告書等の提出があつた場合においても、その添付がなかつたことにつき税務署長がやむを得ない事情があると認める場合において、当該明細書の提出があつたときは、この限りでない。


租税特別措置法関係通達(法人税編)第66条の11《特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例》関係

66の11−2(負担金の損金算入時期)
 措置法第66条の11に規定する負担金の損金算入時期は、法人が当該負担金を現実に支払った日を含む事業年度となることに留意する。

66の11−3(中小企業倒産防止共済事業の前払掛金)
 中小企業倒産防止共済法の規定による共済契約を締結した法人が独立行政法人中小企業基盤整備機構に前納した共済契約に係る掛金は、前納の期間が1年以内であるものを除き、措置法第66条の11第1項第2号に掲げる掛金に該当しない。



 まず、法(66条の11は略します)の1項では、支払った事業年度の損金に「算入する」と書いてあって、「算入できる」ではないんですね。
 ので、本来は問答無用で損金算入しなければならないはず。
 が、法2項で、明細添付しないと適用しないよと書いてあるせいで、事実上「できる規定」のようなことになってしまっています。


 また、損金算入するための要件として「明細添付」は要求されていますが、「損金経理」は要求されていません。
 ので、「保険料」で費用計上せずに、「保険積立金」で資産計上した場合でも、申告書上で課税所得を減算することになります。

 そうするとここで、《資金調達に強い!》みたいな触れ込みのコンサルさんが登場してきて、次のような提案をしてくることが考えられます(あくまで仮想例。こういうとき、私はゲーテの『ファウスト』を頭の中に思い浮かべています)。



 『保険積立金として計上すれば、損益計算書をよく見せつつ税金も減らせるよ!御社の顧問税理士はそんなアドバイスしてくれないでしょ!』

という感じの。

 これ、どういうことか具体的に考えてみましょう。

 年間240万円掛金納付したとして(諸々細かい事情は捨象します)

A 保険料として計上した場合

  売上高   240
  保険料   240
  税引前損益  0
  法人税    0
  当期損益   0

  課税所得 0

B 保険積立金として計上した場合

  売上高   240
  税引前損益 240
  法人税    0
  当期損益  240

  課税所得 0(当期損益240−減算240)

 なんと!当期損益が掛金納付分プラスになっているではないですか!
 しかも税額0円のまま!と。

 これだけみせられると、ついつい「保険積立金で処理します!ついては当社の顧問となっていただけますか。」と、乗っかってしまいそうになりますが、ちょっと立ち止まって考えてみましょう。

 保険モノは常に《出口戦略》が重要なわけで。

 ということで、掛金累計800万円を「保険積立金」で計上したあと、解約した場合はどうなるかというと、

  売上高    0
  税引前損益  0
  法人税   200 (税率25%とします)
  当期損益 ▲200

  課税所得 800(当期利益0+加算800)

 税引前損益が0円なのに法人税が発生するという、「どうかしてる系の損益計算書」になります。もちろん、資本金等、従業者、事業所が多いなどで「均等割」が高額になることはありますが、それはそういう説明ができるわけで。

 まあ、税引前損益0円というのは極端な事例であって、利益が1億円くらい出ていてくれれば、紛れてくれます。
 が、倒産防を解約するなんていうのは、800万円でもすぐに現金が欲しい、というカツカツな状況のはず。

 これを、むりやり普通の損益計算書ぽくしようとするなら、解約事業年度以降「なんちゃって税効果会計」みたいなことをやって、誤魔化すしかないような気がします(いや私には無理です)。

 ので、「保険積立金」で処理するにしても、ちゃんと出口のことを考えておこうね、ということです。


 また、節税商品としておすすめする際に、当然のように「前納は1年先まで!」てことになっています。

 これ、条文上どう書いてあるかというと、

  法:支払ったらそのとき損金算入な。
  通:でも前納は1年以内だからね。


と、「1年」て書いてあるの通達だけなんですよね。

 だから、なに通達で勝手に制限しちゃってるの、という点は、問題になっておかしくない。
 今どきの、文言解釈重視の判例の流れからいえば、「勝手な制限は違法」と判断される可能性もあるわけで。

 法自体の解釈から「損金算入される前納は1年まで」を読み取れないといけないはず。

【ちょっと違いますが参照】
解釈を解釈する解釈(free rider) 〜東京高裁平成30年7月19日判決

 あえて課税側に寄り添って解釈してあげるならば、次のような解釈ですかね。

・法1項2号には「中小企業倒産防止共済事業に係る基金に充てるための」と書いてあるんだから、実際に対象期間がきて充当されるまではこれに該当しないはずだ。
・でも、通達で、1年以内だったら充当されてない期間分も認めてあげるね。
・ので、この通達は、法の制限ではなく拡張だからセーフ。

て感じ。

 確かに、中小企業倒産防止共済法の15条みると、対象月の初日の到来で納付扱いになるんですよね。
 だから、こういう読み方も可能っちゃ可能かと。

中小企業倒産防止共済法 第十五条(前納)
1 機構は、共済契約者が、その納付すべき月の前月末日以前にする掛金の納付(以下「掛金前納」という。)をしたときは、経済産業省令で定めるところにより、その掛金の額を減額することができる。
2 掛金前納がされた掛金については、その納付すべき各月の初日が到来した時に、それぞれその月の掛金が納付されたものとみなす。


 が、そうすると今度は、何勝手に広げちゃっているの、という逆の問題が生じてしまいます。
 納税者有利だからいいだろ、と単純にいえないのが税法上の「合法性」の問題。

 けども、そこを突っ込みだすと、『みんなもっと大好き!短期前払費用の特例』の立場も怪しくなってしまうわけで。
 あまりイジらないほうがいいですか。

法人税基本通達2−2−14 (短期の前払費用)
 前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。以下2−2−14において同じ。)の額は、当該事業年度の損金の額に算入されないのであるが、法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める。
(注) 例えば借入金を預金、有価証券等に運用する場合のその借入金に係る支払利子のように、収益の計上と対応させる必要があるものについては、後段の取扱いの適用はないものとする。



 そのへんの節税本でも当たり前にのっている倒産防ですが、税法解釈の観点から眺めると、実はイジりがいのある論点があるわけです。
posted by ウロ at 16:21| Comment(0) | 法人税法
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