2019年04月22日

裁判所職員総合研修所「刑法総論講義案 (四訂版)」(司法協会2016)

 「理論刑法学」を勉強するには、このブログでも紹介していますが、井田良先生の本などをおすすめしています。

井田良『入門刑法学・総論』(有斐閣2018)ほか
井田良「講義刑法学・総論 第2版」(有斐閣2018)
井田良「講義刑法学・各論」(有斐閣2016)

 他方で「実務における刑法」を知りたいのであれば、この本。



 裁判所職員総合研修所 刑法総論講義案 (四訂版)  (司法協会2016)

 学者本だと、どうしても学説から評価した裁判例になってしまうところ。
 が、この本は裁判所職員向けの研修教材なので、そういったフィルター無しに裁判例を理解することができます。


 私自身、刑法の勉強は、山口厚先生の『問題探究 刑法総論』からスタートしました。
 ので、ゴリゴリの「結果無価値論」で判断枠組みが出来上がっていたわけです。



 山口厚 問題探究 刑法総論 (有斐閣1998)

 そのせいか「行為無価値論」の学者本はなかなか読めずにいました。
 が、行為無価値論をベースにしているはずのこの本については、なぜか自然に読むことができました。


 とても具体的でわかりやすい記述なんですが、たとえば。

 過失犯の判断構造について、判決書記載の「罪となるべき事実」をもとに分析されています。
 ここを読んで、学者本ではいまいち理解できていなかった過失犯の具体的な認定の仕方を、理解することができました。

 あの、「たぬき・むじな事件」「むささび・もま事件」の事案の違いについても、図解までして具体的な説明がされています。

 また、実務書ということもあり、学者本では手薄になりがちな「罪数論」や「刑罰の適用過程」についても、具体的に書かれています。
 ここだけでも読む価値はあるのでは。


 さて、ここでクエスチョン。

  Q.本書の本文で唯一名前が出てくる日本人刑法学者は?(参考文献は除く)




 正解は・・・。


  A.藤木英雄先生

 この本、裁判例ベースの記述でありながら、それなりに学説にも配慮した記述もでてきます。
 たとえば、井田良先生の「規範論的一般予防論」らしき記述とか、山口厚先生の「修正された客観的危険説」らしき記述とか。
 のに、そこでは文献の引用や先生方の名前は一切出てきません。

 が、なぜか藤木先生だけお名前が。
 しかも、危惧感説とかではなく「防衛の意思の具体的内容」のところで。不思議。
posted by ウロ at 09:40| Comment(0) | 刑法
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