なぜか読んでみました。
安田拓人ほか「ひとりで学ぶ刑法」(有斐閣2015)
○
位置づけとしては、教科書と演習書の橋渡し、という感じ。中二階的な。
教科書からいきなり演習書にいってみたけど、どうやってアプローチしたらいいか分からない人が、読んでみたらよさそう。
で、知識があやふやなら教科書へ戻り、いけそうなら演習書へ進むと。
これ読んだあとなら、教科書の理解度もかなり深くなるはず。
記述が特定の説を押し出すようにはなっていないので、教科書の記述を相対的に読めるようになると思います。
内容について私がどうこう言えることはないんですが、例によって外在的なイチャモン。
○
目次があっさり過ぎる。
ひとりで学ぶ刑法(出版社のサイト)
出版社のサイトに書いてある、このとおりしか書いていません。
「体系対応一覧」なんて綴じ込みの表を、わざわざ時間をかけて作るくらいなら、素直に目次を充実させたほうがいいのでは。
○
「ニュルンベルクのマイスタージンガー」をモチーフにしているとかいって、下記の三部構成になっています。
Stage1 Schüler
Stage2 Sänger
Stage3 Meister
が、Stage1の前に、みんな大好き「前奏曲」が無いのは何故なのか。
マイスタージンガーにとって、絶対はずせないと思うんですけど。
全幕見た・聴いた人じゃなくても、当然、前奏曲だけは知っていますよね。
カラヤン「ニュルンベルクのマイスタージンガー」(EMI)
内容的には、Stage1のNo.1「犯罪論体系」とNo.2「行為無価値と結果無価値」がそれに相当している感じなので、次回改訂の際にご検討ください。
あと、英語+ドイツ語というハイブリッド感はなんなのか。
LUNA SEA様のマネでしょうか。
○
表紙に「Do it Yourself! Exercise of Criminal Law」と書いてあります。
(誰のお気に入りなのか、ダメ押しで「背」にまでねじ込まれている)。
ここもドイツ語じゃないのか!というツッコミはさておき、外国語感覚0%の私からすると、「自分でやれや!」と命令されている印象を受ける(被害妄想)。
○
内容については触れないつもりでしたが、1点だけ。
389頁 事例
「Yは、インターネットバンキングで、Xからの入金が始まったことを満足そうに確認すると、」
395頁 解説
「Yは、Xを恐喝して、月々10万円を、Yの指定するG名義の口座に振り込ませ、Xからの入金を確認してにんまりしている。」
上が事例の中の文章、下が解説の文章。
事例問題を解くにあたって、「にんまり」などという、事例に書かれていない事情を勝手に付け加えてはだめですよ。
タグ:刑法