※以下は、2014年刊の(第2版)の書評です。
これまでこのブログでは、理想の教科書を求めてウロウロ彷徨ってきています。
それは税法に限らず、法学分野において何か決定的な形のものがないだろうかと。
【理想の教科書を求める旅(一例)】
税法思考が身につく、理想の教科書を求めて 〜終わりなき旅
後藤巻則「契約法講義」(弘文堂2017)
井田良「講義刑法学・総論 第2版」(有斐閣2018)
今回のこの本は、《形式》はかなり求めているものに近かったです。
野村美明「新・ケースで学ぶ国際私法」(法律文化社2020)
○
というのも、(広義の)国際私法ってざっくりいうと、
・抵触法 総論
・抵触法 各論(財産法、家族法)
・国際民事手続法
と分野が分かれています。
で、これら分野を1冊でカバーしている本もあるのですが、それぞれ別々の章に分けられて検討されているのが一般的。
が、この本では、各論の議論をベースにしつつ、その中に総論や手続法の問題を溶け込ませています。
しかも、それらが具体的なケースに沿って解説されています。
この形式なら、かなり理解がしやすいだろうなと、感じました。
○
ただ、最初にわざわざ《形式》は、という留保をつけました。
というのも、あくまで個人的な問題ですが、国際私法に関しては、(両極端ながら)石黒一憲先生や道垣内正人先生のような、極めて特徴的な本から入ってしまいました。
石黒一憲「国際私法 第2版」(新世社2007)
道垣内正人「ポイント国際私法 総論 第2版」(有斐閣2007)
道垣内正人「ポイント国際私法 各論 第2版」(有斐閣2014)
ので、この本のような、
・論点についての裁判例・学説を並べて優劣を論ずる
・それら説から事例へのあてはめをする
という、よくある普通の記述の仕方が、どうしても退屈に感じてしまいました。
や、あくまで個人的な問題ですよ。
○
あと、ここ最近「判例」というものに関する本をよく読んでいました。
判例の機能的考察(タイトル倒れ)
そのせいか、この本が、地裁・家裁や高裁やらの判決まで、最高裁判決と区別することなく、無遠慮に「判例」と呼んでいることに対して、違和感がどうしても拭えない。
しかも、長々と判決文を引用しているのに、「事実」の部分は一筆書き程度の要約したものしか書いていないのがほとんど。
「学生は判例を一般化しがち」
「判例は事実との関係で理解すべき」
なんて学生に対する苦言は、こういう(よくありがちな)教科書の記述を改めてからいうべきだと思うんですけど。
2019年06月17日
野村美明「新・ケースで学ぶ国際私法」(法律文化社2020)
posted by ウロ at 09:25| Comment(0)
| 国際私法
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