非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その7)
この論点に深入りする前は特に意識していなかったんですが、消費税法基本通達の括弧書き。
消費税法基本通達 5−7−6(著作権等の範囲)
令第6条第1項第7号《著作権等の所在地》に規定する「著作権」、「出版権」又は「著作隣接権」とは、次のものをいう(外国におけるこれらの権利を含む。)。(平23課消1-35により改正)
(1) 著作権 著作権法の規定に基づき著作者が著作物に対して有する権利をいう。
(2) 出版権 著作権法第3章《出版権》に規定する出版権をいう。
(3) 著作隣接権 著作権法第89条《著作隣接権》に規定する著作隣接権をいう。
しれーっと書いてある。
(外国におけるこれらの権利を含む。)だってよ。
もう結論出ましたね解散、というわけにはいかない。
ここまで検討してきた『国内税法への外国法の取り込み方』について、これではどうやるのかわからないわけで。
この書きぶりからすると《利用地法説》っぽいんですが。
《利用地法説》 税法 ←外国の著作権法
外国の著作権法は直接日本の税法に含まれている。
なんですけども、(1)(2)(3)では思いっきり「日本の」著作権法を引用してしまっているわけで。
どうしろっていうの、これ。
消費税法 第四条(課税の対象)
1 国内において事業者が行つた資産の譲渡等には、この法律により、消費税を課する。
3 資産の譲渡等が国内において行われたかどうかの判定は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める場所が国内にあるかどうかにより行うものとする。
一 資産の譲渡又は貸付けである場合 当該譲渡又は貸付けが行われる時において当該資産が所在していた場所(当該資産が船舶、航空機、鉱業権、特許権、著作権、国債証券、株券その他の資産でその所在していた場所が明らかでないものとして政令で定めるものである場合には、政令で定める場所)
消費税法施行令 第六条(資産の譲渡等が国内において行われたかどうかの判定)
法第四条第三項第一号に規定する政令で定める資産は、次の各号に掲げる資産とし、同項第一号に規定する政令で定める場所は、当該資産の区分に応じ当該資産の譲渡又は貸付けが行われる時における当該各号に定める場所とする。
七 著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずる権利を含む。)又は特別の技術による生産方式及びこれに準ずるもの(以下この号において「著作権等」という。) 著作権等の譲渡又は貸付けを行う者の住所地
○
こんな大事なことが、消費税法の、通達の、しかも括弧書きにしか書かれていない。
確かに、消費税法とは事情が違っていて、所得税法で外国の著作権法を取り込む必要がでてきたのは、租税条約が「債務者主義」を採用したせい。
法の「利用地主義」のままなら、国内法同士で『うふふあはは』と宜しくやれていたのに。
租税条約の余計な横槍。
利用地判定大変だろうから、とかいって、債務者主義に置き換えやがって。
ので、所得税法+通達を責めるのはお門違い、かもしれません。
ならばということで、租税条約のほうで『租税条約解釈通達』みたいな解釈指針を出しておいてほしい。
OECDモデル租税条約コメンタリーの国内版みたいな。
条約ごとに内容違うとはいえ、ある程度の類型化はできるわけで。
財務省と外務省の、縄張り的なアレは私にはわかりませんが。
○
それはともかく、所得税法の解釈に、消費税法基本通達のこれをもってきていいものかどうか。
「借用概念」というのも、もっぱら「私法⇒税法」が想定されているはずで「税法⇒税法」にも適用されるのか。しかも通達からだし。
「法的安定性」云々いうなら、「税法⇒税法」にも適用すべきなんでしょう。
所得税法と消費税法とで別意に解するのは法的安定性を欠く、とかなんとか。
ここで、消費税法と所得税法とでは「目的」が違う(からもってこれない)、とか言いだしたら、お前は借用概念を否定するのか、と責められること必至。
借用概念を肯定する人のなかには、「借用先のとおりに解するのが原則で、税法の趣旨・目的を考慮するのはあくまで例外にすぎない」とかいう人もいます。
が、この「原則・例外」って言い方、まやかしワードです。
例外といいながらも、「常に」税法の趣旨・目的の観点からその借用が妥当かどうかをチェックをしているのであれば、もはやそれは借用概念を否定しているのと同じ。
他方で、「文理」を強調するなら、消費税法(通達)には明記されているのに所得税法に明記されていないということで、外国法は含まないと解すべきとなりそう(反対解釈)。
さあどうなんでしょう。
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その9)
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