国内税法に外国の著作権法を持ち込む方法として、外国法を直接持ち込む方法と、法適用通則法を経由する方法があることを書きました(その6)。
《利用地法説》 直接日本の所得税法に取り込む。
所得税法 ←外国の著作権法
《法適用通則法説》 法の適用に関する通則法を経由する。
所得税法 ←法適用通則法 ←外国の著作権法
これ考えていて思ったのが、「渉外要素」含まない場面でも、税法に私法概念が規定されているかぎりこの問題が出てくるんじゃないかと。
○
というのも、純粋な「国内案件」の場合であっても、法適用通則法を経由すべき、と考えることもできるわけです。
この考え方は、道垣内正人先生の論点本に書いてあります。
視野を広げるための、国際私法
すなわち、「渉外案件」のときだけ法適用通則法を持ち出すのではなく、「国内案件」のときでも結果的に国内法が準拠法になるだけで、法適用通則法によるあてはめがバックグラウンドで粛々と行われていると。
ア 一般的には 《渉外案件限定説》
国内案件 ⇒ 日本法
渉外案件 ⇒ 法適用通則法 ⇒準拠法
まず、国内案件/渉外案件かを区別して、渉外案件のときだけ法適用通則法をもちだす。
イ 道垣内先生の考え 《全案件適用説》
すべての案件 ⇒法適用通則法 ⇒準拠法
すべての案件について法適用通則法を経由する。
○
税法における私法概念にも、これら考えをあてはめることができます。
《利用地法説》だとすっきりしないのですが、同じようにあてはめてみます。
・《利用地法説》の場合
ア 《渉外案件限定説》
使用地日本 ⇒ 日本の著作権法
使用地海外 ⇒ 外国の著作権法
使用地が日本か海外かを区別して、使用地が海外のときだけ外国の著作権法を取り込むか検討する。
イ 《全案件適用説》
すべての使用地 ⇒日本or外国の著作権法
すべての案件について、どこの著作権法を適用するか検討する。
・《法適用通則法説》の場合
ア 《渉外案件限定説》
使用地日本 ⇒ 日本の著作権法
使用地海外 ⇒ 法適用通則法 ⇒外国の著作権法
使用地が日本か海外かを区別して、使用地が海外のときだけ法適用通則法をもちだす。
イ 《全案件適用説》
すべての使用地 ⇒法適用通則法 ⇒準拠著作権法
すべての案件について法適用通則法を経由する。
《法適用通則法説》⇒《全案件適用説》のコンボが綺麗だと思うのですが、どうでしょうか。
○
と、いずれにしても外国法を税法に取り込むことになるのを見ていて、ふと思ったのが、やはり借用概念て脆弱な基盤によっているなあということ。
税法学説上は、
・租税法律主義
税法は文理解釈を大原則とすべきでむやみに目的的解釈などをおこなってはならない。
・借用概念
私法概念は私法のとおりに解釈すべきでむやみに税法独自に解釈すべきではない。
ということが強烈に強調されています(あえての重複感)。
この強力なツートップにより、税法における法的安定性・予測可能性が高度に高められているのだと(重ねてあえての重複感)。
法的安定性×予測可能性 ⇒ 俺たちは最強の盾と盾!!
が、よくよく考えてみると借用先の民法なんて、実質的妥当性重視の、文理解釈から離れた解釈がまま横行しています(その究極体が反制定法的解釈)。
のに、その結果たる民法の概念をそのままお借りしておきながら、「これで法的安定性保てるぜ!」とか言っているの、あまりに呑気すぎやしませんか。
税法【文理解釈?】 ← 民法【目的論的解釈】
これ、思いっきり《トロイの木馬》案件じゃないですか。
あるいは、庇を貸して母屋を取られる案件。
なんか税法学さん、民法学さんのこと古色蒼然とした静的学説しか存在していないとでも、舐め腐っているんですかね。
確かにこのブログでも、他法と比べて民法はイジりの対象であることが多いです。
【民法イジりの例】
私法の一般法とかいってふんぞり返っているわりに、隙だらけ。〜契約の成立と印紙税法
が、そうやって油断していると足元すくわれるよ、という一場面ではないかと。
民法さん、やっと一矢報いることができましたね、よかったね。
や、もしかしたら、表向き自分はきれいな文理解釈のままでいながら、汚れ仕事(目的論的解釈)を民法にやらせている、という見方もできるかもしれない。
やだ、腹黒いですね。
非居住者に支払う著作権の使用料と源泉徴収の要否について(その10)
【国際租税法の最新記事】