2020年05月11日

魔界の王子と契約の成立と印紙税法 〜印紙税法総論・爆誕!

 前回記事で述べた、印紙税法が民法と勝手にくっつこうとしている箇所。

【契約の成立と印紙税法シリーズ】
私法の一般法とかいってふんぞり返っているわりに、隙だらけ。〜契約の成立と印紙税法
続・契約の成立と印紙税法(法適用通則法がこちらをみている)
続々・契約の成立と印紙税法(代理法がこちらをみている)
さよなら契約の成立と印紙税法 (結局いつもひとり)

 ここです。

(引用ここから)
事例1:《実体》なし
  ア 文書:代金1000万円の不動産売買契約書
  イ 文書:代金8000万円の不動産売買契約書

※そもそもこの事例、民法上、実体なしとして契約は「成立」しないのか、それとも、表示通りの契約が「成立」した上で「効力」が実体にあわせて調整されるのか、という問題があります。
 なんですが、これをやりだすと前々回に論じた「効力要件」問題が再燃してしまいます(要するに、同じようなことをいろんな角度から検討しているだけなので、混線する)。
 ので、ここでは契約不成立前提で話をすすめます。

事例2:《実体》代金5000万円の不動産売買契約
  ウ 文書:代金1000万円の不動産売買契約書
  エ 文書:代金8000万円の不動産売買契約書

※こちらも事例1同様、民法上、実体通りの金額で「成立」するのか、それとも、文書通りの金額で「成立」した上で「効力」が実体にあわせて調整されるのか、という問題があります。
 が、ここでは実体通りの金額で成立した前提で話をすすめます。

(引用ここまで)

 この記述の「※」のところ。

 例によって、話が拡散するのを防ぐため、ルートの分岐を塞いだわけです。
 が、この道筋をたどっていったらなんか繋がりそうな気がした、ので、おっかなびっくり進んでみます。


 前回記事では、事例1を「実体なし」と決め打ちしました。
 が、アにしてもイにしても、申込と承諾が一致したかのように見える契約書(物理)が存在しています。

 ということはですよ、「表示主義」重視の民法通説からすると、この場合も表示の一致ありで契約は「成立」している、てことで実体「あり」になる可能性があるんですよね。

 「可能性」と控えめなのは、表示の一致といっても、ただ表示が一致した契約書が存在してさえいればいいのか、それとも、そういう書面を作成したという行為は必要なのか、という問題があるからです。

《表示の一致とは》
 ア 書面上の表示が一致していればいい
 イ 当事者がその表示行為をしたことが必要

 と、理解が二様に分かれるわけです。

 通説的には、イであってアとかあり得ないから、というつもりなんでしょう。
 が、署名・押印から文書の真正な成立が推定されるという「事実認定」レベルの話まで考慮に入れると、アとイは事実上ほぼ重なり合う(ここは次回掘り下げます)。

民事訴訟法 第二百二十八条(文書の成立)
1 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
4 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。


 で、アだとしたら出会って秒で結婚、イでもいきなり同棲レベルかと。
 あの、「文書!文書!」しか言わないと思われたコミュ障印紙税法が、まさかのね。

【性格の超一致】
  民法:  書面上の表示が一致していれば契約成立
  印紙税法:書面に書いてあれば課税

 良いように喩えましたが(ただし人による)、我々納税者からしたら「悪魔合体」よ。
 契約書がある以上、実体なしとなる余地がほとんどないというのだから。


 事例2にしても、実体が5000万円だとしていますが、表示が1000万円や8000万円だってことは、5000万円は内心の意思にすぎないわけです。
 そうすると、表示通りの金額で契約は「成立」し、あとは「効力」の問題となると。

 とすると、こちらでも、

【前世でも一緒だったかも】 (※キモい)
  民法:  表示通りの金額で契約成立
  印紙税法:表示通りの金額で課税

となって、2人のズレが消失します。

ふたりはプリキュア(後日テコ入れで増員) 〜グループ法人税制のおさらい〜

 民法の実体的側面に対しては「生理的に無理」とか言っていた印紙税法が、表示的側面を見せた途端なびき出すと。

 露骨!
 アシュラマンだって、すべての顔を愛してほしいはずだぜ。


 ここまで、印紙税法を支配している「文書課税」に対抗する、実体陣営からの、protest・resistを繰り広げてきました。

 この陣取り合戦について、私自身の戦績評価は次のとおり。

 1 課税事項:  文書
 2 文書作成目的:実体(−)
 3 納税義務者: 実体(+)
 4 課税標準:  文書

 まずは、戦線を分断したこと自体が一つの戦績かと思います。
 印紙税法上のすべての要件を、文言のみで判断することはできないと。

 そして、2と3は実体陣営が奪還できたはず、との自己評価。
 3は文書課税の理不尽さを強めにアピールできたはずなので実体プラス、2はそこまで積極的な展開ができていない気がするので実体マイナスとなっています。

 1と4はどうにも突き崩せず。
 ここは、実体陣営の味方になるうる存在だと思っていた民法が、文書課税と馴れ合っていたのが敗因。


 以上、本連載でやろうとしたことは、「文書課税」一本でやってきた総論不在の印紙税法において、「印紙税法総論」を打ち立てることでした(壮大な誇大妄想)。
 なお、下記の記事が「印紙税法各論」に該当します。

【印紙税法各論】
森田宏樹『契約責任の帰責構造』(有斐閣2002) 〜印紙税法における「結果債務・手段債務論」の活用 
Janusの委任 〜成果報酬型委任と印紙税法

 そして私の夢は、印紙税法学者の皆さんが、文書無価値一元論と文書・実体無価値二元論の陣営に分かれて喧々諤々の議論を戦わせる、というものです。
 その議論の土俵も、課税事項論、文書作成目的論、納税義務者論、課税標準論、手続論などに細分化され、それぞれの分野の専門家が現れると。

 この、ペーパーレス時代にそぐわない妄想。
 産まれる前から死が約束されている。
posted by ウロ at 09:29| Comment(0) | 印紙税法
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