2020年07月27日

「新 実務家のための税務相談(民法編) 」(有斐閣2017)

 改訂版が正統進化とならない、とあるひとつの実例。



 「新 実務家のための税務相談(民法編) 」(有斐閣2017)

 前著(いわゆる無印)は、民法と税法が絡む問題につき深く論じられていて、示唆を得るところ大でした。



 「実務家のための税務相談 民法編」(有斐閣2006)

 「新」がでてしまったせいで同書の改訂はもはや望めないわけですが、同書で展開されている「考え方」は非常に参考になるので、今からでも購入していいと思います。
(リメイク版があまりにも不評だったため、あらためてオリジナルスタッフで製作しなおす、みたいなドラマ・アニメもあったりしますが)


 さて問題は、この「新」がついている本書。
 前著の後継かと思ってノールックで購入してしまったのですが、中身が全くの別物にすり替わっていました。

 ・むやみに多数の項目が取り上げられていて、
 ・やたらと多数の執筆者が参加していて、
 ・一項目がどれもこれも3,4頁程度と短く、
 ・当該項目にかかわる法規定と通達・裁決・判決をパラパラと並べた、

感じの記述が延々と続く。
 特に新しい何かを学べる、というものでもなく。

 執筆者多数なので、決してすべてがそうだということではないのですが、

 × 設例(Question)があるのに、その設例にまともに答えていない。
 × 設例がふんわりしすぎ。
 × ★で項目を重要度をランクづけしているのに、どれもこれも同じ分量。
 × 特に税法上の問題がない項目を無理やりねじ込んでいる。
 × 項目を細分化しすぎて記述がダブついている。
 × 当該項目に関する税法上の制度・論点をランダムに並べているだけ。
 × 事案もかかずに判例の規範部分だけ書かれても射程が不明。
 × 個人(所得税)と法人(法人税)がごちゃごちゃ。
 × (売買でいうと)売主側の問題なのか買主側の問題なのかがごちゃごちゃ。
 × 印紙税や消費税の問題を、論じたり論じなかったり。
 × 実務で使う、という視点が希薄。
 × 法律用語の使い方が不正確。

などといった問題が散見される。

 きつきつの分量で中途半端な解説をするくらいなら、当該項目に関連する制度を完全網羅した「インデックス」に徹しておけばいいのに。
 個々の内容は、信頼のおける他書の該当箇所だけ指示しておいてもらえればいいですよ、と。


 これはアレです、アクティブ・ラーニング系。

【アクティブ・ラーニング系】
後藤巻則「契約法講義 第4版」(弘文堂2017)
三木義一「よくわかる税法入門 第14版」(有斐閣2020)
(そろそろ独立のカテゴリをつくってもいいかもしれない。)

 信頼のおける書籍を座右に置きながら、本書の記述が正しいかどうかを点検しながら読む感じの。
 本書の記述を鵜呑みにできないおかげで、自分の知識があやふやな部分を再確認できるので、そういう意味ではいい素材ではある(皮肉)。

 金子宏先生の体系書なんて、ありがたく拝読するという感じになってしまって、批判的に読むのはなかなか難しいですからね。



 金子宏「租税法 第23版」(弘文堂2019)

 例によって、このことに途中から気づくという致命的なミス。
 や、どうも怪しいな、とは思っていたんですよ(言い訳)。

 ツッコミどころ、かなりの数になりそうなので、今回の記事は「これから検討していくよ。」という所信表明です。


 一応、軽く頭出しだけしておきます。

61 クレジットカード契約

「信販会社は立替払をしています。そうすると、この支払いをしたときに、経費の支出があるため、損金が計上されることになります。それにあわせて、利用者に対する貸付金債権が発生するため、それを益金計上することになると思います。」

 信販会社側の税務処理なんて、私にはおよそ縁のない話だと思います(私どころか大多数がそうだと思うので、それをわざわざ本書で記述する必要ある?というのはさておき)。

 が、これ、何言っているんでしょうか。

 ここでいう「経費」とはなんなのか。まさか立替払のことか。
 「それを益金計上」というのは、貸付金債権のことなのか、そうなのか。
 ていうか、立替払をすると売掛金が貸付金になるのか。

 仕訳にするとこうですね、マジかよ信販会社(見慣れぬ科目名はオリジナル)。

  立替金費(損金)/現金
  貸付金/貸付金収入(益金)

 てっきり手数料だけが売上になるのかと思っていましたよ。
 利用者の利用額が、加盟店の売上になるだけでなく、信販会社の売上にもなるってことですね。

 これ、会計素人の人が「銀行から借入すると収入、返済すると(元本返済も)費用になる」みたいなことを言っているのと似ているような気が。

 全力で善解して、「ファイナンスリース」のことを言っていると読めばどうにかなりますか。
 や、無理だわ。別途「ファイナンスリース契約」の項目もあるし。

 あるいは、これはあくまでも税務処理であって会計処理ではないのだ、と考えてみましょうか。
 そうすると、会計で計上されていない貸付金収入と立替金費を、申告書上で加減算すればいいんですかね。

 意味ねえな。
 そもそも会計とズラすには法的根拠が必要なはずですけど、そういう規定があるわけでもないですし。

 また、ここでは「立替払方式」のことしか書かれていません。
 「債権譲渡方式」についてや、あるいは「三当事者型」以外のタイプについては一切触れられていません。

小塚荘一郎,森田果『支払決済法 第3版』(商事法務2018)


 という具合で、不可解な記述がちらほら散見されるので、うまくまとめられたら記事にします。
 たぶん、一回ではとても終わらない。

 「会社法編」もあるけども、この調子で突っ込みながら読んでいって、そこまで到達できるだろうか。



「新 実務家のための税務相談(会社法編)」(有斐閣2017)
posted by ウロ at 08:27| Comment(0) | 租税法の教科書
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