さて、今回は「物権法・担保物権法」の領域。
「新 実務家のための税務相談(民法編) 第2版」(有斐閣2017)
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民1)
全体としてこの領域、税ネタが乏しくて書くことに苦労している印象。
無理やりパンデクテンで項目を細分化したことの弊害がここにも。
17 所有権留保
設問では、割賦で買った自宅を代金完済前に売却する場合の課税関係を聞かれています。
のに、所有権留保でいつ所得が発生するかとか延払基準がどうだとか、割賦販売業者側の税務のことが一生懸命書かれている。
そしてダメ押しのごとく、まるで関係のない、船舶の賃貸借契約か所有権留保付割賦売買契約かが争われた判決などが紹介されている。
「所有権留保 税」で検索して目についた判決をとりあえず掲載してみました、みたいな。
この設問をみて、ここまでずれたことが書けるのは逆にすごいと思う。
もしかしてですけど、後から設問をすり替えられたとかじゃないですよね(それぐらい突飛な事情でもないかぎり、このちぐはぐっぷりは説明できない)。
19 区分所有
「しかし、そのように考えると、裁判所に支払っている競売の代金ですら課税仕入に該当しないことになりかねません。」
いきなりなんや。
前所有者の管理費を現所有者が管理組合に支払うことと、裁判所に競売代金を支払うことの何が同じなんですか。
22 抵当権
「抵当権の実行は、民事執行法にもとづく強制競売手続として行われます。」
担保不動産競売と強制競売とは、言葉遣いとしては一応区別されるものなので、こういう無頓着な言い回しは気になる。
強制競売:一般債権に基づく
担保不動産競売:担保権に基づく
・
「抵当権と他の物権との優劣関係は、登記等の対抗要件の先後によりますが、抵当権と租税債権との優劣関係は、どのようにして決まるのでしょうか。」
「抵当権×租税債権」と比較するなら「抵当権×私法債権」のほうが近いのに、わざわざ「抵当権×他の物権」を対比にもってきている。
23 根抵当権
所得税法64条2項の特例のことが書いてあるが「30 連帯保証」とダダカブり。
ただし、こちらでは「求償不能を知りながら」のルールをちゃんと書いていない。
というか、元本確定後の話しかしておらず、「根」抵当権特有の問題が書かれていない。
24 譲渡担保
所得税基本通達33-2がペッと貼り付けてあるんですが、私はこの通達の本文と(注)の関係がいまいち紐解けていません。
所得税基本通達 33-2(譲渡担保に係る資産の移転)
債務者が、債務の弁済の担保としてその有する資産を譲渡した場合において、その契約書に次のすべての事項を明らかにしており、かつ、当該譲渡が債権担保のみを目的として形式的にされたものである旨の債務者及び債権者の連署に係る申立書を提出したときは、当該譲渡はなかったものとする。この場合において、その後その要件のいずれかを欠くに至ったとき又は債務不履行のためその弁済に充てられたときは、これらの事実の生じた時において譲渡があったものとする。
(1) 当該担保に係る資産を債務者が従来どおり使用収益すること。
(2) 通常支払うと認められる当該債務に係る利子又はこれに相当する使用料の支払に関する定めがあること。
(注)形式上、買戻条件付譲渡又は再売買の予約とされているものであっても、上記のような要件を具備しているものは、譲渡担保に該当する。
本文は「形式」を整えろといっているんですが、(注)では「実質」で見るよと言っていて、うまく噛み合わせて読むの、悩みませんか。
それをなんの悩みもなく並べただけで。
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2020年08月10日
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posted by ウロ at 10:44| Comment(0)
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