今回は「債権総論」と「契約総論」ですね。
「新 実務家のための税務相談(民法編) 第2版」(有斐閣2020)
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民1)
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民2)
26 債務不履行
「損害賠償金の内容について損害の補てんや心身に与えられた損害に対して支払われる部分に相当する金額は非課税の対象になります。」
「先生、そこまではネットで読んだので具体的に説明してくださいよ!」と言われるやつ。
この本、こういう法令・通達の記述をペッと貼って終わっちゃうやつ、多め。
27 債権者代位権
設例が、1月1日時点で相続登記されてた人がその後に相続放棄した場合の「固定資産税」の課税関係を扱っています。
ここだけ抜き出すと「なぜに債権者代位権?」と思うかもしれません。
債権者代位権は、自分じゃない誰かが適法に相続登記したという事例を導くためだけの踏み台。単純承認とならずに登記名義人となっている事例をつくるためだけの。
債権者代位権固有の税務上の問題が、何も扱われていない。
逆にいうと、「債権者代位権」というお題を与えられて、これを扱おうと考えられるとか、なかなか柔軟(エキセントリック)な思考ですね。
32 債権譲渡・将来債権譲渡
譲渡禁止特約付債権の譲渡は無効と書かれているのに(改正前)、じゃあこの場合の課税関係はどうなるの?ということは書かれていない。
どうしても正面から答えたくないらしい。
33 有価証券
消費税法についての記述なし。
他の項目が3〜4頁使う中、2頁しか使っていないわけで、紙幅は言い訳にはならない。
36 弁済
「なお、個人事業主に報酬債権を弁済する場合など、支払者に源泉徴収義務があることはいうまでもありません(所税204条、207条参照)。」
そんな当たり前のように言い切られてもなあ。
支払内容にしても支払者にしても、条件があるわけで。
『所得税法204条に掲げる源泉徴収義務のある「報酬」を支払う場合は源泉徴収義務がある』という同語反復ですか。
40 供託
「ポイント」に書いてることが、なぜかその項目のポイントではなく設例2の回答。
それはポイントではありませんよ。
めずらしく設例に正面から答えていると思ったら、1の回答は「本文」、2の回答は「ポイント」に配置するという謎の構成。
43 第三者のためにする契約
生命保険金の記述が「89 相続財産1」「59 終身定期金契約」とダダカブり。
ていうか設問の意味がねえ。
44 契約の解除
「譲渡契約等により発生した所得が事業所得あるいは法人所得の場合、契約解除の事実が生じた年度の必要経費ないし損金として処理されることになります。これは、事業所得や法人税の課税所得は事業により継続的に発生するもので、その収益及び費用が期間的に対応するのであって、費用と収益が個別に対応するものとされる譲渡所得等とは異なっていることによります。」
ここにでてくる「期間対応」と「個別対応」の使い方、ものすごい違和感あり。
上記説明では以下のような図式を描いています。
譲渡所得: 個別対応⇒更正の請求できる
事業所得: 期間対応⇒更正の請求できない
が、事業所得の必要経費には、販管費のような期間対応のものだけではなく、原価のような個別対応のものもあります。
譲渡所得: 個別対応
事業所得: 個別対応+期間対応
所得税法 第三十七条(必要経費)
1 その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。
ので、上記理由づけはおかしい。
そもそも、「個別対応/期間対応」というのは収益と費用の対応関係をいうにすぎません。
とすると、契約解除があった場合に、当初契約時に遡って収益と費用を修正する、という結論だってありうるわけです。
【期間対応】
A 収益・費用とも遡る
B 収益・費用とも遡らない
遡らないのは、この記述の中にもあるとおり事業所得が「継続モノ」だからでしょう(ので、事業廃止する場合の手当てがある)。
遡るとすると、それ以降の期・年度を順繰りに修正しなければならなくなって煩雑、という消極的理由もあるでしょうし。
期間対応云々いうのは、それっぽいことを言おうとして(筆が)スベっているだけ。
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2020年08月17日
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posted by ウロ at 10:12| Comment(0)
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