2020年08月24日

アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民4)

 次は「契約各論」のうち典型契約。

「新 実務家のための税務相談(民法編) 第2版」(有斐閣2020)
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民1)
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民2)
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民3)

45 贈与

 この項目以降は「○○契約」になっているのに、なぜかこの項目だけ「贈与」。
 こういうしょうもない不整合、無駄に気になる。


「なお、棚卸資産等は、譲渡所得の対象資産から除外されています(所税33条2項)。」

 この文章の何がおかしいの、と思うかもしれません。
 これ自体がおかしいわけではありません。

 この文章、なぜか個人⇒法人への贈与の「受贈者」側(法人側)の税務処理として書かれているんですよね。
 なんですか、貼り付け場所を間違えたとかですか。

【盛大に貼り付け場所を間違える例】
後藤巻則「契約法講義 第4版」(弘文堂2017)


「取引先に対するものであれば販売拡張費」

 すまん、この科目名初めて見たわ。私が無知なだけですか。

 あるいは、勘定科目をハンコで押していたような神代のころに使われていたようなやつでしょうか。

46 負担付贈与契約

「この事案で、裁判所は、負担付贈与は所得税法59条および60条の「贈与」にはあたらず、夫には、夫が得た経済的利益(負担付贈与契約における妻の負担額)を対価の額とする譲渡所得課税がなされると判断しました。」(東京高判60.12.17、最判63.7.19)

 これだけ読んで、60条はともかく59条のほうは意味がわからないんじゃないですかね。

【負担付贈与】
 60条の「贈与」にあたらない ⇒ 取得費の引き継ぎなし
 59条の「贈与」にあたらない ⇒ みなし譲渡の適用なし

 みなし譲渡の適用ないのに、なんで譲渡所得課税されるんだよと。

 これは納税者側の主張のロジックをちゃんと説明しないと意味不明なままでしょう。

【納税者のロジック】
 ア 59条は課税されない取引を課税できるようにしたもの。
 イ 同条は「法人」に対する「贈与」のみ課税している。
 ウ 単に「贈与」とある以上、負担付贈与も含まれる。
 エ よって、負担付贈与も法人に対するものだけが課税され、
   個人に対するものは課税されない。

 これに対して裁判所の側では、

 ア そもそも負担付贈与は33条で課税される。

 ここでもう、納税者の主張を崩すのは終わっています。
 あとの59条の話は、納税者のロジックにお付き合いしただけの付録。

 イ 59条は対価がない取引の譲渡対価を時価とするためのもの。
 ウ 負担付贈与は負担額が譲渡対価となるから59条は適用不要。

 ここまで説明しないと、59条に関する判示を理解するの無理だと思います。

 判決要旨から判例を理解しようとすると、こういう論点切り抜き型の書き方になってしまいがち。
 学生がレポートでやると教授に怒られるタイプの。


47 死因贈与契約

「法人が死因贈与により財産を取得した場合」「贈与者の側では、いわゆるみなし譲渡に該当し、所得税が課されます(所税59条1項1号)。」

 これは、被相続人の準確定申告となるということを言っているのかどうか、はっきりしない。

 もしそうだとすると、「死因売買」の場合に相続人の確定申告となるとはっきり書いてある下記項目との整合性はどのように理解すればよいか。

アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民1)
12 条件・期限


48 売買契約

設問「〜複雑で重い基本契約書になりそうです。何かよい対応策はありませんか。」

 この答えが、権利確定主義の話と対価の妥当性の話。

 質問者はこれで満足されたのでしょうか。


50 (金銭)消費貸借契約

 特例基準割合とか平均調達金利といった実務的な話が出てこない。

No.2606 金銭を貸し付けたとき

51 使用貸借契約
52 賃貸借契約・借地借家法
53 敷金・礼金・更新料・権利金


 いずれも土地貸借の話をしているのに、項目切り離したらダメでしょうよ。


54 雇用契約

「これを付加的給付(フリンジ・ベネフィット)といいます。」「〜研究開発費等がこれにあたります。」

 付加的給付となる研究開発費ってなんだろう。


56 委任契約

「前受けする報酬は権利獲得として収入とするのか、費用収益対応原則にしたがうのかが問題となります。」

 「費用収益対応の原則」は、いつ費用を計上するかについての原則であって、収益の原則ではないと思いますけども。
 下記項目でもでてきましたが、なんか会計っぽい用語をねじ込まないといけない縛りでもあるんですか。

アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民3)
44 契約の解除


「委任契約書は印紙税の不課税文書となりますが、受任業務が何らかの成果物の完成・完了をともなうときは請負契約に該当する場合があるのでご注意ください。」

 こういうところ、意地でも具体的な例示を出さないのが本書の一般的な傾向。


57 寄託契約

 継続取引なんだから、収益(費用)計上時期でも書けばいいのに。

アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民5)
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民6)
アクティブ・ラーニング租税法【実践編】(実税民まとめ)
posted by ウロ at 15:11| Comment(0) | アクティブ・ラーニング
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