むしろなぜ、このような法学入門書が今まで出版されてこなかったのか。
森田果「法学を学ぶのはなぜ?」(有斐閣2020)
なにが「むしろ」なのかといえば、法の「機能」に絞った記述がなされた法学入門書というのが、なぜ今までに出版されていなかったのか、ということです。
大家の総決算系は別として、ほとんどの法学入門書が「知識陳列系」でした。
【総決算系】
団藤重光「法学の基礎 第2版」(有斐閣2007)
三ケ月章「法学入門」(弘文堂1982)
星野英一「法学入門」(有斐閣2010)
田中成明「法学入門 新版」(有斐閣2016)
五十嵐清「法学入門 第4版 新装版」(日本評論社2017)
全くの前提知識や社会経験がない人を法学に誘おうと思ったら、本書のように徹底して法の機能面を重視した記述することになるはずなのですが。
知識の陳列は、入門したあとの個別の実定法ごとにやればいいわけで。
やはり「法学入門」という名前で出版されている大部分の書籍が、法学部以外の学部で実施されている『法学』という名前の講義用のテキストだから、なんですかね。
○
今までですと、オススメの法学入門書を尋ねられても、それぞれの勉強目的を確認してからでないとお答えしづらいところでした。
これからは、とりあえずこれを読め、ということにします。
総決算系のように「分からない箇所があったら一通り勉強してから再読しましょう」といった注意をすることなく、「前から順番に理解しながら読んでいきなさい」ということができますし。
なお、森田果先生といえば、下記記事でも「機能」重視の書籍を紹介していますね。
小塚荘一郎,森田果『支払決済法 第3版』(商事法務2018)
○
ところで、異様に《胴ロング男子》な表紙イラストはどういう意図なのか。
アマゾン書影だとしっかり帯で隠されていますが、帯をめくっていただくと、頭1個分身長の低い隣の女子と腰の位置が同じで、すごい違和感を味わえますよ。
まさか、そういう仕掛け本ですか。
道垣内正人先生の入門書でもそうでしたが、惹きのある個性的なイラストを載せるノルマでも、あるんですか。
道垣内正人「自分で考えるちょっと違った法学入門 第4版」(有斐閣2019)
まったくの無関係ですが、下記のようなガチの美麗なイラストを表紙にしている法学書もある中で、わざわざ上記のような特色のあるイラストを採用する理由を、ぜひ知りたい。
大島義則「行政法ガール2」(法律文化社2020)
これがおしりたんていさんみたいに、イケメンかつおしり顔であることに物語上意味がある、のであれば分かります。
「なんでおしり顔なんだよ!」などとイチャモンをつけるような野暮なことはいたしません。
トロル「おしりたんてい」(ポプラ社2012)
が、本書では、胴ロング男子がその胴ロングを活かした法解釈を展開する、などといった物語(Tails of Legal Long-Torso)では決してないわけで。
2021年01月11日
森田果「法学を学ぶのはなぜ?」(有斐閣2020)
posted by ウロ at 10:49| Comment(0)
| 法学入門書探訪
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