2021年02月08日

支払調書における「支払金額」(支払の確定した金額)について【追補】

 当ブログは、インターネット上に開陳しておきながら、基本的に閲覧者のニーズというものを考慮してません。
 頭の整理用に、自分が思いついたことを書きたいように書くだけで。

 にもかかわらず、ラッキーパンチ的に、多くの方に閲覧していただける記事が出来上がることが、稀にあります。

 1月中は下記記事のアクセスが急に増えます。
 あくまでも、平時と比べてというにすぎませんが。

支払調書における「支払金額」(支払の確定した金額)について

 ただ、せっかくアクセスしていただいても、当ブログの執筆方針が上述のとおりのものであるため、ご期待に添える内容とはなりえない。
 いわゆる「お役立ち記事性」が著しく欠如しているため、あれこれと「考え方」は書かれているものの、ちゃんとした「答え」が書かれていません。

 今回も上記記事の追補ではあるのですが、いつもの「お役立たない記事」の系列です。


 国税庁の「質疑応答事例」には、次のようなものがあります。

前払家賃の記載方法

 内容を抜粋すると、次のようなことが書かれています。

・「確定した対価の金額」とは、原則として、相手方にその支払を請求し得ることとなった金額をいうものと解されています。
・その年中に支払うべきことが確定している対価の金額は、10月分から翌年1月分の4か月分の家賃の金額となり、


 前払家賃は「支払期日ベース」で集計するんだと。
 「請求しうる」なので、実際に支払っていなくても、支払期日がくれば集計すべきとなるのでしょう。

 じゃあってことで、報酬等も同じく「支払期日ベース」でいいのか、というと即断しがたい。
 というのも、ここの記述はあくまでも「前払い」の場合。
 「後払い」(1月分家賃を2月末に支払う)の場合に「相手方にその支払を請求し得ることとなった」がいつとなるのか、はっきりしない。

 私自身は「後払い」の場合も支払期日がくるまでは支払が確定していない、と思います。
 が、たとえば1月分家賃は1月末経過時点で「相手方にその支払を請求し得ることとなった」と読むことも、可能っちゃ可能。支払期日が来ていないだけで、請求しうる地位は取得ずみなんだと。

「相手方にその支払を請求し得ることとなった」
 支払期日説 支払期日が到来して払ってもらえる状態になった
 発生日説 支払請求権が発生した(支払期日未到来でも)

 報酬等の場合も、同様に理解が分かれることになるはずです。


 他に手がかりとなりそうなものとしては、前の記事でも引用した所得税基本通達。
 それぞれ、役員賞与と配当に関するものです。

(支払の確定した日から1年を経過した日)
181−5 法第181条第2項に規定する「支払の確定した日から1年を経過した日」とは、その支払の確定した日(36−4に定める日をいう。)の属する年の翌年の応当日の翌日をいうことに留意する。

(支払の確定した日から1年を経過した日)
183−1 法第183条第2項の規定する「支払の確定した日から1年を経過した日」とは、その支払の確定した日(36−9に定める日をいう。)の属する年の翌年の応当日の翌日をいうことに留意する。

(配当所得の収入金額の収入すべき時期)
36−4 配当所得の収入金額の収入すべき時期は、法第36条第3項に規定するものを除き、それぞれ次に掲げる日によるものとする。
(1) 法第24条第1項((配当所得))に規定する剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配、金銭の分配又は基金利息(以下この項において「剰余金の配当等」という。)については、当該剰余金の配当等について定めたその効力を生ずる日。ただし、その効力を生ずる日を定めていない場合には、当該剰余金の配当等を行う法人の社員総会その他正当な権限を有する機関の決議があった日
(以下略)

(給与所得の収入金額の収入すべき時期)
36−9 給与所得の収入金額の収入すべき時期は、それぞれ次に掲げる日によるものとする。
(1) 契約又は慣習その他株主総会の決議等により支給日が定められている給与等(次の(2)に掲げるものを除く。)についてはその支給日、その日が定められていないものについてはその支給を受けた日
(以下略)


 収入の年度帰属ルールと同じでいくんだと。

 これだけみると、「他の所得の支払確定日も収入の年度帰属ルールと同じだ」(類推解釈)と即断しがちですが、決してそうではない。すべての所得区分において「支払確定日=収入すべき日」だというならば、総則部分にまとめて書けばいいはず。

 が、実際にはこの2つのことしか書いていないわけで。そうすると「配当と役員賞与は収入帰属ルールを流用できるから明記しただけで、他の所得は知らん」(反対解釈)と理解することも可能です。

 前払家賃含めてよくよくみてみると、すべて「支払期日」なんですよね。

【収入帰属ルール】
  不動産所得(前払家賃): 支払期日 (例外あり)
  配当所得: 効力を生ずる日=支払期日
  給与所得(役員賞与): 支給期日

 ので、「支払確定日=支払期日」と理解することもできます。

  A説 支払確定日=収入すべき日
  B説 支払確定日=支払期日


 ここまで考えてみて、大元の「収入の年度帰属」ルールのほうにも何やら違和感を感じてきました。

 ということで、気力があればそちら側を検討してみます。
 典型論点を正面を扱うことは、実力的になるべく避けてきたところではありますが(強い相手と闘わない)。

※追記;しました。
さよなら「権利確定主義」(その1) 〜事業所得と給与所得
さよなら「権利確定主義」(その2) 〜不動産所得
さよなら「権利確定主義」(その3) 〜譲渡所得
さよなら「権利確定主義」(その4) 〜違法所得
posted by ウロ at 11:35| Comment(0) | 所得税法
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