オーバーホール租税法・序論 〜小規模宅地等の特例を素材に
タックスアンサーの中の譲歩と抵抗 〜小規模宅地等の特例を素材に
下記別添のP.10。
資産課税課情報第1号
「租税特別措置法(相続税法の特例関係)の取扱いについて」の一部改正について(法令解釈通達)のあらまし(情報)(平成26年1月15日)
資産課税課情報(国税庁サイト)
【参考】
本事例において、相続人である子乙が被相続人甲と生計を一にする親族である場合にも、丙が取得した乙の居住の用に供されていたB部分は、措置法令第40条の2第4項の規定により被相続人等の居住の用に供されていた部分に含まれることから、被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当するものとして取り扱うことができる。
したがって、乙が甲と生計を一にする親族である場合にも、丙が取得した乙の居住の用に供されていたB部分は、上記「(2) 丙が相続により取得した部分」と同様に特定居住用宅地等に該当することとなる。
事例を簡略化すると次のとおり(情報では事例3ですが、ここでは事例1とします)。
《事例1》
・被相続人:甲、相続人:子乙、子丙
・土地 甲所有
・建物 甲所有(2世帯住宅・区分所有なし)
・1階(B部分)に乙居住、2階(A部分)に甲居住 (生計一or別)
ア 乙が全体取得 ○(乙は甲となんちゃって同居しているので)
イ 丙が全体取得 ○(乙は甲とガチ同居していないので)
ウ 乙丙が1/2づつ取得 ○(アイの合成)
本文ではウで乙が「生計別」の場合、上記引用の【参考】では同じく「生計一」の場合が書かれています。
いずれの場合でも、乙丙の持分全体に特例受けられるんだと。
○
こうなってくると、タックスアンサーの「除きます」ルール、ますます意味が分からないですよね。
2 「被相続人の居住の用に供されていた宅地等」が、被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物(「建物の区分所有等に関する法律第1条の規定に該当する建物」※を除きます。)の敷地の用に供されていたものである場合には、その敷地の用に供されていた宅地等のうち被相続人の親族の居住の用に供されていた部分(上記〔特定居住用宅地等の要件〕区分Aに該当する部分を除きます。)を含みます。
No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
情報の【参考】では「含まれる」としながら、タックスアンサーでは「除きます」としていると。
穿った見方をするならば、一般に目の触れやすいタックスアンサーでは適用範囲を狭く、触れにくい情報では広く、説明を書き分けているということもできます。
○
除きますルール、どの場面で働くか想像してみると分かるのですが、「家なき子」を排除する場面です。
というのも、「@からAを除く」という物言い、《事例1》のように除かないと@に含まれてしまう場合を想定しているはずです。
次の《事例2》のように、はじめから@とAが別建物であれば、わざわざ除きますという必要はない。
適用範囲がかぶっていないので、@から除きようがない。
《事例2》
・土地 甲所有 (建物ABが隣接して建っている)
・建物A 甲居住 ←@
・建物B 乙居住(生計一) ←A
また、《事例3》のように、Aを除いたら丸ごと@が無くなるような事例も想定していないはずです。
《事例3》
・土地 甲所有
・建物 甲乙ガチ居住(生計一) ←@A
そうすると、やはり《事例1》のように、生計一親族の独立部分があり、かつそこが@と重複している場合を想定していることになるのでしょう。
で、生計一親族乙からすれば、除かれた部分はAでいけば済む話なので不都合はありません。
除かれて困るのは家なき子丙のほう。
これまでの改正では、せっかく創設された家なき子特例に対して、その適用を制限する取得者要件が盛り込まれてきたわけです。
タックスアンサーでは、このような改正の「方向性」を汲み取って、勇み足をかましているのではないか、と思えます。
が、条文から読み取れない立法担当者の「想い」から何某かの解釈を導くことの俗悪さは、これまでにも述べてきたとおりです。
横流しする趣旨解釈(TPR事件・東京高裁令和元年12月11日判決)
あの日見た特例の趣旨を僕達はまだ知らない。 〜家なき子特例の趣旨探訪3(完)
アレオレ租税法 〜立案者意思は立法者意思か?
○
タックスアンサー、通常は、法令や通達などから直接読み取れることで構成されているものが大部分です。
そんななかで、独自の解釈が混ざり込んでいると、その記述が浮き上がって見える。
受験生の必需品、「暗記シート」で隠してみると、その部分だけ文字が消えない、みたいな。
いまのところ、そのような暗記シートに対応するような便利グッズは出ていませんので、日々、法令通達をしっかり読み込んでおき、自ずから異常値を感知できるようしておくことが大事なんでしょう。
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