2021年02月22日

税務訴訟におけるゴリ押しVS誉めごろし 〜税務トロイの木馬(Tax Trojan horse)

 税法分野における裁決・判決を眺めていると、

  ・あえてギリギリを攻めて租税回避チャレンジ狙っているんだろうな

とか、

  ・うっかりミスを後付けの理由でどうにか正当化しようとしているんだろうな

と感じる事案を見かけることがあります。

 もちろん、判決文に正面からそんなことが書かれていることはありません。
 が、15%未満までOKなところを14.99%に調整していたりすると、「チャレンジングだなあ」と思ってしまいます。

 巷に流布している判例学習法によれば、「判例は事案との関係で理解すべし」という教義が唱えられています。
 もちろんそれ自体は大事なことではあります。が、それを額面通りに理解して、必死になって判決文記載の認定事実だけを読み込んでも、その判決を十分に理解できるとは限りません。

 というのも、判決文記載の事実は、当事者が主張した中で理由付けに必要だと裁判官が思った事実が並んでいるにとどまります。
 実際に裁判所の判断に影響を与えた要素が網羅されているわけではない。もしかしたら、結論を左右した決定的な要素が、認定外のどこかにあるかもしれない。

 とはいえ、外野にはこれら事情は分かり得ない。あたかも認定事実だけから結論を導き出したみたいな書き方するし。
としても、なぜそのような紛争が起こったのか、その背景事情を推測できるだけの知識・経験があれば、理解はしやすくなるでしょう。

 税法以外でも、たとえば会社法における決議無効・取消・不存在の訴えなんて、表向きの無効事由等と本来争いたい事項が盛大にズレていることがありうるわけです。
 ここでも、そのような争いが起こる背景事情を理解できるだけの知識・経験があれば、当該判決を理解するのに、役に立つはずです。
 
 「判例学習本」にもこういう裏読みの技法を書いておいてほしいんですが、まあさすがにゲスの勘ぐりみたいなことを、公刊物に記載するわけにはいきませんかね。


 紛争系の納税者の皆様が、日常系税理士からすると「そんな後付けさすがに通用しないしょや」と思ってしまうような訴訟を提起してくれるおかげで、税務判決が充実していきます。
 当事者的には、漁夫の利感を強く感じてしまうかもしれませんが。

 法学学習において、判決中心の勉強をしてしまうと、頭の中が異常事例ばかりとなって日常的な処理の理解がおろそかになりがちになります。
 そんな中、「そりゃそうだろ」レベルの地に足のついた判決があってくれると、日常系税務にも非常に参考にすることができます。

【通常事例思考】
米倉明「プレップ民法(第5版)」(弘文堂2018)
内田勝一「借地借家法案内」(勁草書房2017)
「定期同額給与」のパンドラ(やめときゃよかった)

 ただし、変な争い方をされて変な判決がでてしまっても、それはそれで迷惑。
 そんな判決があるせいで、税務調査時に納税者不利に援用されても困りますし。


 さて、ここまでは、本ブログでもたびたび言及される『判決(学習)論』の一側面。
 ここからは、今回参照する判決について。

平成25年判決分(税務訴訟資料第263号「順号12125〜12365、12379〜12381」)
 12315 東京地方 所得税更正処分取消等請求事件 平成25年10月22日
 12314 東京地方 贈与税決定処分取消等請求事件、贈与税更正処分取消等請求事件 平成25年10月22日
平成26年判決分(税務訴訟資料第264号「順号12382〜12583」)
 12461 東京高等 各所得税更正処分取消等請求控訴事件 平成26年4月23日
 12434 東京高等 贈与税決定処分取消等請求控訴事件 平成26年3月18日
平成27年判決分(税務訴訟資料第265号「順号12584〜12778」)
 12661 最高二小 所得税更正処分等取消請求上告及び上告受理事件 平成27年5月13日
 12662 最高二小 贈与税決定処分取消等請求上告及び上告受理事件 平成27年5月13日

 納税者の主張を見ているとどうにも後付感が強い。
 ではありますが、うっかりミスということではなく、一方当事者の意向で低額譲渡せざるをえなかったことの尻拭い、といった印象を受けました。
 あくまでも認定事実からの邪推にすぎませんが。

 なんとなくですが、納税者的には「だから否認されるって言ったじゃん」て感じで、頑張って理屈をひねり出したように感じます。
 でまあ、裁判所には通用しなかったと。

 外野からすると、込み入った所得税法9条、59条、60条、相続税法7条あたりの関係を理解するのに、いい参考例になっています。

・所得税法

第九条(非課税所得)
1 次に掲げる所得については、所得税を課さない。
十六 相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの(相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)の規定により相続、遺贈又は個人からの贈与により取得したものとみなされるものを含む。)

第三十八条(譲渡所得の金額の計算上控除する取得費)
1 譲渡所得の金額の計算上控除する資産の取得費は、別段の定めがあるものを除き、その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額とする。

第五十九条(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)
1 次に掲げる事由により居住者の有する譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その者の譲渡所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす。
一 贈与(法人に対するものに限る。)又は
  相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは
  遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)
二 著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)
2 居住者が前項に規定する資産を個人に対し同項第二号に規定する対価の額により譲渡した場合において、当該対価の額が当該資産の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上控除する必要経費又は取得費及び譲渡に要した費用の額の合計額に満たないときは、その不足額は、その譲渡所得の金額の金額の計算上、なかつたものとみなす。

第六十条(贈与等により取得した資産の取得費等)
1 居住者が次に掲げる事由により取得した前条第一項に規定する資産を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算については、その者が引き続きこれを所有していたものとみなす。
一 贈与、
  相続(限定承認に係るものを除く。)又は
  遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除く。)
二 前条第二項の規定に該当する譲渡
4 居住者が前条第一項第一号に掲げる相続又は遺贈により取得した資産を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算については、その者が当該資産をその取得の時における価額に相当する金額により取得したものとみなす。

・相続税法

第七条(贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合)
 著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合においては、当該財産の譲渡があつた時において、当該財産の譲渡を受けた者が、当該対価と当該譲渡があつた時における当該財産の時価(当該財産の評価について第三章に特別の定めがある場合には、その規定により評価した価額)との差額に相当する金額を当該財産を譲渡した者から贈与(当該財産の譲渡が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。



 論点を単純化していうと、みなし贈与課税された資産を売却した場合の取得費は、実際の取引価額かみなされた評価額か、というものです。
 事件としては贈与税(みなし贈与)と所得税(みなし譲渡)の2ルートあって論点も複数ありますが、今回は所得税ルートの取得費のところのみ扱います。

 なお、本事件では「通達による時価評価の合理性」も論点になっているところ、同族会社の判定時期については「譲渡前」とされています。
 まあ、そうですよね。

 ほんと、何だったんでしょうか、あの高裁判決。

【あの高裁判決】
解釈の解釈を解釈する(free rider) 〜東京高裁平成30年7月19日判決


 以下、本論。
 本事件の事案そのものではなく、モデル化したものを使います。

《前提事実》
・A→B→Cと転々譲渡。
・ABCはいずれも個人(みなし譲渡の出番は無しです)。
・取引対象は譲渡所得の課税対象となるものであれば何でも。
・相続税法上の時価と所得税法上の時価は同額と仮定します。
・時価はA→B譲渡時に50、B→C譲渡時に150。
・Aの取得費は10。
・B→Cの売買価格は150。
・消費税は考慮外。

 これら事実を固定し、これ以外のパラメータをいじることで、ABの課税関係がどう動くかを検討します。
 まずは基本事例から。

課税関係.png


《事例1》
 A→B 売買 50
 B→C 売買 150

 時価通りに取引(この数字は取引価額)。
 この場合の課税標準は次のとおり。

 A 所得 40(50-10)
 B 所得 100(150-50)

 通算140の資産増加益に譲渡所得課税されると。
 まあ、普通ですよね。

 次に、A→Bを「贈与」に変えたらどうなるか。

《事例2》
 A→B 贈与
 B→C 売買 150

 A 所得 なし
 B 贈与 50(時価50)
 B 所得 140(150-10) 所得税法60条1項1号

 Aの取得費10がBに引き継がれます。
 課税繰延の典型例としてよく出てくるやつで、一般的に問題視されることはないはずです。

 では、《事例2》で現物そのものを贈与するかわりに現金50を贈与して時価売買したらどうなるか(お金をぐるっと回す)。

《事例3》
 A→B 贈与 現金50
 A→B 売買 50
 B→C 売買 150

 A 所得 40(50-10)
 B 贈与 50(現金50)
 B 所得 100(150-50)

 《事例2》とは、所得通算140で変わらないのですが、内訳がAB間で変動しています。

 譲渡所得が総合課税の場合とか、あるいは分離課税でも特例が使える/使えないによって、AB間の内訳をイジりたい、という誘因が働くことはあるでしょう。
 では納税者は、有利不利に応じて2と3を使い分けることが可能でしょうか。
 いわゆる『私法上の法律構成による否認』の一場面です。

 そもそも所得税法60条が課税繰延しているの、「贈与時に譲渡所得課税するのは贈与者に可哀相だから」という趣旨のはずです。
 であれば繰延を受けるかどうかは納税者の選択に委ねるのが筋です。

 ところが、同条では「みなす」などとして、選択ができない規定っぷりになっています。
 そうとすると、《事例3》は《事例2》の回避事例だとして、贈与に引き直されてしまうことになるでしょうか。

 この問題は完全に余談なので、この程度にしておきます。


 ここまでが露払いの前座で、次からが本題。

《事例4》
 A→B 売買 20 (低額譲渡)
 B→C 売買 150

 A 所得 10(20-10)
 B 贈与 30(50-20) みなし贈与 相続税法7条
 B 所得 130(150-20※) 

 時価50のものを20で売ったので、30は贈与とみなされます。
 問題が※のところで、実際の取引価額である20なのか、みなし贈与の評価額50なのか、ということです。

《評価額説だと》
  B 所得 100(150-50)

 資産増加益140(150-10)のうち、10はAに所得課税、30はみなし贈与課税されているんだから、Bが所得課税される残りは100じゃないのかと。

 《事例2》と《事例3》の関係同様、《事例4》のぐるっと現金バージョンも書いておきます。

《事例5》
 A→B 贈与 現金30
 A→B 売買 50
 B→C 売買 150

 A 所得 40(50-10)
 B 贈与 30(現金30)
 B 所得 100(150-50)

 AがBに現金30を贈与して残り20をBが自己負担した、ということです。
 こちらも、《事例2》《事例3》の関係と同じように、所得の内訳が変動しているので、やはり同じ問題が生じます。


 判決では、地裁から最高裁まで「実際の取引価額」でいくとされています。
(この論点につき実質的な判断をしているのは地裁判決(12315)なので、以下、同判決を念頭に置いて記述します。)

 みなし贈与課税された資産の取得の「経済的価値」と、譲渡所得課税される資産増加益という「経済的価値」は同一ではないというのが理由になっています。

 確かに、取得費引継ぎの典型例である《事例2》では、資産の取得50に(通常の)贈与課税ずみであるにもかかわらず、140に譲渡所得課税とされていることについて、特に異論が出されることはありません。
 このことからすれば、結論は「実際の取引価額」でよいのでしょう。
(このように、典型例を念頭に置けば無理がある主張をしているあたりが、納税者の主張に対する「後付感」を抱かせる所以です。)

 ただ、その理由付けが「経済的価値が同一でない」というの、どうにも腑に落ちない。

 事例2と4を図で書くとこうなります。
 「A'」は、Aの取得費をBが引き継ぐという意味合いです。

二重課税.png

 かぶってますよね。

 もちろん、二重課税それ自体が悪いわけではありません。

浅妻章如「ホームラン・ボールを拾って売ったら二回課税されるのか」(中央経済社2020)

 たとえば、不動産売買という一つの取引に起因して、所得税・法人税・消費税・不動産取得税・固定資産税・都市計画税・印紙税・登録免許税などなど、いろんな税金が発生します。
 「あの手この手で税金とりやがってふざけんな」という人はいるでしょうが、これを「理論的にみて二重(以上)課税だから違法だ」と主張している人は見かけません。

 この結論をそれらしく正当化したいならば、「経済的価値は別」などと苦し紛れの説明をするよりも、「経済的価値は一部かぶっているかもしれないが、贈与税は資産そのものののストック面、譲渡所得税は資産増加益というフロー面に課税しているからセーフ」という物言いのほうがまだましな気がします。

 確かに、「二重課税でも問題ない」と正面から言ってしまうと、あらゆる方面から批判されることは目に見えている。二重課税(らしきもの)に対する拒否反応には根強いものがあります。どれだけ数理によって不合理性が実証されようとも、そう簡単に納得してもらえるものではない。

 ですし、所得税法9条1項16号の解釈論を深堀りしなければならなくなります。
 ので、裁判所の表向きの理由としては、意地でも別のものに課税しているというしかないのでしょう。
 が、すんなり理解するのが難渋な、苦し紛れの物言いとなってしまっている。

 ちなみに、「みんな」に理解してもらうためには数学よりも自然言語、というのは森田果先生の法学入門書にも書かれているところです。

森田果「法学を学ぶのはなぜ?」(有斐閣2020)


 ちなみに、「生命保険年金受給権」の相続税・所得税を二重課税とした最高裁判決も、この「ストック/フロー」の枠組みで説明することは可能です。
 すなわち、将来年金をもらえる権利というストック面に相続税を課税しておきながら、さらに実際にもらった年金というストックに一時所得課税するのは二重課税だ、という感じ。

 本事件の判決と年金の最高裁判決との結論の分かれ目がどこにあるのかといえば、譲渡所得と一時所得の所得の捉え方の違いにあるのだと思います。
 差額に課税するのか、得たものそれ自体に課税するのかという。
 何が所得であるかがそれぞれ異なるから、どのような場合に二重課税となるのかも自ずから違ってきます。
 ので、「所得税と相続税」という括りで年金判決をそのまま横流しするのは無理があります。

 さらなる余談ですが、このように譲渡所得と一時所得とで異なる内実を有しているにもかかわらず、これら違いを無視して統一的な所得概念をもって現行法の所得を定義づけようとする所作、私にはおよそ理解できません。
 そのような定義は、現行法上のすべての所得に当てはまる説明となっていないか、あるいはすべてに当てはめようとして漠然とした定義になるか、いずれにしても現行法に適合的な定義付けにはならないと思います。


 さて、どうやって正当化するかはともかく、本当に両方課税することに問題はないでしょうか。
 比較用に次の事例を追加します。

 《事例2》でAの取得費が40だったとしましょう。

《事例6》
 Aの取得費40
 A→B 贈与
 B→C 売買 150

 A 所得 なし
 B 贈与 50(時価50)
 B 所得 110(150-40) 所得税法60条1項1号

 《事例2》と比べてみて、Bにとっては、時価50のモノをもらっていることとそれを150で売ったという点で全く同じです。
 にもかかわらず、《事例6》ではBの所得が110に減っています。

 なぜそうなるかといえば、Bとは無関係の「Aがいくらで取得したか」という事情にBの譲渡益が左右されてしまうからです。

 これのどこが変なのかといえば、贈与税の時価評価がいずれも同じ50であるところにあるのでしょう。
 取得費引継ぎは60条に明記されているし、資産増加益がトータル110であることは間違いないし、ということで、残る贈与税の時価評価のところがおかしいんじゃないかと。

 では、贈与時において《事例2》と《事例6》とで何が違うか。
 資産の抱えている含み益が違うせいで将来譲渡したときに課税される額が違うという点です。

 《事例2》 将来譲渡したら譲渡益40上乗せされる資産の譲り受け
 《事例6》 将来譲渡したら譲渡益10上乗せされる資産の譲り受け

 将来の税負担が明らかに違うのに、このことが贈与税の時価評価に反映されていないのが問題です(今後はこれを『含み税問題』ということにしましょう)。

 ここで皆さんの頭をよぎったと思われるのが、純資産価額方式における「法人税等相当額」の控除。
 評価会社が保有資産を売ったとしたら生じる利益に課せられる法人税を引いて評価してよいと。

 「含み益に対する税金を考慮して評価すべき」という点ではここでの問題と同じですよね。
 この考えをこちらの場面に応用することができないかどうか。


 本事件の納税者は、「通達は不合理!」「二重課税だ!」と正面からのガチンコ勝負に徹しています。
 もちろん第一次的にはそのような争い方が正道でしょうが、ゴリ押し一辺倒では通用しないことがしばしば(実際、本事件では第一審から上告審まで一蹴され続けている)。

 上述のとおり、評価通達には「法人税等相当額控除」という素晴らしい制度が内在されているわけです。
 そこで、いかに評価通達が優れているかを褒めちぎった上で、「法人税等相当額控除」のお考えがまさに本件でも当てはまります、ぜひこちらにも援用してみましょう、といった主張もできたんじゃないかと(これは所得税ルートではなく贈与税ルートのほうで主張することです)。

 若干厄介なのが、取引目的物が「非上場株式」だったらどう評価するのか、という問題(本事件がまさにそう)。
 というのも、評価会社の保有資産の含み益に対する法人税等相当額を控除しておきながら、さらにその株式の譲渡益に対する譲渡所得税相当額を控除するのは「二重控除」ではないのかと。
 「法人税等相当額」自体、局面によっては控除できないことになっているのは、そのあたりの考慮が働いているからでしょう。

 が、本件では大丈夫。
 本判決の立場からすれば同一の経済的価値ではないことになるので。

 というのも、実際に評価会社が保有資産を売却した後、株主が当該株式を売却した場合を想定すると、
 ・保有資産の含み益(だったもの)に「法人税」が課税される。
 ・その実現した含み益から法人税を引いた残りに「所得税」が課税される。
ことになりますよね(あくまで理念としての記述です)。

 もしこれを二重課税でないといいたいなら、本判決の立場からは「別の経済的価値に課税しているからセーフ」と説明するしかありません。
 とすると、その裏返しである控除を重ねて行っても、同じくセーフと言わざるを得ないはずです(対偶チックな発想)。


 このように、通達を褒めちぎって通達内部の制度をご利用させていただく、経済的価値が別という理由を逆手に取って控除場面でご利用させていただく、といった「トロイの木馬」戦法が、本件では主張できたのではないかと思うのです。

 が、実際にはゴリ押し戦法一辺倒で終わってしまっています(もしかしたら争点整理で落とされたのかもしれませんが)。
 
 確かに、代理人弁護士一人の頭の中で、ゴリ押し志向と誉め殺し志向を両立させるのは難しいのかもしれません(ホコタテ)。であれば、複数弁護士に受任してもらって、それぞれ別側面から争ってもらうのも一考に値するでしょう(二頭体制)。

 トロイの木馬戦法が効くのは、正面突破してくれる本隊の働きのおかげですよね。
 こちらが通達が不合理だと強く言えば言うほど、課税庁側は通達の合理性を根拠付けなければならなくなります。そこで、課税庁にがっちり合理性を根拠付けていただいた後に、その合理性にフリーライドして自分の主張をのっけていくと。

 同じく、別の経済的価値なら課税OKという論拠をしっかり固めてもらってから、その延長線上に、控除も重ねてOKという主張をのっけると(もちろん、実際の訴訟では自由に後出し主張できるわけではありませんが)。

 訴訟戦略として、相手方の主張に正面からぶつかるだけでなく、相手方の主張の中に自分の主張を混入させる、という作戦が効いてくる場面もあると思うんです。


 と、理念上は上述の通り控除すべきだとは思います。

 が、実際には、贈与税評価と所得税評価とは必ずしも一致しないとか、贈与税評価は市場価格よりも低めにでがちといったノイズが入ります。
 ので、「含み税があっても個別に評価することはせず、ざっくり低めに出しているからセーフ」といった判断がでてもおかしくない。
 というか、今まで問題視されていなかったのは、暗にそういうふうに考えられていたからかもしれませんし。

 また、控除をやることになったとしても、すべての資産が対象になるのか、とか、実際にどうやって計算するのか、単純に譲渡所得税等相当額を控除すればいいのか、年金受給権的なややこい算出が必要なのか、といった検討も必要なはずです。
 そのあたりは頭のよろしい人たちにぜひお考えいただければ。
posted by ウロ at 10:59| Comment(0) | 判例イジり
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