2022年02月14日

リーガルマインド住宅ローン控除(その2) 〜転勤と離婚と住宅借入金等特別控除

 前回タイトルから、なんか増えていますが。

リーガルマインド住宅ローン控除(その1) 〜転勤と住宅借入金等特別控除

 まあ、人生山あり谷ありということで。


 前回検討のそもそものきっかけは、次のような事例で住宅ローン控除がどうなるかを確認するためでした。

【検討事例】
1 取得年
  本人:単身赴任、帰郷予定あり
  配偶者:入居・継続居住
2 翌年
  配偶者と離婚
3 離婚年に本人帰郷 または 離婚翌年に本人帰郷

 まず、1の取得年は、通達41-1,41-2のおかげで法1項が適用できます。
 では、翌年離婚した以降はどうなるでしょうか。

 このような問題、例によって、タックスアンサーや《税務お役立ち記事》に書かれることはありません。
 ので、自分で条文にあたるしかない。

 私自身も、ブログネタになるから頑張ってイジり倒しているだけであって、何の必要もないのに何でもかんでも条文に遡る気はありません。特に措置法の条文なんて、所属が措置法だと分かった時点で、忌避感を抱いてしまう類のものです。

 が、どこにも書いていないから、やるしかない。


 前回同様、素材の提示から。

第1項
ア 「居住の用に供した場合」 (入居要件)
 個人が、家屋を平成十一年一月一日から令和三年十二月三十一日までの間にその者の居住の用に供した場合(これらの家屋をその取得の日から六月以内にその者の居住の用に供した場合に限る。)

イ 「引き続き居住の用に供している場合」 (継続居住要件)
 当該居住の用に供した日(「居住日」)の属する年(「居住年」)以後十年間の各年(当該居住日以後その年の十二月三十一日まで引き続きその居住の用に供している年に限る。「適用年」)


 法からすれば、要件イを満たさず「適用なし」となるところです。
 では、通達41-2の要件イ拡張デバイスが使えるかどうか。

41-2(引き続き居住の用に供している場合)
「引き続きその居住の用に供している」とは、新築等をした者が現に引き続きその居住の用に供していることをいうのであるが、これに該当するかどうかの判定に当たっては、次による。
(1)
・その者が、転勤、転地療養その他のやむを得ない事情により、配偶者、扶養親族その他その者と生計を一にする親族と日常の起居を共にしないこととなった場合において、
・その家屋をこれらの親族が引き続きその居住の用に供しており、当該やむを得ない事情が解消した後はその者が共にその家屋に居住することとなると認められるときは、
・その者がその家屋を引き続き居住の用に供しているものとする。


 離婚して「他人」となってしまった以上、通達41-2は機能しません。
 仮にその他人(元配偶者)が引き続き居住していたとしてもです。他人は他人。


 では、本人が帰郷すれば適用ができるかどうか。

 まず、離婚前帰郷であれば、「○まだ配偶者⇒○ご本人」と居住継続が途切れないので、要件イを満たすことになるように思われます。

 これが、離婚後帰郷(離婚年または離婚翌年いずれでも)の場合は、「○まだ配偶者⇒×もう他人⇒○ご本人」と、他人が挟まってしまうので、要件イを満たせないことになりそうです。

 「帰郷するまで離婚待ってください」とでも言わないといけないということでしょうか。


 ここで、通達41-3が機能しないかどうか。
 通達41-3が機能してくれるのであれば、本人帰郷後に法23項が使えることになるはずです。

41-3(居住の用に供しなくなった場合)
・「その者の居住の用に供しなくなった」とは、新築等をした者が現に居住の用に供しなくなったことをいうのであるが、
・給与等の支払者からの転任の命令に伴う転居その他これに準ずるやむを得ない事由に基づいてその者が居住の用に供しなくなった後も、
・配偶者、扶養親族その他その者と生計を一にする親族がその家屋を引き続き居住の用に供していた場合で、
・これらの親族がその者と共に居住することに伴い転居してその家屋を居住の用に供しなくなったときは、
・これに該当するものとする。


 が、通達41-3が想定しているのは、
  1 本人:単身赴任、配偶者:入居・継続居住
  2 配偶者:本人と同居
というものです。
 1は【検討事例】のとおりですが、2が全然違う。離婚の場合などはおよそ想定されていません。


 通達を文理解釈()するかぎり【検討事例】では使いようがありません。

【通達の文理解釈()】
解釈の解釈を解釈する(free rider) 〜東京高裁平成30年7月19日判決

 あとは「趣旨解釈」でどうにかならないか。

 確かに、近時いやに「趣旨解釈」を強調しがちな裁判例が現れています。

横流しする趣旨解釈(TPR事件・東京高裁令和元年12月11日判決)

 が、他方でそれ以上に「措置法の特例は例外なんだから厳格に解釈すべし」という根強い通念が存在しています。
 ということで、おそらく「趣旨解釈」による救済の見込みは極めて低い、というのが私の見立て。

 タイミングが前後するだけで結論が逆転するという、税制お馴染みの落とし穴が、ここにもあるということです。

リーガルマインド住宅ローン控除(その3) 〜転勤と死別と住宅借入金等特別控除
リーガルマインド住宅ローン控除(その4) 〜転勤と死別と姻族と住宅借入金等特別控除
posted by ウロ at 10:43| Comment(0) | 所得税法
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