2022年02月21日

リーガルマインド住宅ローン控除(その3) 〜転勤と死別と住宅借入金等特別控除

 今回は、前回・前々回の検討を踏まえて「死別」の場合を掘り下げてみます。

リーガルマインド住宅ローン控除(その1) 〜転勤と住宅借入金等特別控除
リーガルマインド住宅ローン控除(その2) 〜転勤と離婚と住宅借入金等特別控除


 前座として「本人死亡」の場合から。

【事例1】
1 取得年
  本人:入居・継続居住
2 翌年
  本人:死亡 ⇒空家

 取得年は当然適用ありです。では、翌年はどうなるか。

 前回までの引用では省略していましたが、イ(継続居住要件)の「その年の十二月三十一日」の後ろにはカッコ書きで(その者が死亡した日の属する年にあつては、同日。)というのが挿入されています。

法第1項
ア 「居住の用に供した場合」 (入居要件)
 個人が、家屋を平成十一年一月一日から令和三年十二月三十一日までの間にその者の居住の用に供した場合(これらの家屋をその取得の日から六月以内にその者の居住の用に供した場合に限る。)

イ 「引き続き居住の用に供している場合」 (継続居住要件)
 当該居住の用に供した日(「居住日」)の属する年(「居住年」)以後十年間の各年(当該居住日以後その年の十二月三十一日(その者が死亡した日の属する年にあつては、同日。)まで引き続きその居住の用に供している年に限る。「適用年」)


 それゆえ、翌年においても「死亡日の現況」で判断されるので、適用を受けることが可能になります(準確定申告)。借入金残高は死亡日時点の残高となります。

 なお、誰かが住居を「相続」したとしても、相続は住宅ローン控除における取得原因とはならないので、翌年以降は住宅ローン控除の適用を受けることはできません。


 これを踏まえて真打ち。

【事例2】
1 取得年
  本人:単身赴任、帰郷予定あり
  配偶者:入居・継続居住
2 翌年
  配偶者:死亡 ⇒空家

 通達41-1と41-2で要件ア・イを拡張してくれているおかげで、取得年は適用を受けられます。

41-1(居住の用に供した場合)
 措置法第41条第1項、第6項、第10項、第13項及び第16項に規定する「その者の居住の用に供した場合」とは、同条第1項に規定する居住用家屋(以下第41条関係において「居住用家屋」という。)の新築若しくは居住用家屋で建築後使用されたことのないもの若しくは同項に規定する既存住宅の取得若しくは同条第10項に規定する認定住宅(以下第41条関係において「認定住宅」という。)の新築若しくは認定住宅で建築後使用されたことのないものの取得(以下第41条関係において「新築等」という。)又は同条第1項に規定する増改築等(以下第41条関係において「増改築等」という。)をした者が、現にその居住の用に供した場合をいうのであるが、その者が、転勤、転地療養その他のやむを得ない事情により、配偶者、扶養親族その他その者と生計を一にする親族と日常の起居を共にしていない場合において、その新築の日若しくはその取得の日又は増改築等の日から6月以内にその家屋(増改築等をした家屋については、その増改築等に係る部分。以下41-5までにおいて同じ。)をこれらの親族がその居住の用に供したときで、当該やむを得ない事情が解消した後はその者が共にその家屋に居住することとなると認められるときは、これに該当するものとする。

41-2(引き続き居住の用に供している場合)
 措置法第41条第1項、第6項、第10項、第13項及び第16項に規定する「引き続きその居住の用に供している」とは、新築等又は増改築等をした者が現に引き続きその居住の用に供していることをいうのであるが、これに該当するかどうかの判定に当たっては、次による。
(1) その者が、転勤、転地療養その他のやむを得ない事情により、配偶者、扶養親族その他その者と生計を一にする親族と日常の起居を共にしないこととなった場合において、その家屋をこれらの親族が引き続きその居住の用に供しており、当該やむを得ない事情が解消した後はその者が共にその家屋に居住することとなると認められるときは、その者がその家屋を引き続き居住の用に供しているものとする。


 では、配偶者が「死亡」した翌年はどうなるか。

 今回、通達を省略せずに掲載してみましたが、「家族死別」の場合のルールは何も書かれていません。
 そうすると、通達の文理解釈()からすれば、拡張デバイスの効力が切れて適用を受けられなくなる、という帰結になります。


 では、配偶者と死別後、本人が「帰郷」したら、23項で再適用を受けることができるか。

 23項にも(その者が死亡した日の属する年にあつては、同日。)というカッコ書きが挟まっていますが、これはあくまでも「本人死亡」の場合です。

法第23項
・第一項の規定の適用を受けていた個人が、
・その者に係る所得税法第二十八条第一項に規定する給与等の支払をする者(「給与等の支払者」)からの転任の命令に伴う転居その他これに準ずるやむを得ない事由に基因して
・その適用に係る第一項の居住用家屋をその者の居住の用に供しなくなつたことにより第一項の規定の適用を受けられなくなつた後、
・これらの家屋を再びその者の居住の用に供した場合における第一項の規定の適用については、
・同項に規定する居住年以後十年間(同項に規定する十年間をいう。)の各年のうち、その者がこれらの家屋を再び居住の用に供した日の属する年(その年において、これらの家屋を賃貸の用に供していた場合には、その年の翌年)以後の各年(同日以後その年の十二月三十一日(その者が死亡した日の属する年にあつては、同日。)まで引き続きその居住の用に供している年に限る。)は、同項に規定する適用年とみなす。


 また、通達41-3の拡張条件は「配偶者が本人と同居するために転居した場合」に限られています。

41-3(居住の用に供しなくなった場合)
 措置法第41条第23項及び第26項に規定する「その者の居住の用に供しなくなった」とは、新築等又は増改築等をした者が現に居住の用に供しなくなったことをいうのであるが、同条第23項及び第26項に規定する給与等の支払者からの転任の命令に伴う転居その他これに準ずるやむを得ない事由に基づいてその者が居住の用に供しなくなった後も、配偶者、扶養親族その他その者と生計を一にする親族がその家屋を引き続き居住の用に供していた場合で、これらの親族がその者と共に居住することに伴い転居してその家屋を居住の用に供しなくなったときは、これに該当するものとする。


 そうすると、配偶者「死亡」により空家になった場合は、通達41-3は機能しないことになります。

 が、下記【事例3】【事例4】と比べると、どうもアンバランス。

【事例2】 (配偶者が死亡)
1 取得年 ○(1項、通達41-1,2)
  本人:単身赴任、帰郷予定あり
  配偶者:入居・継続居住
2 翌年 ×
  配偶者:死亡 空家
3 翌々年 ×(?)
  本人:帰郷

⇒配偶者死亡により空家になっているため、翌年・翌々年は適用不可

【事例3】 (配偶者が本人と同居)
1 取得年 ○(1項、通達41-1,2)
  本人:単身赴任、帰郷予定あり
  配偶者:入居・継続居住
2 翌年 ×
  配偶者:本人と同居 ⇒空家
3 翌々年 ○(23項+通達41-3)
  本人+配偶者:帰郷

⇒翌年は空家になっているため適用不可だが、翌々年は法23項+通達41-3により適用可。

【事例4】 (23項の典型例)
1 取得年 ○(1項)
  本人:入居・居住継続
2 翌年 ×
  本人:転勤 ⇒空家
3 翌々年 ○(23項)
  本人:帰郷

⇒翌年は空家になっているため適用不可だが、翌々年は法23項により適用可。


 もちろん、「趣旨解釈」を展開することで、配偶者死亡の場合にも適用を拡張することが可能になるのかもしれません。
 が、措置法分野でそのような拡張解釈が望み薄なのは、すでに述べたとおりです。

「居住の用に供しなくなった場合」とは
  法23項:本人転勤で空家になった場合【事例4】
 通達41-3:家族のみ居住で、家族が「本人と同居」して空家になった場合に拡張【事例3】
 趣旨解釈:家族のみ居住で、家族が「死亡」して空家になった場合に拡張(?)【事例2】


 そうすると、1項を継続適用できるようにするため、配偶者の死を「予知」して単身赴任を早めに切り上げて戻ってこい、ということになるでしょうか。

【税法と予知(オカルティック租税法)】
加算税をめぐる国送法と国税通則法の交錯(平成29年9月1日裁決)

リーガルマインド住宅ローン控除(その4) 〜転勤と死別と姻族と住宅借入金等特別控除
posted by ウロ at 10:54| Comment(0) | 所得税法
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