2022年05月23日

【事例演習】育休期間中の社保免除

 育休期間中の社保免除については、育介法上の育児休業等であることが求められていました。

いろんな産休と育休 〜法間インターフェイス論

 2022年10月からは、育介法も健保法・厚年法も改正法が施行されるわけですが、次のような事例では社保免除が受けられるでしょうか?

【お約束事項】
・法・規の条数は健康保険法のもの。厚年法は省略。
・明示のないかぎり健保法、育介法とも10月改正後を前提とする。
・明示のないかぎり休日は考慮しない。
・通常の育児休業(1歳まで)のみとして、パパ休暇(改正前)や出生時育児休業(改正後)は考慮しない。

【事例1】
 育休期間5/1〜6/15とした場合、5月分は免除になるとして6月分は免除対象となるか?


 6月も休業期間14日以上ある。しかし、14日ルールは開始日と終了日翌日が同一月の場合にかぎり適用されるもの(法159条1項2号)。
 本事例では開始日と終了日翌日は別の月なので14日ルールは適用されず、6月分は免除対象とならない。

【事例2】
 育休期間を5/1〜5/31と6/1〜6/15の2回に分けて取得した場合、6月分給与は免除対象となるか?


 連続している場合は「一の」育児休業等とみなされるため(法159条2項)、事例1同様、6月分は免除対象とはならない。

【事例3】
 育休期間5/1〜5/31の後、6/1だけ「出勤」し、6/2〜6/15育休期間とした場合、6月分給与は免除対象となるか?


 前の終了日と後の開始日の間に「就業」した日がある場合は連続していないことになるので(規135条5項)、6月分は14日ルールが適用されて免除対象となる。

【事例4】
 育休期間5/1〜5/31の後、6/1を「有給休暇」とし、6/2〜15育休期間とした場合、6月分給与は免除対象となるか?


 有給休暇の場合は「就業」とならないため、「一の」育児休業等となり、6月分は免除対象とならない。

【事例5】
 もし6/1が「公休日」で、育休期間5/1〜5/31の後、6/2〜15育休期間とした場合、6月分給与は免除対象となるか?


 公休日の場合は「就業」とならないため、「一の」育児休業等となり、6月分は免除対象とならない。

【事例6】
 事例1〜5で5月に「賞与」を支給した場合、免除対象となるか?

・事例1 育休期間5/1〜6/15と1月超あるため、免除対象となる。
・事例2 育休期間5/1〜6/15と1月超あるため、免除対象となる。
・事例3 育休期間5/1〜5/31と1月以下のため、免除対象とならない。
・事例4 育休期間5/1〜31+6/2〜6/15と1月超あるため、免除対象となる。
・事例5 育休期間5/1〜31+6/2〜6/15と1月超あるため、免除対象となる。

【事例7】
 事例1〜5で6月に「賞与」を支給した場合、賞与は免除対象となるか?

・事例1 育休期間5/1〜6/15と1月超あるが、6月は免除月でないため免除対象とならない。
・事例2 育休期間5/1〜6/15と1月超あるが、6月は免除月でないため免除対象とならない。
・事例3 育休期間6/2〜6/15と1月以下のため、免除対象とならない。
・事例4 育休期間5/1〜6/15と1月超あるが、6月は免除月でないため免除対象とならない。
・事例5 育休期間5/1〜6/15と1月超あるが、6月は免除月でないため免除対象とならない。

【事例8】
 育休期間6/1〜6/7の後、6/8に「出勤」し、6/9〜6/15育休期間とした場合、6月分給与は免除対象となるか?

 規135条4項但書により合算できる(7日+7日)ので、6月分給与は免除対象となる。

 以下は施行日(2022.10.1)をまたがった場合の問題。

【事例9】
 〜2022/9/30までに育児休業@(改正前1回のみ)を取得していたとして、2022/10/1〜10/15に育児休業A(改正後2回目OK)を取得した場合、10月分給与は免除対象となるか?

→改正前に1回目を取得していた場合に、改正後に2回目を取得することは可能。
 育児休業@には改正後159条2項が適用されないため、育児休業@と育児休業Aは連続したものとみなされない。
 それゆえ、10月分給与は同一月内14日以上として免除対象となる。

【事例10】
 事例9で、10月支給の「賞与」は免除対象となるか?

→育児休業@と育児休業Aは連続したものとみなされないため、10月の育休日数は10/1〜10/15の15日となる。
 それゆえ、10月支給の賞与は免除対象とならない。


 以上、法律をそのままあてはめたらこうなるのでは、というところを書いています。実際の運用レベルで調整が入ることは十分ありうることなので、その点は要注意。

○健康保険法

第159条(改正前)
 育児休業等をしている被保険者(略)が使用される事業所の事業主が、厚生労働省令で定めるところにより保険者等に申出をしたときは、その育児休業等を開始した日の属する月からその育児休業等が終了する日の翌日が属する月の前月までの期間、当該被保険者に関する保険料を徴収しない。

第159条 (2022.10.1施行)
 育児休業等をしている被保険者(略)が使用される事業所の事業主が、厚生労働省令で定めるところにより保険者等に申出をしたときは、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める月の当該被保険者に関する保険料(その育児休業等の期間が一月以下である者については、標準報酬月額に係る保険料に限る。)は、徴収しない。
一 その育児休業等を開始した日の属する月とその育児休業等が終了する日の翌日が属する月とが異なる場合 その育児休業等を開始した日の属する月からその育児休業等が終了する日の翌日が属する月の前月までの月
二 その育児休業等を開始した日の属する月とその育児休業等が終了する日の翌日が属する月とが同一であり、かつ、当該月における育児休業等の日数として厚生労働省令で定めるところにより計算した日数が十四日以上である場合 当該月
2 被保険者が連続する二以上の育児休業等をしている場合(これに準ずる場合として厚生労働省令で定める場合を含む。)における前項の規定の適用については、その全部を一の育児休業等とみなす。

附則(令和三年六月一一日法律第六六号)
(施行期日)
第一条 この法律は、令和四年一月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
三 第一条中健康保険法第百五十九条の改正規定(略) 令和四年十月一日
(健康保険法の一部改正に伴う経過措置)
第三条 
3 第一条の規定による改正後の健康保険法第百五十九条の規定は、附則第一条第三号に掲げる規定の施行の日(以下「第三号施行日」という。)以後に開始する健康保険法第四十三条の二第一項に規定する育児休業等について適用し、第三号施行日前に開始した同項に規定する育児休業等については、なお従前の例による。

○健康保険法施行規則

第135条(2022.10.1施行)
(育児休業等期間中の被保険者に係る保険料の徴収の特例の申出等)
4 法159条第1項第2号に規定する育児休業等の日数として厚生労働省令で定めるところにより計算した日数は、その育児休業等を開始した日の属する月における当該育児休業等を開始した日から当該育児休業等を終了する日までの期間の日数(被保険者が育介法第9条の2第1項に規定する出生時育児休業をする場合には、同法第9条の5第4項の規定にもとづき当該被保険者を使用する事業主が当該被保険者を就業させる日数(当該事業主が当該被保険者を就業させる時間数を当該被保険者に係る1日の所定動労時間数で除して得た数(その数に1未満の端数があるときは、これを切り捨てた数)をいう。)を除いた日数)とする。
 ただし、当該被保険者が当該月において2以上の育児休業等をする場合(法159条2項の規定によりその全部が一の育児休業等とみなされる場合を除く。)には、これらの育児休業等につきそれぞれこの項の規定により計算した日数を合算して得た日数とする。

5 法159条第2項に規定する厚生労働省令で定める場合は、被保険者が2以上の育児休業等をしている場合であって、一の育児休業等を終了した日とその次の育児休業等を開始した日との間に当該被保険者が就業した日がないときとする。
posted by ウロ at 22:28| Comment(0) | 社会保障法
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