松尾剛行「AI・HRテック対応 人事労務情報管理の法律実務」(弘文堂2019)
タイトルに「AI・HRテック」とか入っているので、今どきのミーハーなAIモノかと思いきや、そうではなく。
むしろ、安直にシステムを導入することに対しては警戒的だったりします。
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税務の領域だと、ほとんどの「クラウド」「DX」喧伝本は、新しいものを導入しさえすればうまくいく、と光の部分を強調したものばかりです。確かに、税務の限りではうまくいくことのほうが大部分なのかもしれません。
が、労務の観点からすると、その際にヒト(労働者)がどうなるのか、という問題が避けて通れません。
・新しいシステムについていけない人に対する教育はどこまでやるべきなのか。
・今まで残業代をあてにしていた人に対する補償は必要なのか。
・新しいシステムを導入したことで仕事がなくなった人を配置転換・雇止め・整理解雇してよいのかどうか。
などなど。
「人件費減って生産性上がったぜ、やったね!」と、数字だけでは済まない問題が、労務の世界には存在します。
本書を読みさえすればそれらがすべて解決できる、などといった万能薬が記述されているわけではありません。が、問題解決にあたっての指針には充分なりうるかと思います。
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また本書では、従前の労働法学上の論点を『情報』という観点から再検討されています。「労働情報法」「情報労働法」の基本書、と位置づけてもよいかもしれません。
もちろん、あらゆる論点を網羅しているわけではありません。が、本書を読めば〈視点〉の獲得ができますので、各自の基本書・体系書に戻っていただいて、自分なりに再検討してみるとよいと思います。
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