2025年06月23日

「本採用」とは何か。

 《一般用語を法令用語っぽく使うのは止めろ》シリーズ。

 試用期間満了時に社員として不適格だと判断して雇用契約を終了させることを、「本採用しない」「正式採用しない」などと表現することがあります。

 これ、どういう意味なんでしょうか。


 というのも、雇用契約自体は「内定」時点で成立、というのが定説になっています(始期付・解約権留保付)。なので、内定取消しも「解雇」の枠組みで有効性が判断されることになります。

 そして当然のことながら、就労開始後試用期間満了までの期間も雇用契約は存在しているわけです。試用期間中・試用期間満了時いずれであっても、会社が雇用関係を終了させるのは「解雇」であることに変わりはありません。

 だというのに、試用期間が満了するまでは「本」「正式」ではない採用状態だというのは、どういうことを意味しているのでしょうか。


 試用期間満了まで留保された解約権の行使による解雇を、解雇とは呼ばずに「本採用しない」と言い換えているだけなのでしょうか。通常の解雇と比較して実質要件が緩和されていることから、解雇とは違う表現をしているのだと。

 もちろん、ちゃんと解雇ルートにのせて処理しているかぎりは、単なる言葉の言い換えにすぎないといえるでしょう。解雇ルートにのせる場合には、30日前に解雇予告をしておかなければなりませんが(もしくは解雇予告手当の支払)。

 に対して、満了時に単に「本採用しない」という通知をするだけで何ら解雇としての処理を行っていないのだとしたら、雇用ルールの潜脱をしていることになり、極めて悪質でしょう。
 

 そうではなく、「本採用しない」というのを「退職勧奨」として位置づけることはできるでしょうか。
 「本採用しない」という通知をもって当然に雇用契約が終了するのではなく。それに対して本人が同意したら合意退職として扱う、本人が拒絶した場合はあらためて解雇ルートにのせるということです。

 正式な解雇ルートにのせる場合は、解雇が有効かどうかはともかく手続としては明確です(ただし、事前に解雇予告しておく必要があるのは前述の通り)。
 他方で、会社の「本採用しない」に対して労働者が従った場合はどういう扱いになるのでしょうか。

 上記では「合意退職」と書きましたが、労働者側からすれば、「本採用しない」と言われてしまったから従わざるをえなかっただけで、退職に同意したという認識はないかもしれません。むしろ解雇されたと認識している可能性もあります。


 雇用契約の終了自体は受け入れていたとして、後始末の問題として「離職票」の離職区分(離職理由)をどうするか、という問題があります。
 会社側としては、本人が納得の上で辞めてもらったから「自己都合退職」のつもり、労働者側としては、仕方なく辞めざるをえなかったので「解雇」のつもり、と認識がずれる可能性があります。
 もちろん退職勧奨の場合も「特定受給資格者」に該当するわけですが、揉める場合は揉めますよね。

 ということで、「本採用しない」などという曖昧な用語を使ってなんとなく雇用契約を終了させるのではなく、「(退職勧奨による)合意退職」なのか「解雇」なのか、正面からきちんと明記しておくべきだと思います。
posted by ウロ at 11:36| Comment(0) | 労働法
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